インボイス導入後、顧問先において不慣れな経理によりトラブルが発生し、事務がストップする可能性があるため、顧問税理士はトラブルと解決策を準備しておく必要があります。
本記事では、インボイス導入後に想定される記帳処理におけるトラブルとその回避策を解説します。
記帳処理で想定される6大トラブル
インボイス制度導入後、顧問先が記帳処理において戸惑う可能性が高い6点は次のとおりです。
インボイス番号がわかる書類がバラバラ
インボイスとして認められる書類は、見積書と納品書など複数の書類で構成される場合があります。
取引先のインボイス番号の確認に加えて、取引先によっては複数の書類を確認する必要があることを顧問先へ説明しておきましょう。
口座振替の処理が決まっていない
家賃や顧問報酬など口座振替による支払いについてもインボイスが必要です。
口座振替により継続的に支払う取引先については、一定期間の支払いをまとめたインボイスを受領する方法、原契約書を確認のインボイスとしての要件を充たす通知書を受領し、原契約書とともに保存する必要があります。
【参考】お問い合わせの多いご質問|国税庁
クレジットカードの明細では処理できない
クレジットカード会社が発行する利用明細はインボイスとして認められていません。
このためクレジットカードによる支払いについても領収書をもらうよう、顧問先の社内での取り扱いを変更してもらうことが必要です。あわせて3万円未満の支払いについても領収書が必要であることを顧問先に伝えておきましょう。
また、クレジットカードの口座振替日に起票している顧問先については、レシート受領時に起票し未払金処理をおこなうやり方に変更してもらいましょう。
低頻度の取引先に関する対応が決まっていない
取引頻度が年1回などの取引先については、顧問先がインボイス番号の確認などを失念している可能性があるため、顧問先に確認してもらいましょう。
また事務所側においても、申告業務のみを受注する年1契約などの非月次先については、資料の回収時期などを早めに検討しておきましょう。
年度の途中から処理が変わる
免税事業者から課税事業者となるなど、会計年度の途中から事務を変更する顧問先があります。
会計年度の途中であっても10月1日からの処理が異なることを顧問先に理解してもらうことが必要です。
顧問先から一度に多量の資料が送られる
会計事務所の繁忙期に、一度に大量の請求書や領収書を回収し、記帳処理する状況となる可能性があります。
顧問先からの資料の回収と確認をできるだけ早め、遅れが少ない状態を維持しておくことが繁忙期対策として有効です。
記帳処理におけるトラブル回避術7選
上記のような記帳トラブルにおける回避方法として、次の7つがあげられます。
顧問先との業務分担
顧問先がおこなう作業の範囲、会計事務所として確認する作業の範囲を、顧問先とよく話し合っておきましょう。例えば、インボイス発行事業者の登録番号の確認と支払先ごとにインボイスとして認められる資料がなにかを確認する作業は顧問先がおこなうなどです。
新たに回収が必要となる書類の明示
インボイス制度開始後、新たに事務所で確認が必要となる書類を顧問先に明示しておきましょう。具体的にはクレジットカード支払い時のレシート、3万円未満の交通費以外の領収書などです。
顧問先によっては、インボイス制度開始後に事務所へ提出する資料が増えることに難色を示す可能性があるためです。
事務所側においても、確認が必要な書類を顧問先ごとにリスト化しておくことがおすすめです。
取引先のインボイス番号の共有
顧問先が収集した取引先のインボイス番号については、事務所と共有してもらいましょう。
書類の早期回収と回収状況の事務所内での見える化
インボイス導入直後の顧問先が不慣れな中で、会計事務所が繁忙期を迎えます。顧問先の決算期前に大量の書類を確認する事態を避けるため、なるべく早く資料を提出してもらいましょう。
顧問先ごとに必要となる資料を明確化し、事務所内で共有しておくことで、担当者が不在であってもほかのスタッフが円滑に対応することができます。
記帳処理のルールを明確化
消費税の計算方法の統一化による端数処理、複雑化した税区分などは、事前に顧問先と相談し処理ルールを決めておきましょう。
連絡がつきにくい顧問先への対策
電話連絡が付きにくい顧問先もあります。顧問先への連絡方法として、メールやSNSなど複数の連絡手段を確認しておきましょう。
事務所における業務フローの見直し
インボイス制度の導入に伴い増大する事務作業を効率的に処理するためには、事務所の業務フローを見直しすることがあります。
事務所の効率化としては次の例があげられます。
- 顧問先ごとに毎月必要となる書類をリスト化し、回収状況を共有
担当者が多忙あるいは不在の場合であっても、別のスタッフが顧問先への回収依頼や顧問先からの問い合わせに対応することができます。
- 入力作業の細分化
記帳代行業務における入力作業を細分化し、担当者を決める方法です。例えば担当者Aは売上高の入力のみをおこなうなどのイメージです。
- 細かな部分もルール化
消費税の端数処理ルールなどを統一化し、入力時に悩まないようにしましょう。
- 外注サービスの活用
紙の領収書が多い、自社での記帳が難しい顧問先などについては、会計事務所向けの記帳代行サービスの活用が検討できます。さまざまなサービスがある中で、スキャン不要、紙の資料を送るだけで記帳業務が月額固定費用で委託できるサービス「おくるダケ記帳」も登場しています。事務所の作業を大幅に軽減することが可能となります。
まとめ
インボイス制度導入直後は、事務処理の変更に不慣れな顧問先における、一見小さな困りごとが事務進行をストップさせてしまう可能性があります。顧問税理士から顧問先に対しては予測されるトラブルと解消法を事前に説明しておきましょう。
会計事務所が人手不足と繁忙期を迎える中で、顧問先におけるインボイス対応のサポートを求められる会計事務所は業務の効率を向上させる必要があります。
会計事務所の生産性向上は、経営革新等支援機関推進協議会がサポートします。
協議会は、インボイス対応で事務量が増大する記帳業務を委託できる『おくるダケ記帳』をはじめ、事務所の効率化と差別化をサポートするサービスを提供しており、全国で1,715事務所が利用しています。
会計事務所経営のお悩み事は協議会へお気軽にご相談ください。