会計事務所支援ブログ

インボイス制度開始に伴い、値上げの準備はできていますか?

インボイス制度が2023年10月1日から始まります。

インボイス制度における対応は、顧問先におけるコスト増加だけでなく、事務所においても負担が増加することとなります。

本記事では、インボイス制度における対応と経費の増加を転嫁する顧問料の引き上げについて解説します。

顧問先へのインボイス制度の事前説明

免税事業者である顧問先だけでなく、事務所においても事務負担やコストの増加など、さまざまな負担があります。

税制改正に伴う事務の増加は、顧問料の引き上げ交渉をおこなう機会です。

顧問先の理解を得るためにも、まず、顧問先がインボイス制度について正しく認識しているかを確認しましょう。

顧問先が免税事業者でインボイスへ未対応の場合は、あわせてインボイス制度における対応を相談します。

課税事業者か免税事業者かの判断を確認する

適格請求書発行事業者の登録期限は、2023年9月まで延長されています。

顧問先が免税事業者の場合、今後の対応は2つです。

  1. 免税事業者を継続する
  2. 課税事業者へ変更する

免税事業者を継続する場合は、課税事業者への経過措置を説明し、検討します。

課税事業者への経過措置を説明する

免税事業者から課税事業者へ転換した小規模事業者については、『2割特例』と呼ばれる経過措置があります。

2割特例の概要は次のとおりです。

  • 免税事業者から課税事業者選択届出書を提出のうえ、インボイス発行事業者として登録する
  • 基準期間の売上高が1,000万円以下である
  • 2023年10月1日から2026年9月30日までを含む課税期間について、納税額を売上税額の20%とする

【参考】インボイス制度の改正案について|財務省

課税事業者の注意点を説明する

上記の2割特例を想定して課税事業者となる場合、次の2点に注意します。

  1. インボイスの登録をおこなった後に、課税売上高が1,000万円以下となった場合でも免税事業者とはなりません。
  2. インボイス制度施行(2023年10月1日)前に、免税事業者が課税事業者選択届出書とインボイス登録をおこない課税事業者となった場合、2023年分の申告については、2割特例は非適用となります。この場合は、課税事業者選択不適用届出書を提出することで、2023年9月までは免税となり、2023年10月から12月の分は2割特例が適用できます。
  3. 簡易課税選択届出書を提出している場合は、2年間の継続適用があるため、免税事業者に戻ることができません。確定申告時に簡易課税と2割特例を選択します。

【引用】インボイス制度の改正案について|財務省

業務フローを見直しましょう

インボイス対応にあわせて顧問先での経理システムの変更や切り替え、クラウド型への移行も進んでいます。

そのため、事務所でも現在の業務を見直しましょう。

見直しの着眼点は、「定型業務の効率化」と「税務・会計以外の業務の強化」です。

例えば次の見直しがあります。

  • 記帳代行業務を縮小し、顧問先が自ら仕訳入力をおこなう
  • 記帳のチェック体制を見直す
  • 巡回による資料の受け渡しを電子化する
  • 事務所の定型業務を減らし、付加価値が高い業務を強化する余裕をつくる

顧問先における経理システムの更新は補助金の活用を提案します。

実際に、小規模事業者持続化補助金やIT導入補助金が活用できます。

経理システムだけでなく、勤怠など労務管理のシステム化によるバックオフィス業務の効率化の提案にも繋がります。

補助金申請への支援は事務所のサービスの拡充となるため、積極的に提案しましょう。

値上げする場合と値上げしない場合の対応方法

顧問料の値上げは慎重におこないます。

安易な値上げ交渉は、顧問先との関係を悪化させる危険性もありため工夫が必要です。

また値上げをしない場合も、経費の増加を吸収できるサービス水準への見直しをおこないます。

値上げする場合の対処方法

顧問料を値上げする場合は、顧問先の納得感が重要です。

事務所の現状の作業内容とコスト、インボイスにおける対応などで事務所の業務量が増えていることを丁寧に説明します。

値上げの場合のアピールのポイントは次のとおりです。

  • 現状のサービス水準を維持するために必要
  • より付加価値の高いサービスの提供が可能

補助金支援などの本業支援業務の提案と組み合わせて交渉します。

顧問料の値上げ交渉は、値上げ時期までの期間に余裕をもって交渉しましょう。

短期間での値上げは通告のニュアンスとして伝わり、関係性が悪化することがあります。

値上げしない場合の対処方法

顧問料の値上げに応じてもらえない顧問先もあります。

また、事務所の方針として顧問料を引き上げしないことも考えられます。

現在の業務を維持するコストの上昇を賄えない場合は、事務所の業務の分担を変える必要があります。

具体的には次のような内容です。

  • 領収書の整理、仕訳の入力を顧問先でおこなう
  • 資料の受け渡しを電子化する
  • 巡回の頻度を見直す

事務所の経費削減は、書類の受け渡しなど業務の見直しとセットで顧問先と協議します。

顧問先との交渉のポイントについて

顧問先への顧問料の引き上げ交渉は話題にしづらい内容ですが、法改正は話を切り出すきっかけとなります。

顧問料の引き上げ交渉で注意するポイントは次のとおりです。

顧問先との交渉のポイント
  • 料金の引き上げは、サービスの拡充を伴うことをアピールする

単なる引上げではなく、補助金申請や資金繰り改善提案などサービスの充実を伴うことをアピールします。

  • 料金を抑えて、一定のサービスを提供する方法も提示する

顧問料を抑えるニーズに対しては、税務・会計業務を主とする従来型のサービスの継続を説明する。

  • 値上げまでの期間には余裕をもって交渉する

引き上げまでは期間の余裕をもって説明する。突然の値上げは恣意的な心証を抱く可能性があります。

事務所のコスト増加を吸収する顧問料水準を納得してもらうためには、本業支援業務を中心にサービスの拡充をアピールすることで、理解を得やすくなります。

インボイス制度対応のためにスタッフ教育が必須

インボイス制度における対応をすすめるためには制度に関する知識の習得など、事務所スタッフへの教育が必要です。

巡回などの定型業務に加えて、本業支援業務を強化するためにも、効率的な教育訓練をおこないましょう。

事務所スタッフのレベルアップは、経営革新等支援機関推進協議会をご利用ください。

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まとめ

インボイス対応は顧問先における値上げ交渉とともに、事務所の顧問料の引き上げのきっかけでもあります。

顧問料の引き上げは話題にしづらいものの、インボイス制度における対応は税理士や会計士へ相談する機会が多くなっています。

事務所の業務の見直しと顧問先への新たなサービス提案の好機です。

税務・会計だけではない事務所として差別化するために、経営革新等支援機関推進協議会のご利用ください。

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経営革新等支援機関推進協議会
経営革新等支援機関推進協議会は、株式会社エフアンドエムが運営する会計事務所向けの支援団体です。2014年4月に設立し現在では、全国1700以上の会計事務所が正会員として参画しており、中小企業支援制度についての勉強会・システム提供を通じて全面的にバックアップしている。