2022年度(令和4年度)第2次補正予算案は、前年と同規模が確保されました。
投資を後押しするための補助金の拡充と、資金繰り支援のためのリファイナンス(借り換え)支援が柱です。
補助金は顧問先の関心が高いものの申請期限があるため、顧問先への早めの案内がおすすめです。
本記事では、2022年度第2次補正予算案の概要と、事務所の売上増加への活用法を解説します。
目次
2022年度第2次補正予算案(中小企業・小規模事業者等関連)の概要
2022年11月8日に公表された2022年度(令和4年度)第2次補正予算案(中小企業・小規模事業者等関連)の予算案規模は1兆1,190億円です。
主要な事業別の予算案規模は、前年と同規模です。
今回の第2次補正予算案の重点となっている項目は次のとおりです。
- 成長分野への進出や投資、業態転換
- インボイス対応
- 賃上げ対応
上記の3点への支援のため、「事業再構築促進事業」「生産性革命推進事業」「資金繰り支援事業」の3事業へ予算が重点的に配布されています。
中小企業等事業再構築促進事業
事業再構築補助金の改正予定案のポイントは次のとおりです。
- 「成長枠」の創設(旧通常枠の売上減少要件の撤廃)
- 「グリーン成長枠」の中に要件を緩和した「エントリー」類型を創設
- 「産業構造転換枠」と「サプライチェーン強靭化枠」を創設
- 賃上げの場合の補助率、補助上限額の引き上げ
対象要件は次のとおりとされています。
- 認定経営革新等支援機関や金融機関と事業計画を作成すること
- 補助終了後、3から5年間で付加価値額が年平均3から5%以上増加など
補助枠と補助上限額などは次のとおりと検討されています。
色付き部分が改正または創設予定です。
事業再構築補助金は、採択結果が公表されている第6回公募までに累計約53,000件が採択されています。
補助枠全体での平均採択率は約50%ですが、補助枠によって採択率に違いがあるなど、申請には戦略が必要です。
中小企業生産性革命推進事業
生産性革命推進事業は次の4つの補助事業(補助金)の総称です。
- 「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業(ものづくり補助金)」
- 「小規模事業者持続的発展支援事業(持続化補助金)」
- 「サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)」
- 「事業承継・引継ぎ支援事業(事業承継・引継ぎ補助金)」
2022年度第2次補正予算案においては、前年とほぼ同額である2,000億円(国庫債務負担額を含めて4,000億円)とされています。
各補助金の着眼点は次のとおりです。
- 前向きな設備投資 ⇒ 「ものづくり補助金」
- インボイス対応 ⇒ 「IT導入補助金」、「持続化補助金」
- 事業の承継、譲渡、M&A ⇒ 「事業承継・引継ぎ補助金」
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業(ものづくり補助金)
製造業の経営者が注目している「ものづくり補助金」改正案のポイントは次のとおりです。
- 「グリーン枠」を「エントリー」「スタンダード」「アドバンス」の3類型に区分
- 大幅な賃金引き上げの場合は、補助上限額も大幅に引き上げ
2022年の最後の申請(第13次)は、2022年12月22日17時が申請期限となり、2023年2月中旬に採択が公表されます
採択率は約60%(第11次締切分)ですが、従業員数が少ない中小企業は、加点措置において不利です。
中小企業が確実に採択されるためには、成長性、政策などの項目での加点が有効です。
加点制度を活用するためには、「経営革新計画」や「事業継続力強化計画」の承認をとることが検討されます。
加点項目を念頭においた計画書の作成には時間がかかるため、顧問先へのサポートが有効です。
小規模事業者持続的発展支援事業(持続化補助金)
持続化補助金の改正案のポイントは、インボイス対応のために免税事業者から課税事業者へ転換する顧問先への補助上限の引き上げです。
値上げによる売上高の増加やインボイス対応で課税事業者への転換が必要な顧問先については、会計事務所への相談費用も補助対象です。
持続化補助金にも、優先的に採択されるための7つの加点措置があります。
中でも、「経営力向上計画」の承認、補助金申請システム「Jグランツ」を利用した電子申請加点の2つは、顧問先において加点をとりやすくなります。
持続化補助金で加点される「経営力向上計画」の承認は、持続化補助金での加点だけでなく、さまざまなメリットがあります。
- 承認件数が146,762件(2022年9月30日現在)と多く、豊富な事例が参考となる
- 既存事業の改善が対象となる(新たな事業分野への進出が要件とならない)
- 税制優遇措置がある
- 申請書類が少なくすむ
【参考】経営力向上計画策定の手引き(2022年8月31日)|中小企業庁
サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)
インボイス対応機器の導入、勤怠管理や給与計算をクラウド化するための補助金です。
デジタル化基盤導入枠では補助金額の下限が撤廃されたため、より幅広い顧問先で利用が可能です。
事業承継・引継ぎ支援事業(事業承継・引継ぎ補助金)
後継者不在で事業を第三者に譲渡する場合や、第三者から事業を買い取る場合の補助金です。
賃金引き上げ時には、補助金額の引き上げがあります。
今後ますます会計事務所の活躍が求められるM&A支援業務の推進において、顧問先などの当事者が必ず気にする手数料、専門家報酬、プラットホーム手数料などの一部が補助対象となるため、M&A支援の推進に活用できます。
資金繰り支援事業
資金繰り支援の概要は次のとおりです。
予算案規模2,981億円の事業別内訳は以下のとおりです。
資金繰り支援事業の内容 | 予算案規模 |
---|---|
民間金融機関を通じた資金繰り支援 (借換保証制度等保証料補助) | 1,832億円 |
日本政策金融公庫による資金繰り支援 | 778億円 ※1 |
グローバルスタートアップ成長投資事業 | 200億円 |
経営者保証を徴求しない新たな創業時の信用保証制度の創設 | 121億円 ※ |
認定支援機関による経営改善計画策定支援事業 | 50億円 |
※1……財務省計上分115億円を含む
※2……財務省計上分97億円を含む
特に注目すべき点は、『新たな借換保証制度の創設』です。
創設予定である新しい保証制度は、伴走支援型特別保証制度を拡充した内容とみられます。
拡充内容としては、次の検討内容が参考となります。
検討内容のイメージは、伴走支援型特別保証制度の売上要件の緩和です。
伴走支援型特別保証制度は、2022年10月の改正で売上減少要件が緩和されているため、該当する顧問先が増えている可能性があります。
今回の補正予算案では更なる緩和が検討されています。
伴走支援型特別保証制度も継続
原材料高騰などで財務対策が急務である中小事業者が多く存在しており、さらにコロナ融資(民間金融機関のゼロゼロ融資)の元金返済開始がこれからピークを迎えます。
コロナ融資の元金返済開始件数は、2023年7月と2024年4月にそれぞれ約52,000件と予想されています。
顧問先の資金繰り安定化のためには、伴走支援型特別保証制度の利用などのリファイナンス(借り換え)が必要です。
伴走支援型特別保証制度は次の特徴があり、資金繰りを見直したい顧問先へ有効な提案ができます。
- 運転資金も借入期間は最長10年間
- 据置期間(元金返済なしで利息支払いのみの期間)が最長5年間
- 保証料率は原則0.2%から
- 保証限度額が1億円(2022年10月拡充後)
- 金融機関と経営行動計画の擦り合わせが必要
- 原則、四半期に1回のモニタリングを開催
伴走支援型特別保証制度を活用するときにはポイントがあります。
- コロナ禍の影響などによる売上減少要件
- 経営行動計画書の作成
- ビジネスプロセス、業務プロセスの確認と分析
- 経営課題の明確化
- 具体的な経営課題の解決策とスケジュール
- 数値計画の作成
- 資金繰り見通し、金融支援内容の検討
- (長期の据置期間に対しては審査のハードルが上がる)金融機関の納得性を高める構成
- モニタリング会議の資料作成
メリットが多い伴走支援型特別保証制度を有効に活用するためには、顧問先のことをよく理解し、的確な財務改善アドバイスと正確で定量的な書類作成を支援する会計事務所などが必要とされています。
経営改善計画策定支援事業が後押しします
経営計画作成における専門家の費用を気にする顧問先に対しては、(早期)経営改善計画策定支援事業による補助金利用を案内できます。
(早期)経営改善計画策定支援事業における補助の概要 | |||
---|---|---|---|
補助対象 | 補助率 | 補助上限額 | |
経営改善計画策定支援事業 (旧405事業) 【通常枠】 | 経営改善計画策定費用・伴走費用など | 2/3 | 合計310万円 |
早期経営改善計画策定支援事業 (ポストコロナ持続的発展計画事業) 【通常枠】 | 早期経営改善計画策定費用・伴走費用 | 2/3 | 合計250万円 |
認定支援機関がサポートした経営改善計画については、活用の場が広がる見通しです。
信用保証協会の保証制度である経営改善サポート保証については、現在、経営サポート会議または中小企業活性化協議会のサポートで作成した経営改善計画が必要とされています。
今回の補正予算案における内容の一つに、認定支援機関がサポートした計画についてもサポート保証の要件である計画書とすることが検討されています。
【参考】経営改善サポート保証(コロナ対応)制度について|中小企業庁
補助金申請も融資支援も会計事務所の出番です!
補助金申請は中小企業経営者の関心が高い分野です。
補助金申請にはいくつかのポイントがあります。
- 顧問先に合致する補助金制度を探すためには時間がかかる
- 申請書類の作成
- 顧問先のビジネスモデルや同業者との比較
- 経営課題と課題解決策の明確化
- 定量的な経営見通しの作成
- 補助金申請は期限厳守
顧問先の経営を良く知っている、書類作成に慣れている、定量的な財務分析と見通しができる会計事務所は、補助金申請書類作成への支援が顧問先から頼りにされています。
またDX化などにより、税務・会計業務のみでは事務所としての差別化は難しいといえます。
事務所の差別化と付加価値向上のためには、顧問先の関心が高い補助金申請への支援を切り口とした顧問先への支援業務の拡充が必要です。
- 税務・会計業務以外のサービス提供による差別化ができる
- 申請書作成への支援業務で、売上が増加する
- 顧問契約をしている先であれば、顧客単価が上昇する
- 補助金受給までのつなぎ資金を想定する支援をおこなうことで、融資支援業務の受注に繋げやすい
- 前向きな補助金申請をおこなう先は、事業拡大の可能性が高く、今後の財務改善ニーズが高くなる
- リファイナンス(借り換え)のための計画書作成は、リファイナンス後のモニタリング業務の受注に繋げやすい
補助金申請支援などを顧問先にPRするためには、事務所からの補助金などの情報を発信することが必要です。
また、補助金などの公的制度は複雑で改正も頻繁であるため、改正によって顧問先が対象となることもあります。
事務所からのPRに対して、顧問先に関心をもってもらうためには、マーケティングが必要です。
- 定期的な情報発信
- 顧問先が関心を持つテーマ
- 顧問先の業務や財務状況への理解を示す資料
- 支援実績(または支援可能なレベル)
経営革新等支援機関推進協議会がサポートします
経営革新等支援機関推進協議会とは、会計事務所様の事務所経営を全面的にサポートするサービスで、株式会社エフアンドエムが運営しています。
経営革新等支援機関推進協議会では、会計事務所様の事務所経営を全面的にサポートするため、研修会の開催、各種フォーマットによるノウハウと仕組みをご提供しております。
また、他の会計事務所様での成功事例をご紹介いただいており、自事務所の差別化や付加価値の向上、スタッフのレベルアップの参考にしていただくことができます。
- 補助金・財務支援をおこなうために必要なサービスを、一気通貫でご提供
- ご利用料金は、1拠点につき、月額33,000円(税込)の定額
- 事務所スタッフの一連の教育訓練から、顧問先支援時のお悩みへのサポートまで対応
補助金支援業務など税務・会計業務以外の顧問先支援業務へ取組む会計事務所様、これらのお悩み事はありませんか?
- 補助金や税制改正などの情報収集が大変!
- 顧問先へのPR素材を作るのは大変!
- スタッフへの教育・研修の時間がとれない!
- 事務所の差別化といわれても何をすればいい?
会計事務所経営のさまざまなお悩み事は、経営革新等支援機関推進協議会が全面的にサポートしております。
制度情報や支援事例、補助金申請業務をサポートしています!
定例研修会
会員事務所様限定で、毎月、オンラインで開催しております。
最新の公的支援制度への支援やコンサルティング手法、財務金融支援の支援事例の共有などをセレクトしてお届けしております。
講座動画
各種の最近の制度解説、支援のポイント、支援事例など384(2022年11月時点)のコンテンツを動画配信しております。
申請実務のトータルサポート
各種申請書サンプルをご提供
申請書の添削サービス
顧問先へのPRツールもご用意!
マーケティングサポート
l顧問先向けにすぐに活用できる販促ツールをご用意しております。
顧問先への毎月の情報提供やセミナーを自動化することで、効率的に販促できます。
スタッフへの教育・研修もお任せください!
経営革新等支援機関推進協議会アカデミー
補助金制度・公的支援制度・金融や財務知識などを、1から学習できるカリキュラムを用意しております。
コースは11種類、所長先生の知識習得~職員育成で活用いただける動画カリキュラムになります。
顧問先がわかりやすい財務分析で、事務所の差別化をサポートします!
財務支援システム「F+prus」
「F+prus」は、顧問先の決算書に対して、金融機関の目線での格付診断を、誰でも簡単にできます。
・決算書や借入明細から、顧問先の借入における問題点を抽出する「財務診断報告書」
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まとめ
2022年度第2次補正予算案においても、中小企業・小規模事業者向けの事業規模は前年並みが確保される予定です。
補助金申請支援は顧問先へPR しやすいことに加えて、財務分析、事業計画作成、融資支援業務や長期的なモニタリング支援業務の受注など、顧問先あたりの売上増加と事務所の差別化における有益な取り組みです。
補助金申請支援業務をおこなうためには、販促ツールを活用した顧問先へのPRが欠かせません。
同時に、税務・会計業務以外の顧問先支援をおこなうためには、スタッフの教育・研修、定型業務の効率化が必要です。
事務所スタッフのレベルアップや事務所の売上などでお悩みの会計事務所様は、ぜひ経営革新等支援機関推進協議会にご相談ください。
事業再構築促進事業 5,800億円
生産性革命推進事業 2,000億円(国庫債務負担含めて4,000億円)
資金繰り支援事業 2,981億円