会計事務所は、クラウド会計ソフトの台頭により競争が激化し、以前より売上が減少したといわれます。
すべての事務所の売上が減少しているというよりも、事業規模や地域によって差があるケースがほとんどです。
一人あたりの対応件数は限られるため、自ずと事務所に所属する公認会計士や税理士の数によって、売上高も決まります。
本記事では、会計事務所の売上額や特徴、事務所の売上を向上させる方法について解説します。
目次
会計事務所の平均売上高はどのくらいか
会計事務所は専門性のあるサービス業であり、主な対価としてクライアントとの顧問契約に基づく収入、コンサルティング業務といった個別案件による収入に分かれます。
事業規模は、所属する公認会計士や税理士の数によって異なることが多いです。
従業者が多ければ売上が高く、一人で運営する事務所であれば売上は限られてしまいます。
一事業所あたりの売上高は約2,000~82億7,000万円
総務省統計局が5年ごとに調査している「経済センサス-活動調査」をもとに、2016年の公認会計士事務所と税理士事務所の一事業所あたりの売上高を紹介します。
従業者規模 | 1事業者あたり売上高 公認会計士事務所 | 1事業者あたり売上高 税理士事務所 |
---|---|---|
1〜4人 | 2,128万円 | 1,908万円 |
5〜9人 | 5,910万円 | 5,108万円 |
10〜19人 | 1億3,307万円 | 1億1.988万円 |
20〜29人 | 2億3,780万円 | 2億1,016万円 |
30〜49人 | 5億791万円 | 4億2,687万円 |
50人以上 | 82億7,091万円 | 13億8,334万円 |
公認会計士と税理士では、人数に大きな違いがあるものの、どちらにも当てはまることは、従業者の数が増えれば、受けられる契約数も変わるため、売上高に反映されている点です。
従業員一人あたりの売上金額は約800~1,600万円
従業者規模によって、一人あたりの売上金額が変わります。
従業者規模 | 従業者一人あたり売上金額 公認会計士事務所 | 従業者一人あたり売上金額 税理士事務所 |
---|---|---|
1〜4人 | 930万円 | 796万円 |
5〜9人 | 925万円 | 807万円 |
10〜19人 | 1,002万円 | 940万円 |
20〜29人 | 989万円 | 894万円 |
30〜49人 | 1,280万円 | 1,186万円 |
50人以上 | 1,585万円 | 1,128万円 |
公認会計士と税理士では、契約単価の違いから売上金額が異なるものの、1人から50人以上までの金額の幅はほとんど変わりません。
どちらの場合も少人数の事務所の場合、受けられる契約数のほか、仕事の効率性にも影響があるため、大人数の事務所よりも売上金額が下がります。
事業規模による売上の特徴
事業規模として、「小規模事務所」、「中規模事務所」、「中堅以上の事務所」の3つに分けて、売上の特徴について紹介します。
小規模事務所は事業が安定する
従業者数が1人~4人の場合、対応できる件数が限られ、安定的な収益というよりは、一人ひとりの従業者がさまざまな役割を掛け持ちして収益をあげる組織と考えられます。
しかし、従業者数が5人~19人になると、対応できる件数が増え、役割を分けることが可能となり、従業者一人あたりの売上金額も上がるため収益の安定化が可能です。
小規模事務所には、大規模事務所にはない家族経営的な部分があり、さまざまな役割をこなす必要から事務所全体として機動力が高い活動となります。
ただし、事務所の所長が高年齢の場合、事業承継の問題が生じるかもしれません。仮に後継ぎがいなければ、将来的に解散の危機が浮上する可能性があります。
中規模事務所は経営効率が落ちることがある
従業者数が20人~29人になると、事業規模が拡大するものの事務所の中に総務部などが設置されがちです。全体の従業者数は増える一方で、一事業所あたりの売上金額は下がってしまいます。
「経済センサス-活動調査」では、20~29人規模の場合、10人~19人よりも従業者一人あたりの売上金額が低いです。
総務部の設置は、直接売上に結びつかないものの、人数が増えれば必要となります。
もし、総務部の設置による売上の圧迫が気になるようであれば、外注する方法もあるため検討してください。
ただし、従業者数を増やして規模を大きくする場合、外注だけでやると事務所の総務部が育たず、大規模事務所に発展させていく過程で経費だけがかかります。
事務所の総務部を育てるには、一時の売上減少期間を想定に入れて、顧問契約の単価をあげるなどの方法で対応すると効果的です。
中堅事務所から売上単価が高くなる
従業者数が30~49人の中堅事務所や、50人以上の大規模事務所になると、従業者一人あたりの売上金額が上昇します。
規模が拡大すると、小規模事務所の時に受けていた報酬額よりも、単価が高くなるためです。
また、大規模事務所になると、大手企業や上場企業などを相手とし、難しく複雑な業務に対応することでさらなる売上高を見込めます。
顧問先件数はどのくらいか
顧問先件数は、組織規模や地域により異なるため、一概にということはありません。
ただし、一般的に個人で10〜20件、法人で30〜40件といわれます。また、税理士法人では個人で40〜50件、法人で150〜170件です。
一人で対応できる件数は限られており、もし一人で平均よりも数多く対応しているとすれば、事務スタッフを抱えて対応した方が良い場合もあります。
物理的な限界があり、決算期や確定申告時期に業務が集中する特徴があるため、従業者数を増やすなどの対応が必要です。
売上高を向上させる方法とは
事務所の売上高を向上させる上で重要なことは、「顧客を増やす」、「客単価を上げる」、「新規事業を立ちあげる」ことです。
顧客を増やす
事務所の売上で最も重要なことは、新規顧客開拓です。
顧客が増えなければ事務所の売上は増えません。
新規顧客開拓には、事務所からのアプローチや顧客からの依頼において、単発の税務業務などを定期的におこない、新規顧問契約につなげられるでしょう。
積極的に顧客と接する機会を増やして、新規顧客を獲得することが重要です。
客単価を上げる
顧客を増やしても単価が低ければ、売上は安定しません。
客単価をあげるには、決算期や確定申告時期の決算業務などを通常よりも割増しする方法や、顧客数が増え、顧客満足度も満たしている場合、顧問契約料を上げる方法もあります。
ただし、顧問契約料を上げたものの、顧客が離れたからといって一度上げた顧問契約料を下げることは、事務所の信用を失うかもしれません。
顧問契約料を上げる場合、二度とその金額には戻さない覚悟で臨むようにしましょう。
新規事業をおこなう
事務所において、新規事業を立ちあげることで売上の向上につながります。
新規事業で重要なことは、既存の顧客とは異なるターゲットにアプローチすることです。
新しいターゲットに対して、新規顧客開拓することで、さらなる売上増につながります。
財務支援システム F+prus(エフプラス)のサービスと導入事例
経営革新等支援機関推進協議会では、会計事務所に向けて持続的な経営を支援するために財務支援システム「F+prus(エフプラス)」を提供しています。F+prus(エフプラス)は、2022年7月現在1,602の事務所に利用いただいています。
事務所の売上高を安定させるために、財務コンサルティングをスムーズにおこないたいと考える事務所もあるでしょう。
F+prus(エフプラス)の導入事例
F+prus(エフプラス) は、財務コンサルティング業務をスムーズにおこなうために、顧客の決算書データや借入明細などを取り入れて財務診断報告書を作成する機能があります。
作成した財務診断報告書は、問題点を自動抽出してくれるため、顧客に対してスムーズで的確な財務診断ができます。
財務診断後の解決策として、金融機関への融資があるでしょう。
融資のサポートとして、金融機関が求める事業計画書の策定支援もおこなっているため、診断から解決策の提示といったコンサルティング業務をスムーズに進められます。
事務所がF+prus(エフプラス)を導入することで、問題点を解決するための計画作成や毎月の予実管理などで活用ができるため、顧客から満足をいただいています。
また、F+prus(エフプラス)で金融機関に提出する事業計画書を作成することで、金融機関から「わかりやすい」と評価をいただくこともあります。
F+prus(エフプラス)のサービス
F+prus(エフプラス)は、月額33,000円(税込)で財務コンサルティング業務のほか、実務支援サポートやマーケティング支援などもおこなっています。
事務所が顧問先支援をおこなううえで、活用できるコンテンツや支援サービスを利用できるため、業務を最適化でき売上高の向上につなげることが可能です。
F+prus(エフプラス)のサービスをぜひご活用ください。
まとめ
会計事務所では、競争が激化しており売上が減少している事務所もあります。
従業者数が少ない場合、一人あたりの対応件数が限られるため、売上高が決まってしまうかもしれません。
本記事において、小規模事業者や中規模事業者、中堅事業者などの売上高や、一人あたり従業者の売上高を総務省統計局が調査した経済センサスを活用して紹介しました。
従業者数が少ない事務所の売上高を向上させるためには、業務の効率性なども重要です。
F+prus(エフプラス)の活用によって、財務診断報告書で出た問題点の自動抽出や、金融機関が求める事業計画書の策定などの支援サービスをおこなっています。
また、業務の効率化だけではなくマーケティング支援などにも活用ができるため、ぜひお気軽にご相談ください。