中小企業を支援する目的で設立された制度に「認定支援機関」があります。認定を受けることで多くの支援に着手できるため注目を集めています。
しかし、この認定支援機関について、どのような制度か詳しく知らない方も多いのではないでしょうか?
今回は、認定支援機関ができることや認定要件、申請方法を解説します。
「認定支援機関について詳しく知りたい」「認定支援機関の取得を考えている」、「メリットを活かして業務の幅を広げたい」、関心がある方はぜひ参考にしてみてください。
目次
認定支援機関とは?
認定支援機関とは、2012年に制定された中小企業経営力強化支援法に基づき、中小企業の経営力を強化する目的で設立された制度です。
経済産業省が管轄となっており、正式名称は「経営革新等支援機関」となっています。
主な業務内容としては、中小企業や小規模事業者の経営に関するアドバイスをおこない、事業計画の策定や資金調達、補助金申請を支援することです。
日本に存在する企業の多くが中小企業であり、経済活性化のためには中小企業の業績向上が重要とされているため、国も積極的に認定を進めています。
認定支援機関ができること
ここでは、認定支援機関ができる以下4つの業務を詳しく紹介します。
- 補助金申請
- 経営改善計画策定の支援
- 資金調達
- 税制優遇制度の活用
補助金支援
認定支援機関は補助金の支援が可能です。具体的には、「事業再構築補助金」と「ものづくり補助金」と「事業承継・引継ぎ補助金」の3種類の申請支援ができます。
事業再構築補助金とは、ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済環境の変化に対応するために、中小企業等の新分野展開、業態転換、業種転換等の思い切った「事業再構築」の挑戦を支援する補助金です。
ものづくり補助金とは、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の略称です。
中小企業が商品・サービスの開発や生産体制の効率化を達成するため、設備投資などを支援する補助金となっています。
事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継を円滑に進めるため経営方針を刷新する、または新規事業に取り組むなどの活動に対して支援される補助金です。
後継者不足が年々深刻化している中小企業を支援する施策として注目を浴びています。
いずれの補助金も中小企業の課題解決に結びつく施策となっており、補助金申請のため認定支援機関を利用する中小企業が増えています。
経営改善計画策定の支援
経営改善計画策定の支援も認定支援機関ができる業務の1つです。
「経営改善計画策定支援事業」と「早期経営改善計画策定支援事業」の2種類があり、それぞれ以下の違いがあります。
概要 | 補助金上限 | |
---|---|---|
経営改善計画策定支援事業 (通常枠) | 経営改善計画に関する費用のうち2/3の補助を受けられる。 | 310万円 |
早期経営改善計画策定支援事業(通常枠) | 早期経営改善計画策定に関する費用のうち2/3の補助を受けられる。 | 25万円 |
大きく違う点としては補助金の上限額です。
経営改善計画策定支援事業では310万円の上限に対し、早期経営改善計画策定支援事業では25万円の上限となっています。
その他、対象となる事業者に違いがあり、経営改善計画策定支援事業の対象となる事業者は、借入金の返済負担等、財務上の問題を抱えている中小企業・小規模事業者が対象となりますが、
早期経営改善計画策定支援事業では、資金繰りの管理や自社の経営状況の把握などの基本的な経営改善に取り組む中小企業者等が対象になるという点が特徴で、財務状況に問題を抱えていなくても対象になります。
資金調達
資金調達も認定支援機関が支援できる業務です。
中小企業の資金調達を支援でき、調達先は「日本政策金融公庫」と「信用保証協会」の2種類となっています。
認定支援機関を介して資金調達をおこなうことで、上記の機関から優遇金利で資金調達が可能です。
日本政策金融公庫では「中小企業経営力強化資金」の融資制度を活用して資金調達でき、保証人・担保不要な点が大きなメリットです。
信用保証協会では「経営力強化保証制度」の利用時に、保証料を減免しながら資金調達できます。(金融機関と認定支援機関の連携支援を受けることが条件)
税制優遇制度の利用
認定支援機関では税制優遇制度を利用でき、以下の税制優遇を受けられます。
- 先端設備等導入計画
- 事業承継税制
先端設備等導入計画は2018年から実施された制度で、設備など一定の条件を満たした中小企業に対し、固定資産税の優遇を受けられる制度となっています。
生産性を向上させる設備投資に対して税制優遇される制度で、認定支援機関のサポートが必要です。
事業承継税制は、後継者が事業承継に伴う株式の相続時などで支払う相続税や贈与税を猶予してもらえる制度のことで、制度の利用には認定支援機関のサポートが必要となります。
認定支援機関となるための要件
ここでは、認定支援機関となるための要件について解説します。
具体的な認定基準は中小企業庁が以下のように公表しています。
- 税務、金融及び企業の財務に関する専門的な知識を有していること
- 中小企業・小規模事業者に対する支援に関し、法定業務に係る1年以上の実務経験を含む3年以上の実務経験を有していること
- おこなおうとする法定業務を長期間にわたり継続的に実施するために必要な組織体制や事業基盤を有していること
基本的には業務に対する専門的知識があり、その実務経験が認定要件です。
1の「専門的な知識を有していること」に関しては、具体的に以下のいずれかを満たす必要があります。
- 税理士法人、税理士、弁護士法人、弁護士、監査法人、公認会計士、中小企業診断士、金融機関
- 「中小企業等経営強化法」等に基づいて、中小企業者等が「経営革新計画」、「異分野連携新事業分野開拓計画」等の策定をおこなう際、主たる支援者として関与した後、当該計画の認定を3件以上受けていること
認定支援機関の申請方法
認定支援機関の申請方法について解説します。
具体的には以下の手順で申請を進めていきます。
- 申請スケジュールをチェック
- 必要書類の準備
- 郵送もしくは電子申請
1.申請スケジュールをチェック
まずは申請スケジュールをチェックします。
認定支援機関はいつでも申請できるわけではなく、申請できる期間が決められているため、申請期間内に応募する必要があります。
なお、2022年7月現在中小企業庁が公表している今年の申請スケジュールは以下の通りです。
認定日 | 締切日 | 受付期間 |
---|---|---|
2022年10月28日 | 2022年9月21日 | 2022年8月19日〜9月21日 |
2022年12月23日 | 2022年11月16日 | 2022年10月14日〜11月16日 |
※スケジュールは変更する場合があります。
受付期間が1ヶ月程度となっているため、事前に締め切りを確認し間に合うように申請準備を進めましょう。
2.必要書類の準備
続いて必要書類を準備します。
必要書類は申請者の有資格によって異なりますが、基本的には以下の書類が必要となります。
- 税理士証票や公認会計士登録証明書など専門性を示す証明書
- (法人の場合)登記簿謄本
- (法人の場合)決算書過去3期分
- (個人の場合)青色申告決算書の損益計算書過去3期分
他にも業種によって必要な書類が異なるため、以下の公表されている必要書類を事前に確認しておきましょう。
【参考】添付書類一覧|経済産業省
電子申請
必要書類が準備できたら、電子申請をおこないます。
以前は郵送でも申請できましたが、2020年6月26日より電子申請に完全移行しているため注意が必要です。
申請には「認定経営革新等支援機関電子申請システム」に登録する必要があり、以下のリンクにアクセスし、指示にしたがって申請内容を登録しましょう。
認定支援機関の実績を作るコツ
ここでは認定支援機関で実績を作るコツを紹介します。
認定支援機関として認定されるためには、中小企業・小規模事業者に対する支援実績や実務経験が必要となるため、実績を積み上げることが非常に重要です。
コツとしては、これまで会社設立に関わったことがある企業であれば関係性も構築できているため、こうした企業に認定支援機関のメリットを伝えて経営計画作成の支援をさせてもらうといいでしょう。
認定支援機関となれば、補助金支援や、固定資産税などの優遇や日本政策金融公庫から低利で融資を受けられるなど企業側が受けられるメリットも大きいです。
実績としては3件以上必要となるため、この点も留意しておきましょう。
また、経営計画作成では事務所側にさまざまな作業が必要となります。
「F+prus(エフプラス)」は、事業計画作成のサポートはもちろん、財務診断報告書、決算レポートの作成など経営計画作成を効率化できる財務支援システムです。
認定支援機関の実績づくり、また支援業務を効率化させるためにも、こうしたシステムの活用をおすすめします。
まとめ
認定支援機関になることで、補助金申請や税制優遇制度の利用など多くの業務が可能となり、支援する企業にも大きなメリットをもたらします。
認定支援機関に認定されるためには、該当業務での実績が欠かせません。
上記で紹介したシステムを活用し、効率的に実績を積み上げ認定支援機関への認定を目指しましょう。