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経営者待望の経営者保証なしの保証制度が創設!税理士からの説明ポイントとは

経営者待望の経営者保証なしの保証制度が創設!税理士からの説明ポイントとは

経営者の保証がなくとも信用保証協会の保証を受けることができる新しい保証制度が始まります。
財務面の数値要件の充足と保証料の上乗せなどが条件です。

本記事では、経営者保証を不要とする信用保証制度の概要と、税理士が顧問先へ提案するときの活用法について解説します。

経営者保証なしの信用保証制度の概要

2024年1月23日、経済産業省は『保証料上乗せにより経営者保証の提供を不要とする信用保証制度』の創設を発表しました。


今回新設される経営者保証不要の保証制度とは、顧問先が金融機関から保証協会保証付き融資を受けるときに、経営者保証の提供と保証料の上乗せとを選択できる制度です。
既存の経営者保証を不要とする保証制度とは別に設けられます。

この経営者保証不要の保証制度は、2024年3月から開始予定です。

経営者保証の提供を不要とする信用保証制度とは

新設される経営者保証なしの保証制度のポイントは次の4点です。

  • 経営者保証ガイドラインよりも要件を緩和
  • 経営規律、財務要件が明確化
  • 保証料の上乗せが必要(ただし上乗せ保証料について国の補助がある)
  • 債務超過かつ償却前経常利益が2期連続赤字の顧問先は対象外

対象のイメージは、経営者保証ガイドラインの要件を満たしていないものの、一定の経営規律を確保できる顧問先です。

経営者保証が不要の保証制度の要件

経営者保証が不要となる保証制度の主な適用条件は次のとおりです。

  • 過去2期分の決算書などを金融機関へ提出すること
    設立後、確定申告2期を未経過の場合はその期間の決算書と試算表、資金繰り表などが必要です。
  • 直近の決算書において代表者らへの社外資金流出がないこと
    代表者らとは、代表者に準じる関係者を含みます。営業許可名義人などが想定されています。
    社外資金流出は少額を除き、貸付金や仮払金など事業に必要と認められない金銭債権を指します。
  • 代表者らへの役員報酬などが社会通念上相当と認められる額を超えていないこと
    賞与や配当などの金銭の支払いが過剰でないことを指します。相当と認められる額については後日Q&Aとして公開される予定です。

  • 上記3点について継続的に充足することの誓約書の提
  • 直近の決算において資産超過(債務超過でない)または2期連続して償却前経常利益が赤字でないこと
    資産超過とは貸借対照表の純資産の額が0以上であることを指します。
    償却前経常利益は損益計算書の経常利益に減価償却費を加えた額とし、赤字でないとは0以上であることとされています。
  • 中小企業者が保証人なしを希望していること

【参考】保証料上乗せにより経営者保証の提供を不要とする信用保証制度(制度概要)|経済産業省

【参考】中小企業信用保険法施行規則の一部を改正する省令(案)|e-GOVパブリック・コメント

保証料の上乗せがあるが、当面3年間は補助がある

経営者保証が不要となる新保証制度は通常の保証料に加えて上乗せ保証料が必要です。
上乗せ保証料は下記のとおり、顧問先の財務に応じて0.25%または0.45%となります。

『保証料上乗せにより経営者保証の提供を不要とする信用保証制度』の上乗せ保証料

顧問先の決算書直近決算の純資産直近2期決算における
償却前経常利益
上乗せ保証料
(補助適用後。2025年3月末まで申込時)
直近2期の
決算書あり
純資産額が0以上直近2期ともに0以上+0.25%
(+0.10%)
1期のみ0以上+0.25%
(+0.10%)
直近2期ともにマイナス+0.45%
(+0.30%)
純資産額がマイナス直近2期ともに0以上+0.45%
(+0.30%)
1期のみ0以上+0.45%
(+0.30%)
直近2期ともにマイナス本制度の対象外
直近2期分の決算書がない+0.45%
(+0.30%)

上乗せ保証料の一部は当面3年間、保証申込年によって補助されます。

  • 2025年3月末までの保証申込:0.15%の補助
  • 2026年3月末までの保証申込:0.10%の補助
  • 2027年3月末までの保証申込:0.05%の補助

【引用】保証料上乗せにより経営者保証の提供を不要とする信用保証制度(制度概要)|経済産業省

経営者保証ガイドラインとの違い

今回新設される経営者保証不要の保証制度は、経営者保証ガイドラインの3要件が緩和されたものとなります。
また定量的な要件が設けられているため、より多くの顧問先が経営者保証なしで借入できる可能性があります。
経営者保証不要の保証制度と経営者ガイドラインとの違いのイメージは下図のとおりです。

【引用】中小企業政策審議会金融小委員会(第8回)事務局説明資料|中小企業庁

保証料率はどうやって決まる?顧問先へはこう説明する

すべての信用保証協会の保証料率は、決算書などをもとに顧問先を点数化したCRDスコアによって9区分に分けられ、割引などを考慮したうえで決定されます。

顧問先の財務改善は、CRDスコアの改善を通じた金融コストの削減、資金調達の円滑さへつながります。

保証協会の保証料率の決まりかた

信用保証協会に支払う保証料率を決定する流れは次のとおりです。

  • 直近2期分の決算書の提出
  • CRDスコアを算出
  • 定性情報を加味
  • 割引制度を考慮して保証料率を決定

【引用】保証料率決定プロセス|京都信用保証協会

CRDスコアとは

CRDスコアとは、金融機関や信用保証協会が融資先から提出された決算書のデータを評点やデフォルト確率として算出するスコアリングシステムのことです。
全国51か所のすべての信用保証協会や116の金融機関などが採用しているため、CRDスコアの高低が金融機関のプロパー融資についても影響する可能性があります。

CRDスコアの改善提案で顧問先が借入しやすくなる

CRDスコアは財務面での状況をカテゴリーごとに評価することができます。

「CRDスコアのこの項目を良くすると保証料率が低くなる、金融機関の融資の審査がより円滑となる」など具体的に提案するが可能です。

財務改善の提案は税理士の活躍の場です

経営者が連帯保証している中小企業のうち48.3%は現行の経営者保証不要の保証制度に該当していることがわかっています。
経営者保証が不要となる要件を既に満たしている顧問先が多数あると推測できます。

経営者が保証の解除や保証なしの借入を検討するタイミングの1つが新たな借入の検討時期です。経営者保証不要制度ととともに顧問先の改善を提案することで、事務所の差別化へつなげることができます。

【引用】ウィズコロナ・ポストコロナの間接金融のあり方について(2022年6月)|中小企業庁

経営者保証免除の保証制度とともに顧問先へ提案したいこと

経営者保証不要の保証制度とともに顧問先へ提案したい主な事項は次のとおりです。

個人と法人の分離

顧問先の経営と経営者個人の区分・分離は不可欠です。
適正な経理の継続とともに、経営者個人の税務や相続対策などの提案も考えられます。

借り換えによる資金繰り改善

保証人不要で新規に借入するときは、借り換えによる資金繰りの改善を同時に検討可能です。

なお顧問先が返済中の保証協会保証付きの融資を借り換えすることで保証人を外す『プロパー借り換え保証制度』(仮称)については、現時点では明確となっていません。

【引用】事務局説明資料 中小企業庁金融課

黒字化までの事業計画の策定

経営者保証なしで資金調達するためには、債務超過からの脱却または黒字化が必須です。

黒字化や債務超過解消までのロードマップを経営者とともに考える事業計画の策定を提案できます。

事業計画の作成は、顧問先の経営上の課題の把握や解決方法をともに検討するよい機会となります。

事業計画策定をもとに補助金・助成金申請のサポートを受注

事業計画の策定を通じて顧問先における投資や社内体制の整備の予定を把握し、補助金や助成金の活用提案などにつなげることができます。

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