多くの中小企業が利用したコロナ融資(ゼロゼロ融資)は、2023年に元金返済開始のピークを迎えます。
コロナ融資の返済が資金繰りの負担となる中小企業への支援策として、コロナ融資の借換え保証制度が創設されました。
本記事では、コロナ融資の借換え保証制度をわかりやすく解説します。
目次
コロナ融資の返済ピークは2023年6~8月
コロナ関連融資(政府系金融機関のコロナ融資と民間金融機関のゼロゼロ融資との合計)は融資件数238.4万件、融資総額41.9兆円(2022年4月時点)が実行されました。
多くの企業で元金返済が始まっていますが、民間金融機関が融資したゼロゼロ融資の元金返済開始はこれからです。
2023年7月と2024年4月にそれぞれ約52,000件が集中しています。
原材料の高騰、人件費の上昇など資金繰りが厳しくなっている中小企業にとっては、今後のコロナ融資の返済開始が資金繰りの負担となります。
借換えで資金繰りを改善
資金繰りが厳しい時の対処法は次の3つです。
- 追加融資
- リスケジュール(返済額の見直し)
- 借換え
選択肢①の追加融資は、元金返済額が更に増加します。
②のリスケジュールは安定的に返済できるメリットがありますが、追加融資を受けることは困難となることが多いなど事業継続上のリスクは高まります。
顧問先が事業を安定して継続するためには、③借換えが最適な選択肢です。
借換えのメリット
借換えとは、新しい融資で今までの融資を返済し、新しい融資に乗り換えて返済していくことです。
借換えには次のメリットがあります。
- 元金返済額の減額が可能
- 据置期間を設けることで、一定期間、元金返済を止めることも可能
- リスケジュール先とみなされず、債務者区分が悪化しない
- 同時に追加運転資金の借入が可能
借換えするために必要な2つのこと
借換えは資金繰りを安定させる有効な手段ですが、新たな融資を受けるための審査は必要です。
金融機関からの新たな融資を、より有利に、より円滑に受けるためには、「経営計画などの見通しがわかる書類の作成」、「金融機関との交渉」が重要となります。
経営計画の作成
今後の収支の見通しや資金繰りの見通しを、書類にまとめることが必要です。
書類に盛り込む内容は次のとおりです。
- 企業の事業内容
- 企業の強み
- 企業の経営上の課題と解決策
- 今後の貸借と損益の推移
- 具体的な借換えの内容
- 今後の資金繰りの見通し
金融機関、信用保証協会との交渉
借換えのための融資は、融資する金融機関と連帯保証する信用保証協会の審査を通過することが必要です。
そのためには、次の点に注意しながら交渉しましょう。
- 借換えの内容が、信用保証協会の制度上の条件に当てはまっている
- 今後の利益の見通しが実現可能な水準となっている
- 借換え後の返済条件が、安定的に返済できる水準となっている
- 据置期間の設定が、金融機関が納得できる期間である
計画書を作成するだけでなく、計画書の内容や借換えによって資金繰りを改善する必要性について説明し、理解してもらわなければなりません。
コロナ融資の借換え保証制度
コロナ融資(ゼロゼロ融資)は借換えが可能です。
2023年1月10日から、借換えと同時に追加運転資金の借入が可能な『コロナ借換保証制度』が始まっています。
コロナ借換え保証制度
『コロナ借換保証』は、民間金融機関のゼロゼロ融資などを、信用保証協会の保証付き融資で借換えする制度です。
既に利用したコロナ融資に追加の運転資金を加えて、もう一度コロナ融資を受けるような資金調達が可能となっています。
この制度のポイントは次のとおりです。
- 制度上限額が1億円と高額
- 保証期間が最大10年間と長期
- 据置期間は最長5年間
- 保証料率が原則0.2%と低い
- ゼロゼロ融資の借換えができる
- 売上の減少だけでなく、利益率が低下している場合も対象
長期間の返済が可能で、据置期間を長く設定できるため、借換え後の元金返済の負担を抑えられます。
コロナ借換え保証制度の申込み条件
『コロナ借換保証』制度のイメージは、伴走支援型特別保証の拡充です。
この制度の利用にあたってのポイントは3点です。
- 申込み直前の売上高が減少している、または、最近の利益率が低下している
- 経営行動計画書の提出
- 金融機関の伴走支援
制度の対象については、売上が減少している場合だけではなく、利益率が減少している場合も対象として拡充されました。
売上高の回復などで従来は該当しなかった顧問先についても、利益率が減少していれば利用できる可能性があります。
経営行動計画書はA3サイズ1枚の簡単な計画書です。
作成にあたっては、経営上の指標数値や今後の見通しをコンパクトにまとめるテクニックが必要です。
また金融機関のモニタリングを想定して、計画書を作成することも求められます。
資金繰りを改善する提案で事務所の付加価値を向上
『コロナ借換保証』制度を利用することで、顧問先の資金繰りを改善できます。
【『コロナ借換保証』制度利用イメージ】
(単位:万円) | 当初 借入 元本 | 現在 借入 残高 | 元金 返済 (当期) | 元金 返済 (1年目) | 元金 返済 (2年目) | 元金 返済 (3年目) |
---|---|---|---|---|---|---|
現状:コロナ融資(期間7年間。当初2年据置後、5年間で返済) | ||||||
①コロナ融資 | 5,000 | 4,000 | 0 | -1,000 | -1,000 | -1,000 |
↓ | ||||||
借換え後:コロナ借換保証(期間10年間。当初2年据置後、8年間で返済) | ||||||
①コロナ融資 | 5,000 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
②コロナ借換保証 | 7,000 | 7,000 | 0 | 0 | 0 | -875 |
既に返済しているコロナ融資5,000万円(現在の残高4,000万円)を、新たにコロナ借換保証7,000万円で借換えする場合のイメージです。この場合は、
- コロナ借換保証により、新規に3,000万円を資金調達
- 据置期間を設けることで、当面の元金返済は年1,000万円を削減
- 融資期間も長期にすることで、その後の元金返済を年125万円軽減
の3つを同時におこなえます。
顧問先の資金繰りが改善する借換えとは、長期の借入期間、長期の据置期間の設定がポイントですが、金融機関側からみると、据置期間を長期とする融資は審査のハードルが上がります。
金融機関に合意してもらうためには、しっかりとした事業計画と資金繰りの見通しが必要です。
中小企業の経営者にとっては、数字に強い専門家であり、普段から相談しやすい税理士は心強い味方となります。
同時に金融機関にとっても、中小企業支援の専門家である認定支援機関が関与した計画書であれば信頼が増し、審査しやすくなります。
顧問先への資金繰り改善の提案は、税務・会計業務だけではない、事務所としての差別化に繋がります。
特にコロナ借換保証は、計画書作成の受注だけでなく、モニタリングのための長期契約にも結び付けやすくなります。
経営革新等支援機関推進協議会がサポートします
認定支援機関として顧問先の本業支援をおこなうためには、顧問先へのアピール、具体的な書類の作成ノウハウなど、さまざまな準備が必要です。
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まとめ
顧問先から税務・会計事務所へのニーズは、税務面における支援から資金調達などの財務改善における支援へと変化しています。
また、景気の減速が予想されている2023年は、顧問先の本業改善への支援が一層求められています。
顧問先の資金繰りを改善するコロナ借換保証や補助金の申請への支援は、事務所の業務を拡大するチャンスです。
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