税理士でいくら売上が伸びていても、利益率が高くなければビジネスとして生き残ることは困難です。
利益を下げてしまう原因を知り、対策を講じることで利益率が高く、将来性のある税理士へと変わっていきましょう。
本記事では、平均的な売上高を踏まえ、利益率を高める対策を解説します。
目次
税理士の平均的な売上高はいくら?
利益率を高めるためにまず知っておきたいことは、税理士の平均点な売上高です。
従業員規模によって異なる売上高
「平成28年経済センサス 活動調査」によると、従業員規模によって売上高は異なることがわかりました。
従業員数が多くなるほど、売上高も伸びる傾向にあります。
※「税理士事務所」の売上高を調査したものです
従業員数 | 1事業所あたりの売上高(万円) |
---|---|
1〜4人 | 1,980 |
5〜9人 | 5,108 |
10〜19人 | 11,988 |
20〜29人 | 21,016 |
50人以上 | 138,334 |
スタッフ1人当たりの売上高は800〜1,200万円
一方で、スタッフ1人当たりで見ると、スタッフ数に比例して極端に売上高が伸びていくわけではありません。
小規模事務所と比べて大規模事務所は高い売上高となるものの、800〜1,200万円が平均です。
「規模が大きいほど、従業員の生産性が極端に高い」とはいえないことがわかります。
スタッフ数 | 1事業所あたりの売上高(万円) |
---|---|
1〜4人 | 796 |
5〜9人 | 807 |
10〜19人 | 940 |
20〜29人 | 1,186 |
50人以上 | 1,128 |
利益率が低い要因とは?
税理士の利益率は、「◯%が最適」と一概にいえるものではありません。
税理士法人の実状に応じて、適切な利益率は異なります。
個人事業主であれば、人件費や地代家賃を抑えられ、また宣伝広告費への投資に消極的なため、利益率は高くなる傾向にあります。
一方の大手税理士法人であれば、従業員の多さに応じて人件費が高くなりがちです。
従業員の給与を補うために多くの売上を確保しなければならず、広告宣伝費にも積極的に投資するため、利益率は低くなるでしょう。
これを踏まえたうえで、利益率が低くなる具体的な要因を解説します。
売上が低い
特に大手税理士法人の場合は、十分な売上を確保しない限り、利益率が低くなってしまいます。
税理士法人の主な収入源は、顧問料報酬です。
基本的に顧問の契約時に、月次監査報酬や決算業務報酬などを一定額で定めているため、特別な理由なく顧客に単価アップを交渉することは難しいでしょう。
経費が高い
いくら売上を伸ばしても、多額の経費が差し引かれれば、利益率は低くなってしまいます。
毎月発生する固定費が、利益率を圧迫しかねません。
地代家賃
もっとも大きな経費となるのが、地代家賃です。
「従業員が働きやすい環境を整えるため」または「ブランドイメージ向上のため」に、オフィスにこだわった結果、地代家賃が大きな負担となるかもしれません。
もちろん、オフィスを青山や横浜といったネームバリューのある立地で構えると、「一等地でビジネスをしている信頼のおける会社」とのブランドイメージを高めることはできます。
人件費
人件費は、地代家賃の次に割合の大きい経費です。
従業員の生活に直結するため、安易に給与を減らすなどの対策を講じることは、経営者も避けるでしょう。業務フローや組織体制を踏まえた対策が必要となります。
また、人材の離職率が高いと、採用や育成のコストがかさみます。
人手不足の続いている転職市場で、人気の即戦力人材を確保しようとすると、コストも割高になってしまうでしょう。
ITツール利用料
昨今では、単純な事務処理や社内でのコミュニケーションを、ITツールで効率化できるようになりました。
ITツールの多くは料金プランに「月額課金型」を採用しており、毎月一定額を支払います。
利益率を高める方法は?
では、どのような対策で利益率を高めればいいのでしょうか。
売上を高める
売上を高めるためには、いくつかのアプローチが可能です。
新サービスの提供
会計事務所がおこなう会計業務は、下記のようにどの事務所も基本的に同じです。
税務業務で周りと差別化することは難しくなってきました。
会計業務以外の新サービスを提供することで、営業時に提案の幅を広げられます。
具体的には、企業ニーズの高い「優遇税制支援」「補助金支援」「財務支援」「事業継承支援」などのサービスを検討しましょう。
しかし、「実務経験がない」「知識をもつ従業員がいない」といった理由で断念する税理士が少なくありません。
経営革新等支援機関推進協議会は、これら領域のサービスを実務経験ゼロからでも提供できるよう支援しています。
優遇税制や補助金申請のやり方を従業員に教育することが可能です。
また、円滑な事業継承支援を実現するため、定例研修会や専用システムF+prus(エフプラス)を提供しています。
- 事業再構築補助金
- ものづくり補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- 事業承継・引継ぎ補助金
など
新規顧客の獲得
既存顧客を維持することも大切ですが、新規顧客の獲得に向けて、積極的に宣伝広告をおこないましょう。
経営革新等支援機関推進協議会では、販促ツールとして補助金関連のパンフレットや、顧客にも情報共有できるメルマガ・動画コンテンツを提供しています。
有益な情報の提供や、会計業務以外の提案を通して、新規顧客の獲得を目指しましょう。
顧客単価の向上
これまで対応していなかった新サービスを提供することで、顧客に単価アップを交渉することが可能となります。
既存顧客に「優遇税制支援」「補助金支援」「財務支援」「事業継承支援」などのサービスを追加で依頼してもらえる、新規顧客に会計業務とのセットで提案するなど、付加価値を高めて顧客単価を上げましょう。
離職率の低減
人材の出入りが激しいと、毎回、採用や育成のコストが発生します。
また経験の浅い人材ばかりが増えると、労働生産性も低下しかねません。
業務に精通した従業員に長く働いてもらうことが、財務面でも一番効率的です。
従業員の定着率を高めるためには、キャリアップの希望に沿った人員配置や、ワークライフバランスの取れた福利厚生を充実させることが大切です。
経費を削減する
売上を圧迫しないよう、経費を削減することも重要です。
地代家賃
テレワークが一般化した昨今では、オフィスを縮小する企業も増えています。
都市部のオフィスには本部機能だけを残し、郊外で家賃の安く、広々としたオフィスを別途構えてもいいでしょう。
あるいは、可能な範囲で従業員に在宅ワークを認めることも効果的です。
在宅ワークが可能となれば、職場から遠いエリアの人材を雇用するという選択肢も選べます。
人件費
従業員の離職率を下げるためにも、安易な人件費削減には注意してください。
給与などの直接的な人件費削減ではなく、間接的な人件費の削減を検討してはいかがでしょうか。
具体的には、ITツールの導入で単純な作業を「業務効率化」する、外部の専門家に業務を依頼する「アウトソーシング」を活用する方法です。
業務フローを変えたとしても、税理士全体の生産性を上げられれば、売上に対する人件費の割合を減らせるでしょう。
ITツール利用料
導入中のITツールが本当に業務効率化の役に立っているかを、今一度チェックしてください。
中には高額なITツールもありますが、業務で使わない機能が盛りだくさんで、費用対効果の悪い可能性もあります。
あるいは、従業員にとっては使い勝手が悪く、非効率を招くこともあるでしょう。
企業の課題をきちんと解決できるITツールを選ぶことが大切です。
まとめ
税理士の売上高は、1事業所当たりでは従業員数が多いほど高くなりますが、1人従業員当たりでは800〜1,200万円の間で、大差が生まれるわけではありません。
利益率を下げる要因では、地代家賃や人件費などの固定費が売上を圧迫しがちです。
利益率を高めるためには、新サービスの提供や離職率の低減、固定費の削減などに取り組むべきでしょう。
会計業務に追われていて、ゼロから対策を講じる時間の確保が難しいなら、経営革新等支援機関推進協議会のサービスを利用して、効率的に経営改革を進めてみてください。
など