スタッフの採用や定着に悩む会計事務所が多いといわれている中、新潟県のL&Bヨシダ税理士法人は、スタッフ数7名から50名超、顧問先数は約1,000社へと急成長しています。当事務所は毎年200名超の採用応募があり、8年連続で新卒3年以内の離職者が0です。
本記事では、L&Bヨシダ税理士法人が取り組む人材採用とマネジメントのポイントを紹介します。
目次
集客力を支えるWEBマーケティング戦略・営業力
L&Bヨシダ税理士法人(以下、「当事務所」としています。)は集客に力を入れています。現在は集客方法の約6割がWEBからの相談、約3割が顧問先からの紹介です。
SEOに注力したサイト運営の工夫
当事務所はSEOを徹底することで、ホームページからの集客に成功しています。
SEOとは、グーグル検索など検索エンジンで上位に表示される手法のことです。
当事務所における主な工夫は次のとおりです。
- 複数のホームページを設置する
集客の目的別に、メイン・地域別・相談内容別(例:会社設立、相続)など、複数のホームページを運営しています。 - 検索結果の上位に表示されるよう努める
継続的に検索上位となることで、見込み先からの相談が増えます。 - 流入のきっかけとなった検索ワードを重視する
閲覧者が当事務所のホームページへ訪問するきっかけとなった検索ワードを重視することで、集客の再現性を高めています。
また当事務所ではWEBからの集客に加えて、顧問先から紹介される仕組みを作っています。
事務所に『紹介カード』を常備するとともに、営業担当者が年2回、顧問先へ紹介カードを渡すルールとしています。
爽やか+コミュ力が高い組織的な営業で契約率UP!
当事務所は顧問先を獲得する営業担当者を設けています。また営業担当者は「爽やか」であることと「コミュニケーション力」を重視しています。話をして「楽しい」と思ってもらえる人は顧問契約を獲得しやすいためです。
契約率がUPした営業フロー
当事務所における営業の流れは次のとおりです。
- 問い合わせのあった見込み顧客に営業担当者が面談のアポイントメント
- 営業担当者の面談
- 面談時に契約に至らない場合は1週間後にフォロー
- 契約
- 契約後に来所してもらい、営業担当者から顧問先担当者2名へ引継ぎ
営業フローにおける当事務所の特徴は次のとおりです。
- 問い合わせ客(見込み顧客)への営業に税理士は同行しない
- 面談率、契約率などの指標を把握
- オンラインによる面談、契約を積極的に導入
- 面談時に契約に至らなかった場合、1週間後にフォローするルールを徹底
- アポ率や契約率を評価項目とし、賞与や昇給に反映
- 契約額や本業支援業務に応じたインセンティブ制度の導入
- 顧問先担当はメイン担当(経験年数1年以上)と統括担当(経験年数3年以上)の複数
上記①は契約率を高めるためです。
見込み顧客は税務面の専門性の高さよりも、コミュニケーションを深めやすい人を好む傾向があるためです。
上記の②、⑤、⑥は成功する営業の再現性を高める、営業担当者のモチベーションを向上させることなどが目的です。
面談率(問い合わせから面談に至った比率)や契約率(面談後、契約となった比率)など営業途中の指標を把握し、その結果を賞与・昇給に反映させる給与体系としています。
新卒3年以内離職率は8年連続ゼロ!組織作りとマネジメントの挑戦
当事務所は毎年2名から6名の新卒を採用し、新卒採用者の3年以内離職数は8年連続で0名です。
新卒採用者の定着率を安定させるために、当事務所ではどのような取り組みをおこなっているのでしょうか?
若手中心の組織形成と離職率ゼロの秘訣
当事務所は若手スタッフが多いため、若年層の価値観に近づけた組織運営がポイントであると考えています。
若年層の価値観として、残業なし・転勤なし、有給休暇の完全取得、年齢が近い人が多い職場、などを好む傾向があげられますが、重要な点は”当たり前の基準が変わりやすくなる環境“であることだと考えています。
マネジメントの問題と仕組み化の成功
採用媒体は地域の求人媒体が中心です。
直近2年ほど、新卒採用の売り手市場化が進んでいると感じており、インディードをメインとした中途採用を強化してします。今後は事務所からのオファー型を導入する予定です。
当事務所では、新卒採用者の教育制度を整備しています。入所1年目のスタッフについて、4月から毎月、目指すこと、取り組む内容、研修テーマ、先輩スタッフや上司からの振り返りなどをまとめたシートを利用しています。
増加する若手スタッフの価値観に合わせてフラットな組織としたことで、事務所内の雰囲気が和気藹々となった一方で、課題も目立つようになりました。クレームの増加、業務の懈怠や指示無視するスタッフの発生などです。
ピラミッド型組織での役割とルール
上記の課題に対して、当事務所では業務分担が明確な「ピラミッド型組織」に変革しました。
当事務所の組織体制の特徴は、税務以外は専任者を設けず、正社員スタッフが税務とともに兼任する組織としたことです。兼任によるメリットデメリットは次のとおりです。
- 属人化しない
- 複数担当とすることでスタッフ自身の安心感が高まる
- 顧問先への移動など負担軽減
- 税務は必ず担当するため、税務以外に専念することはできない
- ひとつの分野でノウハウを深堀りしにくい
業務の兼任やスタッフの増加に伴い所内のコミュニケーションが複雑化するため、共通のルールを設けています。
- 誰でも守れるルールは徹底する
挨拶や身だしなみ、報告期限、勤怠などです。 - ルールの曖昧さをなくす
身だしなみなどについても明確としています。 - 繰り返し周知する
毎週ひとつずつ周知し、スタッフが確認したかチェックしています。 - 能力や努力次第で守れるルールを決める
資格取得、目標売上、営業契約率、部下の成長などを明確に決めています。 - ルールの遵守と達成度合いを評価に反映する
上記を人事評価に反映させています。
各スタッフが果たす役割を定義したうえで、目標となる項目、目標値へ落とし込んでいます。当事務所の役割定義表の特徴は次のとおりです。
- 四半期ごとで期間を区切る
- 目標項目数は3から5項目に絞り込む
- 目標となる数値は上司が設定する
成果を重視した評価と採用システム
当事務所ではスタッフの評価項目を明確とし、評価内容を賞与や昇給に反映させています。これによりスタッフ全員が、より一層責任をもって業務に取り組んでいると感じています。
評価基準とインセンティブ制度の影響
当事務所では次のポイントを踏まえて評価基準を明確化しています。
- 毎週の会議において、部下から上司へ定期的に報告させる
- 期間中の上司からの指導は抑える
- 結果(達成度合い)で評価する
- 振り返り(フィードバック)は将来(次の期間に実行することの約束)を重視する
指標の達成度合いを評価することに加えて、成約数などに応じたインセンティブ制度を導入しています。この仕組みにより担当者が常に目標・目的を意識しやすくなります。
社内アンケートによる新しい取り組みの発掘
上記のマネジメントの課題として、スタッフが自分の役割以外について提案することが少ないと感じるようになりました。
このため事務所内で社内アンケートをおこない、新しい取り組みテーマを発掘する方法を導入しています。
社内アンケートは、Googleフォームを利用しています。質問者・回答者ともにじっくり考える時間を確保できる、匿名で回答が可能などのメリットがあるためです。
事例から学べるポイントと今後の展望
L&Bヨシダ税理士法人における人材マネジメントの特徴は次の5つであるといえます。
- 仕組みを作っている
- 目標となる項目や数量を明確としている
- 進捗管理を徹底している
- 結果を重視している
- 常に見直ししている
属人化しない仕組み作りの重要性
当事務所の組織の特徴は兼務です。
顧問先担当を複数とする、業務は兼務するなど属人化しない組織とすることで、顧問先とスタッフの両方が安心できる仕組み作りが形成されています。
成果を最大化するための具体的施策
当事務所では成果を最大化するために、責任者を決める・結果を重視するという2点を重視しています。
責任者を最初に決め、責任と権限を与えてバランスをとっています。
また結果を重視することで、曖昧な言い訳をせず、モチベーションを保ちやすい環境を整えています。
成長する税理士事務所の未来への期待
会計事務所は人手不足であるといわれますが、成長するためには円滑な採用活動が重要です。人材採用と定着、そして育成によって、顧問先から選ばれ続ける事務所へと成長します。
経営革新等支援機関推進協議会では採用・教育やマーケティングも支援!
「求人しても応募がない」「スタッフの教育訓練を整える時間がない」「スタッフが定着しない」とお悩みの会計事務所様もあると思います。
スタッフの採用や育成は、経営革新等支援機関推進協議会が定額(税別月額30,000円)でサポートしています。経営革新等支援機関推進協議会が提供する主なサービス内容は以下のとおりです。
採用・教育支援
会計事務所の求人から教育制度の導入までサポートしています。
- 求人分析・求人票サンプルの提供
求人票の書き方・記載例などを提供しています。他社との比較レポートなどにより、選ばれる求人票作成をサポートします。 - パーソナリティ診断
スタッフや求人応募者の資質を客観的に診断します。採用面接や現有スタッフの性格把握などに活用できます。 - 監査担当者育成プログラム
最短1か月で育成する動画研修プログラムを提供しています。専門知識のほか、ビジネスマナーなど豊富なコンテンツによる動画研修制度を簡単に導入できます。
マーケティング支援
顧問先や見込み顧客への情報発信が重要といわれますが、忙しくて時間がないという事務所様も多いでしょう。
経営革新等支援機関推進協議会は、会計事務所への情報発信素材の提供や、問い合わせが来る仕組みをづくりを支援し、忙しい事務所経営者様をサポートしています。
- 顧問先向け案内チラシ素材の提供
事務所名を変えるだけで顧問先へすぐに提供できる制度改正情報を提供しています。 - 事務所通信、メルマガ文面、解説動画の提供
毎月テーマが変わるため、継続的な配信が可能です。 - 顧問先・見込み先からの問い合わせをご紹介する『FAS CLUB』
補助金・助成金や資金繰りに関する情報提供と、問い合わせにつながる仕組みづくりを提供しています。
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