会計事務所支援ブログ

【令和5年度補正予算】税理士が顧問先へ説明したい補助金・支援策

【令和5年度補正予算】税理士が顧問先へ説明したい補助金・支援策

令和5年度補正予算が成立し、令和6年度の新しい中小企業支援策が発表され始めました。今回は補助金の新設や経営者の間で有名な補助金の大規模改正がなされており、顧問先への提案の好機です。

本記事では税理士が顧問先へ紹介したい補助金・支援策について解説します。

賃上げ・人手不足対応・生産性向上を支援する令和5年度補正予算が成立

令和5年補正予算が成立しました。今回の補正予算は『地方・中堅・中小企業を含めた持続的賃上げ、所得向上と地方の成長』がキーワードとなっています。

今回の補正予算成立後、例えば『IT導入補助金2024』の制度概要が発表されるなど、経営者の前向きな投資を後押しする制度が発表されていきます。

経営者の間で関心が強い補助金の改正情報をいち早く顧問先へ説明することで、事務所のサービスを拡大することにつなげます。

【引用】経済産業省関係令和5年度補正予算の概要|経済産業省

人手不足の顧問先を支援『中小企業省力化投資事業(補助金)』

中小企業省力化投資補助枠(カタログ型)が講じられる予定です。この補助金は人手不足対策として導入する省人化投資について、カタログから簡便に選択できる方式の補助金となる予定です。

補助率は2分の1、補助上限額は最大1,500万円とされています。

中小企業省力化投資事業概要

【引用】令和5年度補正予算の事業概要(PR資料)|経済産業省

補助対象のイメージとして、宿泊・飲食業における自動清掃ロボットの導入などがあげられています。

省力化投資の支援

【引用】総合経済対策 政策ファイル|内閣府

新工場建設など大型投資に踏み切る顧問先へ『大規模成長投資補助金』

大規模成長投資補助金とは人手不足に対応するための省力化による労働生産性の向上と事業規模の拡大を図るために行う工場などの拠点新設や大規模な設備投資に対する補助金です。補助率は3分の1、補助上限額は50億円です。補助下限額が10億円とされているため、34億円以上の大規模投資が対象です。

大規模成長投資補助金 事業スキーム

【引用】令和5年度補正予算の事業概要(PR資料)|経済産業省

補助対象のイメージとして、最新設備を導入した物流センターなどがあげられます。

大規模成長投資の支援

【引用】総合経済対策 政策ファイル|内閣府

『ものづくり補助金』の改正点

ものづくり補助金は補助枠などが大きく変更されます。通常枠に代えて、新たに省力化投資(オーダーメイド)枠が新設されるなどの改正がなされています。
改正前後での制度概要は次のとおりです。

ものづくり補助金の旧制度概要

補助枠補助上限額補助率
通常枠750万円から1,250万円2分の1
(小規模・再生事業者は3分の2)
回復型賃上げ・雇用拡大枠750万円から1,250万円3分の2
デジタル枠750万円から1,250万円3分の2
グリーン枠エントリー
750万円から1,250万円
スタンダード
1,000万円から2,000万円
アドバンス
2,000万円から4,000万円
3分の2
グローバル市場開拓枠3,000万円2分の1
(小規模事業者は3分の2)
大幅賃上げの特例従業員5名以下
100万円以内
従業員6名から21名
250万円以内
従業員21名以上
1,000万円以内
各補助枠と同じ

【引用】ものづくり・商業・サービス補助金(2023年7月28日更新版)|ものづくり補助金事務局

令和5年度補正予算後のものづくり補助金の制度概要は次のとおりです。

補助枠補助上限額補助率
省力化投資(オーダーメイド)枠750万円から8,000万円
(大幅賃上げ特例の適用後
1,000万円から1億円)
中小企業:
1,500万円まで2分の1
1,500万円超の部分は3分の1

小規模・再生事業者:
3分の2
製品・サービス高付加価値化枠
(通常類型)
750万円から1,250万円
(大幅賃上げ特例の適用後
850万円から2,250万円)
中小企業:
2分の1
(コロナ回復特例適用時は3分の2)
小規模・再生事業者:
3分の2
製品・サービス高付加価値化枠
(成長分野進出類型
(DX・GX))
1,000万円から2,500万円
(大幅賃上げ特例の適用後
1,100万円から3,500万円)
3分の2
グローバル枠3,000万円
(大幅賃上げ特例の適用後 4,000万円)
中小企業: 2分の1
小規模事業者: 3分の2

【引用】令和5年度補正予算の事業概要(PR資料)|経済産業省

『持続化補助金』『IT導入補助金』は大きな変更はない見込み

上記以外の有名な補助金である持続化補助金、IT導入補助金については大きな変更は予定されていません。

持続化補助金の概要

小規模事業者持続化補助金は2023年度から変更はなく、補助率は最大3分の2(赤字の場合は4分の3)、補助上限額は250万円の予定です。

持続化補助金の概要

【引用】令和5年度補正予算の事業概要(PR資料)|経済産業省

IT導入補助金の概要

IT導入補助金の新たな制度概要が発表されました。会計ソフトだけでなく、PCやタブレットなどのハードウェアについても対象となる点は変更ありません。主な改正点は次の2点です。

  • デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)がインボイス枠(電子取引類型、インボイス対応類型)へと名称を変更
  • 補助率は、デジタル化基盤導入類型の最大4分の3が、インボイス枠(インボイス対応類型)では5分の4へと引き上げ
IT導入補助金の概要

【引用】「IT導入補助金」でIT導入・DXによる生産性向上を支援!(2023年12月時点版)|IT導入補助金2023後期事務局

政府系金融機関(日本政策金融公庫など)による金融支援策

補助金以外の支援策である公的融資制度については大きな変更点はなく、2023年の支援策が継続される見通しです。ただし予算措置であるため、各支援策が期限となる毎年度末までに余裕をもったスケジュールで顧問先へ提案しましょう。

セーフティネット貸付制度の金利引き下げは継続

日本政策金融公庫などの政府系金融機関が取扱っているセーフティネット貸付制度について、コスト上昇による利益率低下などの影響を受けている顧問先が対象となる利率引き下げ(基準利率-0.40%)については継続される見通しです。

新型コロナ対策資本性劣後ローンは2024年3月まで!?

コロナ対応の金融支援策として日本政策金融公庫で取り扱っている新型コロナ対策資本性劣後ローンについては、取扱期限(現状は2024年3月末日まで)が延長されます。

新型コロナ対策資本性劣後ローンは、最終期限まで元金返済がない、金融検査上は一定額を自己資本とみなすことができるなどの特長があるため、業績が回復しているものの債務超過額が大きい顧問先などにおいては、資金繰りの改善や債務超過解消が見込まれる制度融資です。

借入後3年間は利率0.50%、借入後4年目以降において顧問先の決算が黒字の場合は利率が2.60%から2.95%となります。利息を支払うことによって赤字となる顧問先については、借入後3年間と同じく利率を0.50%へ引き下げることが検討されています。

事業再構築補助金第12回公募は延期か?

事業再構築補助金第12回公募は延期か?
コロナ借換保証制度でコロナ融資の対策を!税理士提案ポイントとは

2023年12月8日、公募開始予定であった事業再構築補助金第12回公募の延期が発表されました。

第11回採択結果の発表についても同様に延期されています。

今後の公募再開予定などは未定となっています。

補助金・助成金の制度改正は顧問先への提案の好機です

補助金や助成金は経営者の関心が強いテーマであるため、事務所からの提案に耳を傾けてもらいやすくなります。

税理士が顧問先へ補助金などの情報を提供するメリットは次のとおりです。

  • 事業計画など顧問先についての理解を深める機会となる
  • 事業計画書の作成などの業務を受注する好機である
  • 補助金とともに経営力向上計画の認定を取得するなどほかの業務受注を得やすい
  • 税務・会計以外の業務の拡充により、顧問先への本業支援などをアピールできる

税理士事務所が支援業務を推進することは、事務所の収益向上につながるため、積極的に提案しましょう。

事務所からの提案などの販促ツールの作成、事務所スタッフの補助金申請支援能力の向上などは、経営革新等支援機関推進協議会のサービスが事務所をトータルでサポートします。

まとめ

令和5年度補正予算の成立に伴い、顧問先の人手不足解消や賃上げを支援する補助金制度が講じられることとなります。
省力化投資補助枠(カタログ型)など顧問先が関心を持ちやすい補助金制度の公募要領やスケジュールの発表に注意し、税理士から顧問先へ積極的に情報提供し、支援業務拡大につなげましょう。

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経営革新等支援機関推進協議会は、株式会社エフアンドエムが運営する会計事務所向けの支援団体です。2014年4月に設立し現在では、全国1700以上の会計事務所が正会員として参画しており、中小企業支援制度についての勉強会・システム提供を通じて全面的にバックアップしている。