2025年度予算の概算要求が各省庁から公開されました。経済産業省からの2025年度概算要求においては事業承継税制の見直しや経営強化税制の適用期限延長などが盛り込まれています。
本記事では、2025年度概算要求のうち中小企業向け政策のポイントについて紹介します。
目次
経済産業省の2025年度概算要求の概要(中小企業向け)
経済産業省が発表した2025年度(令和7年度)概算要求は総額で2兆3,596億円、前年度の1兆9,072億円に比べ約4,500億円の増加です。全体的な特徴としては、GX対策推進費として9,818億円が計上されるなど、GXの推進やAI・半導体分野における投資に対する支援が重視されています。
中小企業向けの支援として1,300億円が計上されており、2024年度の1,082億円から約20%、218億円の増額要求となっています。
2025年度概算要求のうち中小企業対策としてあげられている5つの取り組みについて紹介します。
- 物価高、人手不足等の厳しい経営環境への対応
- 環境変化に挑戦する中小企業・小規模事業者等の成長支援
- 小規模事業者支援、社会課題解決をはじめとした地域における取組への支援等
- 事業承継、再編等を通じた変革の推進
- 経営支援、伴走支援の推進
以下、【引用】2025年度中小企業・小規模事業者・地域経済関係 概算要求等ポイント|中小企業庁
物価高・人手不足

上記のうち注目しておきたいポイントは次の3つです。
- 販売価格転嫁支援の継続
- 省力化投資補助金についての当初予算計上はない
- 中堅・中小大規模成長投資補助金に関する計上は20億円のみ
成長支援

上記のうち注目しておきたいポイントは次の5つです。
- 事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金、小企業事業者持続化補助金について、2025年度当初予算としての計上はない
- 中小企業経営強化税制の延長・拡充(詳細は以下で解説します)
- 地域未来投資促進税制の延長・拡充
- 中小企業投資促進税制の延長(詳細は以下で解説します)
- 中小企業の設備投資に伴う固定資産税の特例の延長(詳細は以下で解説します)
小規模事業者・地域課題の解決

上記のうち注目しておきたいポイントは次の2つです。
- 地方公共団体による小規模事業者の販路開拓などの支援
- 商店街等活性化支援事業による専門家の伴走支援
事業承継・再編

上記のうち注目しておきたいポイントは次の2つです。
- 事業承継税制の特例措置における役員就任要件の見直し等(詳細は以下で解説します)
- 中小企業活性化・事業承継総合支援事業による事業再生と事業承継への支援継続
経営支援・伴走支援

上記のうち注目しておきたいポイントは次の2つです。
- 中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業によるよろず支援拠点の整備
- 地域の人事部支援事業による人材の獲得・育成における支援
経営強化税制の拡充・延長(所得税・法人税・法人住民税・事業税)
中小企業経営強化税制の適用期限について、現行の2025年3月31日から2027年3月31日まで2年間延長することが盛り込まれました。同時に売上高100億円超の企業を目指す中小企業に対する上乗せ措置の創設などが示されています。
中小企業経営強化税制とは、経営力向上計画に認定を条件として、対象となる設備について即時償却または取得価額の最大10%を税額控除できる制度であり、次の4類型があります。
- A類型:工業会などが証明書を発行する生産性向上設備の導入
- B類型:税理士または公認会計士が確認書を発行する収益力強化設備の導入
- C類型:経営革新等支援機関が確認書を発行するデジタル化設備の導入
- D類型:税理士または公認会計士が確認書を発行する経営資源集約化設備の導入
【参考】中小企業経営強化税制|中小企業庁
法人版・個人版事業承継税制の見直し(相続税・贈与税)
法人版・個人版事業承継税制について、後継者の役員就任要件の見直しが盛り込まれました。事業承継税制の特例措置を利用するためには、贈与による自社株式の場合、後継者の取締役就任が事業承継適用期限である2027年12月31日の3年前となる2024年12月31日までとなるためです。
事業承継税制は、事業承継時における相続税・贈与税の負担を実質ゼロとする時限措置です。この措置を受けるためには次の要件を満たすことが必要であるため、顧問先における事業承継のスケジュールを確認しておきましょう。
法人版事業承継税制 | 個人版事業承継税制 | |
承継計画の確認申請 | 2026年3月31日まで | 2026年3月31日まで |
事業承継の実施 | 2027年12月31日まで | 2028年12月31日まで |
認定申請 | 申告期限の2か月前まで | 申告期限の2か月前まで |
後継者の役員就任 | (現行) 2024年12月31日まで |
中小企業投資促進税制の延長(所得税・法人税・法人住民税・事業税)
中小企業投資促進税制について、適用期限を2025年3月31日から2027年3月31日まで2年間延長することが盛り込まれました。
中小企業投資促進税制は機械装置や工具、貨物自動車などを取得した場合に、取得価額の30%の特別償却または7%の税額控除を適用できる制度です。適用範囲が広い税制優遇制度であるため、今後、投資を検討している顧問先にとっては朗報といえます。
【参考】中小企業投資促進税制|中小企業庁
中小企業者等の法人税率の特例の延長(法人税・法人住民税)
中小企業の法人税率について、年800万円以下の所得にかかる税率を19%から15%へ軽減する措置の適用期限が2027年3月31日までとする延長が盛り込まれました。
生産性向上・賃上げ設備に関する固定資産税の特例措置の延長(固定資産税)
先端設備等導入計画の認定を受けた設備投資について、固定資産税を軽減する特例措置の適用対象となる取得期限を2027年3月31日まで2年間延長することが盛り込まれました。
顧問先への発信は協議会のサービスがサポートします
概算要求は今後の税制や補助金制度の改正の方向性が示されるため、顧問先に対する情報発信の素材として有効です。
顧問先への情報発信ツールを作成するためには事務が負担となるため「経営革新等支援機関推進協議会」などの支援サービスを利用することがおすすめです。
顧問先への事務所通信や補助金・税制の改正情報の発信、申請書類の書き方のアドバイスなど会計事務所における顧問先開拓と付加価値サービス拡充のご相談は、「経営革新等支援機関推進協議会」へお気軽にご連絡ください。