2025年の倒産件数が1万件を超えるなど、中小企業の経営環境は依然として予断を許さない状況が続いています。こうした中、政府は令和8年度(2026年度)予算案において、総額228億円を投じた「中小企業資金繰り支援事業」を継続する方針を固めました。本記事では、2026年1月以降における最新の資金繰り支援策の概要を、日本政策金融公庫や信用保証制度の動向を中心に専門的な視点から解説します。
2026年1月以降における中小企業向け資金繰り支援の概要
政府は2026年1月以降の中小企業向け資金繰り支援策の概要を発表しました。
- 日本政策金融公庫補給金
- 中小企業信用補完制度関連補助事業
- 小規模事業者経営改善資金融資事業
- 危機対応円滑化業務支援事業
この事業の根幹は、日本政策金融公庫(以下、公庫)による融資を安定的に提供できる環境を整えるとともに、資金繰りに苦慮する事業者が民間金融機関を活用しやすくなるよう「信用補完」の機能を強化することにあります。
具体的には、公庫融資の利息負担を軽減するための補給金制度や、信用保証協会による損失補填、さらには経営改善を促すための専門家派遣など、多角的なメニューで構成されているのが特徴です。
日本政策金融公庫補給金
日本政策金融公庫補給金には、事業全体の中でも大きな割合を占める169億円の予算が投じられています。これは公庫が提供する融資において、基準利率と優遇利率の差額などを国が財政的に補填することで、中小企業・小規模事業者の資金ニーズへ柔軟に応えられる体制を維持するためのものです。
主な措置としては、以下の3つの柱が立てられています。
- 利差補給による負担軽減:特別利率を適用した融資に対し、金利の引き下げ分を国が補填します。
- 無担保融資の促進:担保を設定しない場合に発生する上乗せ金利分を補填し、保証なしでの借入をサポートします(中小企業金融円滑化利子補給金)。
- 経営力強化の支援:認定支援機関のアドバイスを受けて新事業などに挑戦する小規模事業者に対し、国民生活事業を通じた金利優遇の原資を補完します。
これらの措置により、創業支援や事業承継、事業再構築といった国の重点課題に取り組む企業への資金供給が継続されます。

中小企業信用補完制度関連補助事業
民間の金融機関から円滑な融資を引き出すための「信用補完」には、32億円の予算が割り当てられています。経営の安定化を急ぐ中小企業に対し、ソフト・ハード両面からの支援が行われます。
- 保証体制の維持と損失補填:全国51の信用保証協会を対象に、万が一の債務不履行が発生した際の損失を一部補填することで、協会の保証機能を安定させます。
- 専門家による経営改善支援:信用保証協会を通じて専門家を派遣するための経費を補助し、資金繰りの改善だけでなく、その根源となる経営課題の解決を促します。

小規模事業者経営改善資金融資事業
商工会や商工会議所と連携した「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)」を円滑に運用するため、26億円の予算が措置されています。
以下は、マル経融資の主な利用条件です(令和7年12月1日時点の情報を参照)。
- 融資の上限額:2,000万円
- 適用金利:2.10%
- 返済期間:10年以内
- 保証・担保:一切不要(無担保・無保証人)
- 利用要件:商工会等から一定期間の経営指導を受けていること
この予算措置により、公庫が金利を抑えて融資を実行できる体制が守られ、小規模事業者のセーフティネットとして機能します。

危機対応円滑化業務支援事業
大規模な災害や社会情勢の変化といった「不測の事態」に備えるための枠組みとして、0.8億円(800万円)の事務経費が計上されています。
これは、公庫が指定金融機関(商工中金など)に対して利子補給や損失補填を行う「危機対応業務」を円滑に進めるための人件費等を補助するものです。有事の際でも、全国の事業者が迅速かつ公平に公的融資を受けられる仕組みを維持することを目的としています。

2025年は倒産件数1万件超!税理士から顧問先へ提案したい5つの打ち手
中小企業を取り巻く事業環境は厳しさを増しています。東京商工リサーチの発表によると、2025年の年間企業倒産件数は1万300件であり、2024年に続いて1万件を超えました。
2025年1月以降は中小企業向けの資金繰り支援策の重点が変わるため、中小企業は自ら資金繰りを改善することがより重要となります。
顧問税理士から顧問先へ資金繰り改善策として提案することを検討したい5つの打ち手は次のとおりです。
経営分析による課題の把握
最初に顧問先へ提案したいことは、顧問先の経営状態を経営者に把握してもらうことです。
忙しい経営者が多いため、財務分析レポートや事業シミュレーションは見てすぐにわかるスタイルが好まれます。
月次監査の機会などを活かして、顧問先と今後の改善の方向を相談しましょう。
借換など資金繰り改善策の検討
資金繰り改善が喫緊の課題となっている顧問先もあると思われます。また、一見融資の返済に支障がない財務状態に見えても、過大な返済負担で資金収支がマイナスとなっている顧問先もあると思われます。
経営改善サポート保証など、借換により資金繰りを改善させる方法は効果が高く、経営者が実感しやすい資金繰り改善策であるため、積極的に提案を検討しましょう。
採用力強化
人手不足に悩む顧問先は多く、帝国データバンクの調査によると、正社員の人手不足を感じる企業は51.6%、非正社員では28.3%となりました。(2025年10月時点)
中小企業は採用方法が整っていないこともあるため、採用フローの確立や人材採用のための主な取り組みについても改善提案できるでしょう。
- シニア・女性・外国人従業員の活用
- 補助金・助成金を活用した省力化・省人化投資
- 就業規則などの整備、育児休暇などの導入
- トイレや休憩室の改善
- 面接時の適性検査導入による早期離職の防止
- 社内研修制度の整備
補助金・助成金の前向きな活用を提案する
人手不足対応のための省人化・省力化投資や、賃上げに取り組む顧問先も多いと思われます。
投資や賃上げに伴う資金負担は、公的支援制度をフル活用することを提案しましょう。
税理士から活用を提案したい主な補助金・助成金は次の8つです。
- デジタル化・AI導入補助金
- 新事業進出・ものづくり補助金(仮称)
- 省力化投資補助金
- 持続化補助金
- 業務改善助成金
- 人材開発支援助成金
廃業、M&A支援
後継者不在や立て直しが難しい顧問先については、廃業支援や事業の売却について支援できます。
事業の売却先探しや経営権承継などについては、公的支援機関である事業承継・引継ぎ支援センターなど、専門家の活用もおすすめです。
2026年の資金繰り支援は税理士からのサポートがますます重要
2026年現在、中小企業の資金繰り支援は大きな転換点を迎えています。コロナ禍の特例的な資金繰り支援は完全に終了し、現在の支援重点は「金利上昇への適応」「人手不足を打破する省力化投資」「持続的な賃上げ」へと移行しました。
特に、2025年末に成立した大規模な補正予算により、補助金制度が「AI導入」や「新事業進出」を軸に再編されたことで、中小企業には自律的な構造改革が求められています。
こうした激変期において、経営者が自力で資金繰りを改善するのは限界があり、最も身近な専門家である税理士による「攻めと守りの多面的なサポート」がこれまで以上に重要となっています。
顧問先の財務分析から公的支援策の所内研修まで、経営革新等支援機関推進協議会がサポート
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