税理士として独立開業した後に後悔するケースには共通点があります。
売上不足や健康上の問題などさまざまな事情があると推測されますが、事務所を維持できなくなった原因には共通点があります。
本記事では、税理士の独立開業で失敗する原因と後悔しない独立準備について解説します。
税理士の廃業率は6%?
税理士の廃業率を調査した公的な統計は発表されていません。また開業税理士が事務所を廃止して勤務税理士となるケースもあります。
税理士の廃業率
開業した税理士の廃業率は5%または6%といわれています。税理士業界全体の高齢化が進んでおり、平均的な廃業率3.3%よりやや高めと推測されています。
【引用】2022年版中小企業白書・小規模企業白書|中小企業庁
増える登録者数、受験者数
税理士事務所数は増加が続いています。2021年における税理士事務所数は27,958か所であり、2016年から+14.3%の増加です。
また税理士受験者数については2021年までは減少していましたが、2022年からは増加に転じ2023年は32,893名が受験をされています。
競合先となる事務所数が増加しているため、税理士事務所の開業にあたっては同業者と差別化できる事務所となることが生き残りのカギといわれています。
【引用】
税理事務所数
2016年経済センサス サービス関連産業Bに関する集計 全国結果|e-Stat
2021年経済センサス サービス産業に関する集計|e-Stat
試験合格者数(2016年、2021年)
2023年度税理士試験|国税庁
税理士が独立開業を後悔するパターン
開業税理士が独立を後悔することとなる事態は大きく次の3つとなります。
売上が少ない!
開業後に後悔することとなる直接的な理由として、収入不足があげられます。
税理士事務所の売上は、顧問先数と顧問先あたりの単価で決まります。
顧問先が増えないと業務が受注できず、収入が少なくなります。
また報酬水準が低すぎる場合はより多くの業務をこなすために時間がなくなってしまい、付加価値が高い業務に時間を割くことができなくなります。
顧問契約が取れない!
開業税理士の顧客は、顧問契約をした顧問先が基本となります。
勤務税理士と違い、開業税理士は税理士業務をおこないながら、自ら顧問先を獲得するための新規開拓営業が必要です。
新規の顧問契約を獲得するまでは時間がかかることが多く、新規に顧問先を増やして収入が安定するまえに、事務所の資金繰りを維持できない事態となることがあります。
時間がとれない!
働く時間を自分でコントロールしようと独立したものの、勤務税理士時代よりも忙しくなることもあります。
顧問先対応、新規顧問先獲得の営業に加えて、事務所の運営事務、税制改正にあわせて知識を常にアップデートし続ける勉強時間なども必要であるため、激務続きで気力と体力が続かないことがあります。
また家族の介護などで業務に時間をかけることができず、収入が減少してしまうこともあります。
税理士事務所の開業で失敗する4つの理由
税理士事務所の開業が失敗する理由として次の4つがあげられます。
- 開業前の準備不足
- 開業後の広告宣伝不足
- 開業後の人間関係の悪化
- 当人または家族の事情
事前準備の不足
勤務税理士として忙しい日々を過ごしていたため、独立開業準備が十分ではなかったなどがあります。準備不足の例として以下があげられます。
- 顧問契約先、見込み先が少ないまま開業した
- 開業後の広告宣伝が不足し、顧問契約を思うようにとれなかった
- 事務所としてアピールできるサービスが少なく、顧問先を獲得できなかった
- 開業後に予測を下回る収入となった場合の運転資金が少なかった
- スタッフを雇う予定が雇用できず、仕事が回せなかった
広告宣伝の不足
税理士の開業後に後悔する収入不足は、広告宣伝が足りないことが多いといわれています。
事務所のサービスによる差別化が明確でないと顧問先の獲得は難しくなります。あるいは低廉な顧問料で多くの業務をこなす薄利多売型となってしまい、広告宣伝が手薄となってしまいます。
事務所スタッフ、パートナーとの関係悪化
開業後に起きる人間関係の悪化です。
税理士仲間とともに事務所を開設した後、開設当初のパートナーである税理士と関係が悪化することがあります。事務所としての方針の違いなどが理由としてあげられます。
また事務所のスタッフとの人間関係が悪化し、人手が不足することがあります。会計事務所は人手不足が続いているため、人手不足の解消に時間がかかる可能性があります。
税理士当人または家族の事情
開業税理士は常に多忙です。このため税理士当人の健康上などの理由により、業務の縮小や事務所の廃止を余儀なくされることがあります。また税理士業界は高齢化しているため、家族の介護などの事情で、業務を縮小するあるいは事務所を閉鎖することもあります。
税理士が独立開業を後悔しないための5つの対策
税理士として開業後に後悔しないための対策としては以下の5点があげられます。
顧問先の目途をつけておく
開業後の顧問先の目途をつけておくことが最も重要です。独立後に紹介してもらえることを予定していても上手くいかないこともあるため、自分で顧問先を獲得してゆくことを想定しておく必要があります。
また勤務している事務所から顧問先を引き継ぐ場合は、金銭のやり取りが発生することがあることに注意します。
開業後の運転資金を準備する
一般的に起業時に準備しておくべき運転資金は、経費の3か月分から6か月間分といわれています。開業直後または顧問契約が予測を下回る時の備えであるため、別途、自身の生活費についての備えも必要です。
事務所の方針と差別化の戦略を立てる
「税理士は将来性がない」といわれる理由として、AIの進化による需要減少があげられています。
従来の税務・会計業務のみではほかの事務所との差別化は困難であり、より低い顧問料などの価格競争と薄利多売型のビジネスモデルで戦ってゆくこととなります。
事務所としての特長、顧問先へ提供できる付加価値があるサービスを用意し、顧問先へアピールすることができるように準備しておきましょう。
広告宣伝の方法を練っておく
事務所の広告宣伝は、顧問先への情報提供と事務所への業務の発注の誘導を組み合わせます。顧問先が関心を持ちやすい補助金の改正情報などを発信するとともに、当事務所でもサポートしています、と事務所への相談を促します。
広告宣伝にかける時間を減らすためには、事務所へ相談が来る仕組み作りが大切であり、以下の例があげられます。
- 顧問先が関心をもつテーマは、顧問先アンケートなどを用いて情報収集しておく
- 事務所通信、DMを定期的に発信する
- 事務所通信などの情報提供物については、顧問先がすぐに相談しやすいよう、事務所の連絡先をのせておく
付加価値が高い業務に集中する体制を整える
独立後の後悔で最も多い収入の低迷を避けるため、より付加価値が高い業務へ時間をかけることができる体制を整えておく必要があります。例えば以下の方法があげられます。
- 事務所通信、補助金情報など税理士事務所から顧問先への提案素材を提供するサービスを利用する
- 経験が浅いスタッフでも利用が容易な財務分析ツールを導入する
- 税理士事務所スタッフ向けの教育研修プログラムを提供している研修サービスを活用する
- 差別化が難しい記帳代行業務をアウトソーシングできる税理士事務所向けのサービスを利用する
まとめ
税理士事務所を独立開業した後に後悔する理由は収入不足が最も多いとみられ、その原因は準備不足によるところが大きくなります。
失敗しない税理士開業のためには、顧問先を獲得するための広告宣伝、ほかの事務所と差別化するための付加価値業務の推進を準備しておくことが重要です。
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- 事務所の広告宣伝をサポートする各種制度の案内チラシ
- 事務所通信やメルマガの文面を毎月提供
- 新人スタッフも金融機関目線での財務分析レポートと事業計画を作成できる財務分析ツール
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