会計事務所は税務・会計業務を中心に、顧問先の企業をサポートします。
しかしながら、顧客獲得競争の激しい業界で、競合と似通ったサービスを提供していると、新規顧客を増やすことは難しいです。
企業が本当に求めている支援は、税務・会計業務だけではありません。
支援できる領域を広げることで、提案力を高められ、少ない人員でも大手事務所に負けない、サービスを提供することが可能となります。
本記事では、現状の企業ニーズや、税務・会計業務以外の支援策、少数精鋭の組織づくりについて解説します。
目次
企業ニーズと会計事務所の現状には大きなギャップがある
コロナ禍が長期化するなかで企業が本当に求めている支援と、会計事務所が現在提供しているサービスの間には、ギャップが存在するようになりました。
得意領域だけの限定的なサービス
これまで会計事務所では、税務・会計業務を中心に顧問先を支援することが一般的でした。
しかし、税務・会計業務はどの事務所でも対応できることがほとんどです。
記帳代行、給与計算、決算申告書・確定申告書作成、税務署提出用書類の作成などの業務では、競合との差別化は困難と言えます。
「経営革新等支援機関推進協議会 2021全国一斉調査アンケート結果」によると、コロナ禍(2022年4月)以降に顧問先から受けた相談内容は、下記の結果となりました。
相談の多くは、コロナで事業が影響を受けた方々に対して「補助金」「財務」の支援措置でした。
こういった企業ニーズのトレンドをつかまず、「既存顧客が豊富にいるから」と従来通りのサービスばかりを提供していては、時代の変化に取り残されるかもしれません。新たに提供できるサービスを常に模索していく必要があります。
「ITツールで事足りる」と思われる税務・会計業務
企業の経理担当者は、「税務・会計業務はITツールで事足りる」と考える人が増えています。
実際に会計ソフトでは、会計業務の自動化が進んでいます。
たとえば、勘定科目に応じた自動仕分入力や、領収書やレシートからテキストを読み取って仕分けデータの自動生成が可能になっています。
経理担当者が「わざわざ専門家に依頼するほどではない」と考えても仕方ないかもしれません。
今後、AI・RPAの進化によって会計士・税理士の仕事はなくなる、といわれています。
ただし、AIには顧問先と親身なコミュニケーションを取ることや、顧問先の意向を踏まえた法人税・所得税・相続税などに関わるフレキシブルな提案はできません。
会計事務所は、効率化につながる会計ソフトを業務に取り入れつつも、人間にしかできない、より高度な提案、問題解決を提供することが、企業ニーズを満たすために求められています。
税務・会計業務以外に会計事務所ができる支援
競合と差別化を図るために、税務・会計業務以外にできる支援を紹介します。
活用漏れを防ぐ優遇税制支援
「優遇税制支援」とは、主に中小企業・小規模事業者を対象とした、税負担を軽減させる制度です。
税負担を抑え、高利益率を目指したい企業にとっては、魅力的な制度です。
ただし、企業単体で申請できる制度ばかりではなく、「認定支援機関の関与」が必須となる制度も存在します。
- 固定資産税を軽減する「先端設備等導入計画」
- 設備投資の即時償却や税額控除を受けられる「中小企業経営強化税制」(※B類型の場合に、税理士・公認会計士の関与が必須)
- 円滑な事業承継を支援するため、相続税・贈与税の納税が猶予及び免除される「事業承継税制」
これらの制度は、制度内容が頻繁に更新されるため、会計事務所には情報収集が欠かせません。
もし情報収集が遅れれば、せっかくの制度が活用できず、機会損失になってしまう可能性もあります。しかし、多忙な業務の合間をぬって、リサーチに時間を注ぐことは難しいでしょう。
経営革新等支援機関推進協議会では、優遇税制の情報をおさえ、申請書の作成から提出までのサポート体制を整えています。実務経験ゼロでも、制度の知識習得から、申請書の添削・個別アドバイスも可能です。
申請書作成まで手が届く補助金支援
優遇税制支援だけでなく「補助金支援」も企業ニーズが高まっている領域です。
コロナ禍や円安の影響を受けて売上が減少したために、補助金を活用して新しい分野にチャレンジする企業も少なくありません。
- コロナの影響などで売上が減少した中小企業が、新分野展開や業態転換などを図るための「事業再構築補助金」
- 革新的サービス開発や生産プロセスの改善をおこなうための設備投資を支援する「ものづくり補助金」
- 小規模事業者が販路開拓などに取り組む際の費用を一部補助する「小規模事業者持続化補助金」
- 事業継承をきっかけに経営革新をおこなう経費などを一部補助する「事業承継・引継ぎ補助金」
補助金も同様に、情報収集や申請書の質が、活用漏れを防ぎ、審査を通過させるために必要となります。
補助金支援に関心がある方は支援をおこなうために必要な知識・ノウハウをイチから学べる「経営革新等支援機関推進協議会アカデミー(実務体験型プログラム)」を活用してください。
補助金申請の実務レベルまで、短期間で修了できます。
効率化でスピーディに対応できる財務支援
2020年5月に資金繰り対策として、いわゆるゼロゼロ融資が導入され、数多くの企業が活用されました。
ゼロゼロ融資は急場を凌ぐ役割としては機能をした一方で、足元の業績や受注環境の悪化に伴い、返済の目途が立たない中、ゼロゼロ融資の元本の返済が始まる企業が増加しています。
経営革新等支援機関推進協議会では、資金繰り・財務支援をサポートできるよう、総合コンサルティングシステム「F+prus(エフプラス)」を提供しています。誰でも簡単に安心して操作いただけます。
スモールM&Aを提案する事業継承支援
今後10年間で、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業や小規模事業者の経営者は約245万人になり、半数の127万人は「後継者が決まっていない」といわれます。
これは、日本企業全体の1/3を占める数値です。
事業継承のサポートは、喫緊の課題です。これまで親族へ事業継承する中小企業は9割を超えていましたが、現在では4割以下に低下しています。
親族外継承やM&Aまで提案できることが重要です。
経営革新等支援機関推進協議会では、顧問先企業のスムーズな事業承継を実現するためのコンサルティングができるシステムを提供しています。相続対策や組織継承、M&A準備までさまざまな機能を利用可能です。
まずは事務所の現状把握を
このように「優遇税制支援」「補助金支援」「財務支援」「事業継承支援」といった切り口で、企業ニーズを満たす“本当の”支援を目指しましょう。
新サービスを提供することで、顧客単価アップの提案材料となります。
新規顧客に税務に加え、財務支援とセットで提案するなど、付加価値を高めて顧客単価を上げましょう。
しかしながら、「すべての支援をとにかく進める」と従業員に負担を強いる可能性もあります。
まずは、事務所の現状把握からはじめましょう。既存の顧問先やサービス内容を見直し、商圏の企業ニーズがどこにあるかを冷静に分析します。現状の分析手法がわからなければ、経営革新等支援機関推進協議会にぜひ相談ください。
少数精鋭の組織づくりを
人手不足が叫ばれる中、付加価値の高いサービスを提供するためには少数精鋭の組織を築いていく必要があります。
人材育成の課題
Mikatus(ミカタス)株式会社が2020年11月に実施した「税理士業界における人材・採用・教育に関する実態調査」によると、税理士の6割がスタッフ教育に課題を感じていることが明らかになりました。
課題の第一位は「スタッフのスキルアップ」です。
しかし、スタッフの学習環境では「各自の自習に任せている」が約4割となりました。
人材のスキルアップ
幅広いサービスを提供するために、人材のスキルアップは必須です。
しかし、すでに膨大な業務を抱える従業員は、人材のスキルアップ指導までリソースを割く余裕はありません。
限られたリソースの中で、効率的にスキルアップさせるためには、経営革新等支援機関推進協議会の教育カリキュラムを活用して、「未経験者の方でも短期間でスキルアップできる」環境を整えてください。
まとめ
刻々と変化する企業ニーズに対応するため、会計事務所はこれまでの税務・会計業務だけでなく、優遇税制、補助金、財務、事業継承といったカテゴリの支援を目指さなければなりません。
すでに税務・会計業務で逼迫している会計事務所の場合は、経営革新等支援機関推進協議会の多角的なサービスを活用し、付加価値支援の実現を目指してください。
1位…事業再構築補助金
2位…コロナ融資関連
3位…小規模事業者持続化補助金