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新事業進出補助金が公募開始|税理士からの説明ポイントをものづくり補助金との比較で解説【2025年4月公募要領公開】

新事業進出補助金が公募開始|税理士からの説明ポイントを補助金比較で解説【2025年4月公募開始】

2025年から新たに創設された「中小企業新事業進出補助金」の第1回公募要領が経済産業省から発表されました。

本補助金は中小企業が新規事業へ進出し成長するための投資が対象となり、補助率は2分の1、補助上限額は9,000万円です。2025年6月中旬に公募申請の受付が始まり、公募締め切りは2025年7月10日です。

中小企業新事業進出補助金は、事業再構築補助金の後継補助金と位置づけられ、注目している顧問先がいると思われます。 本記事では、中小企業新事業進出補助金の概要と税理士から説明するときのポイントについて、ほかの有名補助金である「ものづくり補助金」との比較を交えて解説します。

目次

中小企業新事業進出補助金とは

中小企業新事業進出補助金(以下、新事業進出補助金)とは、中小企業が既存事業と異なる新たな分野へ進出し新たな顧客と取引することを通じて、付加価値の向上と賃上げを実現するための投資費用の一部が補助される新設の制度です。
新事業進出補助金の補助率は2分の1、補助上限額は2,500万円から9,000万円です。(従業員数により異なります)
また補助対象経費として建物費が含まれます。

新事業進出補助金の第1回公募要領が2025年4月22日に発表されました。公募締め切りは2025年7月10日(木曜日)18時までです。

【参考】中小企業新事業進出補助金チラシ(2025年4月22日版)|中小企業庁

新事業進出補助金の特徴を顧問先へ説明するときのポイント4つ

新事業進出補助金は新設の補助金で、2025年4月に公募要領が公表されます。
経済産業省が発表した新事業進出補助金の概要チラシの情報をもとに、本補助金について税理士から顧問先へ説明するときのポイントをまとめると次のとおりです。

【参考】中小企業新事業進出補助金チラシ|中小企業庁
【参考】ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の概要(2024年12月18日)|中小企業庁
【参考】事業再構築補助金 公募要領(第13回)1.0版(2025年1月)|事業再構築補助金事務局

新事業進出補助金はより高い成長率と賃上げが必要

新事業進出補助金は、①付加価値額の年平均成長率+4.0%以上の増加と②給与支給総額の年平均成長率2.5%以上の増加または補助事業を実施する都道府県の地域別最低賃金の直近5年間(2019年(令和元年)を基準として、2020年(令和2年)から2024年(令和6年)までの5年間を指します)の年平均成長率以上の増加が求められます。
下記のとおり、新事業進出補助金はものづくり補助金と比べてより高い成長率を求められます。

【新事業進出補助金の付加価値額・賃上げ要件】

新事業進出補助金の付加価値額・賃上げ要件

最低賃金近傍の従業員が多い企業はものづくり補助金がより高い補助率

新事業進出補助金の補助率は2分の1であり、補助率を引き上げる特例はありません。

ものづくり補助金においては補助率を引き上げる「最低賃金引き上げ」特例が設けられています。本特例は、一定期間のうち3か月間以上にわたって地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員数が全従業員数の30%以上となっている企業の補助率を3分の2へ引き上げる特例措置です。
顧問先の事業計画によっては、新事業進出補助金の補助率よりも、ものづくり補助金の補助率がより高い可能性があります。

新事業進出補助金の補助率】

新事業進出補助金の補助率

新事業進出補助金はものづくり補助金より補助上限額が大きい可能性がある

新事業進出補助金の補助上限額は2,500万円から9,000万円です。(従業員数により異なります)
新事業進出補助金の補助上限額をほかの補助金と比べると、新事業進出補助金のほうが大きくなる可能性があります。
補助対象経費は補助金制度により異なるため、顧問先の投資内容を把握し、比較検討する必要があります。

【新事業進出補助金の補助上限額(括弧内は賃上げ特例適用時)】

新事業進出補助金の補助上限額(括弧内は賃上げ特例適用時)

新事業進出補助金は収益納付なし

新事業進出補助金は収益納付を求められません。
ものづくり補助金についても2025年から求められないこととなりました。

新事業進出補助金の補助率・補助金額・補助対象経費

新事業進出補助金の制度概要をまとめると次のとおりです。現時点においては公募要領が未発表であり、詳細については今後明らかとなる予定です。

【参考】中小企業新事業進出補助金チラシ|中小企業庁

新事業進出補助金の補助率

新事業進出補助金の補助率は2分の1です。

新事業進出補助金の補助金額

新事業進出補助金の補助金額は上記のとおり2,500万円から9,000万円(賃上げ特例の適用時)です。補助上限額は従業員数によって異なり、大幅賃上げ特例に該当する企業は補助上限額が引き上げられています。
なお、補助下限額は従業員数にかかわらず750万円です。

新事業進出補助金の大幅賃上げ特例の要件

新事業進出補助金における補助上限額引き上げ特例の適用を受けるためには、補助事業実施期間内に次の①と②の2つの要件の両方を満たすことが必要です。

新事業進出補助金の補助上限額引き上げ特例(賃上げ特例)の要件
  • 事業場内最低賃金を年額+50円以上の水準で引き上げ
  • 給与支給総額を年平均+6.0%以上の増加

賃上げ特例を顧問先に説明するときに注意しておきたい点は、基準年度が顧問先により異なることです。賃上げ特例における基準年度は、実績報告をおこなう時期の直前の事業年度が基準年度となります。賃上げ要件における基準年度と異なる可能性があることに注意しましょう。

【参考】中小企業新事業進出補助金 公募要領(第1回)(2025年4月22日版)|中小企業基盤整備機構
【参考】ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金チラシ(2025年2月17日版)|中小企業庁

中小企業新事業進出補助金 公募要領(第1回)(2025年4月22日版
【引用】中小企業新事業進出補助金 公募要領(第1回)(2025年4月22日版)|中小企業新事業進出補助金事務局

新事業進出補助金の補助対象経費

新事業進出補助金の補助対象となる経費は「建物費(建物費に付随して必要となる構築物費が含まれます)」「機械装置・システム構築費(リース料が含まれます)」などのハード購入費用に加えて、「運搬費」「技術導入費」「専門家経費」「広告宣伝・販売促進費」なども対象となります。

新事業進出補助金は、補助対象経費のうち「建物費」と「機械装置・システム構築費」のいずれかが必須です。

【新事業進出補助金の補助対象経費(建物費など抜粋)】

経費新事業進出補助金ものづくり補助金
建物〇補助対象×補助対象外
建物附属設備〇補助対象×補助対象外
構築物〇補助対象×補助対象外
機械装置〇補助対象〇補助対象
【参考】中小企業新事業進出補助金 公募要領(第1回)(2025年4月22日版)|中小企業新事業進出補助金事務局
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金チラシ(2025年2月17日版)|中小企業庁

新事業進出補助金の対象となる6つの要件

新事業進出補助金は次の6つの要件を満たす事業計画書の作成が求められます。

新事業進出補助金の要件①新分野の売上高が10%以上または付加価値額が15%以上となる

新製品または新サービスを新規顧客へ提供することです。具体的には次の2つの新規性と売上高の要件を満たすこととなります。

【新事業進出補助金の新分野売上高・付加価値額の増加要件】

  • 製品などの新規性
    申請する企業にとって新規性を有する製品やサービスが対象です。
    公募要領公開日(2025年4月22日)以降に初めて取り組む事業であることが必要です。
  • 市場の新規性
    申請する企業にとって新たな顧客層を対象とする製品やサービスが対象です。
    従来の製品を異なる商圏で販売する、単なるメニューの追加などの場合は対象外となります。
  • 新事業売上要件
    事業計画期間の最終年において、新製品の売上高が申請時における総売上高の10%以上となること。
    または、事業計画期間の最終年において、新製品の付加価値額が申請時における総付加価値額の15%以上となること。

【参考】新事業進出指針の手引き1.0版|中小企業新事業進出補助金事務局

新事業進出補助金の要件②付加価値増加は年平均成長率4.0%以上

補助事業終了後3年間から5年間の事業計画期間において、付加価値額または従業員1名あたり付加価値額が年平均成長率4.0%以上増加することです。
付加価値額とは(営業利益)+(人件費)+(減価償却費)の合計額を指します。

新事業進出補助金の要件③賃上げは年平均成長率2.5%以上

新事業進出補助金の賃上げ要件は下記のいずれかを満たすことです。本要件が未達成となった場合、未達成率に応じた補助金返還を求められる可能性があります。
賃上げの基準となる事業年度は、補助事業実施期間の終了時点が含まれる事業年度です。

【新事業進出補助金の賃上げ要件】
補助事業終了後3年間から5年間の事業計画期間において、

  • 給与支給総額の年平均成長率を+2.5%以上増加させる
  • 従業員1名あたり給与支給総額の年平均成長率を事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間(2019年度(令和元年度)を基準とし、2020年度(令和2年度)から2024年度(令和6年度)の5年間)の年平均成長率以上の増加させる

賃上げの基準となる事業年度は、補助事業実施期間の終了時点が含まれる事業年度です。顧問先によっては、賃上げ要件と賃上げ特例で基準年度が異なることがあります。また一時的に賃下げした後に賃上げ目標を達成することは認められていません。

新事業進出補助金スケジュール
【引用】中小企業新事業進出補助金 公募要領(第1回)(2025年4月22日版)|中小企業新事業進出補助金事務局

賃上げ要件のうち「事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率」として下記の数値が示されています。

新事業進出補助金の要件④事業場内最低賃金を地域別+30円以上で維持

補助事業終了後3年間から5年間の事業計画期間中、補助対象事業を実施する事業所の事業場内最低賃金が、毎年、地域別最低賃金より30 円以上高い水準を維持することです。
毎年の事業化状況報告提出時に賃金台帳などを提出することが必要です。

本要件が未達成となった場合、未達成率に応じた補助金返還を求められる可能性があります。

新事業進出補助金の要件⑤一般事業主行動計画の策定と公表

補助事業終了時までに、次世代育成支援対策推進法第12条の一般事業主行動計画を作成し、「一般事業主行動計画公表サイト」(厚生労働省の情報サイト『両立支援のひろば』内)において公表することです。
この一般事業行動計画の公表要件は、法律上、努力義務となっている従業員数100名以下の企業においても必要となります。

【参考】一般事業主行動計画公表サイト|厚生労働省よくある質問|中小企業新事業進出補助金事務局

新事業進出補助金の要件⑥金融機関の確認書

補助対象事業を実施するために金融機関からの融資を受ける場合は、融資予定の金融機関から「金融機関による確認書」を発行してもらい、公募申請に添付します。

【参考】中小企業新事業進出補助金 公募要領(第1回)(2025年4月22日版)|中小企業新事業進出補助金事務局中小企業新事業進出補助金チラシ|中小企業庁

新事業進出補助金の審査は難しい?審査項目を踏まえた申請と加点措置を活用

新事業進出補助金は今回が初めての公募であり、採択されるための審査の難易度は不明です。参考として、ほかの補助金と比較すると、「難易度はものづくり補助金と中小企業成長加速化補助金の間」と推測されています。

新事業進出補助金は新しい補助金であり、次の審査基準に合わせた事業計画書の作成が重要となります。また加点措置を活用し、採択される可能性を高めることを提案時に検討しましょう。

新事業進出補助金の審査項目は7つ

新事業進出補助金の審査項目は次のとおりです。

  1. 補助対象事業としての適格性
  2. 新規事業の新事業性・高付加価値性
  3. 新規事業の有望度
  4. 事業の実現可能性
  5. 公的補助の必要性
  6. 政策面
  7. 大規模な賃上げ計画の妥当性

新事業進出補助金の加点措置は9種類

新事業進出補助金における加点措置は次の9種類です。

  1. パートナーシップ構築宣言の公表
  2. くるみん(トライくるみん、くるみん、プラチナくるみん)の認定
  3. えるぼし(えるぼし1段階から3段階、プラチナえるぼし)の認定
  4. アトツギ甲子園のピッチ大会への出場
  5. 健康経営優良法人2025の認定
  6. 技術情報管理認証制度の認証
  7. 成長加速マッチングサービスの登録
  8. 再生事業者
  9. 特定事業者(従業員数500名未満かつ資本金10億円未満の製造業者など)
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新事業進出補助金はいつから?スケジュールは?

新事業進出補助金第1回公募の主なスケジュールは次のとおりです。
関心をもっている顧問先に対しては早めの準備を提案しておきましょう。

【新事業進出補助金第1回公募の主なスケジュール】

2025年4月22日公募要領公開
2025年6月(予定)受付開始
2025年7月10日公募締め切り
2025年10月(予定)採択(交付候補者決定)
採択日から2か月以内交付申請締め切り
補助事業実施期間交付決定日から14か月以内(交付候補者決定日から16か月後の日まで)
実績報告補助事業完了日から起算して30日後または補助事業完了期限日のいずれか早い日
事業化状況報告補助事業完了日の属する年から5年間
【参考】中小企業新事業進出補助金 公募要領(第1回)(2025年4月22日版)|中小企業新事業進出補助金事務局第1回公募スケジュール|中小企業新事業進出補助金事務局

補助金情報の提供で事務所をアピール!経営革新等支援機関推進協議会がサポート

新事業進出補助金は中小企業が新規分野へ進出し成長することを支援する補助金です。補助対象経費に建物費が含まれ、補助上限額が9,000万円と高額であるなどの魅力があり、関心をもつ顧問先も多いでしょう

また2025年は有名補助金の改正や、新たな補助金の創設がおこなわれています。事業再構築補助金の13回公募(最終回)、省力化投資補助金の改編、成長加速化補助金の創設などです。

顧問先の関心が高まっている機会を活かして、税理士から顧問先への補助金・助成金・税制優遇制度などの情報発信を積極的におこない、顧問先支援業務の拡充につなげましょう。

経営革新等支援機関推進協議会は会計事務所様が取り組む顧問先支援業務をトータルでサポートしています。当協議会が提供している主なサービスの例は次のとおりです。

  • 顧問先や金融機関がわかりやすい財務分析ツール『F+prus』(エフプラス)
  • すぐに顧問先へ発信できる販促素材の提供
  • 補助金・助成金活用の提案スキルが身につく、スタッフ向け動画研修

付加価値業務の推進をお考えの会計事務所様は、全国約1,700事務所が参加する経営革新等支援機関推進協議会へお気軽にご相談ください。

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