会計事務所支援ブログ

中小企業成長加速化補助金の税理士説明ポイントを解説【2025年5月公募開始】

中小企業成長加速化補助金の税理士説明ポイントを解説【2025年5月公募開始】

中小企業成長加速化補助金とは、1社あたり最大5億円が補助される2025年新設の大型補助金です。中小企業が売上高100億円以上の中堅企業へと成長するための前向きな設備投資が対象となります。
本記事では、中小企業成長加速化補助金の概要とスケジュール、税理士が顧問先へ説明するときのポイントなどを解説します。

目次

中小企業成長加速化補助金とは

中小企業成長加速化補助金は2025年から始まる新設の補助金です。2024年度(令和6年度)補正予算により創設されました。
本補助金は中小企業が売上高100億円以上の規模へ成長するための投資を支援することが目的であり、補助率が1/2、補助上限額が5億円です。補助対象経費は建物費や機械装置などです。
第1回の公募開始は2025年5月、採択結果の発表は8月に予定されています。

中小企業成長加速化補助金の活用イメージ、補助率、補助上限額、そのほかの特徴などをまとめると次のとおりです。

中小企業成長加速化補助金の概要
  • 活用イメージ:工場の新設、生産性の革新的な向上などのための投資
  • 補助率:1/2
  • 補助上限額:1社あたり5億円
  • 補助対象経費:建物、機械、ソフトウェアなど(投資額1億円(税別)以上)
  • 補助対象:「売上高100億円を目指す企業宣言」を策定・公表した中小企業など

中小企業成長加速化補助金の補助対象経費・補助率・補助上限額

中小企業成長加速化補助金の補助対象経費・補助率・補助上限額について、現時点で明らかとなっている内容は次のとおりです。詳細は2025年3月に公開される公募要領において、発表予定とされています。

【中小企業成長加速化補助金の補助対象経費・補助率・補助上限額】

補助対象経費補助率補助上限額
建物費、機械装置、
ソフトウェア、
外注費、専門家経費など
1/25億円
【引用】中小企業成長加速化補助金チラシ(2024年12月26日)|中小企業庁

中小企業成長加速化補助金の補助対象者と審査基準

中小企業成長加速化補助金の目的は、売上高100億円以上の中堅企業への成長を支援することです。中小企業が事業規模を拡大するときにおこなう積極的な設備投資や雇用、輸出の拡大などは、取引先や周辺地域への経済波及効果が大きいためです。
この制度目的にあわせて、本補助金の審査基準として「経営力」「波及効果」「実現可能性」があげられています。
中小企業成長加速化補助金の補助対象者と審査基準は次のとおりです。

中小企業成長加速化補助金の補助対象者

中小企業成長加速化補助金の補助対象者は次のとおりです。

  • 中小企業者であること
  • 投資金額(税別)が1億円以上であること
  • 「売上高100億円を目指す宣言」を策定し公表すること
  • 賃上げ要件などを満たす3 年間の事業計画を策定すること

【参考】100億円企業実行事務局のうち中小企業成長加速化補助金(中小企業成長加速化支援事業)を実施する補助事業者の公募要領|中小企業基盤整備機構

中小企業成長加速化補助金の3つの審査基準

本補助金の審査基準として「経営力」「波及効果」「実現可能性」の3つがあげられており、具体的な観点は次のとおりです。

中小企業成長加速化補助金の審査基準
  • 「経営力」:企業の成長性、投資の呼び水効果、他社との差別化など
  • 「波及効果」:賃上げ、域内仕入れなど
  • 「実現可能性」:資金計画、金融機関における対応、スケジュールなど

【参考】100億円企業実行事務局のうち中小企業成長加速化補助金(中小企業成長加速化支援事業)を実施する補助事業者の公募要領|中小企業基盤整備機構

中小企業成長加速化補助金のスケジュールと提案するときの注意点

中小企業成長加速化補助金第1回公募の主なスケジュールと、税理士から顧問先へ提案するときに注意しておきたい点は次のとおりです。

【令和6年度補正予算】税理士が中小企業へ提案したい令和7年度補助金の改正情報を解説

中小企業成長加速化補助金のスケジュール

本補助金の事前準備から採択後の主なスケジュールをまとめると次のとおりです。

【中小企業成長加速化補助金の公募スケジュール】(予定)

予定時期予定イベント
事前準備GビズIDプライムアカウントの取得
2025年2月『売上高100億を目指す宣言』公募要領の発表
2025年3月第1回公募要領の発表
2025年5月『売上高100億を目指す宣言』申請開始第1回公募申請受付開始
2025年6月第1回公募申請期限
2025年8月第1回公募採択(交付候補者決定)
交付決定日から24か月以内補助対象事業実施期限
補助対象事業実施後5年間事業化状況報告など
【参考】中小企業成長加速化補助金チラシ(2024年12月26日)|中小企業庁
100億円企業実行事務局のうち中小企業成長加速化補助金(中小企業成長加速化支援事業)を実施する補助事業者の公募要領|中小企業基盤整備機構

中小企業成長加速化補助金のスケジュールと提案時における注意点

中小企業成長加速化補助金のスケジュールについて注意点は次の3つです。

  • 公募開始から締め切りまで1か月から2か月間
    2025年5月の公募開始から6月の締め切りまでの期間は1か月から2か月間です。また初回公募となる本補助金は、参考となる採択事例がありません。大規模成長投資補助金などを参考に短期間で申請書類を作成する必要があり、事前準備が大切です。
  • 『売上高100億円企業を目指す宣言』の策定と公表が必要
    第1回公募においては補助金申請と宣言の策定・公表を同時におこなうこととなり、時間がかかる可能性があります。
  • 事業実施期間が24か月以内
    交付決定から事業実施期限までの期間は24か月以内です。建物の完成時期や機械装置の納品時期に注意が必要です。

中小企業成長加速化補助金の要件「売上高100億円を目指す宣言」の概要

中小企業成長加速化補助金の補助対象者となる要件として「売上高100億円を目指す宣言」の策定と公表があげられています。
「売上高100億円を目指す宣言」とは、中小企業が売上高100億円を目指す企業となることを宣言し、そのロードマップを策定し、専用のポータルサイトにおいて公開することです。
宣言に盛り込む内容として次の項目が予定されています。

  • 企業の現状(足下の売上高、賃上げなどの目標、課題など)
  • 実現するための目標(売上高成長目標、期間、プロセスなど)
  • 具体的措置(生産増強、海外展開、M&Aなど)
  • 実施体制
  • 経営者のコミットメント(経営者自らのメッセージ) など

【参考】「売上高100億円を目指す!」|中小企業庁

中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金は採択が難しい⁉採択案件からみる税理士からの説明ポイント

「売上高100億円を目指す宣言」企業のメリット4つ

「売上高100億円を目指す宣言」の策定・公表を顧問先へ提案するときは、次の4つのメリットがあることを説明できます。特に顧問先が建物を取得する場合は、建物と附属設備について特別償却または税額控除を受けられる可能性があります。

  • 中小企業成長加速化補助金の申請に必要
  • 専用の経営者ネットワークへ参加可能
  • 専用のロゴマークが使用可能
  • 建物・附属設備の特別償却または税額控除(中小企業経営強化税制B 類型の拡充)

【参考】「売上高100億円を目指す!」|中小企業庁

【参考】2025年度(令和7年度)経済産業関係 税制改正について|経済産業省

メリット①:中小企業成長加速化補助金の申請に必要

本宣言を策定・公表することで、中小企業成長加速化補助金の申請が可能となります。

メリット②:100億円を目指す企業向け経営者ネットワークとは

本宣言をおこなった企業の経営者により構成される経営者間ネットワークに参加できます。

メリット③:ロゴマークの使用

本宣言をおこなった企業のみロゴマークが利用可能です。

メリット④:建物・附属設備の特別償却または税額控除

中小企業経営強化税制の拡充措置(B類型の拡充)として、建物・附属設備の新設や増設について特別償却(最大25%)または税額控除(最大2%)が認められる可能性があります。
2025年度(令和7年度)税制改正に盛り込まれています。

中小企業経営強化税制(B類型の拡充)の要件
  • 投資利益率が年平均7%以上
  • 売上高100億円企業を目指すロードマップの作成
  • 売上高成長率年平均10%以上を目指す
  • 基準年度売上高10億円超90億円未満
  • 最低投資金額1億円または前年度売上高5%以上
  • 雇用者給与支給総額の増加率が2.5%以上または5.0%以上など

【参考】2025年度(令和7年度)税制改正の大綱(2024年12月27日閣議決定)|財務省

中小企業経営強化税制は2027年3月まで延長されることとなりました。改正後の全体像は次のとおりです。

中小企業成長加速化補助金を税理士が顧問先へ提案するときのポイント

税理士が顧問先へ中小企業成長加速化補助金を提案するときのポイントは次の4つです。

ポイント①:売上高100億円を目指すロードマップの策定と関係づける

本補助金を申請するときは「売上高100億円を目指す宣言」の策定・公表が要件となっています。顧問先を次の観点から分析し、本宣言を実行することで「売上高100億円が達成可能となることを示すこと」が求められるといわれています。

  • サプライチェーンにおける顧問先のポジション、強み弱み
  • 売上高100億円を達成するための課題(生産能力、製品開発、輸出など)
  • 人材確保、賃上げなど顧問先の社内体制


経済産業省の研究会資料に企業規模ごとの課題や業種別成長パターなどが例示されているため参考となります。

【参考】中小企業の成長経営の実現に向けた研究会第2次中間報告書|経済産業省

ポイント②:大規模成長投資補助金などの採択事例を参考とする

中小企業成長加速化補助金は新設の補助金であり、参考となる採択事例がありません。顧問先が申請書類を作成するときは、制度趣旨や審査基準を的確に読み取り作成することが求められます。
本補助金は「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」など中小企業向けの補助金と、中堅企業・中小企業向けの「大規模成長投資補助金」との中間的な位置づけといえる補助金であり、「大規模成長投資補助金」などの採択事例が参考となるでしょう。

ポイント③:専門家の活用を提案する

中小企業成長加速化補助金の申請を提案するときは、専門家の活用を提案しましょう。その理由は次の3つです。

  • 申請書類の作成に時間がかかる
    ほかの補助金の採択事例を参考とするなど顧問先の作業が多くなる可能性があります。
  • 「事業戦略」と「経営者」を的確に表現することが求められる
    本補助金は売上高100億円となるまでの事業計画が重要です。
    経済産業省の資料によると、中小企業が飛躍的に成長する鍵として「事業戦略」と「経営者」の2つをあげています。「ポジショニング」「今後の事業成長の方向性」「経営者」などについて、審査員が理解しやすい表現を心がけるなどのテクニックが求められます。
  • 交付決定後の事業化状況報告などが必要となる
    ものづくり補助金などと同様に、採択(交付候補者決定)後においても交付申請書や事業化状況報告などの事務が必要です。申請だけでなく、採択後の事務についてもフォローできる専門家の活用がおすすめです。

【参考】成長志向の中小企業の創出を目指す政策の検討成果と今後の方向性(2023年6月22日)|中小企業庁

ポイント④:税制優遇制度との併用を提案

上記の中小企業経営強化税制や経営力向上計画の認定など、補助金と併用できる可能性がある税制優遇制度についてもあわせて提案しましょう。

補助金の提案による事務所の生産性向上は経営革新等支援機関推進協議会がサポート

中小企業成長加速化補助金は1社あたり最大5億円が補助される大型補助金であり、関心をもっている顧問先も多いでしょう。

本補助金を検討している顧問先は事業規模の拡大など成長志向企業であると予想できます。規模拡大を目指す企業は「設備投資の相談」「事業計画の作成」「税制優遇制度の相談」「税務・会計業務の拡充」など税理士が提案できるサービスが多いと予測できるため、税理士から積極的に提案を検討しましょう。


補助金・助成金・税制優遇制度など税務報酬以外の収益拡充をお考えの会計事務所様は、経営革新等支援機関推進協議会がサポートします。
全国約1,700事務所が参加する経営革新等支援機関推進協議会へお気軽にご相談ください。

ABOUT US

経営革新等支援機関推進協議会
経営革新等支援機関推進協議会は、株式会社エフアンドエムが運営する会計事務所向けの支援団体です。2014年4月に設立し現在では、全国1700以上の会計事務所が正会員として参画しており、中小企業支援制度についての勉強会・システム提供を通じて全面的にバックアップしている。

人気の記事ランキング