会計事務所においてもフルリモート勤務を含めた募集、勤務形態の見直しが広がりました。
求人範囲の拡大など人手不足解消に効果が期待されている一方、導入については注意点があります。
本記事ではフルリモートで人材を採用するときの注意点について解説します。
目次
会計事務所におけるリモートワーク導入状況
リモートワークの導入状況については、会計事務所を含めた学術研究、専門・技術サービス業の平均として43.2%が実施しているとされています。
【引用】情報通信白書2021年版|総務省
リモートワーク導入後の実施頻度の平均は週あたり2.3日であり、週5~7日の実施は18.7%に留まっています。
【引用】2022年度テレワーク人口実態調査|国土交通省[AF1]
リモートワーク全体としては広がっているものの、フルリモートはさほど浸透していない状況です。
フルリモートのメリットデメリット
事務所への通勤を前提としないフルリモート勤務が知られていますが、会計事務所において導入する際はメリットとデメリットを慎重に検討する必要があります。
フルリモートのメリット
フルリモート勤務を導入することで見込まれるメリットは次のとおりです。
- 通勤時間が不要
- 遠隔地の優秀な人材を採用する機会の増加
- 転居で退職するスタッフの継続雇用
- 遠隔地の顧問先を獲得する機会の増加
フルリモートのデメリット
一方、フルリモートを導入する際は下記のデメリットに注意が必要です。
- 顧問先に関する情報流出の危険性が高まる
- スタッフへ貸与するPCやセキュリティ措置を導入するコストが負担となる
- リモート勤務時の勤怠管理、業務進捗管理と共有する手間が発生する
- 顧問先や税務署へ出向くことがゼロとはならない
- スタッフ間での意思疎通が減る
- 事務所内でのノウハウ共有機会が減り、スキルアップが遅くなる可能性がある
リモートワークで採用するときのポイントと注意点
フルリモートを含めたリモートワークを前提とした人材採用をおこなうときは、ポイントと注意事項があります。
所属税理士(社員税理士を含む)、補助員に共通して、事前に明確としておくべきポイントは次のとおりです。
- リモートワークの導入条件
(場所、頻度、顧問先情報の取り扱いなど) - 勤怠と作業内容の管理方法
(システムのログイン・ログオフによる勤怠管理、作業ログの取得など)
- 業務進捗状況の共有方法、頻度
(利用するICTツール、報告方法など)
- 通勤手当、交通費などの支給条件
所属税理士を採用するとき
所属税理士として採用する場合は上記のほかにも明確化すべき点があります。
- 重要な業務の確認方法
電子申告は所長の確認後に送信可能とする制限を設けるなど、特に重要な業務を管理する方法を検討します。
- 新規に受任する顧問契約、記帳代行業務のチェック方法
新規での受任契約は所長の確認を必要とするなど、システムまたは所内手続きを明確化しておき、所属税理士の独断的な行動を抑制することができます。
- (フルリモートの場合)顧問先や税務署へ出向く機会があること
フルリモートであっても、顧問先への巡回監査や税務署へ出向く必要が発生することを明示しておきます。
- (フルリモートの場合)リモート勤務場所が対外的に税理士事務所と誤認されない措置
2か所事務所禁止に抵触しないよう、税理士事務所と誤認される看板の掲出、名刺の記載、接客設備の設置などをおこなわないことが必要です。
【参考】税理士制度のQ&A|国税庁
事務所スタッフを採用するとき
事務所の補助員についてもポイントがあります。
- 業務の範囲を明確に伝える
経験者、未経験者を問わず、自事務所でのやり方や作業の細かい内容について、明確に指導する必要があります。
- 非税理士行為の防止措置を講じておくこと
フルリモート人材については、事務所の管理が十分に行き届かないことも想定されます。
確定申告書類の印刷や電子申告を制限するなど、非税理士行為が発生しない対策を講じ、「事務所の監督が明確である状態」を常に維持することが必要です。
【引用】税理士の業務とテレワーク(在宅勤務)|日本税理士会連合会
リモート採用・勤務のデメリットを解消する「アウトソーシング」を活用
人材獲得の一助となる可能性があるリモート採用ですが、リモート勤務にあわせた業務管理と勤怠管理が必要となるため、週何日など限定的な導入が主となっています。
人手不足の解消方法として考えた場合、リモートワーク人材の確保よりも、次の業務についてのアウトソーシングが有効となることもあります。
アウトソーシングであれば、入力スタッフの雇用よりもコストが低く、勤怠管理の負担を省くことができるためです。
教育訓練、スキルアップをアウトソーシング
スタッフのスキルアップはアウトソーシングが望ましいです。研修内容に応じた資料の準備、スタッフと指導者双方の時間の確保などの負担を軽減できます。
税理士事務所スタッフ向けの研修プログラムが複数の企業から提供されています。
利便性が高い動画視聴による受講や実践的な研修などがあり、スタッフの水準や事務所で強化したい業務など個々の要望に応じた研修が可能です。
定型業務をアウトソーシング
差別化が難しい定型業務についても、アウトソーシングの検討をしましょう。
特に差別化が難しい記帳代行業務の外注化は、業務負担の大幅な削減を期待できまるほか、入力スタッフの雇用が不要となるなどのコストメリットも期待できます。
記帳代行サービスについては、『不足書類の徴求など顧客対応が残る』『仕訳数が多いと料金が増える』『紙の証憑をスキャンして送付する必要がある』などの不満点も見受けられます。
会計事務所の効率化と差別化は協議会がサポートします
会計事務所の生産性向上で生まれた時間を活かして、より付加価値が高いサービスを提供することで事務所を差別化することができます。
高付加価値サービス拡充のお悩みは、経営革新等支援機関推進協議会へご相談ください。
協議会は、顧問先が利用できる可能性がある補助金を検索できるツールなど事務所の経営にすぐに役立つサービスから収益化のサポートを定額(月額税抜30,000円)で提供し、1,712事務所が利用しています。(2023年8月時点)
協議会が提供する、会計事務所の生産性を向上させる主なサービスを3つ紹介します。
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- 事前の設定は不要ですぐに導入が可能
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- 返済予定表の入力で資金繰り見通しも明確化
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- 繁忙期の受講も便利な動画視聴型研修
- 基礎知識、テスト、実務実践で着実に身につくカリキュラム
- 財務分析コース、補助金支援コースでスタッフに応じたスキルアップが可能
まとめ
フルリモートやリモート勤務を前提とする人材採用が広まっています。人手不足が恒常化している会計事務所業界においては、人材採用時におけるアピール点のひとつとなり、遠隔地の人材採用などが期待されています。一方、リモートワークの導入は情報管理や勤怠管理の負担が増えることとなります。
人手不足における対応として考えた場合は定型業務のアウトソーシングの活用が有効となる可能性があります。
会計事務所の生産性向上のお悩みは、経営革新等支援機関推進協議会のサービスを検討してはいかがでしょうか。