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2025年1月以降の中小企業向け資金繰り支援|税理士から提案したい5つの打ち手

2025年1月以降の中小企業向け資金繰り支援|税理士から提案したい5つの打ち手

2025年1月から3月にかけて、政府による中小企業向け資金繰り支援策の重点が変わります。従来の資金調達支援から経営改善・成長促進への支援が主となり、中小企業は自ら資金繰り改善に努めることが求められます。

本記事では、2025年1月以降の中小企業向け資金繰り支援策の概要と、税理士から顧問先へ提案を検討したい資金繰り改善の打ち手について解説します。

2025年1月以降における中小企業向け資金繰り支援の概要

政府は2025年1月以降の中小企業向け資金繰り支援策の概要を発表しました。
2025年1月から3月にかけて、従来のコロナ禍における資金調達支援が縮小され、中小企業がおこなう経営改善・再生・成長促進への支援が重点となります。

2025年1月から3月にかけて資金繰り支援策が相次いで変更

中小企業庁が発表した2025年1月から3月にかけておこなわれる資金繰り支援策の見直し内容は、①2025年3月頃までに従前のコロナ禍における支援策を廃止、②借換保証制度の改正など新たな資金繰り支援策を開始する、などであり、主な改正内容は次のとおりです。

2025年1月以降の中小企業向け資金繰り支援策の見直し内容

廃止

  • 国のコロナ融資(2024年12月で取り扱い終了)
  • 国のコロナ資本性劣後ローン(2025年2月まで)
  • 国のセーフティネット融資の金利引き下げ措置(2025年3月まで)
  • 経営改善サポート保証(コロナ対応)(2025年3月まで)
  • コロナ借換保証(石川県内一部地域)(2025年3月まで)

新設・拡充

  • 経営改善サポート保証(経営改善・再生支援強化型)の創設
  • プロパー融資を引き出す保証制度(仮称)の創設
  • 危機対応後経営安定貸付制度の創設
  • 資本性劣後ローン対象企業の拡充

経営改善サポート保証は「コロナ対応型」から「経営改善・再生支援強化型」へ

経営改善サポート保証(コロナ対応型)とは、コロナ禍の影響により融資の返済が負担となっている中小企業を対象に、既往の融資を借換しやすいよう保証協会保証料を低減する制度のことです。この制度は2025年3月末に取り扱いが終了します。

2025年4月以降は、新たに経営改善サポート保証(経営改善・再生支援強化型)が創設されます。この制度について現時点で発表されている概要は次のとおりです。

【経営改善サポート保証(コロナ対応型)と(経営改善・再生支援強化型)との違い】

 経営改善・再生支援強化型 (2025年4月創設予定)コロナ対応型 (2025年3月まで)
証料率0.3%0.2%
保証上限額2.8億円2.8億円
保証期間15年15年
据置期間3年5年
借換対象借入100%保証借入を
100%保証借入で借換可能
100%保証借入を
100%保証借入で借換可能
経営改善計画策定中小企業活性化協議会の支援や経営改善計画策定支援事業(405事業)などで策定された計画が必要経営サポート会議、中小企業活性化協議会などの支援により作成された計画が必要
【参考】資金繰り支援のご案内(2025年1月以降の支援メニュー)|中小企業庁

プロパー融資を引き出す保証制度が創設予定

金融機関からのプロパー融資(保証協会保証を付さない融資)を円滑とするための保証制度が新設される予定です。
人手不足対応などのために必要となる資金調達時に、保証付き融資を推進することでプロパー融資を促進することが狙いとされています。

本制度では、保証限度額2億8,000万円、保証期間10年、保証料率は引き下げ措置が講じられる予定です。制度詳細は今後発表される予定ですが、現時点で判明している制度概要は次のとおりです

【プロパー融資を引き出す保証制度(仮称)】

保証料率引き下げ予定
保証上限額2.8億円
保証期間10年
据置期間設備資金3年以内
運転資金1年以内
保証割合80%
【参考】資金繰り支援のご案内(2025年1月以降の支援メニュー)|中小企業庁

国のコロナ融資を借換できる危機対応後経営安定貸付と資本性ローン

国のコロナ融資は2024年12月に取り扱いが終了しました。近年は借換による利用が増えていたため、新たに創設された危機対応後経営安定貸付により借換が可能となっています。

危機対応後経営安定貸付制度で国のコロナ融資を借換

危機対応後経営改善貸付制度とは、国のコロナ融資・コロナ資本性劣後ローンを借換できる制度融資です。2025年1月に創設され、政府系金融機関である日本政策金融公庫で取り扱いを開始しています。
本制度は融資期間20年以内(うち据置期間2年以内)となっており、国のコロナ融資を超長期の分割返済に切り替えることができます。また一括返済期限が到来するコロナ資本性劣後ローンについても借換可能です。

【参考】危機対応後経営安定貸付|日本政策金融公庫

資本性ローンに省力化投資に取り組む企業が追加

期限一括返済型(借入期間中の元金返済がない)のコロナ資本性劣後ローンは2025年2月で申込み終了となります。

2025年3月以降は、従来の挑戦資本強化特別貸付制度(資本性ローン)の対象として、新たに省力化などに取り組む企業を追加する、拡充措置が講じられる予定です。

【参考】挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)|日本政策金融公庫国民生活事業

早期経営改善計画策定支援は対象範囲を拡充

早期経営改善計画策定支援(ポストコロナ持続的発展計画事業、ポスコロ事業)とは、認定経営革新等支援機関の支援を受けて経営改善計画を策定するときに、計画策定費用の3分の2が補助される制度です。
本制度のうち民間金融機関が支援する場合の取り扱い期限を2028年1月まで3年間延長するとともに、民間ゼロゼロ融資残高が2,000万円超の企業が対象範囲に追加されます。

【早期経営改善計画策定支援(民間金融機関による策定支援)の拡充】

 拡充後拡充前
実施期間2025年2月から2028年1月2025年1月まで
伴走支援最大3年最大3年
補助率3分の23分の2
補助上限額(民間金融機関による策定支援)
計画策定費用15万円  

(認定経営革新等支援機関による策定支援)
上記のほか
伴走支援費用5万円
伴走支援費用(決算期)5万円
(民間金融機関による策定支援)
計画策定費用15万円  

(認定経営革新等支援機関による策定支援)
上記のほか
伴走支援費用5万円
伴走支援費用(決算期)5万円
対象企業・民間ゼロゼロ融資の残高がある

・原則としてメインバンクが支援をおこなう

・支援金融機関の融資残高が4,000万円以上

・支援金融機関の融資残高のうち民間ゼロゼロ融資の保証残高が50%以上
・民間ゼロゼロ融資の残高がある

・原則としてメインバンクが支援をおこなう

・支援金融機関の融資残高のうち民間ゼロゼロ融資の保証残高が2,000万円以上

・支援金融機関の融資残高が民間ゼロゼロ融資の保証残高の2倍以内
【引用】「早期経営改善計画策定⽀援」を活⽤した⺠間⾦融機関による経営改善⽀援の更なる促進(2024年12月3日)|中小企業庁

2024年は倒産件数1万件超!税理士から顧問先へ提案したい5つの打ち手

中小企業を取り巻く事業環境は厳しさを増しています。東京商工リサーチの発表によると、2024年の年間企業倒産件数は10,006件であり、年間倒産件数が1万件を超えることは、2013年以来11年ぶりです。
2025年1月以降は中小企業向けの資金繰り支援策の重点が変わるため、中小企業は自ら資金繰りを改善することがより重要となります。
顧問税理士から顧問先へ資金繰り改善策として提案することを検討したい5つの打ち手は次のとおりです。

経営分析による課題の把握

最初に顧問先へ提案したいことは、顧問先の経営状態を経営者に把握してもらうことです。
忙しい経営者が多いため、財務分析レポートや事業シミュレーションは見てすぐにわかるスタイルが好まれます。
月次監査の機会などを活かして、顧問先と今後の改善の方向を相談しましょう。

借換など資金繰り改善策の検討

資金繰り改善が喫緊の課題となっている顧問先もあると思われます。また、一見融資の返済に支障がない財務状態に見えても、過大な返済負担で資金収支がマイナスとなっている顧問先もあると思われます。
経営改善サポート保証など、借換により資金繰りを改善させる方法は効果が高く、経営者が実感しやすい資金繰り改善策であるため、積極的に提案を検討しましょう。

採用力強化

人手不足に悩む顧問先は多く、帝国データバンクの調査によると、中小企業の52.6%が人手不足であると感じています。(2024年12月時点)

中小企業は採用方法が整っていないこともあるため、採用フローの確立や人材採用のための主な取り組みについても改善提案できるでしょう。

  • シニア・女性・外国人従業員の活用
  • 補助金・助成金を活用した省力化・省人化投資
  • 就業規則などの整備、育児休暇などの導入
  • トイレや休憩室の改善
  • 面接時の適性検査導入による早期離職の防止
  • 社内研修制度の整備

補助金・助成金の前向きな活用を提案する

人手不足対応のための省人化・省力化投資や、賃上げに取り組む顧問先も多いと思われます。
投資や賃上げに伴う資金負担は、公的支援制度をフル活用することを提案しましょう。
税理士から活用を提案したい主な補助金・助成金は次の8つです。

  1. ものづくり補助金
  2. 事業再構築補助金
  3. 中小企業新事業進出補助金
  4. IT導入補助金
  5. 省力化投資補助金
  6. 持続化補助金
  7. 業務改善助成金
  8. 人材開発支援助成金(リスキリング助成金)

廃業、M&A支援

後継者不在や立て直しが難しい顧問先については、廃業支援や事業の売却について支援できます。
事業の売却先探しや経営権承継などについては、公的支援機関である事業承継・引継ぎ支援センターなど、専門家の活用もおすすめです。

2025年1月以降の資金繰り支援は税理士からのサポートがますます重要

2025年1月以降、コロナ禍における資金繰り支援策が縮小され、中小企業向け資金繰り支援の重点は人手不足・コスト高・賃上げ対応に変わります。

中小企業が自ら資金繰り改善に取り組む際は、身近な相談相手となる税理士からの多面的なサポートが求められます。経営者が資金繰り改善に取り組むときに、サポートを求めることが多い内容は次のとおりです。

  • 金融機関などへ提出する事業計画の策定
  • 資金繰り表の作成
  • 金融機関との交渉についてのアドバイス
  • 保証協会の保証制度の説明
  • 賃上げや省人化投資に活用できる補助金・助成金制度の紹介
  • 金利上昇対策

顧問先の財務分析から公的支援策の所内研修まで、経営革新等支援機関推進協議会がサポート

会計事務所から顧問先へ向けた補助金・助成金・税制優遇制度の改正情報の発信や、財務分析レポートの作成など、顧問先支援業務の拡大は、経営革新等支援機関推進協議会がサポートします。

経営革新等支援機関推進協議会は、補助金・助成金・税制優遇制度の改正情報のお知らせや、顧問先向けに使える販促チラシの提供、事務所スタッフが効率的にスキルアップできる動画研修プログラムの配信など、会計事務所様の悩みごとを解決するサービスを月額30,000円(税別)で提供しています。

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