中小企業の経営者からの注目度が高い補助金のなかでも、一際注目されている補助金が事業再構築補助金です。
2022年10月に第8回公募が始まり、今まで利用していなかった中小企業や過去に不採択となった企業の再申請が動き出しています。
本記事では、経営者が注目している事業再構築補助金について、わかりやすく解説します。
目次
事業再構築補助金とは
事業再構築補助金とは、ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済環境の変化に対応するために中小企業や中堅企業がおこなう、新分野展開、業態転換、事業の業種転換などの思い切った挑戦を支援する補助金です。
2022年9月に公表された第6回採択結果までに延べ12万件の応募があり、そのうち5万件を超える件数が採択されており、中小企業の経営者からの注目度が高い補助金です。
事業再構築補助金の概要
事業再構築補助金の流れと特徴は次のとおりで、認定支援機関の関与が必須です。
<事業再構築補助金の流れ>
- (応募)中小企業などが事業計画書を提出します
- (審査)公募要領で示されている基準に沿って、事業計画を審査されます
- (採択)内容や妥当性・実現性などを満たす事業計画が採択されます
- (交付決定)事務局が費用の妥当性などを確認し、補助金の交付を決定します
- (事業の実施)事業を実施します
- (交付)事業を実施した後、採択内容に沿った費用について補助金が下ります
<事業再構築補助金の特徴>
- 事業再構築補助金は、要件によって6つの「枠」に分けられています
- 認定経営革新等支援機関と事業者が協力した事業計画の作成が必須です
過去の公募結果
公表されている第1回から第6回までの公募結果は、次のとおりです。
要件 | 第1回 | 第2回 | 第3回 | 第4回 | 第5回 | 第6回 |
---|---|---|---|---|---|---|
応募件数 | 22,231 | 20,800 | 20,307 | 19,673 | 21,035 | 15,430 |
採択件数 | 8,016 | 9,336 | 9,021 | 8,810 | 9,707 | 7,669 |
採択率 | 36.1% | 44.9% | 44.4% | 44.8% | 46.1% | 50.0% |
(※複数の企業で連携している申請は、構成員数にかかわらず1件としています)
第6回までで累計52,559件が採択されています。
また、採択率はほぼ一貫して上昇しており、平均して2社のうち1社が採択されています。
公募枠によって採択率に大きな違いがある点は、注意が必要です。
事業再構築補助金第8回公募
2022年10月3日から、第8回の公募が始まっています。
申請期限は2023年1月13日の18:00までです。
申請にあたっては、「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。
GビズIDプライムアカウントの取得には時間がかかるため、取得していない顧問先に対しては、早めの案内が大切です。
第8回公募の概要
第8回の公募では6つの枠が設定されており、それぞれ補助率や補助金額が異なります。
概要は、次のとおりです。
申請要件
次の2つの要件の両方を満たすことが必要です。
①コロナの影響で売上が減少していること
2020年4月以降の連続する6か月間のうち任意の3か月間の合計売上高が、コロナ以前の同3か月間の合計売上高よりも、10%以上減少していること、などです。
詳細は、枠ごとに異なります。
②認定経営革新等支援機関と事業者が共同して事業計画を策定すること
事業計画書は、経済産業省の「事業再構築指針」に沿った、3~5年分が必要です。
補助率、補助金額
類型 | 補助率 | 補助上限額 |
---|---|---|
通常枠 | 2/3 | 8,000万円 |
回復・再生応援枠 | 3/4 | 1,500万円 |
最低賃金枠 | 3/4 | 1,500万円 |
大規模賃金引上枠 | 2/3 | 1億円 |
緊急対策枠 | 3/4 | 4,000万円 |
グリーン成長枠 | 1/2 | 中小企業1億円 中堅企業1.5億円 |
補助率、補助上限額ともに、申請する中小企業の従業員数によって細かく異なります。
第8回公募での変更点
第8回公募での主な変更点は、次のとおりです。
- 最低賃金枠における売上減少要件の緩和
- 緊急対策枠の対象事業者に、2021年以降の創業者を明記
枠について | 対象 | 第7回公募 | 第8回公募 |
---|---|---|---|
最低賃金枠 | 最賃売上高等減少要件 | 30%以上減少 | -(廃止) (通常枠と同じ10%以上減少) |
緊急対策枠 | 2021年以降の創業者 | - | 対象であることを明記 |
特に最低賃金枠は採択率が高い(第6回での採択率は85.7%)ため、売上減少要件の緩和によって、対象となる顧問先が増えた可能性があります。
事業再構築補助金の申請を支援して、会計事務所の付加価値向上を
顧問先におけるさまざまな補助金申請への支援は事務所のサービスの拡大や付加価値の向上に繋がります。
顧問先の関心が高く、採択者が多い事業再構築補助金申請への支援は顧問先へのPRの好機です。
事業計画策定には、認定支援機関の関与が必須です
事業再構築補助金における必須の申請要件として、事業計画書の作成を認定経営革新等支援機関が事業者と共同しておこなうことが定められています。
認定支援機関である会計事務所が求められています
認定支援機関別の応募状況(第6回)は、次のとおりです。
事業再構築補助金は後払いで支給されるため、事業実施に必要なつなぎ資金などを融資する金融機関の関与割合が高くなります。
金融機関以外では税理士など(税理士・税理士法人・公認会計士の合計)が3,391件でトップです。顧問先は普段から相談しやすい会計事務所との協働を求めています。
顧問先への案内はできていますか?
事業再構築補助金は延べ52,000件を超える採択がなされていますが、中小企業全体約3,500,000社からみると、利用していない顧問先も多いと推測されます。
また、事業再構築補助金は過去の公募において不採択となった計画についても、修正しての再申請が可能です。
申請には期限があるため、事業再構築補助金の対象となるが未利用の顧問先、過去に不採択となった顧問先への再申請の早期の案内が必要です。
申請は公募期間内が厳守です
事業再構築補助金の申請は、申請期限までおこなうことが必要です。
第8回の申請期限は2023年1月13日金曜日18:00までです。
案内と事業計画策定を効率的におこなうには
事業再構築補助金の申請には期限があるため、顧問先へ早めに案内し、事業計画書の作成に着手することが大切です。
一方、事務所の人員に限りがある、顧問先への巡回指導で時間が足りないなど事務所経営の悩みもあります。
事務所として、補助金申請支援に積極的に取り組むためには、事務所の経営を合理化・効率化しつつ、事務所スタッフをレベルアップすることが必要です。
補助金支援業務で、会計事務所の売上と付加価値を向上
会計事務所が顧問先に提供する基本サービスは「税務・会計業務」ですが、これだけでは他の事務所との差別化は難しいといえます。
補助金支援業務で事務所を差別化する
事務所の付加価値を向上させるためには、本業である税務・会計業務に加えて、
- 補助金支援
- 融資支援
- 財務改善・経営相談支援
- 優遇税制支援
- 事業承継支援
- M&A支援
など、顧問先へ提供するサービス分野を広げることが必要です。
補助金申請を業務にするメリット
補助金申請を事務所の業務としておこなうことで、さまざまなメリットがあります。
- 申請書作成業務の受注で、売上が増加する
- 顧問契約先からの受注であれば、効率的に顧客単価が上昇する
- 金融機関からの紹介に対応することで、金融機関との関係が強化できる
- 補助金受給までのつなぎ資金借入が必要なことがあり、融資支援と併せての受注に繋げやすい
- 補助金申請する事業者は、資金調達需要が旺盛、または、財務面に問題を抱えていることがあり、顧問契約や財務支援の見込み先となる
- 補助金申請書の作成が単発契約であっても、その後の顧問契約に繋げやすい
補助金申請を業務にするためには
スタッフ数に限りがあり、顧問先への基本の税務・会計業務を行いながら新しいサービスを提供するためには、1つの顧問先と複数の業務契約を契約する、スタッフが対応できる業務の幅を広げる、定型業務を中心に事務所の業務を効率化するなどが必要です。
- 定型業務の効率化
- 補助金や税制改正などの迅速な情報収集
- スタッフのマルチタスク化とレベルアップ
- 顧問先や見込み先への迅速なマーケティング
補助金申請は経営革新等支援機関推進協議会がサポートします
経営革新等支援機関推進協議会は、株式会社エフアンドエムが運営する、会計事務所・税理士法人(事務所)向けの支援団体です。
会計事務所様の事務所経営を全面的にサポートしており、現在まで1,651の会計事務所様(2022年10月現在)にご利用いただいいております。
経営革新等支援機関推進協議会のサービス
経営革新等支援機関推進協議会では、研修会の開催や各種フォーマットによるノウハウと仕組みをご提供することを通じて、会計事務所様を全面的にサポートしております。
また、他の事務所の成功事例を参考に、事務所の業務体制や労働環境の改善にも役立ちます。
- 顧問先の資金繰りアドバイスや資金調達支援の分野では、財務支援システムである「F+prus」を提供しています。
- 「F+prus」は、顧問先の決算書に対して、金融機関の目線での格付診断を、誰でも簡単にできます。
- 主な機能として、以下を載しています。
- 決算書や借入明細から、顧問先の借入における問題点を抽出する「財務診断報告書」
- 資金調達時期や必要な金額の算定、キャッシュフローシミュレーションが可能な「事業計画の策定」
- 財務と事業の関係性をわかりやすく見える化できる「決算レポート」
- 会計ソフト23種類に対応しており、導入も簡単です
- まずは14日間の無料トライアルで体験してください
- 企業向けにすぐに活用できる販促ツールをご用意しております。顧問先への毎月の情報提供やセミナーを自動化することで、効率的に販促できます。
- 定例研修会
- 会員事務所様限定で、毎月、オンラインで開催しております。最新の公的支援制度への支援やコンサルティング手法、財務金融支援の支援事例の共有などをセレクトしてお届けしております。
- ナレッジライブラリー
- 各種の最近の制度解説、支援のポイント、支援事例など264(2021年9月時点)のコンテンツを動画配信しております。
- 経営革新等支援機関推進協議会アカデミー
- 補助金制度・公的支援制度・金融や財務知識などを、1から学習できるカリキュラムを用意しております。コースは2種類、1コース約3か月間で修了するアカデミーに、スタッフ育成を丸ごとお任せください。
- 申請実務のトータルサポートで採択率向上を
- 各種申請書サンプルの提供
- 申請書の添削サービス
経営革新等支援機関推進協議会が提供するサービスは、会計事務所様の顧問先支援が円滑にすすむよう、次の特長があります。
- 補助金・財務支援をおこなうために必要なサービスを、一気通貫でご提供
- ご利用料金は、1拠点につき、月額33,000円(税込)の定額
- 事務所スタッフの一連の教育訓練から、支援時のお悩みへのサポートまで対応
まとめ
顧問先への補助金申請は顧問先へPR しやすく、事務所の売上増加や顧問先の業績向上に繋がる有益な取り組みです。
顧問先への財務支援と同時に提案することで、提供サービスの拡充と単価アップに繋がるため、積極的に取り組みましょう。
補助金申請などの資金調達支援や、その他のサービスを含めた付加価値の高い顧問先支援をおこなうためには、スタッフの育成や定型業務の効率化が不可欠です。
補助金申請支援や事務所経営でお悩みの会計事務所様は、ぜひ経営革新等支援機関推進協議会にご相談ください。