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『税理士は食えない』を跳ね返す!税理士の営業力アップ策とは

『税理士は食えない』を跳ね返す!税理士の営業力アップ策とは

税理士登録者数の増加など税理士事務所の経営を取り巻く環境は厳しくなっています。税理士事務所が生き残るためにはサービスを拡充し、新規顧客の獲得と顧問先からの受注につなげる営業力が求められています。

本記事では、税理士事務所が営業力を強化する方法について解説します。

税理士が営業力を必要とされる理由

独占業務をおこなう税理士事務所であっても、新規顧問先の獲得や受注するサービスを拡充するための営業が必要となる理由は主に次のとおりです。

税理士の増加

税理士登録者数は81,119人(2023年11月末現在)、事務所数は27,958か所(2021年経済センサス)となっており、増加が続いています。

また顧問先の倒産や廃業、ほかの事務所への変更などにより契約が終了する可能性があるため、新たに顧問先を獲得する営業が必要となります。

DX化、AIの進歩

税務・会計分野においてはDX化の浸透やAIの進化が進んでいます。このため従来の起票・記帳や給料計算、確定申告書の作成業務についての相談に関するニーズは縮小してゆくと考えられます。

税務・会計以外の顧問先のニーズ

顧問先が税理士に求める内容は、高度な税務アドバイス、財務や本業の改善、事業承継への助言などに多様化しています。
経営者は最も身近な専門家である税理士へ幅広い支援を期待しています。

税理士が活用すべき主な営業ツール

税理士が活用すべき主な営業ツール

税理士事務所における営業は、顧問先を新たに獲得する営業と、顧問先からよりアップセルを獲得する営業の2つです。

新規の顧問先を獲得するためには、自事務所の存在や税理士としての能力などを知ってもらう営業が必要です。

顧問先からの受注を増やすための営業としては、顧問先へ提供するサービスや実績を周知し、提案する方法があげられます。

税理士がおこなう主な営業方法は次のとおりです。

経営者同士の口コミ

既に契約している顧問先から見込み先を紹介してもらう方法です。

経営者同士の情報交換は情報の密度が低いことがあるため、紹介を受けた見込み先に対してはサービス内容や報酬などを細かく伝えることに注意します。

SNS、ホームページなどのデジタルツール

ホームページの運用は重要です。ホームページによる営業のメリットは次のとおりです。

  • 公開する情報内容、情報の密度を自由に選定可能
  • 24時間、無人での宣伝
  • 広告宣伝のための短期的なWEB広告、中長期的な顧問先獲得のためのホームページの充実など、目的に応じた運用が可能

またSNS上での宣伝を強化する事務所も増加しています。若い世代の経営者へのアピールや事務所スタッフの採用活動においても効果があります。
主なSNSツールは、掲載する情報の種類(画像、動画、文章、配信)と情報の蓄積期間(瞬間的であるフロー型、長期間の蓄積が向いているストック型)の組み合わせで特徴があります。

主なSNSツール主要年齢層適した
コンテンツ
利用のメリット
YouTube幅広い動画、配信ストック型
長時間の動画を保存可能
TikTok10代から30代動画フロー型
短時間の動画が主
Pinterest
Instagram
10代から30代
比較的女性が多い
静止画像ストック型
静止画像が主
情報量は少な目
X(Twitter)幅広いテキストフロー型
少ない情報を急速に拡散できる
LINE幅広いテキストフロー型
相手へ直接届く

販促ツールは紙とデジタルを併用

紙とデジタルにはそれぞれ特長があるため、併用や使い分けが望ましいです。


ペーパー素材のツールの特長は次のとおりです。

  • 忙しい経営者の中には、その場で見て、メモともなる紙を好む人がいる
  • 口コミ紹介時に、そのまま紙を渡すことで情報を伝達できる
  • デジタルに馴染みがない世代、顧客層へアプローチが可能となる

デジタルの販促ツールについては以下のとおり多くのメリットがあります。

  • ペーパー素材よりもコストが低い
  • 編集、訂正などが容易で迅速
  • 相手を選択することが容易
  • 販促の効果測定が容易
紙(アナログ)とデジタルの使い分け、や組み合わせ例
  • 税理士の名刺:アナログ(2次元コードやホームページのアドレスを記載)
  • 所長税理士の紹介、スタッフの紹介:ホームページ
  • 事務所通信:アナログ

  • 所長税理士やスタッフの仕事紹介:ブログ、TikTok

  • 補助金の制度改正の概要:メルマガで紹介
  • 補助金の採択事例などの紹介:ホームページ、セミナー

  • 税制改正の概要:アナログとデジタルを併用

実績、実例を紹介

顧問先への情報提供は「この情報はより詳しく知りたい」「この補助金は自社でも使えそう」と関心抱かせるアピールがポイントです。

補助金の制度紹介とともに採択事例や自事務所の支援事例を記載するなどの方法があります。例として次の内容があげられます。

  • 後継者不在の顧問先への事務所通信において、事業承継補助金を紹介

         +

  事務所通信に自事務所による事業承継支援事例を紹介

  • 建築業の顧問先へ、ものづくり補助金の改正情報のDMを送信

         +

  DMの内容に建築業での採択事例の概要を掲載

         +

自事務所のホームページでより詳細な内容、着眼点、実績などを紹介

税理士紹介サービスへの登録

税理士を紹介するマッチングサービスを利用する税理士のメリット・デメリットは次のとおりです。

(税理士におけるメリット)

  • 離れた地域に所在する顧問見込み先を見つけることが可能である
  • 事務所のホームページ構築や広告を同時に請け負うサービスなどがある
  • 自事務所とあわない場合は謝絶することができる

(税理士におけるデメリット)

  • コスト(仲介手数料)がかかる
  • 相手側のニーズを汲み取りにくいことがある
  • 自事務所の営業ノウハウの向上につながりにくい

金融機関、支援機関との連携

金融機関からの紹介は経営者からの信頼を得やすく、顧問契約に至りやすいことがメリットです。また顧問先へのモニタリングの受注などにもつなげやすくなります。

金融機関からの紹介ルートを築く方法として、顧問先の経営者へ依頼する、事務所の改装や営業車両の更新時に融資を受けるなどのテクニックがあります。

また中小企業支援の専門機関からの紹介があげられます。よろず支援拠点、中小企業活性化協議会、事業承継・引継ぎ支援センターなどです。紹介を受けるにあたっては、今までの支援実績を求められることが多いといわれています。

セミナーへの登壇

税務や申告などのセミナーへの登壇により、参加者から見込み先を見つける方法です。例えば商工団体が主催する起業セミナーなどがあげられます。

創業(起業)予定者を見つける方法

創業(起業)予定者は税理士との接点がない人が多いため、顧問契約につなげやすい可能性があります。創業希望者との接点をもつためには次の方法があります。

  • 地方公共団体、商工会議所などが主催する起業セミナーの講師となる
  • 不動産業者、店舗用通信回線工事業者、中古什器販売会社からの紹介

顧問先が税理士に求めるニーズとタイミング

顧問先のニーズに合致した情報やサービスを、顧問先が知りたいと思うタイミングに提供することが、営業の成功率を高めます。

顧問先のニーズは『売上』『人材』『補助金・助成金』

顧問先の内部課題を大きくわけると、売上(販売政策、コスト高の転嫁)、求人難(人手不足)となります。
これらを解決するための新製品開発や人手不足対応のための省人化投資に使える補助金・助成金情報などへの期待が高くなっていると考えられます。

【引用】全国中小企業動向調査結果(2023年10月)|日本政策金融公庫

補助金・助成金・優遇税制の改正は営業のチャンス

経営者の関心が高い補助金・助成金・優遇税制は情報提供しやすいテーマです。また補助金・助成金の改正前後は情報発信の好機となります。

『省力化投資補助枠(カタログ型)』など新補助金が注目されています

令和5年度補正予算の成立に伴い、従来の大型補助金の改正が発表され始めています。例えば次の2つの補助金制度は関心が高いといわれています。

  • 省力化投資補助枠(カタログ型)
    人手不足解消につながるロボットなどをカタログから選択する補助金です。
    補助率2分の1、補助上限額は最大1,500万円(従業員数により異なります)

【引用】令和5年度補正予算の事業概要(2023年11月)|経済産業省

  • ものづくり補助金(省力化(オーダーメイド)枠)
    新製品・サービスの開発、生産プロセスなどの省力化に必要な投資が補助されます。卸・小売業、建築業なども対象です。
    令和5年補正予算に伴い、補助枠が変更となる予定です。改正後の概要は次のとおり3つの補助枠となり、補助率は最大3分の2、補助上限額は1億円です。(補助枠や従業員数により異なります。)

【引用】ものづくり補助金について(Ver.1.0)(2023年12月)|中小企業庁

税理士の営業力アップは事務所の差別化と効率化が必要

税理士の営業力は特長があるサービスの存在、そのサービスを提供できる時間的な余裕が必要です。具体的なサービスとともに紹介します。

増加する税理士事務所に埋もれない差別化戦略

ほかの事務所と差別化する方法としては次の例があげられます。

  • 資産税や外国取引など特定の分野における高い専門性
  • 顧問先の幅広いニーズに対応
  • ほかの事務所よりも低水準の報酬体系

自事務所の『強み』を磨き上げる

事務所の強みをもつことで顧問先へ効果的にアピールすることができます。例えば飲食業の経営ノウハウに詳しい、補助金申請への支援件数が多いなどです。

手放したくない記帳代行業務はアウトソースが効果的

事務所経営を効率化するためには定型業務の削減などが必要です。例えば記帳代行業務の全般をアウトソーシングする方法などがあります

経営革新等支援機関推進協議会(以下、単に協議会とします)の『おくるダケ記帳』は、顧問先が紙の領収書を送るだけで試算表の作成、残高あわせなどを丸ごとお任せできるサービスです。記帳代行に要する時間が劇的に削減されます。

時間がかかる販促ツールの作成はおまかせが有効

事務所通信など販促ツールを作成する時間も負担となります。税理士事務所向けに販促ツールを提供するサービスを利用することで効率化することができます。

協議会の会員事務所は、補助金の改正情報などを知らせる販促素材が毎月提供され、事務所名を入力するだけですぐに活用可能です。

顧問先のニーズを収集する仕組みをつくる

顧問先が知りたいと思うテーマを把握する方法として、顧問先へのアンケートなどが考えられます。

協議会が中小企業向けに提供する『FAS CLUB』であれば、顧問先への販促とリアクションがあった顧問先を事務所へ知らせる仕組みを導入できます。

スタッフの提案力アップは外部の研修を活用

事務所スタッフの研修は時間がかかります。税理士事務所向けの研修サービスを利用することで効率化が可能です。

協議会が提供する研修プログラム『ACADEMY』は、スタッフの教育訓練で時間がかかる財務分析と補助金・助成金などの提案ノウハウを身に付ける研修プログラムです。細切れ時間を有効活用できる動画視聴と実務を組み込んだカリキュラムで事務所スタッフのレベルアップが可能です。

また協議会の財務分析ツール『F+prus』を利用することで、顧問先の決算書に基づく財務分析と課題抽出などを自動化できます。金融機関目線を踏まえた分析が新人スタッフでも簡単に提供可能です。

まとめ

税理士数が増加するとともに顧問先のニーズが多様化している中、税務・会計業務だけではないサービスを提供する体制を整え、顧問先に効果的アピールすることが、顧問先から選ばれる事務所となることにつながります。

1,700以上の会計事務所が利用する経営革新等支援機関推進協議会に参加することで、事務所の効率化、付加価値が高い業務を推進するためのノウハウなどを定額(月額30,000円(税別))で利用可能です。(一部、月額サービス以外に料金が必要となります。)

税理士事務所経営の効率化、販売促進の仕組みづくりから付加価値サービスの拡充まで、協議会がトータルでサポートします。

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経営革新等支援機関推進協議会
経営革新等支援機関推進協議会は、株式会社エフアンドエムが運営する会計事務所向けの支援団体です。2014年4月に設立し現在では、全国1700以上の会計事務所が正会員として参画しており、中小企業支援制度についての勉強会・システム提供を通じて全面的にバックアップしている。