キークレア税理士法人は、財務コンサルティングと「働きやすさ改革」を両立し、経営革新等支援機関推進協議会が実施する「ホワイト事務所賞」を受賞しました。
本記事では、代表税理士である三嶋先生のお話をもとに、評価制度・働き方・顧問料の設計・若手育成のしくみまで、事務所運営の中身を掘り下げます。
キークレア税理士法人はどのような事務所ですか?
キークレア税理士法人は、税務だけでなく財務改善・資金調達までを一気通貫で支援する専門家チームです。三嶋先生は現在、7社からなるグループの代表として企業の経営・財務・労務・法務まで幅広く支援しています。
グループ内には、税理士法人だけでなく、財務・金融・社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士・クラウド会計の専門家が含まれており、ワンストップのサポート体制を築いています。
また、顧問先の多くは成長志向の企業です。若い経営者が多く、「支店を広げたい」「分社化を進めたい」といった相談が中心。「これから会社を拡大するためにどうお金を回すか」というテーマの相談が多いのが特徴です。
なぜ「ホワイト事務所賞」を受賞できたのですか?
近年、会計事務所業界でも「働きやすさ」や「職員定着率の向上」を重視する動きが高まっています。
そうした中で、キークレア税理士法人は経営革新等支援機関推進協議会が実施する「ホワイト事務所賞」を受賞しました。
では、どのような取り組みが評価されたのでしょうか。
受賞理由は大きく2つあります。
受賞理由①「働きやすい職場づくり」に本気で取り組んでいる
自由度の高い働き方や、明確な評価制度、意見を吸い上げてすぐ反映する仕組みなど、スタッフ主体の運営が実装レベルで回っています。
受賞理由②財務コンサルティングの高度化
単なる税務顧問ではなく、資金調達の見直し・借り方の再設計・早期経営改善計画の策定サポートまで行い、顧問先の成長を財務面から支える体制を持っている点が評価されました。
つまり「ホワイト(働きやすさ)×ハイバリュー(高付加価値サービス)」を両立している点が、受賞の決め手になりました。
事務所の評価制度・給与制度はどのようになっていますか?
キークレア税理士法人には、評価と給与を連動させる明確な仕組みがあります。ポイントは3つです。
①基本給はMBOで査定(半年ごと)
- MBO(目標管理制度)を導入し、スタッフを定量評価。
- 半年に1回(年2回)のタイミングで、最大10段階の評価を実施。
- その評価は基本給に反映され、上下します。
「評価はするが、給与は変わらない」という事務所も多いですが、キークレア税理士法人の場合は評価と給与が必ずセットで動きます。賞与もこのMBO査定結果に直結します。
②担当者手当(歩合的なインセンティブ)
担当スタッフの取り組みや成果が、評価制度を通じて適切に給与にも反映される仕組みを整えています。
「価値提供や生産性の向上が、自身の評価にもつながる」設計により、主体的に成果を生み出そうとする前向きな文化が根付いています。
③顧客満足度が低いと賞与が下がる
売上だけでは評価は完結しません。
担当先の満足度が低い・フォローが雑、といった状態だと、賞与で減額されます。
「案件をいっぱい持っているけど雑」という働き方がそのまま通用しない仕組みになっていて、担当者は“売上”と“満足度”の両方を意識せざるを得ません。
この3つの組み合わせにより、以下の両方が現場レベルで浸透しています。
- 数字にコミットする姿勢
- 顧客に向き合う姿勢
「意見箱」はどんな運用をしていますか?
評価制度や働き方の柔軟性と並び、職員の声を経営に反映する仕組みもキークレア税理士法人の特徴です。
その象徴が「意見箱」の制度。
多くの事務所でも導入されていますが、キークレア税理士法人ではどのように運用されているのでしょうか。
キークレア税理士法人の特徴は“運用が徹底していること”です。
- 匿名/記名、両方の投稿ルートがある
- 「問題点+改善案」をセットで提出するルール
- その改善提案はMBO評価に反映され、賞与にも影響
さらに、ここからが本質です。
週1回、部長・課長クラスが全件を必ず検討します。
1件1件に対して、翌週に必ず回答します。採用・不採用どちらでも「なぜそう判断したか」まで返すのがルールです。
「言ってもどうせ変わらない」が最も士気を下げるため、スタッフの声が放置されない仕組みが制度として機能しています。小さな改善もどんどん現場実装されているとのことでした。
スタッフにとっては、「現場の困りごとをちゃんと経営が見ている」という納得感につながります。これが離職防止にも直結します。
顧問先への支援スタイルの特徴は?(財務コンサル・資金調達支援)
働きやすさの整備だけでなく、顧問先への支援の質の高さもキークレア税理士法人の強みです。どのように企業の成長を財務面から支えているのかを見ていきます。
キークレア税理士法人は「記帳・申告」だけではなく、財務の現場に入り込みます。
主なサポートは次のとおりです。
- 早期経営改善計画の策定支援
- 資金繰りや借入の見直し(“どこから、どう借りるか”という再設計まで踏み込む)
- 財務コンサルティング(予実管理だけでなく、資金調達・再編・借り換え支援まで)
- 金融機関とのやり取りのサポートや同席
- 必要に応じた補助金相談の窓口
財務コンサルティングや早期経営改善計画の策定支援は、一部の専門担当者だけではなく、税務担当と兼務するスタッフもいます。
現場担当者が、税務と財務の両方を見ながら企業の成長シナリオを描けるようになっている点は、他事務所との差別化ポイントです。
さらに、事務所内には「融資相談窓口」「補助金相談窓口」を用意し、過去の相談事例を全員がチャット上で閲覧できる状態にしています。
これにより、経験の浅いメンバーでも、似たケースを参照しながら、一定レベルの回答・提案ができる環境が整備されています。
“トップに聞かないとわからない”から、“チームとして回答できる”へ。属人化を防ぐ仕組みになっています。
なぜ顧問料の“適正化”が進むのですか?
財務支援の質を高める一方で、顧問料の適正な見直しにも成功している点は多くの事務所が注目するポイントです。
「料金見直しが難しい」と言われる会計業界で、キークレア税理士法人では、顧問先との関係性を損なうことなく“適正化”を進められていることが特徴です。
ポイントは、所長ではなく担当者自身が対話を行う仕組みにあります。
理由はシンプルで、担当者の取り組みや提供価値が翌月の評価・処遇にも適切に反映されるからです。
「顧問先に提供している価値を、公平な形で料金にも反映したい」という前向きな動機が自然と生まれるようになっています。
顧問料金の適正化の基準も明確です。
- 時間単価の基準を設け一定以下だと必ず見直しをする
- 仕訳件数や業務範囲の拡大(部門追加、分社化、支店展開など)があった場合は、提供価値とのバランス調整として料金を見直す
つまり「頑張っているから上げたい」という感覚論ではなく、業務量・必要スキル・リスク負荷を定量的に可視化し、単価に落としていく文化があります。
一方で、適正な見直しにご理解をいただけない場合には、双方にとって無理のない関係性を保つため、契約継続の可否も冷静に検討します。
担当者が「この条件では品質を維持できない」と感じた際は、部長へ相談し、事務所として判断を支援する体制が確立されています。ただし、誠心誠意対応しているため、サービス内容の見直しに前向きにご理解いただけるケースがほとんどです。
無理に低単価で抱え込まず、適正なバランスを保つことで、スタッフの負担軽減とサービス品質の維持を両立しています。
若手スタッフでも高い提案ができる理由は?
キークレア税理士法人の大きな特徴の一つが、若手スタッフの活躍が自然と生まれる環境です。
経験年数に関わらず経営者と対等に意見を交わせる環境づくりは、どのように実現されているのでしょうか。
特徴的なのは「若手でも正面から経営相談に入っている」という点です。
たとえば入社4年目・20代のスタッフが、クリニック法人に対して顧問料の改定提案を行い、経営者から即OKをもらったことがあります。
このようなことが実現できた理由は3つあります。
①ビジョンヒアリングが徹底している
顧問先の「ビジョン・今後の展開」を必ず聞く文化があります。
「なぜ支店を増やしたいのか」「どんな形で事業を伸ばしたいのか」まで本人の言葉で理解したうえで提案するので、経営者側も“自分ごと”として聞いてくれる。
②わからないことは持ち帰るのが当たり前
若手が全てを一人で抱えるのではなく、持ち帰って先輩に相談し、回答の質を高めてから顧問先に返すのが標準フローになっています。
これにより、経験年数に関わらず「外さない提案」ができる。
③内部の相談窓口が情報資産化されている
融資・補助金などの相談は、チャット上の窓口でいつでも過去事例を検索できます。
似たケースの対応例をベースに、自分の顧問先向けにアレンジして提案できるため、属人的になりにくい。
要するに、個々の営業力ではなく、組織として提案力を底上げする仕組みが確立されているということです。
だから若手でも、経営者に対して自信を持って価値提案できる環境が整っています。
この仕組みは、単発の成果ではなく、事務所全体の成長サイクルを生む設計になっています。
《価値提供 → 顧客満足 → 適正単価の維持・向上 → 評価反映 → 定着向上》
という、事務所と顧客、そしてスタッフの三方にメリットが循環する構造が確立されています。
キークレア税理士法人の事例から、他の会計事務所が学べることは?
ここまで紹介してきた取り組みには、どの事務所でも応用できるヒントが詰まっています。
最後に、経営革新等支援機関推進協議会として、特に他の会計事務所が参考にすべきポイントを整理します。
キークレア税理士法人の事例から特に共有したい学びは次の5つです。
- 評価と給与を連動させることは、現場の自走力を高める
半年ごとのMBO評価/担当者手当の即時反映/顧客満足度による賞与調整。これらを「明文化し、運用する」ことで、スタッフは“自分の動きが給与に反映される”実感を持てるようになります。 - 働き方の選択肢を用意することで人材が残る
一定レベルに達した人材に、業務委託・自由勤務・歩合制というキャリアパスを提示できるのは、採用・定着の面でも強力な武器になります。 - 現場の声を即アクションにつなげるオペレーションを設計する
「意見箱」自体よりも、“週1レビュー→1週間以内に必ず返答”という運用の徹底が組織文化をつくります。
不満を放置しない文化は、離職率と品質の両方に効きます。 - 顧問料は「お願い」ではなく「設計」で上げる
時間単価の基準を明確化し、工数・リスク・部門数・仕訳件数という客観的な指標で値上げを設計する。
担当者自身が交渉できる状態まで教育・権限移譲することで、“安すぎる案件を抱え続ける”という慢性的な疲弊を回避できます。 - 若手でも提案できる仕組みをつくると、事務所はスケールする
ビジョンヒアリングを標準化し、チャット上に融資・補助金のQ&A資産をためることで、20代スタッフでも価値提案ができる。
これは「トップの属人性に依存しない成長モデル」をつくる第一歩です。
まとめ
キークレア税理士法人は、 “人が辞めない/育つ”ための設計と“高単価・高付加価値で選ばれる”ための設計 の両方を実行しています。
これは、いま多くの会計事務所が直面している以下の課題に対する実践的なヒントになります。
- 人が育たない/採用できない
- 顧問料と業務量のバランスが崩れている
- 顧問先から“とりあえず申告だけ”の扱いをされる
キークレア税理士法人のような取り組みは、自社だけで一から構築するには難しい領域も含みます。
もし、以下のようなお悩みがあれば、ぜひ経営革新等支援機関推進協議会にご相談ください。
- 職員の採用や教育に悩んでいる
- 顧問料の見直しや高付加価値化に課題を感じている
- 財務支援・補助金支援など新しいサービス領域を強化したい
全国約1,700以上の会計事務所を支援した実績から、事務所の課題に合わせた実務レベルのサポートを行っています。
まずは、協議会が提供する支援内容や導入事例をまとめた資料をご覧ください。
















