リモート監査とは、顧問先の事業所へ訪問せずにオンラインで月次監査をおこなうことです。
リモート監査のメリットは、移動時間や交通費の削減など多数あるため、近年導入が広まっており、これからリモート監査を導入しようと検討している税理士事務所も多いのではないでしょうか。
本記事では、税理士事務所がリモート監査を導入する際の必要な準備や、リモート監査のやり方について解説します。
目次
リモート監査をおこなうための事前準備
リモート監査とは、オンラインで月次巡回監査をおこなうことです。
リモート監査をおこなうためには、デジタルツールの導入など、事前準備が必要です。
事務所と顧問先における事前準備は次のとおりです。
事務所側におけるリモート監査の準備
税理士事務所における主な準備は次のとおりです。
- デジタルツール(チャットツール、オンライン会議ツール)を導入する
- デジタルツールの操作を習熟する
- データの保存ルールを決める
- 情報セキュリティ対策をしておく
必要となるデジタルツールとはチャットツール、オンライン会議ツールであり、有名なツールとしてはChatworkやZoomなどがあります。
これらのツールを使用する際は、事前に操作に慣れておき、顧問先が操作に戸惑った際は、サポートできるようにしておきましょう。
また、データの保存ルールなどを決めておくことも大切です。証憑をデジタル化するときのファイル名の付け方や保存する場所などを事務所内で統一しておきます。
さらに、情報セキュリティ対策も必須です。ウイルスチェックだけでなく、仮想デスクトップの導入など、顧問先の情報が漏えいしない仕組みを整備しましょう。
顧問先側におけるリモート監査の準備
顧問先における準備も必要となります。
- デジタルツール(チャットツール、オンライン会議ツール)の導入
- 情報セキュリティ対策
- 紙の証憑をデジタル化するツールの導入
顧問先における準備で最も重要な点が証憑などのデジタル化です。
顧問先によってはデジタル化する作業を負担と感じるかもしれません。
読み取り速度が速いスキャナ(複合プリンタ)の導入などだけでなく、スマホで領収書を撮影するだけで簡単にデジタル化・仕訳までできるAIアプリなども登場しているため、顧問先の作業負担軽減に活用できることを紹介しましょう。
リモート監査の主な流れ
リモート監査の主な流れは次のとおりです。
STEP1 事務分担の相談
領収書や伝票など紙の資料をデジタル化する作業を顧問先へ依頼しておきます。
顧問先がこのような作業に対し、消極的である可能性があるため、事前にどちらがどこまでおこなうのか、相談しておきましょう。
STEP2 WEB会議システムの導入
上記のチャットツールやWEB会議ツールを導入します。事前に使用して、操作に慣れておきましょう。
STEP3 紙証憑の電子化、データの共有
顧問先や事務所において紙の証憑をスキャナなどで読み込み、デジタル化します。
デジタル化したデータは顧問先と事務所で共有します。共有方法としては、メールによる回収、データが連携している会計システム上で共有、データ共有のための外部ストレージ(インターネット上でデータを保管するサービス)を利用する、などがあります。
STEP4 データの回収状況とデータ内容の確認
データの共有状況を確認します。ファイル破損で読み取りできない、文字が潰れて読めない、などの事象が起きていないか確認しておきましょう。
どのような資料を回収しているのか、データ回収状況を事務所内でわかるようにしておくことで、作業効率が円滑となります。
また、共有されたデータを事前に確認し、科目の誤りや、使途の疑問など、監査時に質問する内容をリストアップしておくと効率的です。
STEP5 リモート面談
アポイントの日時にリモート会議ツールを使い、オンラインで面談を開始します。通信状態によっては接続に時間がかかることがあるため、事前に余裕をもってアクセスしておきましょう。
リモート監査による面談は、対面時と比べ、顧問先の表情や声色で反応を読み取ることが難しくなります。監査回数を増やす、定期的に対面するなど、顧問先とのコミュニケーションを確保する機会を設ける工夫も必要です。
リモート監査の活用法
リモート監査は移動時間の削減などのメリットがありますが、効率化以外にも次のような、さまざまな活用法があります。
スタッフの育成・教育
リモート監査では、顧問先の監査担当者以外のスタッフであっても簡単に同席することができます。
監査担当者以外のスタッフを同席させることで、事務所内研修や社員のスキルアップにつなげられます。
- 新人スタッフのレベルアップに活かす
リモート監査に新人スタッフを同席させ、先輩スタッフの監査方法、トークなどを学ばせる活用法です。 - 監査担当者への指導に活かす
経験が浅い監査担当者のリモート監査に、上司や先輩スタッフが同席し、録画内容などを確認しながら、フィードバックする活用法です。 - 業務日報として活かす
顧問先との面談内容や聴取内容をタグ付けすることで、営業日報として活用する方法です。
リモート採用
リモート監査を導入することで、リモート採用やリモートワークをすすめやすくなります。
リモート監査によって対面監査を完全に代替することは困難ですが、税務調査の立会や難しい交渉以外は、顧問先へ赴く機会を減らすことが可能であるためです。
遠隔地の顧問先を獲得
リモート監査は場所を選ばないため、遠隔地の顧問先を獲得しやすくなります。業種特化型の事務所や対応エリアを拡大したい事務所の活用に向いています。
また近年は「リモート税理士」なる言葉も登場するなど、顧問先によってはリモートを好むことがあります。
リモート監査で顧客単価を引き上げる!付加価値業務は協議会がサポート
リモート監査は、移動時間やコストの削減、事務所スタッフの教育研修に活かせるなどのメリットがあります。また時間や場所を柔軟に設定できるため、顧問先においてもメリットがあります。
では、「リモート監査の導入によって生み出された時間をどう活かすのか」。おすすめの活用法は、「顧客支援業務の強化」です。
税務分野においてもDX化、AIの浸透がすすんでおり、今後は税務・会計業務はコンサルティング分野へ重点が移るといわれています。税理士がおこなうコンサルティングサービスは幅広く提供でき、事務所の売上増加に直結する取り組みです。
税務・会計業務だけではない、顧客から選ばれ続ける事務所となるために、経営革新等支援機関推進協議会が顧問先支援をサポートします。
スタッフの知識や実務経験が不足しているとお悩みの事務所様は、付加価値支援の収益化を目指せるサポート体制が整っている、経営革新等支援機関推進協議会のサポートを導入してはいかがでしょうか。