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成長する税理士事務所は何をしている?研修実施状況と事例を解説

成長する税理士事務所は何をしている?研修実施状況と事例を解説

成長している税理士事務所は、スタッフに対する教育研修体制を整えています。
研修はスタッフのスキルとモチベーションを高めるとともに、人材の定着と円滑な採用、事務所の競争力強化へつなげるために大切です。

本記事では、税理士事務所における社内研修の実施状況と、成長している税理士事務所の実践例について解説します。

税理士事務所の社内研修の実施状況

税理士事務所のスタッフの成長は、事務所全体の業務の質と量、そして効率の改善に直結します。

全国1,700以上の会計事務所が参加している経営革新等支援機関推進協議会がおこなったアンケートによると、アンケートに回答した事務所の83%で研修が導入されていますが、研修テーマについては違いがあります。

社内研修の実施率は83%

上記のアンケートによると、83%の事務所でスタッフへの研修が導入されています。
研修方法別にみると『社外の研修への参加』が43%と最も多く、次いで『動画コンテンツの視聴』が33%、『社員による研修』が20%となっています。

税理士事務所におけるスタッフへ研修の実施状況
研修方法

1名あたりの年間研修費用は2極化

税理士事務所がスタッフ1名あたりにかける年間研修費用は「3万円以内」が53%であり、年間「10万円」を超える研修コストを投じている事務所は、全体の15%に上ります。

事務所の従業員数規模別でみると、スタッフ数が多い事務所ほどスタッフ1名に対してより多くの研修費用を投じる傾向があります。

スタッフ1名あたり年間研修コスト、一人あたり従業員数別研修コスト

研修内容は本業のスキルアップ、次いで顧問先支援サービス

スタッフへの研修内容をみると、本業である税務会計についての研修実施率は100%です。
税務会計以外の研修内容としては『顧問先への付加サービス』が大きな割合を占めます。
スタッフ数が多い事務所は『顧問先への付加サービス』に重きを置いていることに加えて、『マネジメント』研修にも力を入れています。

税務会計以外の研修内容

社員研修の最大のネックは時間と社員の意欲

税理士事務所における研修の課題として『時間が取れない』が38%を占めており、次いで『スタッフの参加意欲がない』が19%、『受講しても成果につながらない』が16%と続きます。
研修に投入する時間の確保が難しいとともに、スタッフにあわせた研修カリキュラムや実務実践を想定した研修の導入などが必要であると推測されます。

税理士事務所における研修の課題

スタッフへの研修は定着率の向上と事務所の成長へとつながる

税理士事務所においてスタッフへの研修・教育をおこなう主なメリットは次の4つです。

スタッフへの研修・教育をおこなう主なメリット
  • 「スタッフの成長促進」スタッフのスキルアップと事務所の収入増加
  • 「定着率の改善・人材の獲得」スタッフが仕事にやりがいを感じることによる人材の定着
  • 「事務所の成長」離職率の低下によるスタッフが『働き続けたい』と思う事務所への成長

スタッフの成長促進

適切な研修によってスタッフのスキルアップが期待できます。スタッフがスキルアップすることによるメリットは次のとおりです。

スタッフがスキルアップすることによるメリット
  • スタッフの業務品質が向上し、ミスやトラブルが減少する
  • スタッフが対応可能な業務の幅が広がる
  • スタッフ自身が成長を実感できる
  • スタッフが将来のキャリアプランを描きやすくなる
  • 各スタッフのスキルアップにより、事務所全体としてサービスの水準が向上する

定着率の改善・人材の獲得

スタッフが自身のスキルアップを実感することで自信につながり、業務の幅が広がることで、顧問先から感謝される機会が増えるため、仕事に対するやりがいを感じやすくなります。

仕事にやりがいを感じているスタッフは離職しにくい傾向にあり、スタッフの定着率が向上し、人が辞めない事務所として採用面においても有利となります。

事務所の成長

スタッフが対応可能なサービスが増えることで、顧問先から顧問料や申告報酬だけでなく、財務支援の報酬や各種計画書の作成報酬などを得ることができます。

事務所として収入が増えることでスタッフへの還元を増やすことができ、スタッフが安心して働き続けやすくなります。

税理士事務所の社員研修で成長している3つの事例

スタッフへの研修は、スタッフごとのレベルにあわせた内容とすることが効果的です。効果的な研修を実施し、人材育成で成長している事務所の例は次のとおりです。

開業5年で売上高1億円となった事務所

開業5年で売上高1.2億円を達成した石黒健太税理士事務所は、未経験者を戦力化するために研修とロールプレイングを組み合わせています。主な取り組み内容は次のとおりです。

石黒健太税理士事務所の主な取り組み
  • 業務の標準化、マニュアルの整備
  • 顧問先の投資予定などのイベント管理表の導入とロープレによる習熟研修の実施
  • 未経験者が理解しやすい動画研修の導入
  • 研修にあわせたロープレによる知識の定着

パートスタッフ2名で再構築補助金7件を申請した事務所

顧問先130社を超える濱崎税理士事務所は、事業再構築補助金1次公募の申請7件をパートタイム2名でおこないました。
スタッフ8名がすべてパートタイムの同事務所では、外部の専門家や事務所外の研修を活用することでパートタイムのスタッフが力を発揮できる仕組みを作っています。

濱崎税理士事務所の主な取り組み
  • 他分野の士業(行政書士事務所)と連携
  • 経営革新等支援機関推進協議会の添削サービスを活用
  • 同協議会の動画研修講座と実務体験型プログラム『ACADEMY』活用による育成

スタッフがやりがいを感じる業務を推進している事務所

SS総合会計は、財務コンサルティングを中心とした付加価値が高い業務を推進しています。

顧問先の満足度が高い業務を推進することで、スタッフが自らの仕事に自信をもちやすくなるため、スタッフ定着率の向上につながるでしょう。

この事務所ではパートタイムのスタッフが活躍できるように、以下の取り組みをおこなっています。

SS総合会計の主な取り組み
  • 新人スタッフ研修に専属トレーナーを配置し、相談しやすい体制を構築
  • スケジュールシステムと予実管理システムで作業時間を把握
  • 工程と業務を一覧とした育成カルテを作成し、スタッフごとの課題や成長を可視化

協議会では成長する事務所の事例を数多くご紹介

同業他事務所における人材育成を知る機会は少ないため、自事務所のやり方でよいか不安となることがあるでしょう。特に、人材採用・人材育成については知る機会が限られています。

同業他事務所における成功例、自事務所で実践したい取り組み内容を知りたい会計事務所さまは、経営革新等支援機関推進協議会をご活用ください。

経営革新等支援機関推進協議会は、会計事務所の経営や付加価値業務の推進をトータルでサポートしており、全国の会計事務所1,706事業所(2024年4月時点)が参加しています。

税務会計を中心に周辺業務をワンストップでサポートするサービスが月額30,000円(税抜)で利用可能です。

また、経営革新等支援機関推進協議会は、新人スタッフを即戦力化する財務分析・計画作成支援ツール『F+prus』(エフプラス)や各種マーケティングツールも提供しています。
さらに、年間5,000事務所が参加する会計事務所限定の無料セミナーも開催しており、同業事務所はどのように人材育成、定着率の向上に取り組んでいるか、そして明日からでも導入したいアクションなどを知ることができます。

まとめ

税理士事務所におけるスタッフ向けの研修は、スタッフの成長を促し、業務へのやりがいを高め、定着率の向上を通じて事務所が成長するために不可欠です。
スタッフへの研修の計画と実施においては、スタッフごとのニーズやキャリアプランを考慮した内容にすることで効果を生みますが、効果的な研修をおこなうためには時間やコストがかかります。

自事務所に応じた効果的かつ効率的な研修の導入、実務実践を想定した研修によるスタッフの育成など、会計事務所経営のお悩みは経営革新等支援機関推進協議会がトータルでサポートします。

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経営革新等支援機関推進協議会
経営革新等支援機関推進協議会は、株式会社エフアンドエムが運営する会計事務所向けの支援団体です。2014年4月に設立し現在では、全国1700以上の会計事務所が正会員として参画しており、中小企業支援制度についての勉強会・システム提供を通じて全面的にバックアップしている。