税理士は専門的な資格・知識を持つため、開業税理士となる、専門分野に特化する、企業内税理士へ転身するなど多くのキャリアパスを選択できる点が強みです。
税理士がキャリアップするためには税務・会計分野の専門性を高めるとともに、それ以外のスキルを磨くことで高い評価につながります。
目次
税理士のキャリア形成とは
税理士は税務に関する独占業務をおこなう資格を有しますが、従来の申告業務、税務顧問のみで生き残ることは難しくなっています。これからの税理士は、税務・会計分野以外のスキルで差別化する、より狭い分野で高い専門性を発揮するなどのキャリア形成を考える必要があります。
税理士もキャリアパスを考える時代
税理士が従来の税務・会計業務のみでは成長が難しくなっている理由は主に3つです。
- 税理士登録者数の増加
- 記帳など定型的な業務の急速なIT化による需要の減少
- 顧問先における税務・会計ニーズの多様化、高度化
税理士がキャリアパスを成功させるために知っておきたいこと
税理士が将来のキャリアを考えるうえで知っておきたい業界の動向は、税理士業界2極化です。
- 事務所の大型化と自力主義
スタッフの増加により対応業務量を増やす、専門分野を持つスタッフを揃えてサービスを拡大するなど、事務所のブランディングを強化してゆく方向性です。 - 少人数事務所は外部専門家連携
少数精鋭のスタッフで、対応業務の拡大は外部専門家との連携で対応するタイプです。
税理士のキャリア形成には、主に次の3つのルートがあります。
- 大規模事務所でキャリアアップする
- 小規模事務所で幅広いスキルや開業時の経営ノウハウを身につける
- 専門的な事務所で得意分野を磨く
税理士としての主なキャリアパス4つと年収
税理士は資格と実力を武器に幅広い分野で活躍できるため、多様なキャリアパスがあります。税理士の主なキャリアパスは次の4つです。
- 勤務税理士としてキャリアアップ
- 独立開業
- 税務から会計へのキャリアチェンジ
- 事業会社・コンサル会社・金融機関などへの転職
勤務税理士としてのキャリアアップ
勤務税理士(所属税理士)の主なキャリアパスは次の3つです。
- 大規模事務所の管理職や経営層
- 現在の事務所の経営を受け継ぐ所長税理士
- 勤務税理士(所属税理士)の継続
独立開業
自ら事務所を開業するキャリアです。税理士の約70%が開業税理士であり、主なキャリアパスの1つとなっています。
税務から会計へのキャリアチェンジ
税理士から公認会計士へ転換するケースは少数です。一般的には税理士事務所から監査法人内の税理士への転職が多いといわれています。
税務分野から会計分野への転身の理由としては、大企業の顧問税理士になりたい、IPOや経営戦略の相談に携わりたい、税理士事務所の将来性に不安を感じているなどが多いといわれています。
事業会社・コンサル会社・金融機関などへの転職
事業会社の経理部門、コンサルティング会社の税務部門や金融機関で活躍する企業内税理士となる道です。
将来の税理士事務所の開業のために、一般企業でマネジメントスキルを身につけてから開業するキャリアパスもあります。
税理士事務所を独立開業するためのキャリアプラン
税理士登録者数80,692人(2023年3月末現在)のうち、開業税理士としての登録数は55,847人であり、69.2%を占めています。
開業税理士は、自らの努力と実力次第で大きく成功できるメリットがありますが、思うように顧問先が集まらず、収入が不安定となるリスクもあることがデメリットです。
開業税理士として成功するためのキャリアプランにおいては、『顧問先を確保しておく』『専門性を高める』『運転資金の準備』の3つが大切です。
顧問先を確保しておく
開業前から顧問先を確保する目途を立てておくことが大切です。一般的には勤務税理士としての経験を経て、顧問先5件以下で開業することが多いとみられています。
開業時に顧問契約予定であっても契約に至らないケースが考えられるため、開業後も顧問先獲得のために営業を継続する必要があります。
専門性を高める
少人数の事務所が顧問先を獲得していくためには、従来の税務・会計以外の業務をアピールすることが必要です。主なアピール例は次のとおりです。
- 資産税や国際税務など特定分野に強い
- 飲食業や起業など特定の業種・形態が得意
- 外国語や国際税務に長けている
- 財務分析や資金繰り改善提案など幅広い業務が可能なビジネスドクター的存在
運転資金の準備
開業費用とは別に、経費の3か月から6か月分の運転資金を準備しておきます。顧問契約が順調にとれないリスクがあるためです。
20代税理士、30代税理士のキャリアアップ
比較的長く働くことができる20歳代・30歳代の税理士は、豊富なキャリアパスが選択できますが、注意点もあります。
20代税理士は引く手あまた?
20歳代の税理士資格保有者の求人は多いと推測されますが、即戦力を望む事務所においては経験を優先することがあります。
20歳代の税理士は研修制度が整っている事務所、財務改善や顧問先支援など幅広いサービスを提供している事務所で経験を積むことが将来の選択肢を広げることにつながります。
30代税理士のキャリアアップは経験重視?
30歳代の若手税理士は豊富なキャリアの選択が可能ですが、税理士としての経験が求められる年齢となります。将来の開業計画にかかわらず、勤務税理士として働きながら次のスキルを身につけることがおすすめです。
- 事務所内における昇進でマネジメントスキルを身につける
- 顧問先への財務改善提案と伴走支援などにより、計画立案と実行スキルを磨く
- 資産税や国際税務などの専門性を高める
女性税理士のキャリア戦略
税理士は女性もキャリアアップしやすい職業です。
税理士のうち女性税理士の割合は14.4%(第6回税理士実態調査)ですが、2023年の税理士試験合格者600名のうち女性が141名(23.5%)となっており、今後も女性税理士が増えるとみられています。
女性税理士が活躍するためのキャリア戦略
税理士業界は女性税理士特有の強みを求める顧問先が一定数あるといわれています。例として、女性経営者の顧問先、女性向けの商品・サービスを提供する企業などです。
女性税理士がワークライフバランスを保つためには
女性税理士は結婚や出産・育児などライフステージの変化によって働き方が変わる可能性が高くなるため、ワークライフバランスを整えやすい、次のような事務所を検討されることをお勧めします。
- 仕事と家庭との両立を支援する事務所内の雰囲気
- フレックスタイム制や時短勤務、リモートワークなどの導入
- 産休や育休制度の整備
- デジタル化やアウトソーシングなど労働時間削減対策の活用
- 動画研修の導入など効率的なスキルアップ支援策の確立
これからの税理士は専門性・スキルが必要!?
税理士のキャリアプランの1つとして、高度な専門性や独自のスキルを磨くことがあげられますが、専門分野への特化はリスクもあります。
税理士×スキルというキャリアプラン
税理士が差別化できる税務以外のスキルの主な例は次のとおりです。
- 語学力(英語)
ビジネス英語のスキルは顧問先層や提供できるサービスを広げます。一般的にTOEICスコア700以上が求められるといわれています。 - ITスキル
顧問先のDX化に対応できない事務所は衰退する可能性があります。
税理士がITスキルを磨くことで、IT企業に強い事務所としてアピールできるほか、自事務所の生産性向上においても力を発揮します。 - マーケティングスキル
顧問先の売上増加に貢献できるマーケティングスキルは強力な武器となります。
また自事務所の顧問先獲得においても有効です。
税理士としての専門性を高めるキャリア戦略
特定の分野や業種を得意とする税理士となるキャリアがあります。特化型税理士の代表例は業種・分野への特化ですが、顧問先層や地域が限定されるリスクがあります。
- 業種特化型
医療系業種専門や飲食店専門など、特定の業種を得意とするキャリアです。 - 分野特化型
資産税や国際税務・移転価格コンサル業務を得意とするキャリアです。需要が高い分野ですが、語学力に加えて、相続税・贈与税・固定資産税などの幅広い知識、短期間で大量の事務をおこなう処理能力が求められます。
特化せず専門性を高めるキャリア
より幅広い顧問先へ対応することを重視しつつ、同時に差別化する方向性があります。
- 顧問先支援型
従来の申告業務に加えて、顧問先への財務分析や経営相談に幅広く対応できるキャリアです。顧問先の財務改善を提案できるスキルは汎用的な強みがあります。月次監査や申告業務から発展させやすく、多くの顧問先層に対応できるメリットがあります。
税理士のキャリアパスは豊富!基本の財務・コンサル能力の向上から始めましょう
税理士は専門知識を持つ強みでさまざまなキャリアパスを選択できますが、同業の専門家が数多く存在します。
顧問先から選ばれる税理士であり続けるためには、明確な事務所の方向性、キャリアパスにあわせたスキルの磨き上げなど専門性を高めることが必要です。
税理士のキャリアアップは、基礎となる財務改善とコンサルティング能力の向上から始めましょう。税務・会計に関する専門知識と財務改善のアドバイス、そして顧問先が抱える課題の良き相談相手となるコンサル能力は普遍的な強みがあるためです。
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