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ChatGPTで会計業務を効率化!基本的な活用方法からプロンプトまで大公開

ChatGPTで会計業務を効率化!基本的な活用方法からプロンプトまで大公開

会計業務はAIの活用で効率化できるといわれていますが、使いこなせていないと感じている方も多いかもしれません。本記事では、ChatGPTを実際に業務で利用し、顧問先の資金調達や補助金申請などを推進している大野修平先生(セブンセンス税理士法人)の、ChatGPTをフル活用する簡単なコツ、「これをしたかった」を実現する使いこなし方について、わかりやすく解説します。

ChatGPTとは? 驚きの仕組みと活用術を徹底的に解説!

ChatGPTは自然対話型AIの代表例です。自然対話型AIは人との会話感覚で使うことができますが、AIの中身は会話ではありません。
ChatGPTなど大規模自然言語モデルのAIの仕組みは、ある単語の次に来る言葉を推測し、連続する可能性が高い単語を並べる構造です。
このため同じ内容を入力しても回答が異なる、ハルネーション(AIが事実に基づかない情報を生成する)などが発生する可能性があります。

従来のコンピュータとの違い

従来のコンピュータとAIとの違いは、定型と非定型の違いといえます。
コンピュータによる処理は定形であり、人が決まった形で入力したデータを定形に処理し、定形にアウトプットします。

これに対しChatGPTなどのAIは、雑多な入力データを確率論的に処理します。アウトプットは定形ではないため、差異が生じます。

効率的な活用法

ChatGPTを効果的に使うコツは、「手元に何の資料があるか」「その資料でAIに何をさせたいか」を明確とすることです。

ChatGPTに作業してほしい例として、データの集計、資料の取りまとめ、繰り返し実行する作業、ほかの人に任せられない作業などがあげられます。

プロンプトの基本形

ChatGPTに作業させるときは「プロンプト」と呼ばれる指示文章を入力します。このプロンプトが明確であるほど、より求めるものに近い回答が得られます。
ChatGPTをより正確かつ最大限に活用するプロンプトを作成するためには、次の4つのポイントをおさえると良いでしょう。

#前提(プロンプトの前提となる事項)
#命令(ChatGPTにやってほしいこと)
#制約条件(命令を実行する前に考慮してほしいこと)
#出力形式(出力する形式)

これだけは覚えておきたい!GPTの機能

ChatGPTはバージョンアップによって多機能化し、使いやすくなっています。是非とも使いたい機能は次の2つです。

GPT-4V

GPT-4Vは複数種類のデータをもとに情報を集め、出力可能なマルチモーダルAIです。
画像・音声・動画・数値などを扱えるため、ChatGPTが“視覚”や“発声”機能をもつこととなりました。この機能の活用例は次のとおりです。

例:電卓の撮影画像

#これをiPhone用アプリにするステップとコードを教えて。

例:ドリンクの陳列棚の撮影画像

#風邪気味のときに飲むといいドリンクを教えて。

例:レストランのメニュー画像

#ランチメニューを英語にしてほしい。

DALL·E 3

DALL-E3はイメージを画像化する機能に長けています。
例えば顧問先を集めるセミナーの開催案内、講演会の表紙イメージの作成などが簡単にできます。

GPTs

GPTsとは専用のGPTを簡単に作成できるツールのことで、カスタムGPTとも呼ばれます。
さまざまなことができるChatGPTを自然言語でカスタマイズし、作成したGPTをほかの人へ共有することも可能です。

例えば、業種を入力するだけで、おすすめの経営戦略を提案してくれる専用GPTを作成するなどの使い方があげられます。

GPTsでオリジナルのAIを作るためには有料プランでの利用が必要です。

意外と知らない?ChatGPTが苦手なことと注意点

ChatGPTは誰でも簡単にさまざまな作業ができるAIですが、不得意なことや利用にあたっての注意点があります。

苦手なこと

ChatGPTなどのAIが苦手とする作業の例は次のとおりです。

  • 過去のデータに基づかない作業
  • 学習させていない情報に基づく作業
  • 新しいことを創造する作業
  • 人の気持ちを汲み取る、理解することが必要な作業

使用時の注意点

AIを専門家が業務において利用するためには下記の注意点があります。

  • ファクトチェック(事実確認)をおこなう
  • 専門家として検証する
  • 情報漏えいリスクに気を付ける

顧問先との契約によっては、ChatGPTへの入力が事務所外のシステムへの情報流出に該当する可能性があります。事務所でAIを利用するときは、顧問先や個人の情報の入力範囲、作業者についてルールを決めておくことが望ましいです。

会計事務所で大活躍!ChatGPTの具体的な活用事例を公開

ChatGPTで会計業務を効率化する具体的な活用方法を5つ紹介します。いずれも手元にある素材を使ってChatGPTを簡単に活用できます。

活用事例①仕訳

撮影したレシートなどの写真データをChatGPTへアップロードし、仕訳作業をさせる使い方です。
数値やデータはcsv形式へ変換してからアップロードする必要はありません。PDFファイルなどはそのまま読み込ませることができます。

活用事例②契約書チェック

契約書をChatGPTにアップロードし内容をチェックしてもらう、改善点を提案してもらう使い方です。漠然とした質問に対する回答や修正希望に対しても対応可能です。
例えば「こういった内容の条項が含まれるか教えて」「甲に不利な条項を示して」などの質問をスクリプト入力するだけで、該当する条項を契約書から抽出してくれます。

あるいは「この契約書を改善して」と入力するだけで、当事者にとってよりよいと考えられる修正案を提案させることができます。

活用事例③決算訪問時のトークスクリプト作成

ChatGPTの自然対話機能を使って、「会話の壁打ち練習」ができます。新しい制度や商品を説明する準備、新人スタッフの面談練習などに活用できます。
この使い方のスクリプト例は次のとおりです。

スクリプト例

#前提
弊社は税理士事務所です。クライアントから受け取った決算数値をもとに、クライアントの良かった点と改善すべき点についてアドバイスをしている。

#命令
以下の財務情報をもとに、弊社のスタッフがクライアントへ説明するトークスクリプトを作成してください。

#制約条件
・データの読み上げではなく、データから読み取れることをクライアントへ伝える。

・丁寧な言い回しで伝える。

・よりよい分析のためにクライアントへ質問したほうがよいことがあれば提示してください。

・財務指標における改善点があれば、具体的に指摘してください。

・改善案を提示するために追加の情報が必要な場合は私に聞いてください。

#財務情報
経済産業省のローカルベンチマーク(ロカベン)の財務分析シートのうち、基本情報部分を挿入する、申告書の画像データを読み込ませてから指示するなどのやり方があります。

活用事例④採用面接の質問事項作成

求人への応募者との面接に役立つ質問を作成させる使い方です。
以下の例は経済産業省が発表している『社会人基礎力』を求める人物像として利用したスクリプトです。

スクリプト例

#命令
弊社は税理士事務所です。採用面接の際に、社会人基礎力としてあげられている3つの能力と12の能力要素を判断できるような質問を求職者にする予定です。
12の能力要素別にどのような質問をし、その回答をどのように判断すればよいか教えてください。

#追加命令
面接する側における質問の意図を求職者がわかってしまうと、求職者が高評価を得られる回答をしてしまう可能性があります。
従って、なるべく質問の意図を求職者に読み取られない質問を考えてください。
その場合は判断も難しくなるため、どういった点に着目すればよいかを具体的に教えてください。

【参考】社会人基礎力|経済産業省

活用事例⑤国勢調査データの分析

膨大なデータから読み取れる内容を回答させる使い方です。初めて目にする統計やデータが多い統計資料を読み取るときに便利です。

スクリプト例

#命令
読み込んだ資料が何のデータであるかを教えてください。
このデータから読み取れる傾向を教えてください。

#追加命令
都道府県別の傾向を教えてください。意外な発見があるといい。分析結果をわかりやすくグラフや表で表してください。

業務効率化のカギ!会計事務所向けGPTの作り方を伝授

人とChatGPTが役割を分担することで、会計事務所の業務を効率化できます。また自事務所でやりたいことを叶えるGPTは自分で作ることができます。


作成例として『インボイスわかるもん』というGPTを作成する流れを示します。


まず、ChatGPTのページにある「My GPT」(マイGPT)から「Create GPT」(+作成する)を起動します。

「Create」(作成する)画面を使う場合:ChatGPTと会話しながら作成

  1. プロンプトを生成または直接入力
  2. プレビューでGPTの画面や挙動を確認
  3. 会話を繰り返し改善
  4. 「作成する」でGPTsが完成
  5. Saveからリンクを発行

「Configure」(構成)画面を使う場合:自分で入力して作成

  1. 「名前」GPTsの名前を入力
  2. 「説明」ユーザー画面で最初に表示される説明分を入力
  3. 「指示」プロンプトを確認
  4. 「会話の開始者」ユーザー画面で最初に表示される会話導入ガイドの文言を入力
  5. 「知識」AIに学習させたいデータがあれば添付
  6. 「機能」実装させたい機能を選択

プロンプト例

GPTを生成するときに最も大切な項目がプロンプトです。
今回使用したプロンプトは次のとおりです。

あなたは優秀な日本のインボイス(=適格請求書)コンサルタントです。

ユーザーは日本のインボイスに関する質問を入力し、その回答に特化したコンサルタントです。

ユーザーが入力した質問は、すべて日本のインボイス(適格請求書)に関する質問と想定してください。

ユーザーが入力したインボイスに関する質問について、Knowledgeの各PDFを参考にして回答してください。

関連する項目が見つからない場合にはWEBをブラウジングして答えをリサーチしてください。

特に国税庁サイトは重要です。

また、会計事務所や税理士事務所のブログ記事なども重要です。

さらに、freeeやマネーフォワード、弥生会計などの会計ソフト会社の記事も重要です。

不明な用語については、政府機関のドメインなどの一次資料をオンラインで検索し、正確な情報を提示してください。

解決できない場合は、わからないと回答してください。

あなたの役割は、日本のインボイスに関する質問に専門的かつ正確に回答することです。

ナレッジ例

上記で生成したGPTに学習させる資料は、既に公開されているデータを使うことが最も簡単です。例えばインボイスに関するGPTであれば国税庁のQ&Aを学習させるなどです。

使い方の応用として、Chat中に@マークを入力するとGPTsを呼び出すことができ、会話の途中からGPTsを動かすことができます。

まとめ

上記のようにAIの活用は日々進化しており、AIを使いこなして効率的に業務を進める税理士へ顧問先が移っていく可能性があります。

ChatGPTが得意な作業は積極的に活用し、課題発見やAIへの指示・出力物のブラッシュアップなどに専念するなど、AIとの協働で事務所を発展させていきましょう。

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