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【令和6年度 税制改正】税理士必見!注目の改正点と実務におけるポイントを徹底解説

【令和6年度 税制改正】税理士必見!注目の改正点と実務におけるポイントを徹底解説

令和5年12月14日に税制改正大綱が発表されました。
本改正点について把握することで、顧問先へのアクションのきっかけとなります。
また、顧問先へ提案することで、会計事務所への信頼性を高めることもできるでしょう。

この記事では、事業計画の策定や補助金・融資などの支援も提供しながら、日経新聞などで執筆・取材実績をもつ、アンパサンド税理士法人の山田 典正氏による、令和6年度税制改正の注目点と実務におけるポイントを解説します。

令和6年度税制改正大綱の結果と重要度一覧

令和6年度税制改正大綱では、「定額減税」 「賃上げ促進税制」 「交際費課税」 「外形標準課税」 などが注目を集めました。

講師である山田氏による、本改正内容の重要度は下記の通りです。
重要度が高い順に◎、〇、△、×と記載

<令和6年度改正で決定した項目>

項目重要度
定額減税
子育て世代等の住宅ローン控除の拡充 (先行)
子育て世代等のリフォーム減税の拡充 (先行)
住宅取得等資金贈与非課税制度の延長
住宅・土地税制の優遇措置の延長
事業継承税制の特例措置の拡充
賃上げ税制の強化
交際費課税の特例措置の拡充
中小企業者等の少額減価償却資産特例の延長
中小企業事業再編投資損失準備金制度の拡充
戦略分野国内生産促進税制の創設×
イノベーションボックス税制の創設
外形標準課税の対象拡大
自販機特例の帳簿記載要件の緩和
外国人旅行者向け免税制度の見直し(先行)

<令和7年度改正に先送りされた項目>

項目重要度
子育て支援に関する政策税制
・高校生の扶養控除の縮小(案)
・ひとり親控除の拡充(案)
・子育て世帯の生命保険料控除の拡充 (案)
・令和7年以降の住宅ローン控除、リフォーム減税
外国人旅行者向け免税制度の抜本的見直し
・出国時に免税販売が成立する制度

定額減税

納税者本人と配偶者を含めた扶養家族1人につき、令和6年分の所得税3万円、令和6年度分の住民税1万円の定額減税がおこなわれます。

適用は納税者本人の合計所得金額が1805万円以下の場合です。
年間の給料が2000万円で子どもがいないケースがちょうど該当しますが、所得金額調整控除などの適用があると、合計所得金額が1805万円を下回るため注意が必要です。
一方で、不動産の譲渡がある場合や、損益通算するために特定口座の確定申告をした場合、合計所得金額に含まれてしまうため1805万円を上回ってしまうことも想定されます。

減税される所得税3万円と住民税1万円については、納税者・配偶者・扶養家族(居住者)の1人当たりの金額であるため、人数×4万円の金額が減税されます。

例:
納税者1人、配偶者1人、扶養家族2人
(全て同一生計であり、居住者である)
4人×4万円=16万円
ただし、配偶者と扶養家族は合計所得金額48万円(年間給料:103万円以下)の場合が対象です。

会社員の減税イメージは下記の通りです。
所得税:
令和6年6月の源泉所得税から控除される
(引ききれない分は7月以降に順次減税される)
扶養の異動があった場合は、年末調整や確定申告のタイミングで再度計算し直しということが想定されます。
住民税:
6月の特別徴収はなし
減税後の年税額を11等分して、令和6年7月から令和7年5月に天引きされる

実務上のポイントとしては下記2点です。

①システム改修が必要なクライアントには、6月に向けてシステム導入などを検討する

所得税は「令和6年」、住民税は「令和5年」の合計所得金額をベースに判定をおこなうため、所得税と住民税で根拠となる金額が異なる点に注意する

年金受給者は、基本的には会社員と同様ですが、住民税の控除が10月からとなります。
事業所得者の減税イメージは、下記の通りです。
所得税:
第1期分予定納税額(7月)から減税され、配偶者・扶養家族分を含めて確定申告で再計算
予定納税額の減税承認申請をおこなうことで、配偶者・扶養家族分の減税も可能
住民税:
第1期分(6月)から減税される

子育て世代等の住宅ローン控除の拡充 (先行)

子育て世帯・若い夫婦世帯における住宅ローン控除の借入限度額の上限が令和6年に限り拡充されます。
実務上のポイントとしては下記2点です。
①19歳未満の扶養する子どもがいない40歳以上の夫婦や単身者は借入限度額の改正の対象外である
②認定住宅等以外の一般住宅については、新築の場合、住宅ローン控除自体が0円となるため注意する

子育て世代等のリフォーム減税の拡充 (先行)

既存住宅のリフォーム減税が令和7年12月31日まで2年延長されます。
また、居住環境の改善の観点から、 子育てに対応した住宅へのリフォームが追加されます。
②は令和6年4月1日から令和6年12月31日までの間に居住の用に供した場合に適用です。
実務上のポイントとしては、合計所得金額が住宅ローン控除などと同様に2,000万円に引き下げられる点です。

住宅取得資金贈与非課税制度の延長

直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度が令和8年12月31日まで3年延長されます。

事業継承税制の確認申請期限の延長

事業承継税制の特例承認計画の提出期限が、 法人版・個人版ともに令和8年3月31日まで2年延長されます。

しかし適用期限の延長はされておらず、事業承継税制の適用を受けるためには、贈与等の時点で承継者が役員に就任して3年以上経っている必要があるため、クライアントに対しては、早めの案内や検討をする必要があります。

当協議会では、会員様向けに特例承認計画のサンプルの用意や計画の添削を実施しています。

賃上げ促進税制の強化

賃上げ促進税制が強化され3年延長されます。
さらに、人材投資・働きやすい職場づくりへのインセンティブも付与することで、 働き方全般にプラスとなる制度となります。
【適用時期】 令和6年4月1日以後に開始する事業年度

本税制の強化において、中堅企業の定義が追加されるため注意が必要です。
中小企業・個人事業者:資本金1億円以下
中堅企業:資本金1億円超え、従業員数2,000人以下
(ただし、「その法人」と「その法人との間にその法人による支配関係がある法人」の従業員数が合計1万人超の場合は大企業となります)
大企業:資本金1億円超え、従業員数2,000人超え

今回、女性活躍や子育て支援における控除率が新設されました。
これらの支援をおこなっている場合は、給与の増加分に対する控除率5%が上乗せされます。
すべての企業で適用されるものの、各企業で要件が異なるため確認が必須です。

くるみん(子育てサポート企業として厚生労働省が認定)

 中小企業中堅企業大企業
トライくるみん
くるみん
プラチナくるみん

えるぼし(女性活躍を促進する優良企業として厚生労働大臣が認定)

 中小企業中堅企業大企業
えるぼし1段階
えるぼし2段階
えるぼし3段階
プラチナえるぼし

教育訓練においては、一部要件が緩和されたものの、教育訓練費が当期の雇用者全体の給与金額0.05%以上という要件が追加されたため、注意が必要です。

中堅企業と大企業においては、賃上げの要件が厳しくなるとともに、段階分けが細かくなりました。
中堅企業(新設)
賃上げ4%以上:25%
賃上げ3%以上:10%
大企業
賃上げ7%以上:25%
賃上げ5%以上:20%
賃上げ4%以上:15%
賃上げ3%以上:10%

中小企業については、繰越税額控除という制度が新設され、控除上限である法人税額×20%に達し控除しきれない場合は、5年間の繰越が可能となりました。
(ただし、繰税税額控除をする年度は、雇用者全体の給与総額の前期比増加が要件となります。)
また、繰越税額控除の新設に伴い、赤字の年度でも賃上げ促進税制への対応が必要となる点に注意が必要です。

交際費課税の特例措置の拡充

交際費等の範囲から除外される飲食費の金額基準が1人当たり1万円以下(現行:5千円以下)に拡充されます。
※令和6年4月1日以後に支出する飲食費について適用です。

実務上のポイントとしては下記2点です。

①3月決算以外の企業の場合は、新旧の基準が混在する年度となることに注意する
②クライアントの経費精算ルールを確認し、5,000円を基準としてルールが定められている場合は、ルールの見直しを提案する

また、次の特例措置が3年延長されます。
①交際費を年800万円まで全額損金算入できる中小企業の特例
②接待飲食費の50%を損金算入できる特例

中小企業者等の少額減価償却資産特例の延長

中小企業者等が30万円未満の少額の減価償却資産を取得した場合の取得価額の損金算入特例について、その適用期限が令和8年3月31日まで2年延長されます。

中小企業事業再編投資損失準備金制度の拡充

現行制度を見直した上で、 令和9年3月31日まで3年延長されます。

さらに、複数回のM&Aで最大 100% 損金算入できる新しい制度が追加されます。

中小企業事業再編投資損失準備金制度とは

経営力向上計画の認定を受けた企業が、株式取得によってM&Aを実施する場合に、株式等の取得価額として計上する金額(取得価額、手数料等)の一定割合の金額を準備金として積み立てた時は、その事業年度において損金算入できる制度です。

【現行制度と新制度の違い】

 現行制度新制度
根拠法中小企業等経営強化法産業競争力強化法
出資額要件10億円以下1億円以上100億円以下
積立て上限株式取得価額の70%1回目:70%
2回目:90%
3回目以降:100%
据置期間5年間10年間

また、除外要件が追加され、一定の表明保証保険契約締結時は対象外となっています。

イノベーションボックス税制の創設

特許権やAI分野のソフトウェアに係る著作権などの知的財産から生じる所得を優遇する税制です。

国内への譲渡所得と国内外からのライセンス所得が対象所得であり、所得の30%が控除されます。

外形標準課税の対象拡大

「前年度に外形標準課税の対象であった法人」で、 当年度に資本金1億円以下、かつ、資本金と資本剰余金の合計額が10億円超となるものは、外形標準課税の対象に追加されます。

【適用時期】 令和7年4月1日以後に開始する事業年度

大規模な法人の100%子法人等のうち、資本金1億円以下かつ資本金と資本剰余金の合計額が2億円超となるものは、 外形標準課税の対象に追加されます。

【適用時期】令和8年4月1日以後に開始する事業年度

自販機特例の帳簿記載要件の緩和

自動販売機や自動サービス機による課税仕入れ(自販機特例)、使用の際に証票が回収される課税仕入れ(回収特例)で3万円未満の取引は、帳簿への 「住所等」の記載が不要となります。
※令和5年10月1日以後のものも、運用上、 改めて記載を求めません。

外国人旅行者向け免税制度の見直し (先行)

免税購入品であることを知りながら仕入れた場合には、その仕入税額控除を認めないこととされます。
【適用時期】令和6年4月1日以後の課税仕入れ

まとめ

本記事では、令和6年度税制改正大綱の内容のうち、注目すべき改正点や実務のポイントについて解説しました。
山田氏は、クライアントの状況を理解した上で、今回の改正内容を受けて提案やアドバイスをおこなう必要があると述べています。
適切な提案やアドバイスは、顧問先からの信頼につながるため、この機会を逃さずに積極的な行動をとることをおすすめします。

当協議会では、会員様向けに、特例承認計画の添削や情報提供用のチラシひな形、スタッフ育成などのサポートをおこなっております。
会計事務所の運営に悩んでいる場合には、経営革新等支援機関推進協議会の会員登録もおすすめです。

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