税理士事務所を開業するために必要となる資金の目安は200万円といわれています。自宅開業、事務所の設置などにより開業費用は大きく異なります。
目次
税理士事務所の独立開業に必要なもの
税理士事務所を開業するときに必要なものは主に次のとおりです。
事務所については自宅の一部を利用する、レンタルオフィスを使用するなどの代替方法があります。また勤務先の事務所から顧問先を引き継ぐ場合は金銭が発生することがあります。
- 事務所の敷金、保証金、前家賃、内装費用など
- 机、椅子、来客用ソファなど
- PC、スマートフォン、プリンターなどの事務機器
- OA用紙、ペンなどの事務消耗品
- 会計システム
- 名刺、チラシなど広告宣伝費用、ホームページの開設費用
- 税理士会入会費
税理士事務所の開業費用
税理士事務所の開業費用の目安は200万円といわれていますが、開業場所などにより異なります。
独立開業にかかる費用
開業費用の目安は200万円といわれています。自宅開業の場合は100万円以下、大型の事務所としてスタートする場合や立地条件が良い物件へ入居する場合は500万円を超えるケースもあります。
税理士事務所の開業に必要な費用の目安 | |
事務所の敷金や保証金、前家賃など | 5万円から50万円 |
コピー機など事務機器、事務用品 | 10万円から50万円 |
PC、ソフトウェア、プリンター | 10万円から30万円 |
広告宣伝費用 | 5万円から50万円 |
税理士会入会費 | 約20万円 |
合計 | 50万円から200万円 |
開業費用が大きく異なる要因は事務所にかかる費用です。事務所の立地が良い場合は敷金や保証金なども高額となり、家賃も高くなります。訪問型の業務を想定する場合は自宅の一部を事務所とすることで開業費用を抑えることができるほか、レンタルオフィスでスタートする方法があります。
なお独立開業時に「もっと費用をかけておくべきだった」といわれる項目が広告宣伝費です。
顧問先が思うように集まらなかった事務所の振り返りとして販促ツールや集客にかける費用の不足があげられています。
開業時に準備しておくべき運転資金
開業時には運転資金の準備が必要です。一般的には経費の3か月分から6か月分が目安とされているため、100万円から200万円が目安となります。
運転資金を準備しておくべき理由は、顧問料入金まで広告宣伝や人件費などの経費支出が先行するためです。顧問先が顧問契約を乗り換えるタイミングである確定申告の完了などを待つ間は売上が伸び悩む可能性があります。
税理士事務所の開業に必要な運転資金の例 | |||
費用の例 | 1か月分の場合 | 3か月分の場合 | 6か月分の場合 |
事務所家賃 | 10万円 | 30万円 | 60万円 |
事務所スタッフ人件費 | 15万円 | 45万円 | 90万円 |
水道光熱費 | 2万円 | 6万円 | 12万円 |
通信費 | 1万円 | 3万円 | 6万円 |
消耗品費 | 1万円 | 3万円 | 6万円 |
交通費、リース料、雑費など | 3万円 | 9万円 | 18万円 |
合計 | 32万円 | 96万円 | 192万円 |
運転資金は事業を軌道に乗せるための保険としてもっておくべき資金です。生活費の備えは別途確保しておくことが望ましいです。
税理士事務所の開業資金の準備方法
税理士事務所を開業資金は自己資金で準備しておくことが多いといわれます。
開業費用が不足する場合は、最小限の投資で開業することも可能ですが、事務所経営を安定化させるまでの期間が長くなる可能性が高まります。
事務所経営を早期に軌道にのせるためには借入について検討しておくことが望ましいです。
開業資金が不足する場合の調達方法
開業費用の準備が不足する場合の主な資金調達方法は次のとおりです。
- 地方公共団体が設けている新規開業資金の借入
- 日本政策金融公庫(国民生活事業)の創業融資の借入
- 親族、知人などからの支援
おすすめは地方公共団体の新規開業者向けの融資制度や日本政策金融公庫(国民生活事業)の新規開業資金(新創業融資制度)の利用です。制度の例は以下のとおりです。
開業資金を融資により準備することを通じて、顧問先への融資支援業務において必要となる金融機関の審査の流れや審査ノウハウを得ることができます。
<東京都中小企業制度融資『創業』の概要>
融資対象 | 以下に該当すること 都内に事業所(個人事業主の場合は事業所または住所)がある 信用保証協会の保証対象業種 事業計画を作成した創業予定者または創業(分社を含む)後5年未満 |
融資限度額 | 最大3,500万円 |
融資期間 | 設備資金10年以内(うち据置期間1年以内) 運転資金7年以内(うち据置期間1年以内) |
利率の特例 | 区市町村の認定特定創業支援等事業による支援または商工団体による創業支援の証明を受けた場合は利率を-0.4%低減 |
<日本政策金融公庫国民生活事業の新規開業資金(新創業融資制度併用)の概要>
融資対象 | 創業予定または事業開始後の確定申告が2期終わっていない事業者(創業予定の場合は自己資金を投資額の10分の1以上有していること) |
融資限度額 | 最大3,000万円(うち運転資金1,500万円) |
融資期間 | 設備資金20年以内(うち据置期間2年以内) 運転資金7年以内(うち据置期間2年以内) |
担保・保証条件 | 原則として無担保・無保証 |
融資利率 | 1.00%から3.50%(2024年1月6日現在) |
自己資金要件の特例 | 認定特定創業支援等事業による支援の証明を受けた場合などは自己資金10分の1以上の要件を撤廃 |
税理士の開業で成功するためのポイント
開業税理士が成功している理由は顧問先を獲得できていることです。
税理士事務所が顧問先を獲得するための主な方法は次のとおりです。
- 顧問先獲得のための営業に力をいれている
- 事務所に特長がある
税理士事務所における営業が成功するためのポイントは、ほかの事務所と差別化することです。
高度な専門性で難しい問題を解決に導く方法だけでなく、顧問先のさまざまな内部課題の相談を受けてサポートする方法などがあります。
税理士事務所の開業で成功するポイントは効率化と差別化
税理士事務所が成功するために必要となる差別化の方法は主に次の3つです。
- 得意分野のサービスを磨き上げ、高度な専門性を発揮する
- 顧問先となるターゲット層を絞り込む
- 税務・会計以外の業務に力をいれる
得意分野や特定の顧客層で競争するためには、高いレベルと実績が求められます。開業直後など実績が多くない場合は、税務・会計業務を中心に顧問先のニーズにあわせた顧問先支援を充実させる方法が確実といえます。
効率化で付加価値業務を推進
付加価値が高い業務を推進するためには、事務所の経営を効率化する必要があります。顧問先あたりの単価や税理士1名で担当することができる顧問契約先数には限度があるためです。
会計事務所における効率化の主な例は次のとおりです。
- 税理士事務所向けの財務分析ツール、販促ツールの利用
- 財務分析や補助金申請サポート業務についての研修プログラムの活用
- 記帳代行業務のアウトソーシング
差別化は税務会計+支援業務
事務所の効率化によって時間を確保し、事務所の差別化につながり、付加価値が高い業務を拡充します。主なサービスの例は次のとおりです。
- 補助金申請における申請書作成のサポート
- 優遇税制の適用についてのアドバイスや書類作成の支援
- 財務分析、経営分析に基づく財務改善のアドバイス、伴走支援などのサポート
- 事業承継へのサポート
まとめ
税理士事務所の開業資金の目安は200万円であり、自宅開業などで費用を抑えることが可能です。
事務所の開業後に最も重要なことは顧問先の獲得です。顧問先を獲得してゆくためには同業事務所との差別化が求められるため、顧客支援業務など付加価値が高く、顧問先における満足度が高い業務に力をいれることができる事前準備が大切です。
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