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特例承継計画で顧問先の事業承継を支援する方法を解説

特例承継計画で顧問先の事業承継を支援する方法を解説

特例承継計画(法人版事業承継税制の特例措置)は、贈与税や相続税の猶予または免除が受けられる制度です。中小企業の大きな課題である事業承継への支援は会計事務所のサービス拡充につながります。

本記事では特例承継計画の作成方法と事務所からの支援をアピールする方法を解説します。

法人版事業承継税制の概要

法人版事業承継税制の概要

法人版事業承継税制は、時限措置である「特例措置」と恒久措置の「一般措置」とがあります。

メリットが多い特例措置

特例措置は一般措置においては制約があった対象株式数や後継者数、雇用維持要件などが改善されており、メリットが大きい制度です。

【引用】非上場株式などについての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし|国税庁

特例措置の手続きの流れ

特例措置の大まかな流れは次のとおりです。

【引用】非上場株式などについての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし|国税庁

特例承継計画の作成方法

特例措置を受けるためには特例承継計画の提出が必須です。

特例承継計画は、後継者や事業承継時期、承継時と承継後5年間の事業計画などに加えて、認定⽀援機関による指導および助⾔の内容などを記載し、都道府県に提出し、確認を受けます。

特例承継計画の要件

特例承継計画(贈与の場合)の主な認定要件は次のとおりです。

  • 会社に関する要件
  • 後継者(受贈者)要件
  • 経営者(贈与者)要件
  • 担保提供要件
  • 取得株数要件

「会社に関する要件」とは非上場の中小企業であることです。次の会社は除きます。

  • 風俗営業会社
  • 資産管理会社、資産運用会社

「後継者要件」とは、受贈者である後継者が受贈時点において以下に該当することです。

  • 会社の代表権を有していること
  • 18歳以上(贈与が2022年3月31日までの場合は20歳以上)であること
  • 役員の就任から3年以上であること
  • 後継者(後継者と特別の関係がある者を含む)が総議決権数の50%超の議決権数を保有することとなること
  • (特例措置)後継者の有する議決権数が次のイまたはロに該当すること

イ (後継者が1名の場合)

後継者と特別の関係がある者(ほかの後継者を除く)の中で最も多くの議決権数を保有することとなること

ロ (後継者が2名または3名の場合)

総議決権数の10%以上の議決権数を保有し、かつ、後継者と特別の関係がある者(ほかの後継者を除く)の中で最も多くの議決権数を保有することとなること

「経営者要件」とは、贈与者である経営者が贈与時点において以下に該当することです。

  • 会社の代表権を有していたこと
  • 贈与の直前において、贈与者および贈与者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと
  • 贈与時において、会社の代表権を有していないこと

「担保提供要件」とは、猶予税額に見合う担保物件を提供することです。事業承継税制の対象となる会社の株式の全てをもって代替可能とされています。

特例措置の「取得株数要件」においては、後継者は次の(1)または(2)の区分に応じた株式数を取得する必要があります。

【引用】非上場株式などについての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし|国税庁

(1)後継者が1名

贈与者である経営者が3分の2以上を保有していた時は、後継者も3分の2以上となる株数を承継する必要があります。3分の2未満の場合はその全株式を承継する必要があります。

(2)後継者が2名または3名

後継者が2名または3名の場合は、後継者は発行済株式数の10分の1以上かつ経営者以上の持ち株数を保有することが必要です。

要件を確認する時は国税庁のチェックシートを利用して確認します。

【引用】(2022年分用)「非上場株式などについての贈与税の納税猶予および免除の特例」(特例措置)の適用要件および提出書類チェックシート|国税庁

【引用】(2022年分用)「非上場株式などについての相続税の納税猶予および免除の特例」(特例措置)の適用要件および提出書類チェックシート|国税庁

特例承継計画に必要となる書類

特例承継計画の申請時は所定の添付書類が必要です。特例承継の類型に応じて異なります。

例として、第1種特例経営承継贈与(先代経営者から後継者への贈与)の提出書類は次のとおりです。

【引用】第1種特例経営承継贈与 添付書類|中小企業庁

上記以外の場合の添付書類は下記に定められています。

第2種特例経営承継贈与(先代経営者以外の株主などから後継者への贈与)の場合

【参考】第2種特例経営承継贈与 添付書類|中小企業庁

第1種特例経営承継相続(先代経営者から後継者への相続)の場合

【参考】第1種特例経営承継相続 添付書類|中小企業庁

第2種特例経営承継相続(先代経営者以外の株主などから後継者への相続)の場合

【参考】第2種特例経営承継相続 添付書類|中小企業庁

申請期限は2024年3月31日、適用期限は2027年12月31日

特例承継計画の提出期限が1年間延長され、2024年3月31日となりました。

た贈与などの期限は2027年12月31日です。

特例承継計画の記載内容

特例承継計画の記載内容

特例承継計画の様式(抜粋)は次のとおりです。

【引用】特例承継計画(様式21)|中小企業庁

記載する内容は主に次の4つです。

  • 会社、経営者、後継者に関する事項
  • 株式を承継するまでの経営課題、経営課題への対応内容
  • 後継者が承継してからの経営計画
  • 認定支援機関の所見(指導と助言の内容)

記載する書類はA4版2枚と認定支援機関の所見1枚と簡素です。経営計画についても細かな数値目標などは不要です。

記載例が3業種公開されており、作成の参考となります。

【参考】特例承継計画 記載例(サービス業)|中小企業庁

【参考】特例承継計画 記載例(製造業)|中小企業庁

【参考】特例承継計画 記載例(小売業)|中小企業庁

認定申請書についても、申請の類型に応じた作成例が公開されています。

【参考】法人版事業承継税制(特例措置)の前提となる認定にかんする申請手続関係書類|中小企業庁

特例承継計画の作成は認定支援機関の関与が必須

特例承継計画の作成は認定支援機関の関与が必須

特例承継計画は、認定支援機関からの指導および助言をおこない、認定支援機関としての所見を記載した書面を添付する必要があります。

【引用】特例承継計画(様式21)|中小企業庁

また承継後の雇用確保要件(承継前の従業員数の80%を維持すること)未達成の場合においても、認定支援機関からの意見を付した確認書を提出することで猶予の継続が認められます。

提案が効果的な顧問先

特例承継のメリットが大きい顧問先の特徴は次のとおりです。

  • 好業績の見通し
  • 株価が高額
  • 後継者が株式買い取り資金を調達することが困難
  • 現経営者の資産の多くが自社株

【引用】事業承継の取り組みと課題に関する実態アンケート報告書(2021年2月)|東京商工会議所

提案する時に活用できるツール

事業承継には決まった時期がないため、顧問先が動くために事務所から定期的な情報提供などをおこないます。

顧問先へ提案するポイントは次の3つです。

  • 事務所通信やチラシなど販促ツールを活用
  • 補助金など経営者が関心をもつテーマを掲載
  • 記載例の提示など書類作成への支援をアピール

次の販促チラシ例など、税理士事務所向けの販促ツール素材を提供しているサービスの利用が効率的です。

販促チラシ例 経営革新等支援機関推進協議会
販促チラシ例 経営革新等支援機関推進協議会

また特例承継計画は記載内容が簡素です。会計事務所向けのサービスを利用し、顧問先へ記載案を提示することで迅速な支援をアピールできます。

特例承継計画 記載例 経営革新等支援機関推進協議会
特例承継計画 記載例 経営革新等支援機関推進協議会
特例承継計画 記載例 経営革新等支援機関推進協議会

事務所からのサポートを提案する流れ

顧問先への提案の主な流れは次のとおりです。

  • 後継者の有無、後継者の承継意思の確認
  • 現状の確認(株主構成、業績など)
  • 事業承継税制のメリットデメリットの説明
  • 事業承継計画の策定のサポートを提案

効果的な提案のポイントは次の3点です。

  • 経営者、後継者との信頼関係
  • 事業承継に伴う資金負担額の試算の例示
  • 時限措置(申請期限)の説明

まず「経営者、後継者との信頼関係」が重要です。事業承継は個人の資産など個人的な事情に関係するためです。

経営者、後継者ともに「資金負担額」は不明確です。おおまかに株価を算定しておき、株式の買い取り額や納税額を試算しておくと理解を得やすくなります。

また特例措置は「時限措置」です。現時点で延長の予定はないため、申請期限を意識したアピールも必要です。

事業承継は税理士の関与と伴走が期待されています

事業承継は税理士の関与と伴走が期待されています

事業承継は税理士の出番です。経営者が相談する相手のトップは顧問の税理士、会計士です。

【引用】2017年版 中小企業白書|中小企業庁

また事業承継税制をよく知らない経営者が半数近くとみられます。

【引用】事業承継の取り組みと課題に関する実態アンケート報告書(2021年2月)|東京商工会議所

経営者の日常的な相談相手である税理士は、事業承継と事業承継後における後継者のパートナーとして求められています。

認定支援機関業務は認定経営革新等支援機関推進協議会がサポート

事業承継の相談への対応や、特例承継計画の策定支援は、認定経営革新等支援機関推進協議会がサポートします。

経営革新等支援機関推進協議会は、株式会社エフアンドエムが運営する認定支援機関向けの支援団体です。月額30,000円(税抜)の定額で、顧問先への財務支援、本業支援業務のノウハウ習得から事務所の収益化までをサポートしており、1,699事務所が利用しています。(2023年6月時点)

経営革新等支援機関推進協議会が提供する、会計事務所向けのマーケティングサービスでは、すぐに使える販促ツールの提供から補助金申請書類の添削まで利用できます。

顧問先への事業承継の提案のきっかけに使える財務分析ツール『F+prus』も提供しています。

事務所スタッフを即戦力化する財務分析ツール『F+prus』は無料トライアルが可能です。

まとめ

法人版事業承継税制の特例措置はメリットが多い制度です。また特例承継計画は簡素であるため、記載例を参考とすることで効率的に支援できます。

特例承継の申請期限は2024年3月31日であるため、顧問先への案内と作成支援の提案に積極的に取り組みましょう。

会計事務所の本業支援業務の拡充、生産性向上は経営革新等支援機関推進協議会へお気軽にご相談ください。

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経営革新等支援機関推進協議会
経営革新等支援機関推進協議会は、株式会社エフアンドエムが運営する会計事務所向けの支援団体です。2014年4月に設立し現在では、全国1700以上の会計事務所が正会員として参画しており、中小企業支援制度についての勉強会・システム提供を通じて全面的にバックアップしている。