税理士事務所の人手不足が続く中、税理士試験の日程が発表されました。2025年における税理士試験の合格発表は2025年11月28日です。近年は2科目合格者などの“青田買い”採用も多いといわれており、税理士の採用は事務所の“採用力”により差がつく可能性があります。
本記事では、税理士採用の状況と中小人数事務所が税理士の採用をすすめる方法を解説します。
目次
税理士採用の4大悩み「少ない」「選べない」「コストがかかる」「定着しない」

人手不足に悩む税理士事務所においては、採用における悩みごとには共通点があるといわれています。共通点を大きくわけると「応募が少ない」「経験の有無などを考慮して選べない」「採用コストがかかる」、そして「採用しても定着しない」の4つです。
採用したいが求人を出しても「応募が少ない」
求人を出しても応募者が来ない、応募者が少ないという悩みごとがあります。
経験者や適した人材を欲しいが「選べない」
経験者を求めているが応募がない、応募者数が少ないため事務所に合う応募者を選びにくいなどの悩みごとがあります。
採用にかかる「コスト」が高い
採用コストが負担となるという悩みごとがあげられます。特に複数の転職サイトを利用している場合、人材紹介会社を経由して採用する場合などが該当します。
採用できたのに「定着しない」
採用した人が長続きしないなどの悩みごとがあげられます。
税理士は有効求人倍率2.36倍の売り手市場
厚生労働省が運営している職業情報紹介サイト「job tag」によると、税理士の有効求人倍率は2.36倍、求人賃金は34.6万円(いずれも全国平均)の“売り手市場”となっています。
税理士の求人倍率は東京・大阪で高水準
税理士の有効求人倍率は、地域によって異なります。上記の厚生労働省「job tag」で都道府県別にみると、東京都、大阪府が高く、そのほかの地方はやや低くなります。
【税理士の有効求人倍率】
地域 | 有効求人倍率 |
全国平均 | 2.36倍 |
東京都 | 2.27倍 |
神奈川県 | 1.22倍 |
千葉県 | 1.75倍 |
大阪府 | 2.97倍 |
福岡県 | 1.01倍 |
税理士の平均求人賃金は月額34.6万円で都会・地方も同水準
上記の厚生労働省「job tag」によると、税理士の求人賃金は月額34.6万円(全国平均)です。求人賃金は地域により大きな差はなく、地方においても都心部と同等の求人賃金となっています。
【税理士の求人賃金(月額)】
地域 | 求人賃金(月額) |
全国平均 | 34.6万円 |
東京都 | 26.8万円から47.7万円 |
神奈川県 | 31.2万円から45.4万円 |
千葉県 | 23.6万円から39.5万円 |
大阪府 | 25.7万円から43.7万円 |
福岡県 | 29.2万円から51.6万円 |
税理士の平均求人賃金は高い水準が続く
上記の厚生労働省「job tag」では、税理士の求人賃金(月額)の推移を発表しています。2024年における税理士の求人賃金(月額)は高い水準が続いています。
【税理士の求人賃金(2024年、月額、全国平均)】(単位:万円)
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 |
34.4 | 35.3 | 37.4 | 32.8 | 36.6 | 36.0 | 33.5 | 33.3 | 32.5 | 35.8 | 33.7 |
税理士を採用する6つの方法とメリット・デメリット

税理士を採用する方法は事務所によってさまざまであり、主な税理士の採用方法とメリット・デメリットをまとめると次のとおりです。
ハローワークのメリット・デメリット
少人数の税理士事務所における主な採用方法は、ハローワークを経由した求人です。
(メリット)
- コストが低い(掲載費用は無料)
- 公的機関が運営し、安心感が高い
- 最低掲載期間がない
(デメリット)
- 求職者の目に留まる求人票となるテクニックが必要
- 定期的に求人票の見直しが必要(新規求人以外の注目率が低くなる傾向がある)
求人サイトのメリット・デメリット
求人・転職サイトへ掲載する採用方法があげられます。
(メリット)
- 閲覧数が多い
- 求人票などの表現方法を、専門家により添削してもらえる
(デメリット)
- 掲載コストがかかる
- 求人サイトによって登録者の特徴が異なる
- 最低利用期間が設定されている
人材紹介会社のメリット・デメリット
人材紹介会社を経由する採用方法があげられます。
(メリット)
- 採用までの期間が比較的短い
(デメリット)
- 紹介コストが高いことが多い
自社求人(ホームページ、SNSなど)のメリット・デメリット
税理士事務所のホームページに求人ページを設ける、SNSで募集するなど、事務所が主体的におこなう採用方法があげられます。
(メリット)
- コストが低い
- 事務所の雰囲気、現有スタッフの特徴などを伝えやすい
(デメリット)
- サイトの更新、掲載物の作成などが負担となる
縁故・紹介(リファーラル採用)のメリット・デメリット
知人やスタッフ、顧問先などを経由し求職者を紹介してもらう方法です。
(メリット)
- コストが低い
- 事務所の雰囲気などを伝えやすい
(デメリット)
- 紹介者によっては採用を見送りにくいことがある
アルムナイ採用のメリットデメリット
アルムナイ採用とは、一度退職した従業員に再度入社してもらう採用方法のことです。OB採用、カムバック制度とも呼ばれ、近年注目されています。
(メリット)
- 経験者を採用できる
- 業務や事務所の雰囲気などを理解してもらいやすい
(デメリット)
- 再入社時の評価方法や待遇を見直すことが必要となる
- 現有スタッフの退職ハードルが低くなる可能性がある
税理士の採用で「やってはいけない採用方法」と「望ましい採用サイクル」とは
税理士事務所でやってはいけない採用方法とは、応募者を選ぶ余裕がない状態で募集と採用を繰り返すことです。
やってはいけない採用方法の弊害
上記のような良くない採用サイクルは、事務所全体が疲弊することとなってしまう可能性があります。その理由は次の「良くないサイクル」となってしまうためです。
- 人材育成ができない
- 離職者が発生する
- 人手不足で採用をおこなう(欠員募集的な採用をしてしまう)
- 早期離職が発生する
税理士採用を最適化する「望ましい採用サイクル」
税理士の採用を最適化する方法をまとめると、次の「望ましい採用サイクル」とすることが必要です。応募者の量を増やし、質を向上させる“採用力”と、人材を育成する事務所の体制が、スタッフの定着率向上により人手不足を解消させ、急な採用や新人育成にあわてることがなくなります。

税理士の採用方法はこれ!“採用力”を高める7つの方法
採用コストやノウハウに課題がある中小人数の事務所が、税理士の採用で成功するためには、“採用力”が求められます。中小人数の税理士事務所が採用で成功するための基本ポイントは次のとおりです。
税理士採用への応募者「量」を増やす4つの方法
税理士の採用への応募を増やすための方法として次の4つがあげられます。
方法①:人手不足となる前から募集開始する
人手不足となっていなくとも、採用募集しておきましょう。
自事務所に合う人材、欲しい人材がタイミングよく応募してくるとは限らないためです。募集期間中はコストがかかるため、無料または低額で募集情報を掲載できる採用媒体がおすすめです。
方法②:求人条件を見直す
給料や休日数などは、現在の採用市場に合った条件としましょう。
給料水準は高ければよいと限りません。地域や職種、応募者の年齢などに合わせて設定することが必要です。採用に詳しい専門家のアドバイスを受けることが効率的です。
方法③:人材育成体制を整える
人材育成制度を整備しておきましょう。
人材が育ちにくい職場は離職者が発生しやすく、再度、採用にコストをかける事態となってしまうためです。
方法④:未経験者の採用を視野に入れる
即戦力となる経験者の採用が好ましいですが、現在は売り手市場です。
人材育成制度を整えておき、未経験者であっても採用して育成できる体制であると、経験の有無にかかわらず、事務所に合った人材を採用しやすくなります。
税理士採用への応募者の「質」を高める3つの方法
応募者の質を高めるための方法として、次の3つがあげられます。
方法⑤:現有スタッフに似た性格の応募者を採用する
採用応募者が採用後に長く活躍できるか見抜くことは困難です。採用後も定着する可能性を高めるため、現有スタッフに近い性格の人を採用することを検討しましょう。
方法⑥:事務所の雰囲気を公開する
ホームページやSNSを活用し、事務所内の業務風景やスタッフ紹介を公開しておく方法です。あらかじめ事務所の雰囲気を公開しておくことで、“入社後ギャップ”を低減する効果が期待できます。
方法⑦:経験者優遇か未経験者歓迎か決めておく
即戦力となる経験者を採用したいと考える事務所は多いでしょう。しかし、人材不足が続く中で経験者を採用しようとする場合、競争が厳しいかもしれません。
未経験者についても採用の間口を広げておき、事務所に合った人材を採用することも検討しておきましょう。
税理士の採用方法見直しから育成まで、経営革新等支援機関推進協議会がまるごとサポート
税理士事務所における採用方法の見直し、人材定着などに悩みごとがある事務所様は、経営革新等支援機関推進協議会のサービスをご検討ください。
本協議会は、税理士事務所様の採用から人材育成までを一気通貫にサポートするサービスを利用できます。主なサービスは次のとおりです。
「求人票のサンプル提供、求人票の添削」で応募数を増やす
採用の専門家が監修した「税理士事務所向けの求人票サンプル」を利用できます。自事務所の求人票を作成する際の参考となります。
また「ハローワーク求人票の添削サービス」を利用することで、より応募へつながる求人票となります。
「求人分析」で“より選ばれる応募条件”へ見直す
採用を増やす方法は給料を増やすだけではありません。地域や同業者と比較した適切な求人条件とする「求人分析」サービスを利用できます。
求人だけでなく、事務所の労働環境の分析にも役立ちます。
「求人関連個別相談」で事務所にマッチする求人方法を選ぶ
「事務所に合う求人媒体がわからない」「採用コストを抑えたい」「若い世代の就業観がわからない」など事務所の悩みごとに応じた解決策の提案を利用できます。
「ACADEMY」で採用する側のスキルアップをすすめる
税理士の採用をすすめるためには、採用する側のスキルアップも必要です。
面接における“NGワード”は何か、応募者を惹きつけるトークとは何かなどを動画研修「ACADEMY」で身につけることができます。
「パーソナリティ診断」で応募者を客観的に評価
採用応募者の特性(パーソナリティ)を客観的に把握できる「パーソナリティ診断」を利用できます。
応募者の「粘り強さ」や「ストレス対処法」などの特性を客観的に診断し、選考過程にモノサシを導入できます。インターネット上で迅速に診断結果が出るため、診断結果を見ながら面接することが可能です。
「動画研修」でビジネス教養から監査担当者育成までをサポート
新人スタッフのビジネスマナ-から監査担当者の育成まで、豊富な動画研修を利用できます。多くのテーマと効率的なカリキュラムで、スタッフの経験やキャリアプランを踏まえた育成プログラムを導入できます。
「セミナー」で採用がすすむ事務所の実践例を公開
経営革新等支援機関推進協議会は、全国約1,700の会計事務所様にご参加いただいており、人材採用と育成に成功している会員事務所様が多数あります。
採用に成功している事務所や、その実践例を会員向けセミナーで公開しています。
まとめ
税理士の採用は売り手市場となっており、採用する事務所側がしっかりと採用に取り組むことが求められます。また若い世代は働き方に関する考え方が変わってきており、対応に悩むこともあるでしょう。
税理士の採用方法を見直ししたい会計事務所様、人材採用や育成に悩みごとがある事務所経営者様はお気軽に経営革新等支援機関推進協議会へご相談ください。