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税理士の独立開業ガイド|開業の流れ・費用・収入の考え方と成功のポイント

税理士が独立開業して楽しいと感じる理由とは?

税理士は資格を活かして独立開業しやすい職業ですが、成功には開業までの流れ・必要資金・収入の考え方、そして開業後の営業戦略への理解が欠かせません。

日本税理士会連合会によれば、税理士登録者数は令和8年6月末現在で8万2297人です。登録すれば自動的に顧問先が得られるわけではなく、開業後の顧客獲得や収支管理に苦労する税理士も少なくありません。

「独立したいが、何から準備すればいいのか分からない」「開業しても顧客を獲得できるか不安」などの悩みを抱える税理士は少なくありません。会計事務所としては、開業を検討する所属税理士や、開業直後で顧客基盤づくりに苦労している税理士にへ、実務的な情報提供と支援体制を整えることが求められます。本記事では、税理士が独立開業するまでの流れ、費用、収入の考え方、そして開業後に成功するためのポイントを解説します。

税理士が独立開業して得られるやりがい

まず、独立開業によって税理士自身にどのようなメリット・やりがいがあるのかを整理します。

理想のワーク・ライフバランスを実現できる

独立開業をすれば、勤務時代のように上司や事務所の方針に縛られず、自分自身で働き方を設計できます。子育てや親の介護と両立させるための時短勤務が可能です。また、繁忙期以外の稼働を抑えるといった柔軟な働き方も、開業税理士であれば実現しやすくなります。「働き方の自由度」は、独立開業の代表的な魅力の一つとしてよく挙げられます。

顧問先へ自分が重視するサービスを提供できる

勤務税理士の場合、事務所の方針によって提供できるサービスの範囲が決まってしまいます。しかし、独立開業すれば自分が得意とする分野や、顧問先に本当に必要だと考えるサービスへのシフトが可能です。たとえば、相続税に強みを持つ税理士が資産税特化型の事務所を開いたり、クラウド会計導入支援に特化したりなどが考えられます。独自の付加価値を打ち出しやすくなる点は独立開業ならではの魅力です。

頑張った成果が収入に反映されやすい

勤務税理士の給与は雇用契約に基づく一定の水準に収まりやすいです。対して、独立開業すれば顧問先数や提供サービスの幅を自身の努力で広げられます。そして、収入の伸びしろが大きくなるのです。

厚生労働省のjob tagでは、令和7年賃金構造基本統計調査を基にした年収810.8万円が掲載されています。ただ、必ずしも税理士だけを対象とした統計ではないですが、所属税理士の平均年収や開業税理士の所得を参考値として示すものです。

なお、開業税理士の収入は、顧問料などの売上から事務所賃料、人件費などの必要経費を差し引いた所得が基礎といえます。顧客単価や必要経費、人員体制を含めた収支計画によって、結果は大きく変化するのです。

税理士が独立開業するリスク・デメリット

一方で、独立開業には相応のリスクも伴います。会計事務所として開業を検討する税理士に助言する際は、良い面だけでなくリスクも正しく伝えることが大切です。主なリスクは大きく3つあります。

収入が不安定になるリスク

独立開業した瞬間から収入が保証されるわけではありません。独立後の収入は、顧問先数、顧客単価、スポット業務の受注状況などによって変動します。特に開業直後は、事務所費用やシステム利用料などの固定費が先行しかねません。開業前に、必要売上高、損益分岐点、運転資金を試算しておくことが重要です。

営業・集客の負担がすべて自分にのしかかる

雇われの税理士時代は事務所が獲得した顧問先を担当すればよかったでしょう。対して、独立開業すると新規顧客の開拓も自分自身の仕事です。広告宣伝や紹介営業が得意でない税理士にとっては、専門知識があっても顧客獲得に苦戦するケースが少なくありません。

経営者としての責任をすべて背負う

資金繰り、人材採用、事務所運営の意思決定など、勤務時代には意識しなかった経営者としての役割を一手に担います。体調を崩した場合の業務継続や、賠償責任リスクへの備えも自分自身で講じなければなりません。

税理士が独立開業するまでの流れ

独立開業までの手続きは、現在の登録状況によって異なります。まだ税理士登録をしていない試験合格者・試験免除者のケースと、すでに所属税理士として登録している方が独立するケースとに分けて確認しましょう。

ステップ1|未登録者は新規登録の要件を満たす

税理士登録をしていない試験合格者・試験免除者が独立開業する場合は注意すべきです。原則として通算2年以上の実務経験を満たしたうえで、開業税理士として新規登録を申請します。

なお、実務経験の要件は試験合格者・試験免除者を対象とするものです。弁護士・公認会計士など他の資格による登録ルートには別途の要件が定められています。税理士事務所等で実務経験を積みながら準備を進めるのが一般的です。

【出典】国税庁|税理士の登録(https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/toroku/touroku.htm)

ステップ2|登録済みの所属税理士は変更登録を行う

すでに所属税理士として登録している方が独立する場合は異なります。新規登録ではなく、所属税理士から開業税理士への変更登録しなければなりません。事務所所在地の変更や税理士会・支部の異動を伴う場合もあるため、独立予定地を管轄する税理士会へ早めに確認しておきましょう。国税庁も、登録区分に変更が生じた場合は税理士法第20条に基づく変更登録が必要であると説明しています。

【出典】国税庁|税理士法基本通達(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/zeirishi/02.htm)

ステップ3|未登録者は新規登録の審査を受ける

新規登録では、登録予定の事務所等の所在地を管轄する税理士会へ必要書類を提出します。その後、税理士会による調査と日本税理士会連合会による調査・審査を受けなければなりません。これらを経て、登録の適否が決定されます。なお、申請から登録決定までは、おおむね2〜3カ月が必要です。

一方、所属税理士から開業税理士への変更は、新規登録とは異なる変更登録手続きです。所属税理士会を経由して変更登録申請書を提出し、事務所の変更を伴う場合は、変更登録申請に関する届出書なども提出します。

【出典】日本税理士会連合会|税理士登録の手引(令和8年5月)(https://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/doc/cpta/system/entry/howto/entrymanual-R8.pdf)

ステップ4|開業準備(事務所・資金・営業体制)を整える

登録手続きと並行して、事務所の立地選定、会計・税務ソフトなどのITツール導入、開業資金の確保、そして開業後すぐに動ける営業体制の準備を進めます。登録から開業まで間を空けずスタートダッシュを切るためには、この準備段階が非常に重要です。なお、税理士は税理士事務所を開設した後に二以上の事務所を設けることが原則としてできず、開業税理士は基本的に1人1事務所で事務所運営をおこないます。

【出典】国税庁|税理士事務所(https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/qa/05.htm)

独立開業にかかる費用の目安

独立開業には登録関連費用と開業準備費用の両方がかかります。それぞれの目安を確認しましょう。

税理士登録・税理士会入会にかかる費用

新規登録の場合、登録免許税6万円と登録手数料5万円の合計11万円が必要です。これは税理士登録をしていない方が初めて登録する際の費用と考えましょう。すでに所属税理士として登録済みの方が開業税理士へ変更登録する場合は、同額の費用が改めて発生するわけではありません。

変更登録にかかる費用や手続きの詳細は税理士会・支部ごとに異なります。自身が登録する先について、事前に確認しておきましょう。これらとは別に、所属する税理士会への入会金・年会費もかかります。金額は税理士会・支部ごとに異なるため、開業予定の地域を管轄する税理士会に事前に確認しておくと安心です。

【出典】日本税理士会連合会|登録に必要な提出書類等(https://www.nichizeiren.or.jp/prospects/entry/doc/)

事務所・設備・営業活動にかかる費用

事務所は自宅開業であれば大きく抑えられます。しかし、賃貸事務所を構える場合は敷金・礼金を含め初期費用がまとまった額が必要です。これに会計・税務ソフトなどのITツール費用、パソコンや複合機などの設備費用、名刺やホームページ制作といった営業活動費用が加わります。開業後しばらくは収入が安定しない可能性を踏まえ、当面の生活費も含めた資金を事前に確保しておきましょう。

独立して成功する税理士がやっていること

独立開業後に早期に経営を安定させるためには、広告宣伝・営業力・付加価値の3点が重要と考えられます。

広告宣伝・情報発信に力を入れる

開業直後は知名度がないため、待っているだけでは顧客は増えません。ホームページやSNSでの情報発信、地域の商工会議所・金融機関・他士業への挨拶回りなど、開業前から人脈づくりと発信が必要です。事前の取り組みが、開業後の顧客獲得の結果を大きく左右します。

営業力・提案力を磨く

顧問契約の獲得には、税務知識だけでなく顧問先の課題を聞き出す作業が必須です。これを踏まえ、必要なサービスを提案することが求められます。専門用語を避けて分かりやすく伝えること、そして相手のニーズに合わせた具体的な提案を行うことが重要です。

あわせて、提供するサービスの価格設定を適切に行うことも重要です。相場より大幅に低い価格設定は開業当初の集客には有効でも、その後の値上げが難しくなり、事務所経営を圧迫する要因になり得ます。

付加価値サービスで事務所を差別化する

税務申告や記帳代行といった基本業務だけでは、価格競争に巻き込まれやすくなります。そのため、以下のような付加サービスで差別化を目指しましょう。

  • 制度融資や補助金に関する情報提供
  • 資金繰りに関する財務面の助言
  • 事業計画策定支援など

税務・会計の枠を超えた付加価値サービスを提供できる事務所は、顧問先からの信頼を得やすくなります。補助金の申請書作成そのものを担う場合は業際問題に注意が必要です。必要に応じて行政書士など他の専門家と連携することが望まれます。

税理士が独立を成功させるために今すぐやるべきこと

ここまでの内容を踏まえ、独立開業を目指す税理士が今すぐ着手すべきことをステップで整理します。

ステップ1|自分が得意とする分野・提供したいサービスを明確にする

独立開業前に、自分がどの分野を得意とするか洗い出しましょう。それを踏まえて、どのような顧問先にどのようなサービスを提供したいのかを整理します。この内容が開業後の営業活動の軸になるのです。得意分野が明確な事務所は、顧問先への提案内容もぶれにくくなります。

ステップ2|開業資金と当面の生活費を試算し、準備する

登録関連費用や事務所・設備費用はもちろん必要です。加えて、開業後に収入が不安定になる可能性があるため生活費も含めて確保しておきましょう。貯蓄でまかなうか、日本政策金融公庫などの創業融資を利用するかも、早い段階で検討すべきです。

ステップ3|開業前から人脈づくりと情報発信を始める

開業してから顧客を探し始めることはおすすめできません。勤務時代から地域の金融機関や他士業、商工会議所などとの関係を築いておきましょう。事前準備を整えておくことで、開業後の紹介につながりやすくなります。ホームページやSNSでの情報発信も、開業前から少しずつ準備しておくとよいでしょう。

ステップ4|専門機関と連携し、自分だけで抱え込まない体制をつくる

補助金制度の案内、資金調達支援、財務分析といった専門性の高い相談が来るかもしれません。ただ、これら税理士一人ですべてに対応するのは容易ではないのです。

チャンスを活かすためには、よろず支援拠点や商工会議所、そして経営革新等支援機関推進協議会のような支援機関との連携が重要です。対応できる相談の幅を広げながら、自身の負担を抑えることができます。

よくある質問

Q. 税理士の独立開業に向いているタイミング(年齢)はありますか?

A. 一律の正解はありませんが、税理士登録に必要な実務経験に加え、顧客対応や事務所運営の経験を積んでから独立するケースが多く見られます。年齢よりも、顧問先を任せられる実務スキルと人脈が整っているかどうかが重要です。

Q. 独立開業にはいくら必要ですか?

A. 新規登録の場合は登録関連費用に加え、事務所・設備・営業活動費用が必要です。すでに所属税理士として登録済みの方は、新規登録費用ではなく変更登録の手続きになります。自宅開業か賃貸事務所かによって総額は大きく変わるため、開業後しばらくの生活費も含めて余裕をもった資金計画を立てることが重要です。

Q. 独立開業した税理士の収入はどのように考えればよいですか?

A. 厚生労働省のjob tagでは、税理士が属する職業分類の賃金統計として年収810.8万円が掲載されていますが、必ずしも税理士だけを対象とした統計ではなく、所属税理士の平均年収や開業税理士の所得を示すものでもありません。開業税理士の収入は顧問先数や顧客単価、必要経費次第で大きく変動するため、売上だけでなく費用まで含めた収支計画を立てることが重要です。

Q. 独立開業後に顧客を獲得できるか不安です。何から始めればいいですか?

A. 開業前からのホームページ・SNSでの情報発信や、地域の金融機関・他士業との人脈づくりが有効な方法の一つです。また、法令上可能な範囲で税務以外の付加価値サービスを用意しておくと、他事務所との差別化にもつながります。

まとめ

税理士の独立開業は、ワーク・ライフバランスの実現や収入アップの可能性があります。一方、営業・集客や事務所運営の全責任を自分で負うことになる選択です。開業までの流れと必要な費用を正しく把握し、開業前から広告宣伝・人脈づくりに着手しておきましょう。

税理士の独立開業に限らず、会計事務所は所属税理士へのキャリア相談や、開業直後の税理士への実務支援で、事務所全体の魅力を高めることができます。情報提供など事務所の差別化を考えているならば、全国約1,700の会計事務所が利用する経営革新等支援機関推進協議会へお気軽にご相談ください。

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