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令和5年度税制改正要望まとめ!顧問先支援に活用できる改正要望を解説

来年度の税制改正に向けて、財務省と総務省のWebサイトに各府省庁の要望が公表されています。

各府省庁の要望は、本年度末で期限切れとなる税制措置の延長や、拡充、制度や措置を新設する内容もあります。

本記事では、令和5年度税制改正要望のうち中小企業に関係する経済産業省の要望内容を解説します。

令和5年度税制改正要望のポイント

経済産業省は大きく4つの改正要望を掲げているため、それぞれポイントを紹介します。

以下、ご紹介する内容は2022年10月18日時点のものです。

また、以下の資料を参考にしております。

【参考】令和5年度税制改正に関する経済産業省│経済産業省

【参考】令和5年度税制改正に関する経済産業省要望│経済産業省

スタートアップ・エコスステムの抜本強化

をおこなうために4つの改正要望があります。

エンジェル税制の見直し

創業間もない企業に向けて、個人投資家は大きなリスクを取ります。

出資者を支援するために、現在のエンジェル税制に必要な見直しをおこない、また出口戦略を含めてスタートアップ・エコシステムを抜本強化する税制のあり方を要望します。

ストックオプション税制の見直し

テック系企業など事業化まで時間がかかる企業や、グローバル展開を含めて大きな成長を長期間かけておこなう企業のスタートアップを後押しするために、ストックオプション税制の見直しを要望します。

ストックオプションとは、企業があらかじめ定めた権利行使価額で自社株購入できる権利を役員や従業員に付与する仕組みです。

しかしスタートアップ時は現金収入が十分でないため、権利行使時に課税されると納税資金が必要となります。

納税のために現金化することで、早期売却を強制される可能性があるため、権利行使期間などの見直しの要望です。

国外転出時課税制度の必要措置

スタートアップ時からグローバル展開を目指す企業において、役員や従業員などが一時的に海外に出国して立上げ準備などをおこなう場合があります。

現行制度では、創業時の株式を含めて1億円以上の有価証券などを所有している場合、国外転出時課税制度の対象です。

また非上場株式の場合、株券による担保提供しなければ課税されてしまい、担保提供するにしても手続きや管理コストがかかる問題があります。

株券によらない担保提供を可能とするために、必要な措置を要望しています。

暗号資産の期末時価評価課税の見直し

国内のスタートアップ企業などが発行した暗号資産は、期末に時価評価し、評価損益は課税対象とされています。

しかし多額の納税によって発行企業が資金繰り難に陥り、事業継続が難しくなる事例がありました。

スタートアップ企業に支障のない事業環境を整備するために、自己発行や自己保有の暗号資産は、期末時価評価による課税対象外とする措置を要望しています。

カーボンニュートラル対応とイノベーション促進に向けた取組

研究開発を含めた投資促進などの措置エコカー減税などの車体課税などの見直しといった2つの改正要望があります。

研究開発を含めた投資促進などの措置

大きく以下の3点の見直しです。

  • 研究開発税制:試験研究費の税額控除など、民間がおこなう研究開発投資やスタートアップ時のオープンイノベーションを促進するため
  • DX投資促進税制:税額控除5%、3%または特別償却30%。デジタル技術を活用したビジネスモデルを促進するため
  • スピンオフ税制:法人や株主の課税繰延。大企業発のスタートアップや企業価値向上に向けた事業再編を促進するため

車体課税等の見直し

大きく以下の3点の見直しです。

  • 車体課税の見直し環境性能に優れた自動車をさらに普及させるため。また受益と負担の関係も含めた自動車関係諸税のあり方も検討
  • エネルギーに対する免税措置など:バイオエタノールなどの揮発油にかかる揮発油税の免税措置、石油精製時に不可避に発生する非製品ガスにかかる石油石炭税還付措置の延長
  • 法人事業税の課税方式の見直し:電気供給業や一部のガス供給業に向けて、課税の公平性の確保やカーボンニュートラルや安定供給するため

中小企業・小規模事業者に向けた取組

中小企業や小規模事業者に向けた税制の見直しや延長、拡充などがあります。

中小企業・小規模事業者の積極的な投資、経営基盤強化、研究開発を支援

税制の見直しや延長、拡充には以下の5点があります。

  • 中小企業経営強化税制の延長

コロナ禍や、円安、資源高などの状況下の中小企業に対して、生産性向上やDXに資する投資を後押しするため、適用期限が2022年度末のところ2024年度末まで延長する措置です。

税制内容は、即時償却または税額控除10%(資本金3,000万円超の場合7%)となります。

  • 中小企業促進税制の延長

コロナ禍や、円安、資源高などの状況下で、設備投資に取組む中小企業支援のため、適用期限が2022年度末のところ2024年度末まで延長する措置です。

一定の設備をおこなった場合に税額控除7%(資本金3,000万円以下の中小企業などに限る)または特別償却30%となります。

  • 中小企業軽減税率の延長

2022年度末の適用期限を2024年度末まで延長する措置です。

年800万円以下の所得金額に対して、通常19%の法人税率が15%の租税特別措置となります。

  • 中小企業技術基盤強化税制の見直し

積極的に投資拡大する企業の研究開発を推進するためにおこなった控除の上乗措置の適用期限が2022年度末のところ、2024年度末まで延長する措置です。

またオープンイノベーション型やサービス開発の要件などの見直しも要望しています。

恒久的措置として12%だった控除率に試験研究費の増加に応じて17%までの控除、また試験研究費増加割合が9.4%を超の場合は控除上限を10%上乗せ、売上高試験研究費割合10%超の場合は控除上限を最大10%上乗せです。

  • 中小企業防災・減災投資促進税制

激化する自然災害などの事前対策を強化するために、防災や減災に向けた設備投資を後押しするため、適用期限が2022年度末のところ2024年度末まで延長する措置です。

税制措置は特別償却20%で、対象となる設備に耐震装置の追加も要望しています。

地域経済を牽引する企業の成長促進支援

地方自治体と連携して、地域経済を牽引する企業の成長を促進するために、適用期限が2022年度末のところ2024年度末まで延長する措置です。

課税の特例内容として、特別償却20~50%または税額控除2~5%となります。

また措置の対象資産としてソフトウェアなどを追加し、戦略的な産業群の維持や強化などに資する事業の重点的支援を要望しています。

企業活動のグローバル化に対応した事業環境の整備

OECDやG20合意に基づいて、グローバル最低税率課税15%が導入される場合、類似する外国子会社合算税制を簡素化して、企業の事務負担を軽減する措置の見直しを要望しています。

税制改正要望後の流れ

各府省庁の税制改正要望が提出されたものの、租税法律主義に則ってそれぞれの改正法案を国会に提出し可決されなければ法制化されません。

税制改正要望の後、与党税制調査会において税制改正大綱として取りまとめ、年内中に閣議決定、その後国税に関する内容は財務省、地方全に関する内容は総務省が、それぞれ1月から始まる通常国会に向けて改正法案を作成します。

改正法案は、衆議院または参議院のどちらか先に提出し、国会内の常任委員会である財務金融委員会や総務委員会において審議され、その後本会議で可決するプロセスを繰り返して成立です。

可決された改正法が公布されることで法制化されます。

顧問先支援に向けた付加価値の高め方

事務所が顧問先支援に向けて付加価値の高め方を紹介します。

最新の情報提供で機会を作る

税制改正要望はこれから税制改正大綱が作成され実際に法制化されるまで確定的なことを伝えるべきではありませんが、税制改正や延長など可能性があることは伝えても問題はないでしょう。

企業は税制改正がどのようにおこなわれているか、税制改正や補助金、助成金の新設などの情報を押さえることは難しく詳細まではわからない事業者が多い状況です。

定期的に顧問先に情報提供をおこなうことで、相談を受ける機会や、財務支援をお願いされることがあるため積極的な情報提供をおすすめします。

補助金支援や決算などの財務サポート

企業によっては補助金や助成金を活用していない場合があります。

活用しない理由は、補助金や助成金が自社に合うものかがわからないことが原因です。

顧問先や新規顧客に向けて補助金や助成金の情報提供をおこなうことで、自社でも活用できそうだとわかれば申請支援を依頼されることがあります。

新規顧客の場合、申請支援を通じて顧問契約を締結できる可能性も高まるでしょう。

また決算などの財務サポートや資金繰りに向けた財務・税務相談も併せて行うことで付加価値を高められます。

経営革新等支援機関推進協議会のサービス

事務所が、顧問先や新規顧客に向けて活用できるサービスとして、経営革新等支援機関推進協議会が提供するサービスがおすすめです。

月額3万円(税抜)で最新情報などの知識習得や実務支援、マーケティング支援、財務支援システム「F+prus(エフプラス)」の4つのサービスをご利用いただけます。

2022年10月時点で1,651の事務所にご活用いただいております。

事務所のマーケティング支援

事務所のマーケティング支援として、新規顧客に向けて活用できる販促ツールや、月次情報提供サービスなどがあります。

顧問先や新規顧客に向けて継続的な情報提供をおこなうために、補助金などの各制度を案内するチラシの案内や、事務所が発信するメルマガ、セミナーなどに活用できる情報を事務所に提供しています。

FASクラブという経営革新等支援機関推進協議会が顧問先に、補助金や資金繰りに関する最新情報を提供できるサービスがあります。

またメールマガジンや会員専用Webセミナー、補助金・資金繰り専用の相談窓口、2か月に1度の情報誌の発行といったサービスも受けられます。

顧問先や新規顧客に向けて定期的な情報発信をおこなう場合に活用できるサービスです。

他の事務所とは異なった付加価値を提供するために活用しましょう。

財務支援システム F+prus(エフプラス)

F+prus(エフプラス)は財務サポートする際に活用できるサービスです。

顧問先の決算書データや借入明細を取り込むことで金融機関目線の財務格付け判定や借入金返済に向けたシミュレーションを自動抽出できる「財務診断報告書」の作成機能があります。

顧問先に対して財務コンサルティングができ、また解決策として、金融機関から融資を受ける方法の検討も可能です。

金融機関は、金融機関が求める事業計画書を策定できなければ融資が難しいです。

しかしF+prus(エフプラス)を活用することで、顧問先が抱えている問題や、解決に向けて事業計画書の作成や毎月の予実管理の活用もできるため、顧問先の満足度が高まり、金融機関の審査も通りやすくなるため、金融機関の満足度も高まります。

まとめ

令和5年度税制改正要望として、中小企業の税制優遇措置について延長や拡充なども多くありました。

顧問先や新規顧客に向けて、定期的な情報提供のひとつとして改正要望の内容を紹介する方法があります。

税制や補助金、助成金などの情報は企業にとって専門的でわかりづらいと思っている事業者も多いため、積極的な情報提供をおすすめします。

また経営革新等支援機関推進協議会のサービスを活用することで、情報発信や顧問先の財務サポートなどの業務も迅速におこなえます。

この機会に「経営革新等支援機関推進協議会」にぜひご相談ください。

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