ものづくり補助金は製造業だけでなく、卸・小売業、サービス業も対象です。生産性向上や新商品開発の投資が対象であり、顧問先の業績向上を提案できます。
本記事では、ものづくり補助金の最近の改正点と申請支援のポイントを解説します。
目次
ものづくり補助金(第15次締め切り分)の概要
ものづくり補助金の第15次締め切りの申請が始まっています。申請期限は2023年7月28日金曜日17時までです。
本補助金の第15次締め切りの公募概要は次のとおりです。
【引用】ものづくり補助金 公募要領 概要版(15次締切分)|ものづくり補助金事務局
ものづくり補助金の最近の改正点
ものづくり補助金の最近(第14次および第15次以降)の改正点は以下のとおりです。
大幅賃上げへの補助上限の引き上げ(第14次から)
給与支給総額を年6%以上引き上げなどに取り組む場合は補助上限額が引き上げされます。
ただし回復型賃上げ・雇用拡大枠などは除かれます。
【引用】ものづくり補助金 公募要領 概要版(15次締切分)|ものづくり補助金事務局
グリーン枠の補助上限額の引き上げ(第14次から)
温室効果ガスの排出を削減する取り組みに応じて3類型があり、補助上限額は類型と従業員数に応じて異なります。
また、取引先の事業者がグリーンにかかるパートナーシップ構築宣言をしている事業者については加点措置があります。
【引用】ものづくり補助金 公募要領 概要版(15次締切分)|ものづくり補助金事務局
【引用】ものづくり・商業・サービス補助金2022年度2次補正予算関連|中小企業庁
輸出に取り組む事業者への支援拡充(第14次から)
海外への直接投資や輸出に取り組む事業者を支援するため、補助下限の引き下げや販促費用を補助対象に含める拡充がなされました。
【引用】ものづくり・商業・サービス補助金2022年度2次補正予算関連|中小企業庁
さらに第15次から『新規輸出1万者支援プログラム』に登録した事業者は、グローバル市場開拓枠(海外市場開拓(JAPANブランド)類型)で加点されます。
認定機器・システム導入型の新設(新設予定)
新設予定ですが、第15次においては講じられていません。業種・業態に共通した課題を解決するために、新たに開発された生産性向上設備が認定され、認定された機械・システムなどが補助対象となる予定です。現時点では自動化機械やシステムなどが想定されているといわれています。
【引用】ものづくり・商業・サービス補助金2022年度2次補正予算関連|中小企業庁
技術情報管理認証制度による加点措置(第15次から)
技術情報管理認証制度とは、顧問先が認証機関から情報セキュリティ体制を客観的に審査・認証してもらう制度です。この認証を受けた事業者は加点措置があります。成長型中小企業等研究開発支援事業においても加点されます。
ワーク・ライフ・バランス推進による加点措置(第15次から)
女性や子育て世代の社員を支援する取り組みについての加点措置が講じられました。
具体的には次の2つの認定を取得している顧問先が対象です。
- 「えるぼし認定」または「一般事業主行動計画(女性活躍推進法)の認定」
- 「くるみん認定」または「一般事業主行動計画(次世代育成対策推進法)の認定」
【引用】ものづくり補助金 第15次公募要領|ものづくり補助金事務局
補助対象経費の対象としてセキュリティ対策費(第15次から)
セキュリティ向上のための設備や費用が補助対象として明記されました。
【引用】ものづくり補助金 第15次公募要領|ものづくり補助金事務局
そのほかの加点措置も活用
上記以外の主な加点措置は次のとおりです。
- 経営革新計画の承認
- 創業・第2創業後5年以内
- パートナーシップ構築宣言
- デジタル技術の活用およびDX推進の取組(デジタル枠のみ)
- 事業継続力強化計画の認定
【引用】ものづくり補助金 第15次公募要領|ものづくり補助金事務局
加点措置1点ごとに採択率が約10%上がっています。
ものづくり補助金は卸・小売・サービス業も対象
ものづくり補助金の正式名称は『ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金』であり、名称のとおり卸・小売業、サービス業や宿泊業も対象です。
特に事業再構築補助金(成長枠)においては、指定業種のリストに入っていない卸・小売業、サービス業、宿泊業は成長業種であることのデータ提出などが必要であり、該当する顧問先については採択が難しい可能性があります。
事業再構築補助金(第10回公募)成長枠から業種に制限
経営者から人気が高かった事業再構築補助金は、最も申請件数が多い通常枠(現在の成長枠)は業種が制限されました。第10回公募以降の成長枠は『成長枠対象リスト』に掲載されている成長分野109業種と業界団体が成長分野であることを示した10業種・業態、市場規模が10%以上成長することを示すデータ・統計等を提出して認められた場合のみです。
このリストに掲載されている業種は製造業が大半を占めています。
製造業 | 80業種 |
卸売業 | 12業種 |
情報通信業 | 3業種 |
小売業 | 1業種 |
サービス業 | 11業種 |
電気業、ガス業 | 2業種 |
成長分野業種の計 | 109業種 |
業界団体が示した成長分野業種・業態の計 | 10業種・業態 |
合計 | 119業種・業態 |
(2023年6月9日時点)
ものづくり補助金は幅広く対象
ものづくり補助金申請者の業種は製造業が目立つものの、そのほかの業種でも幅広く利用されています。
【引用】ものづくり補助金データポータル|ものづくり補助金事務局
フォローアップ調査においても、付加価値額の伸び率は製造業・非製造業ともに高い結果です。
付加価値額の伸び率(業種別)
ものづくり補助金の申請を活用する提案例
ものづくり補助金は難易度が高すぎる補助金ではありません。最近の採択結果(第13次の一般型)における採択率は53.4%です。
【参考】採択結果|ものづくり補助金事務局
採択事例が公開されており、顧問先への提案や事例説明に活用できます。非製造業は卸売業6業種135件、小売業6業種138件が公開されています。(2023年6月時点)
生産性の向上を提案
ものづくり補助金は付加価値額の年3%以上の増加が要件の1つです。
人手不足における対応などで生産性の向上を図る顧問先に対しては、その取り組みが補助対象となることを提案できます。
【引用】ものづくり補助金 公募要領 概要版(15次締切分)|ものづくり補助金事務局
生産性の改善事例として、製造業における自動加工機の導入事例があげられています。
【引用】2022年ものづくり補助金成果活用グッドプラクティス集|ものづくり補助金事務局
新商品・新サービスを開始したい顧問先への支援
ものづくり補助金で求められる類型の1つに新商品の開発があります。
【引用】ものづくり補助金 公募要領 概要版(15次締切分)|ものづくり補助金事務局
事例として、非製造業における新商品生産に必要な自動加工機・包装機の導入が紹介されています。
【引用】2022年ものづくり補助金成果活用グッドプラクティス集|ものづくり補助金事務局
事業再構築補助金(成長枠)では業種リストで指定されていない業種
事業再構築補助金(成長枠)では業種リストにおいて指定されていないサービス業においても、システムや器具の導入が提案できます。
例えば自動車整備工場における溶接機の導入があります。
【引用】2022年ものづくり補助金成果活用グッドプラクティス集|ものづくり補助金事務局
輸出の強化(またはこれから輸出の開始)に取り組む予定の顧問先
円安を契機に輸出に取り組む顧問先へ、広告宣伝や販促費用が対象となることを提案できます。
輸出への取り組み方法がわからない顧問先に対しては、ジェトロの個別カウンセリングや中小企業基盤整備機構の海外展開ハンズオン支援を提案します。越境ECに取り組む場合は、小規模事業者持続化補助金の検討が可能です。
SDGsを意識した経営をおこなう事業者
SDGsに取り組む顧問先に対してはグリーン枠を提案します。SDGsを対象とした公的支援策はわかりにくい中、ものづくり補助金は有名であり説明しやすい補助金です。
ものづくり補助金の申請は認定支援機関の関与が必要
認定支援機関の関与は任意ですが、最近の申請のうち約70%が外部の支援を受けており、外部の支援がある申請の採択率は高くなります。採択されるためには外部の支援機関の活用がより確実であることをアピールできます。
【引用】ものづくり補助金データポータル|ものづくり補助金事務局
認定支援機関業務で税理士事務所のサービスを拡充
本業支援業務を拡充することで事務所の差別化をアピールできます。
顧問先への案内はポイントを踏まえた販促ツールを活用します。
提案に効果的なツールを活用
販促ツールをすべて事務所内で作成する場合は時間や手間が負担です。また制度の改正頻度が高いため、税理士事務所向けの販促ツールの利用が効率的です。
税理士事務所からの販促チラシの例として次の素材があります。
上記の素材はパワーポイントで加工しやすく、事務所名や料金を変更するだけですぐに使える販促チラシです。
事業再構築補助金、経営革新計画などへの応用
申請書類に記載する内容は、ほかの公的支援策の申請書類と似ていることが多く、そのほかの支援策の申請への応用が可能です。
下記はものづくり補助金の申請書類の記載項目の一部です。
【引用】参考様式 事業計画書 記載項目(第15次)|ものづくり補助金事務局
ものづくり補助金で加点措置がある経営革新計画の様式は次のとおりで、ものづくり補助金と似ています。
【引用】経営革新計画申請様式|中小企業庁
会計事務所の差別化は経営革新等支援機関推進協議会がサポート
経営革新等支援機関推進協議会は、補助金・財務支援をおこなうために必要なサービスを一気通貫で提供しています。
経営革新等支援機関推進協議会は株式会社エフアンドエムが提供する会計事務所向けの支援団体です。
月額30,000円(税抜)の定額で、補助金申請支援や新人でも即戦力となる財務分析ツール、事務所スタッフ向けの教育研修プログラム(サブスクサービスの対象外)などを提供しており、1,699事務所が利用しています。(2023年6月時点)
【関連記事】F+prus・FASCLUB・ACADEMYの活用方法を徹底解説!
補助金申請支援業務をサポートするサービスにおいては、採択ポイントをおさえた記載例サンプルの提供や事前添削を受けることができます。
ものづくり補助金申請書の記載例サンプルは次のとおりです。
販促ツールの提供から事務所へ相談が来る仕組み作りまで、本業支援業務の拡充は経営革新等支援機関推進協議会がサポートします。
まとめ
ものづくり補助金は幅広い業種で採択されており、採択率は50%を超えています。
顧問先の付加価値向上を支援する公的支援策の提案は事務所の差別化につながる重要な取組みであり、積極的に推進しましょう。
事務所の生産性向上や本業支援業務を拡充などのお悩みは、経営革新等支援機関推進協議会へお気軽にご相談ください。