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1年で30件の財務支援を成約!上杉会計事務所がいかにして「職員全員で取り組む体制」を築いたのか

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滋賀県で32年の歴史を持つ税理士法人上杉会計事務所は、税務会計の枠を超えた財務コンサルティングの導入に成功し、経営革新等支援機関推進協議会が実施する「ベストプラクティス賞」を受賞しました。

本記事では、代表税理士である上杉圭一先生のお話をもとに、1年未満で30件もの財務支援(5FOCUSレポート)を成約させた組織づくりの裏側や、AI時代における人間ならではの価値提供のあり方まで、その秘訣を詳しく紐解きます。

税理士法人上杉会計事務所はどのような事務所ですか?

税理士法人上杉会計事務所は、滋賀県で総勢29名のスタッフと共に歩む、地域に根ざした会計事務所です。代表の上杉先生は税理士歴32年を誇る2代目。長年、地元の経営者から厚い信頼を寄せられてきました。

同事務所の特徴は、単なる「記帳・申告」の代行にとどまらず、中小企業の永続的な成長を支えるための財務支援に本気で舵を切っている点にあります。

かつては顧客からの資金繰りや銀行融資の相談に対し、「専門外」として距離を置いていた時期もありました。しかし、「このままではいけない」という強い決意のもと、現在は職員が一丸となって、経営者の意思決定を支える財務コンサルティングを展開しています。

そんな「財務への強いこだわり」を持つ税理士法人上杉会計事務所は、協議会の中でも突出した成果を収めています。なぜ、短期間でこれほどの変革を遂げられたのか、その客観的な評価から見ていきましょう。

なぜ「ベストプラクティス賞」を受賞できたのですか?

なぜ「ベストプラクティス賞」を受賞できたのですか?

「ベストプラクティス賞」は、付加価値支援において創意工夫を凝らし、顕著な成果を上げた事務所に贈られる賞です。税理士法人上杉会計事務所の受賞には、主に2つの明確な理由があります。

受賞理由①:1年未満で30件の財務支援契約(収益化)に成功

経営革新等支援機関推進協議会のツールである「5FOCUSレポート」を使い、短期間でこれほど多くの成約を積み上げた実績は、全国の会員事務所の中でもトップクラスです。

受賞理由②:職員全員が「自分事」として取り組む体制の構築

所長一人や特定の専門チームが動くのではなく、29名の職員全員が同じ視座を持ち、高い意識で財務支援に取り組んでいる組織力が極めて高く評価されました。

圧倒的な成約数と、それを支える組織力。しかし、最初からすべてが順調だったわけではありません。そこには、上杉先生自身の「意識の劇的な変化」がありました。

財務支援への取り組みを始めたきっかけは?

きっかけは、上杉先生自身の「脱・逃げの姿勢」でした。

以前は顧客から金融支援の要望があっても、明確な回答を避けていたといいます。しかし、業界を取り巻く環境変化を前に、2024年の年初、「今年は絶対に財務支援を収益化する」と心に決め、年間30件という高い目標を掲げました。

この際、上杉先生が最もこだわったのが「全員参加」です。一部の優秀な職員に頼る属人化した体制ではなく、事務所全体の標準的なサービスとして財務支援を提供できる組織を目指したことが、後の大きな飛躍へと繋がりました。

「全員でやる」と決めたものの、実務を担う29名の職員をどう動かすか。そこには、現場の不安を払拭し、モチベーションを高めるための緻密な戦略がありました。

職員29名を巻き込むために、どのような工夫をしましたか?

「新しい業務を増やす」ことに対して、当初は現場に戸惑いもあったそうです。そこで上杉先生が行ったのは、徹底した「環境づくり」と「外部刺激の活用」。

外部講師を招いた意識改革

まず、財務支援で先行して実績を上げている近隣事務所の先生を招き、職員向けに講演を依頼しました。成功している同業者の「生の声」を聞くことで、職員たちは財務支援がどれほど顧客に喜ばれ、事務所に貢献するのかを、理屈ではなく実感として理解しました。

「実践道場」を核にした情報共有

協議会が主宰する「実践道場」に5名の選抜メンバーが参加しましたが、それだけで終わらせませんでした。事務所の全職員を4つのグループに分け、各グループに道場参加者を配置。道場での課題を全職員で議論する「事前討論会」を仕組み化しました。これにより、現場の全員が財務支援の考え方を自分事として捉える文化が定着しました。

教育体制が整った次に取り組んだのは、「顧客にどう伝えるか」という実践手法の確立です。上杉先生が辿り着いた答えは、無駄を削ぎ落とした「5分間」のトークでした。

経営者の心を動かす「5分間ロープレ」の具体的な内容は?

経営者の心を動かす「5分間ロープレ」の具体的な内容は?

上杉先生が職員に共有し、自らも実践している「5分間ロープレ」には、経営者が自社の財務を「自分ごと」として捉えるための工夫が凝縮されています。 実際の提案は、次のような流れで進められます。

1. 銀行目線での現在地を伝える 

まずは「5FOCUSレポート」を提示し、これが損益(PL)という一過性の数字ではなく、創業以来の歴史である貸借対照表(BS)を銀行目線で分析したものであることを伝えます。 

例「総合評価はCランク、正常先です。決して悪くはありません。でも社長、今日はあえて厳しいことを言わせてください。一刻も早く、Bランクに上がっていただきたいんです」 

このように、単なる現状報告で終わらせず、あえて踏み込んだ姿勢を見せることで経営者の関心を引きつけます。

2. 課題を2点に絞り込み、平易な言葉で解説する 

多くの指標を並べるのではなく、最優先課題を「自己資本比率の改善」と「債務償還年数の短縮」の2点に絞り込みます。

  • 自己資本比率: 「会社の潰れにくさを表す指標」と定義し、現状の11.2%から15%を目指すよう促します。
  • 債務償還年数: 「借金が身の丈に合っているかを測る指標」とし、キャッシュフローの何年分にあたるかを可視化。現状の8.4年から7年以下への短縮を提案します。

3. 「なぜランクアップが必要か」というベネフィットを語る 

ランクを上げる目的を、経営者の悩みである「資金繰りの窮屈さ」の解消に結びつけます。 

例「今はCランクなので、運転資金3,200万円のうち、半分以下しか短期借入でカバーできていません。これがBランクになれば、短期継続融資が受けやすくなり、資金繰りは劇的に楽になります。さらにその先のAランクになれば、『当座貸越枠』というピッカピカの勝ち組の財務が手に入ります。これを一緒に目指しましょう」

4. 現場のアクションまで踏み込む 

最後に、目標達成のための具体的な数字を提示します。

例)「2年で達成するなら、年間150万円の利益を上乗せしましょう。そのためには、高騰している材料比率を1%削減するだけでいいんです。仕入れの見直しや歩留まりの向上など、現場でできることを月次で追いかけていきましょう」

このように、「現状→課題→ベネフィット→具体策」を淀みなく5分で伝えることが、成約率を高める鍵となっています。

この磨き上げられた「伝え方」の威力は、金融のプロである銀行との対面シーンで証明されることになります。

銀行の支店長との「プレゼン対決」に勝てた理由は?

ある製造業の顧問先で、メインバンクの支店長と上杉先生が、それぞれ財務分析の結果を披露する機会がありました。事実上の「プレゼン対決」です。

銀行側が提示したのは、数十項目にわたる精緻な格付けレポートでした。対して上杉先生が提示したのは、5つの視点に絞った「5FOCUSレポート」です。

経営者が選んだのは、上杉先生の提案でした。

「銀行の資料は立派だが、結局何をすべきか分からない。上杉先生の提案は、直すべきポイントが2つに絞られていて、自分たちがすべきことが一目で分かった」というのが経営者の本音でした。

「顧問先の内情を誰よりも深く知っている」という税理士の強みを、ツールの「分かりやすさ」に乗せて届けたことが、銀行を凌駕する価値提供に繋がったのです。

しかし、上杉先生は「ツールや分析がすべてではない」とも語ります。
AI時代だからこそ、最後に問われるのは「人間としての在り方」でした。

上杉先生流の「対AI 3原則」とはどのようなものですか?

AI時代の到来を見据え、税理士法人上杉会計事務所では人間ならではの役割を明確にするため、「対AI 3原則」を定義しています。

  1. 一生懸命さ: AIにはない熱量が、経営者の心を動かす
  2. 笑顔: 「私はあなたの味方である」ことを示す最高のサイン
  3. 感謝の表明: 「ありがとう」と言葉にして届けることで信頼を完結させる

「分析や資料作成まではAIに任せてもいい。しかし、最後に社長の横に座って励まし、背中を押すのは人間の仕事である」という信念が、同事務所のコンサルティングの根幹に流れています。

この「人間力」と「仕組み」の融合こそが、ベテランだけでなく若手スタッフが活躍できる土壌を生み出しています。

若手職員でも財務提案ができるようになった理由は?

税理士法人上杉会計事務所では、経験年数に関わらず高い質の提案ができる環境が整っています。その理由は、以下の「仕組みの標準化」にあります。

  • 5FOCUSレポートの活用:
    システム入力から最短5〜10分で出力でき、誰が作っても一定のクオリティが保てる。
  • 管理職の率先垂範:
    管理職メンバーが率先して協議会の「実務体験型プログラム」で1級を取得。後輩が続きやすい背中を見せている。
  • 成功事例の共有:
    事務所内でのロールプレイングや成功・失敗事例の共有が日常的に行われており、個人のスキルが組織の資産となっている。

これにより、入社数年の若手であっても、経営者に対して自信を持って財務のアドバイスができるようになっています。

税理士法人上杉会計事務所が歩んできたこの1年は、まさに地方の会計事務所が新たな価値を見出すための「ロードマップ」そのものでした。

税理士法人上杉会計事務所の事例から、他の会計事務所が学べることは?

税理士法人上杉会計事務所の歩みには、これから付加価値支援に取り組む事務所にとって多くのヒントがあります。

  1. 所長の「覚悟」が組織を動かす
    「財務から逃げない」という所長の強い意志が、外部講師の招聘や全職員の巻き込みといった具体的なアクションを生みました。
  2. 「仕組み」を使い倒す
    協議会のツールや研修を「一部の人」ではなく「全員」で活用し、事務所内の標準語にすることで、組織としての提案力が底上げされました。
  3. 「伝える力」を徹底的に磨く
    高度な分析よりも、経営者に「伝わる」ことに重きを置き、5分間のロープレを繰り返す。このシンプルさが、30件という成約数に直結しました。
  4. AIを恐れず、人間ならではの領域を磨く
    技術的な作業は効率化し、その分、熱量を持って顧客と向き合う時間に充てる。この姿勢が、AI時代における税理士の勝ち筋です。

まとめ

税理士法人上杉会計事務所は、 “所長の情熱/職員の団結/協議会の仕組み” を掛け合わせることで、短期間での劇的な変革を成し遂げました。

これは、多くの会計事務所が直面している「付加価値支援への移行」「職員のモチベーションアップ」「AIへの対応」という課題に対する一つの理想的な回答です。

税理士法人上杉会計事務所のような取り組みは、ツールの導入だけでなく、組織文化の構築という面でも非常に示唆に富んでいます。もし、以下のようなお悩みがあれば、ぜひ経営革新等支援機関推進協議会にご相談ください。

  • 財務コンサルを導入したいが、職員が動いてくれない
  • 経営者に刺さる提案ができる職員を育てたい
  • 銀行評価や格付けなど、より高度な財務支援を提供したい

全国約1,700以上の会計事務所を支援した実績から、貴事務所のフェーズに合わせた最適なサポートを提案いたします。

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経営革新等支援機関推進協議会
経営革新等支援機関推進協議会は、株式会社エフアンドエムが運営する会計事務所向けの支援団体です。2014年4月に設立し現在では、全国1700以上の会計事務所が正会員として参画しており、中小企業支援制度についての勉強会・システム提供を通じて全面的にバックアップしている。

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