
小林佳子税理士事務所
所長税理士 小林 佳子 様
税務業務以外で特色を打ち出した
今回は2018年7月に福岡市で開業された小林佳子税理士事務所の取り組み事例を紹介したい。
小林佳子税理士事務所は代表の小林先生が1 名で運営されている会計事務所であるが、開業当初から、税務業務以外でも何らかの特色を打ち出していきたいと考えられていた。
具体的には、補助金支援や資金調達支援に注力されてきたようだ。
特に小林佳子税理士事務所では、金融機関との連携から案件紹介などにつながっており、今回は、金融機関連携の秘訣についてインタビューした。
開業後すぐに金融機関へ挨拶回り
まずは、補助金支援の案件紹介について伺った。
小林先生によれば補助金支援の案件は金融機関だけで10件もの紹介があったようだ。
実際にその10件の中から2021年度の事業再構築補助金を申請した企業もあり、採択という結果も得られている。
いつごろから金融機関より案件を紹介されるようになったのだろうか。
小林先生によれば、金融機関とは正式な提携関係をとっているわけではなく、紹介のきっかけは小林先生が独立開業したタイミングで地域の金融機関に挨拶回りしたことだそうだ。
小林先生は独立後すぐに経営革新等支援機関推進協議会に入会している。当時は「補助金とは?」という状況だったとのことだ。
ただ、そのような状態で税務だけでは顧客からも金融機関からも選んでもらえないと感じ、企業が決算するまでの過程で差別化したいと考え、補助金や金融財務に関する知識を協議会で身につけられた。
「当事務所で対応可能です!」
そして、ここだけの話ではあるが、協議会のサポートコンテンツ(補助金や財務) に関しては、まだ実績は無い段階でも金融機関に対して「当事務所で対応可能です」と言い切られたようだ。
さらに、女性税理士が金融機関の支店長に挨拶に来ることも珍しかったようで、金融機関に対しては強い印象を残すことができたとのことだ。
小林先生の場合は、さらにその後も、1~2か月に1 回のペースで地域の金融機関には挨拶訪問していた。
その際に、金融機関からの質問に答えていたことも信頼関係構築のきっかけになったようだ。
ちなみに、小林先生でも即答できないようなことを金融機関から質問された場合には、協議会の個別相談窓口も活用しながら回答された。
また、金融機関へ挨拶回りする際には、経営力向上計画や先端設備等導入計画、補助金では小規模事業者持続化補助金の案内チラシを持参していた。さらには、事務所名を記載するだけで利用できる、協議会の認定支援機関リーフレットも上手く活用されていたようだ。
財務支援は先入観をもって判断しない
協議会の財務支援システムであるF⁺prus (エフプラス) はどのように活用されたのだろうか。
小林先生も当初は難しいと感じられていたようだが、企業財務診断報告書のニコちゃんマークを見て、「これなら顧問先企業でも理解できる」と思い、その後は積極的にF⁺prusを活用するようになった。
特に、企業財務診断報告書については、財務状態が良い会社であっても「第3者からどう見られているのか知りたい」というニーズにマッチして、顧問先企業からも大好評だったようだ。
この経験から、「どの企業には企業財務診断報告書が有効か」を小林先生自身が判断してしま
うのではなく、先入観を持たずにすべての顧問先へ提供すべきであると考えられるようになったという。
結果として、F⁺prus を利用して財務状況を年に2回チェックするという財務支援の契約を税務顧問契約に上乗せして締結できたようだ。
積極的な経営スタイルの顧問先に
ここで、最近の事例について伺った。積極的な経営スタイルの顧問先に対してF⁺prusを活用して財務コンサルティングをした話だ。
企業財務診断報告書を作成すると、小林先生の予想通り“泣きべそマーク” ばかりの財務診断になったようで、設備投資をするなら、もう少し慎重に経営計画を作成するべきだと伝えた。
その後、金融機関にも相談し早期経営改善計画を作成することになった。
財務支援は、会計事務所と顧問先の二人三脚ではなく、金融機関も含めた“三人四脚” で進めていくべきなのである。これは普段から金融機関と良好な関係を築いている小林先生ならではの事例であった。
次に企業の借入金を14本から4本にまとめた事例を伺った。
そもそも企業にとってはなぜ借入金をまとめる必要があるのかご存じではない社長も多いため、小林先生は図に書くなどして丁寧に説明されたようだ。
その際には、過去の定例研修会などで協議会エグゼクティブプロデューサーの小寺氏が作成された図表を参考にされたようだ。
金融機関対応で心がけていること
また、顧問先企業と金融機関が面談する際は、必ず同席するように心がけている。
これは小林佳子税理士事務所としての金融機関へのアピールでもある。
さらに、決算後には企業から金融機関へ決算報告をすることを習慣として、顧問先へ指導している。
2021 年8 月27 日にリリースした新F+prusも、小林先生は早速ご利用いただいているようでF⁺prus操作専用のコールセンターも活用いただきながら操作されている。
また、従来のF⁺prusでは会計データをエクセルで読み込みしなければならなかったが、新F⁺prusなら会計データを直接取り込める点が特に使いやすいとおっしゃっていただけた。
最後には、今後も協議会コンテンツは有効活用しながら顧問先支援を継続していきたいと語っていただけた。特に新F⁺prusは、様々な企業のニーズに応えるために活用していきたいとのことだ。
まとめ
今回の事例から学べる、明日から実践してほしいアクションプラン
① 税務以外で事務所の特色を打ち出すために、補助金や財務支援にチャレンジする
② 金融機関への挨拶回りで補助金、財務支援ができることを告知する(実績が無くても対応可能であることは伝える)
③ F+prus を使った財務支援では、先入観を持って顧問先のニーズを判断しない
④ 積極的な経営スタイルの顧問先には、企業財務診断報告書を活用して客観的な財務分析を提示する
⑤ 顧問先が金融機関と面談する際は、可能な限り同席する