税理士は独立しても食えないといわれることがありますが、実際は税理士事務所の市場規模は約1兆4,000億円に拡大し、多くの税理士が活躍し続けています。
ただし、税理士事務所業界は税理士登録者数の増加やDX化・AIの浸透による顧問先のニーズの変化などがあり、それらに対応できる事務所が生き残れる、厳しい時代であるともいえます。
本記事では、税理士が独立しても食えないといわれる理由と実際の姿、そして顧問先から選ばれる事務所となるためのポイントについて解説します。
目次
「税理士は独立しても食えない」は“言い過ぎ”といえる4つの理由
税理士は独立しても食えない、将来性がないという意見が出ることがありますが、むしろ税理士という職業はニーズが高まっているといえます。
税理士が独立しても将来性があると考えられる理由は次の4つです。
税務業務はなくならない
税務業務におけるIT化やAIの浸透が進んでも、税理士の需要がなくなるとは考えにくいです。
なぜなら、日本は税制が複雑で改正が多く、高度な専門性をもち、正確な申告業務をおこなえる専門家が常に必要とされるためです。
また顧問先とのコミュニケーションが必要となる場面が多く、AIが完全に代替することは難しいといえます。
税理士業界は市場が成長している
税理士業界は成長市場であるといえます。
経済センサスによると、税理士事務所の市場規模は2021年時点で約1兆3,772億円となり、2012年の8,614億円から大幅に拡大しています。
最近における税理士事務所の市場規模は、国内100円ショップ業界(2023年約1兆200億円)や国内ゲーム業界(ハード装置を除く)(2023年約1兆8,580億円)と並ぶまでに拡大しています。
【参考】2021年経済センサス活動調査|e-Stat 表番号7-1
【参考】2012年経済センサス活動調査|e-Stat 表番号2-1
税理士は平均年収が高め
2023年賃金構造基本統計調査によると、税理士(公認会計士を含む)の平均年収は746.7 万円であり、税理士は一般労働者の平均年収である460万円(2023年民間給与実態統計調査)よりも高収入といえます。
さらに、税理士として独立開業した開業税理士となると、成果に応じて収入が増えます。
「税理士は独立しても食えない」といわれる主な理由
ではなぜ税理士は食えないといわれるようになったのでしょうか。
主な理由として、税理士業界の将来に対する4つの不安要素があげられます。
- 主な顧問先となる中小企業数の減少
- DX化、AIの浸透による会計業務ニーズの縮小
- 税理士数の増加
- 顧問料の低下
近年はAIの浸透によって税理士の需要が縮小するといわれており、記帳などの会計業務がAIで効率化されることで、顧問先から税理士へのニーズが変化し、従来の会計業務を中心とする税理士は淘汰される可能性があると考えられています。
税理士事務所の休廃業率が急増!苦戦する事務所と独立で成功する事務所の違い
税理士として独立しても将来性があるといえますが、顧問先が税理士へ求めるニーズの変化に対応できる税理士事務所とできない税理士事務所で、明暗がわかれる可能性が高まっています。
帝国データバンクの調査によると、2024年の休廃業・解散発生率(業種別)は税理士事務所が5.61%でワーストとなりました。
【参考】全国企業「休廃業・解散」動向調査(2024年)|帝国データバンク
税理士事務所が休廃業する理由や、うまくいかず苦戦する税理士事務所と、反対に顧問先が集まる税理士事務所の違いは次のとおりです。
2024年に税理士事務所の休廃業率が急増した理由
税理士事務所の休廃業率が上昇した主な理由は次のとおりです。
- 人手不足の長期化、採用競争の激化
- インボイスによる事務の急増
- 税務行政のDX化やクラウド会計サービスの増加などに対応できない事務所の廃業
苦戦する税理士事務所の例
上記の経営環境の中で、業績が思うように伸びていない税理士の特徴は次のとおりです。
- 定型業務や事務作業が効率化されていない
- スタッフの長時間労働が常態化している
- 顧問先に合わせたIT化・DX化に対応できていない
- 顧問料の引き上げができていない
- 顧問先が求めるサービスを提供できていない
時代に対応できる税理士事務所は拡大のチャンス
成長している税理士事務所は上記の苦戦理由に対応しています。
顧問先のニーズと人手不足に対応し、顧問先から選ばれ成長している税理士の特徴をまとめると、次の3つがあげられます。
- 顧問先のニーズに対応したサービスを推進する
- 付加価値業務を増やして収益性を高め、人材やシステムへ投資する
- IT化・DX化により生産性を向上させる
税理士は独立して食べていける!税理士事務所は幅広いサービスを提供できます
AIの浸透などにより、今後は単純な記帳などの業務は縮小すると予測されていますが、税理士は幅広いサービスを提供することで収益を確保することが可能です。税理士事務所がおこなう主なサービスは次のとおりです。
- 記帳代行
- 月次監査(巡回監査)
- 決算作業・確定申告
- 給与・社会保険料計算
- 経営コンサルティング
- 相続
- 事業承継・M&A支援
- 企業グループ再編支援
- 海外進出支援
成功する税理士事務所となるための4つのポイント
税理士として独立開業し、IT化・DX化やAIの進歩に負けない税理士となるためには次の4つの行動が必要であるといわれています。
営業に力を入れる
顧問先を獲得するための営業が大切です。税理士事務所における営業は顧問先からの紹介やマーケティングによる集客が多くみられます。
中でも税理士が顧問先を獲得する有力な手段のひとつが「紹介」です。紹介による顧問先獲得を強化する場合、紹介する顧問先などが、先方へ説明しやすいよう、事務所がおこなうサービスや特徴について、わかりやすい媒体(事務所通信やホームページなど)などの事前準備をしておくと効果的です。
効率化する
付加価値業務を拡充したいけれど、なかなか時間がとれない事務所も多いでしょう。税理士事務所における生産性向上の主な取り組みは次のとおりです。
- IT化による定型業務のシステム化
- オンライン月次監査による移動時間削減
- チャットツールやタスク管理アプリの導入により事務所内の会議を削減
- スタッフ向け研修は事務所外の企業が提供するサービスを活用
付加価値業務を拡充する
定型業務を削減することで生まれた時間は、より付加価値が高いサービスの提供へあてることがおすすめです。
付加価値業務は時間あたり単価が高いことが多く、顧問先のニーズにも合致しています。また「DX化やAIの進歩に対抗できる」「スタッフがやりがいを感じやすい」など多くのメリットがあります。
厚生労働省が公開しているデータによると、個人または法人向けのコンサル業務をおこなっている税理士の割合は61.1%です。
また、中小企業庁の調査結果では、認定経営革新等支援機関の資格をもつ税理士事務所のうち、年2回(半年間に1回)以上の頻度で支援業務をおこなっている事務所の割合は58.2%にとどまります。
同業事務所が手掛けていない付加価値業務を推進することで、事務所の差別化につなげることが可能です。
所内研修を充実させる
事務所の特徴となるサービスを推進するためには、スタッフのスキルアップが欠かせません。
忙しくともスタッフの成長を促すためには、動画研修など、スタッフが効率的に学ぶことができる研修方法を導入しましょう。例えば「経営革新等支援機関推進協議会」では、月額基本料金の範囲内で、監査担当者育成や補助金・助成金の最新情報の提供などの動画研修を受講し放題のサブスクサービスを提供しています。
税理士は独立しても楽しい!といえるために経営革新等支援機関推進協議会がサポート
税理士は成功すれば年収5,000万円以上を得ることも可能であり、独立しても食えない職業とはいえません。
ただし顧問先におけるニーズの変化や多様化は、今後も続くと予測されており、対応できない税理士は独立しても食えない状況となる可能性があります。
食えない税理士とならないためには、税務・会計業務に加えて付加価値が高いサービスを拡充することが求められます。
税務・会計業務だけではない、顧問先から選ばれる税理士事務所となるために、経営革新等支援機関推進協議会がサポートします。
税理士事務所のサービス拡充と差別化などに悩みごとがある事務所経営者様は、全国約1,700事務所が参加する経営革新等支援機関推進協議会へお気軽にご相談ください。
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