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「年収の壁」見直しとは?2026年以降の変更と税理士の説明ポイントを解説

「年収の壁」見直しとは?2026年以降の変更と税理士の説明ポイントを解説

2025年12月から「年収の壁」が見直され、「年収103万円の壁」は「年収123万円」(扶養控除)・「年収160万円」(所得税)となりました。2026年以降も「年収の壁」の見直しが続きます。

しかし2026年以降におこなわれる「年収の壁」見直しは、社会保険の加入範囲が拡大する内容であり、企業は事業主負担額の増加における対策が必要となります。

本記事では、2026年以降に実施される「年収の壁」見直しの影響、顧問税理士が顧問先へ説明するポイントについて解説します。

「年収106万円の壁」(社会保険料)を見直し予定【2026年10月以降】

「年収106万円の壁」とは、パートタイムなど短時間勤務の従業員が社会保険に加入する収入水準のことです。2025年12月に実施される「年収の壁」見直しは税制改正であり、社会保険料による「年収106万円の壁」が残っていました。

この「年収106万円の壁」(社会保険料)は、2026年以降に以下の見直しがなされ、社会保険の加入範囲が拡大されます。

  • 賃金要件(月額88,000円以上)の撤廃
  • 企業規模要件(従業員数51名以上の事業所)の順次撤廃

現行の「年収106万円の壁」(社会保険料)は5要件

パートタイムやアルバイトなど短時間勤務従業員は、以下の要件を満たす場合、社会保険に加入する義務が生じます。

社会保険に加入する義務がある短時間勤務従業員
  • (企業規模要件)事業所の従業員数が51名以上
  • (賃金要件)所定内賃金が月額88,000円(年収約106万円)以上
  • 週所定労働時間が20時間以上
  • 雇用見込みが2か月超
  • 学生ではない

賃金要件は撤廃【2026年10月以降】

上記の賃金要件は撤廃される予定です。撤廃時期は2026年10月が有力といわれており、遅くとも2028年6月までに実施される予定です。

厚生労働省の資料において、「全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて撤廃」とされていました。2025年の地域別最低賃金は1,121円(全国加重平均)、最低額は1,023円となり、この基準を満たしています。

企業規模要件は段階的に撤廃【2027年10月開始】

上記の企業規模要件は、以下のとおり、2027年10月から段階的に縮小されます。

社会保険加入が義務となる事業所の規模(従業員数)開始時期
従業員数36名以上2027年10月
従業員数21名以上2029年10月
従業員数11名以上2032年10月
従業員数10名以下2035年10月

【参考】パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入対象により手厚い保障が受けられます|政府広報オンライン
【参考】社会保険の加入対象の拡大について|厚生労働省

高市政権の総合経済対策で「年収の壁」を見直し予定

2025年11月21日、高市政権は発足後初の総合経済対策を閣議決定しました。大型減税など総額21.3兆円の規模となります。

総合経済対策の第一の柱である物価対策において、「基礎控除を物価に連動した形で更に引き上げる税制措置について、2026年税制改正で検討」するとしており、今後、見直しが議論されることとなります。

【参考】「『強い経済』を実現する総合経済対策」について|内閣府

2026年以降の「年収の壁」見直しに関する税理士の説明ポイント5つ

2026年以降、「年収の壁」に関する制度が見直されることで、顧問先企業とその従業員の働き方やコスト構造に影響が生じます。特に、社会保険の適用範囲拡大により、社会保険に加入する従業員が増えると、企業側の事業主負担額も増加します。


そのため、顧問税理士としては、制度変更による影響を適切に伝え、事前の準備や対策を促すことが重要です。

以下では、顧問先へ説明すべき主要なポイントを整理します。

従業員の意向を確認

まず、社会保険の加入基準を超えて働く可能性のある従業員を正確に把握してもらうことが重要です。従業員がどのような働き方を希望しているか、今後の勤務時間や収入の見通しを確認する必要があります。

社会保険料の事業主負担額を試算

新たに社会保険に加入する見込みの従業員について、事業主負担額と従業員負担額を試算し、コスト増加に対する対策を検討してもらいます。

事業主負担額の概算は、厚生労働省が公開する専用シミュレーターで試算できます。

【参考】社会保険料かんたんシミュレーター|厚生労働省

社会保険加入手続きを確認

社会保険への新規加入が必要となる従業員について、必要な手続きと期限を事前に整理してもらいます。主な手続きは以下のとおりです。

  • 社会保険加入手続き:雇用開始から5日以内
  • 雇用保険加入手続き:採用日の翌月10日

バックオフィス業務をデジタル化

制度改正に伴い事務負担は増加する傾向にあるため、給与計算や勤怠管理などバックオフィス業務のIT化・効率化を検討してもらいます。

クラウド型給与ソフトの導入や勤怠システムのデジタル化は、法改正への対応や事務負担の削減に有効です。費用面については、以下の助成金を活用できる場合があります。

  • 働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
  • IT導入補助金

【参考】働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)|厚生労働省【参考】IT導入補助金2025|IT導入補助金2025事務局

社会保険料の事業主負担における支援措置を活用

社会保険適用拡大に伴い、公的支援策の活用によって、企業の負担軽減が期待できます。主な支援策は以下のとおりです。

キャリアアップ助成金(社会保険適適用時処遇改善コース)

新たに社会保険に加入する従業員を対象として、社会保険適用促進手当を支給する企業が対象です。該当する従業員1名につき最大50万円が助成されます。

本コースは2026年3月31日までの時限措置です。

キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース)【新設】

新たに社会保険に加入する従業員を対象として、週所定労働時間の延長と賃金増額をおこなう企業が対象です。該当する従業員1名につき最大75万円が助成されます。

本コースは2025年7月1日に新設され、本助成金(社会保険適適用時処遇改善コース)から切り替え可能です。

事業主の証明による被扶養者認定の円滑化【恒久化】

被扶養者の認定基準である「年収130万円の壁」を一時的に超えて従業員が働く場合、事業主の証明により、最大2年間、扶養申請が可能です。

本支援策は2025年10月1日より恒久化されています。

【参考】キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)|厚生労働省

【参考】キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース)パンフレット|厚生労働省

【参考】事業主の証明による被扶養者認定Q&A|厚生労働省

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「年収の壁」見直しに関するよくある質問(FAQ)

「年収の壁」見直しに関するよくある質問とその回答は以下のとおりです。

Q1:「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」が使えない場合がありますか?

A.はい、適用できない場合があります。

パートタイムなど短時間勤務従業員が社会保険の被保険者となる場合は、被扶養者となりません。

【参考】事業主の証明による被扶養者認定Q&A|厚生労働省 Q4-1

Q2:年収130万円を超えると手取りが30万円減りますか?

A.はい、年収130万円を従業員は手取り額が年間約30万円減る可能性があります。

年収130万円を超えると社会保険における扶養から外れ、保険料を自ら支払うこととなるためです。

なお「年収130万円の壁」は標準報酬月額で計算します。「年収106万円の壁」は基本給と諸手当により算定するため、それぞれ計算方法が異なる点に注意が必要です。

Q3:2026年以降の「年収の壁」見直しにおける個人事業主の対策はありますか?

A.はい、主な対策は以下のとおりです。

(従業員)

  • 算定基礎期間(4月から6月)における残業時間の調整
  • 昇給・昇格時期の変更(7月以降とする)
  • 出張手当など非課税手当の導入

(事業主)

  • 青色申告控除の活用
  • 中小企業退職金共済(中退共)、中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)、小規模企業共済制度への加入
  • 国民健康保険組合への加入
  • キャリアアップ助成金の活用
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税理士事務所の採用・教育・財務支援は経営革新等支援機関推進協議会が一気通貫にサポート

賃上げの潮流や社会保険加入範囲の拡大により、社会保険料の負担増に悩む顧問先が増加することが見込まれます。

このような状況下では、顧問税理士が賃上げ支援策や社会保険料負担を軽減する公的制度を顧問先へ提案し、資金繰り改善や資金調達の円滑化をサポートすることが、顧問先の経営安定に大きく寄与します。

さらに、こうしたコンサルティングの強化は、顧問先1社あたりの収益力向上や、事務所スタッフのモチベーション向上にもつながるため、積極的に取り組む価値があります。

コンサルティング機能の拡充をご検討の会計事務所様には、経営革新等支援機関推進協議会が一気通貫で支援をご提供します。財務支援機能の立ち上げから、スタッフ育成のための研修までを、月額30,000円(税抜)でご利用いただけます。

全国で約1,700の会計事務所様が活用する経営革新等支援機関推進協議会へ、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

2026年以降における「年収の壁」の主な見直しは、社会保険加入範囲の拡大です。パートタイムなど短時間勤務従業員が加入する要件である「賃金要件」「企業規模要件」が撤廃され、個人事業主の加入範囲も拡大されます。

従業員数50人以下の顧問先や一部の個人事業主にとっては、社会保険料の事業主負担額が増える、事務が複雑となるなど大きな影響をもたらす可能性があります。

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音峯朱里

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