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事業承継税制の役員就任要件(法人版・個人版事業承継税制に係る所要の措置)は緩和⁉【令和7年度税制改正大綱】

事業承継税制の役員就任要件(法人版・個人版事業承継税制に係る所要の措置)は緩和⁉【令和7年度税制改正大綱】

事業承継税制における後継者要件のひとつである「事業承継前3年以上の役員就任要件」が緩和される予定です。

令和7年度税制改正大綱に記載されており、2025年1月1日以降の贈与が対象です。事業承継は税関連以外にも多面的な検討が必要であるため、税理士から顧問先へ多様なサービスを提案できます。

本記事では、事業承継税制における役員就任要件の緩和と、事業承継を契機に税理士から顧問先へ提案したいサービスについて解説します。

事業承継税制の役員就任要件が緩和の予定【令和7年度税制改正大綱】

事業承継税制とは、中小企業の経営者や個人事業主の後継者が取得した株式や事業用資産について、その贈与税・相続税の全額が猶予または免除される特例措置です。
後継者が当該資産を取得後一定期間にわたり要件を満たした場合、猶予された税額が免除されます。

事業承継税制は、法人と個人を合わせて3種類あります。

  • 法人版事業承継税制(一般措置)
  • 法人版事業承継税制(特例措置)(時限措置)
  • 個人版事業承継税制(特例措置)(時限措置)

役員就任要件(事業承継前3年以上)とは

法人版・個人版事業承継税制(特例措置)の適用を受けるためには、後継者が法人の役員就任期間(個人事業の場合は事業への従事期間)が継続して3年以上であることが条件です。

法人版事業承継税制(特例措置)

  • 贈与税:贈与の日まで引き続き3年以上、法人の役員(取締役、監査役または会計参与)であること
  • 相続税:相続開始の直前において会社の役員であること(被相続人が70歳未満で死亡した場合を除く)

個人版事業承継税制(特例措置)

  • 贈与税:贈与の日まで引き続き3年以上にわたって特定事業用資産に係る事業(同種・類似の事業を含む)に従事していたこと
  • 相続税:相続開始の直前において、特定事業用資産に係る事業(上記と同じ)に従事していたこと(前事業主が60歳未満で死亡した場合を除く)

【参考】非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし(2024年6月)|国税庁

【参考】個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(個人版事業承継税制)のあらまし(2024年6月)|国税庁

後継者の役員就任・個人事業への従事期限は2024年12月31日(改正前)

法人版・個人版事業承継税制(特例措置)は時限措置です。
特例措置を受けるための事業承継実施期限は、法人が2027年12月31日、個人事業主は2028年12月31日です。
法人については、事業承継実施期限の3年前である2024年12月31日までに後継者が法人の役員に就任していないと、事業承継税制(特例措置)を受けられなくなってしまいます。

後継者が他社で修業中、経営が悪化し事業承継を見送っているなどの企業は税制優遇を受けられなくなってしまうため、「法人版・個人版事業承継税制に係る所要の措置」として役員就任要件の緩和が求められていました。

事業承継税制に係る所要の措置として緩和予定(2025年1月1日以降)

2024年12月20日に与党が決定した令和7年度税制改正大綱において、後継者の役員就任(個人事業主の場合は事業従事要件)を緩和することが盛り込まれました。事業承継税制(特例措置)の役員就任を事業承継実施の直前までとする改正案です。

この役員就任要件の緩和は、2025年1月1日以降におこなう贈与について適用される予定です。

法人版・個人版事業承継税制の主な手続きの流れ

事業承継税制(特例措置)の適用を受けるためには税務署と都道府県へ書類を提出する必要があり、手続きが複雑です。
事業承継税制における主な手続きと流れは以下のとおりです。

特例適用までに必要な手続き

事業承継税制(特例措置)の認定を受けるには以下の手続きが必要です。

(STEP1)特例承継計画(個人版の場合は個人事業承継計画)の策定

(STEP2)税理士など認定経営革新等支援機関の指導を受け、計画に所見を記載

(STEP3)都道府県へ提出し、確認を受ける

【参考】法人版事業承継税制(特例措置)|中小企業庁

特例適用後に必要な手続き

特例適用の認定を受けた後の主な手続きは次のとおりです。(贈与の場合)

(STEP1)事業承継(株式の贈与など)の実施

(STEP2)都道府県への認定申請

(STEP3)都道府県の認定書の写しを添付して贈与税の申告

適用後5年間

(STEP4-1)毎年、都道府県へ「年次報告書」を提出

(STEP4-2)毎年、税務署へ「継続届出書」を提出

適用5年目

(STEP5)従業員数が事業承継時と比べて5年平均で8割を下回った場合は、その理由を記載した「特例承継計画に関する報告書」を都道府県へ提出

適用6年目以降

(STEP6)3年ごとに税務署へ報告

贈与者が死亡したとき

(STEP7-1)税務署へ「免除届出書」「免除申請書」を提出

(STEP7-2)都道府県へ「切替確認申請書」を提出

【参考】非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし(2024年6月)|国税庁

【参考】経営承継円滑化法申請マニュアル(2024年4月改訂版)|中小企業庁

事業承継税制で大切な期限は3つ

事業承継税制(特例措置)は相続税・贈与税の納税猶予または免除を受けられるため人気があり、2023年度 における特例承継計画の申請件数は5,357件です。
メリットが大きい事業承継税制ですが手続きは複雑です。また贈与税や相続税の申告期限と関係するため、期日管理が欠かせません。

事業承継税制(特例措置)において重要な期日は主に次のとおりです。

特例承継計画の提出期限は2026年3月31日

事業承継税制(特例措置)の適用を受けるためには、特例承継計画(個人版は個人事業承継計画)の作成と都道府県への確認申請が必要です。
特例承継計画の提出期限は法人・個人とも2026年3月31日です。

事業承継の実施期限は延長なし

株式の贈与など事業承継を実施する期限は、法人は2027年12月31日、個人事業主は2028年12月31日です。
特例承継計画の提出期限はこれまで延長されてきましたが、事業承継実施期限は延長されていません。令和6年度税制改正においては事業承継の実施期限を延長しないとされています。

役員就任は事業承継前(令和7年度税制改正大綱で改正予定)

後継者の役員就任は事業承継時からさかのぼり、3年前からが要件基準です。現行は2024年12月31日までとなりますが、令和7年度税制改正において「事業承継の直前」までに改正される予定です。

事業承継は税理士の活躍の場!顧問先へさまざまな提案が可能

事業承継税制は実施期限が決まっているため、事業承継予定の法人や個人事業主は早めに事業承継計画の作成に着手することが望ましいです。

事業承継税制は株式評価額1億円超の企業は利用するメリットがあるといわれていますが、認知度が低く、内容をよく知らない経営者も多いでしょう。

事業承継は承継計画の策定だけでなく、株価算定や資産承継など多面的な検討が必要です。税理士から顧問先へ積極的に提案を検討しましょう。

事業承継を支援してほしい企業は約20%

事業承継計画の策定について、税理士など外部専門家の支援を希望する企業の割合は、後継者決定済みの企業が15.0%、後継者未定企業は19.6%です。

事業承継の具体的な手続きにおいては、後継者決定済みの企業で20.1%、後継者未定企業でも18.2%が外部専門家の支援を求めています。外部専門家からの支援を「わからない」とする企業が多いため、制度の理解が進むことで支援を希望する企業が増えるといわれています。

税理士から顧問先へ提案を検討したいサービス

事業承継は法人とその経営者個人について、税関連や資金調達、公的支援策など多くの事項を検討する必要があります。しかし、多忙な中小企業経営者がすべての業務をおこなうには負担が大きいため、税理士や認定経営革新等支援機関からの支援が求められています。
税理士が顧問先における事業承継について提供できる主なサービスは次のとおりです。

  • 顧問先の株価算定
  • 経営者個人資産の相続税算定
  • 個人所有事業用資産の贈与・相続の相談助言
  • 事業承継計画の策定支援
  • 事業承継計画における認定経営革新等支援機関としての助言、確認
  • 新経営者に対する資金繰り助言
  • 新経営者就任後の会計や労務管理体制の構築支援
  • 新経営者就任後の事業計画の策定支援

顧問先への提案は経営革新等支援機関推進協議会がサポート

法人版・個人版事業承継税制における役員就任3年間の要件が緩和される予定ですが、事業承継税制の実施期限は延長されないといわれています。関心がある顧問先に対しては、税理士から積極的に提案しましょう。

事業承継支援など顧問先支援業務の推進は「経営革新等支援機関推進協議会」がサポートします。
経営革新等支援機関推進協議会は、監査担当者をスキルアップする動画研修、補助金・助成金・税制優遇措置を周知する情報発信素材の提供など、顧問先支援の拡充に役立つサービスを月額30,000円(税別)で利用できます。
顧問先への本業支援業務を拡充したい事務所様は、経営革新等支援機関推進協議会へお気軽にご相談ください。

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