『税理士は食えない』といわれることがありますが、年収が高額の税税理士が独立すると、収入はどう変わるのでしょうか。厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によれば、税理士が属する職業分類の賃金は約810.8万円です。一方、開業税理士については、日本税理士会連合会「第6回税理士実態調査報告書」で、必要経費控除後の所得の平均が約744万円、所得300万円以下の税理士が3割超を占めるとされています。
近年、独立を検討する税理士は少なくありませんが、「独立しても食えないのでは」という不安の声も根強くあります。実際、開業税理士の所得は事務所の規模や営業力によって大きな差が生まれるのが実態です。
本記事では公表データをもとに、税理士が独立した場合の収入の実態と、所得を伸ばすために押さえるべきポイントを解説します。
税理士が属する職業分類の賃金と開業税理士の所得データ
まず、税理士が属する職業分類の賃金データと、開業税理士の所得データを、それぞれの調査の性質に留意しながら確認していきます。
税理士が属する職業分類の賃金は約810.8万円
厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「job tag」は、各職業の年収や仕事内容を職業分類ごとにまとめています。同サイトによると、令和7年賃金構造基本統計調査に基づく税理士が属する職業分類の賃金は約810.8万円です。
ただ、job tag自身も「必ずしもその職業のみの統計データを表しているものではない」と明記しています。この数値は厚生労働省編職業分類の「税理士」等に対応する雇用労働者の賃金なのです。税理士という資格・業務のみに限定した数値でも、開業税理士を含む数値でもない点に注意してください。
【出典】 厚生労働省job tag|税理士
【出典】 国税庁|令和6年分民間給与実態統計調査
開業税理士の所得は公表データ上も大きなばらつきがある
独立した開業税理士については、日本税理士会連合会「第6回税理士実態調査報告書」で所得データが示されています。同調査によると、開業税理士の所得は以下のとおりです。
- 300万円以下が31.4%
- 301万円超500万円以下が16.7%
- 501万円超700万円以下が12.0%
- 701万円超1,000万円以下が13.5%
- 1,001万円を超えが合計21.4%
平均所得金額は約744万円で、開業税理士の所得は事務所によって大きなばらつきがあることがわかります。日税連は2025年2月に最新の「第7回税理士実態調査報告書」も公表していますが、所得の詳細分布は確認できません。
【出典】 日本税理士会連合会|第6回税理士実態調査報告書(2014年実施、2013年分/利用条件は日税連へ要確認)
【参考】 日本税理士会連合会|第7回税理士実態調査報告書(会員限定資料)
「年収5,000万円」は一般的か?開業税理士の所得分布
開業税理士の所得について調べると「年収5,000万円」といった景気の良い数字を目にすることもあります。これは一般的なケースなのでしょうか。所得分布から確認していきます。
所得300万円以下が最多層という現実
前述の調査では、開業税理士の所得は300万円以下の層が最も多く、全体の3割超を占めます。所得700万円以下まで含めると全体の約6割に達するのです。多くの開業税理士は決して「5,000万円」のような水準にはいません。
特に開業直後は顧問先を十分に確保できていない場合、所得が伸び悩みがちです。軌道に乗るまでの資金繰りが独立後の最初の課題といえます。独立を検討する税理士は、こうした分布の実態を把握することが重要です。開業直後の生活防衛資金や運転資金の確保について助言することが、会計事務所としての信頼構築につながります。
高所得層はごく一部にとどまる
同調査では、所得3,001万円超5,000万円以下が1.5%、5,000万円超はわずか0.5%にとどまります。「年収5,000万円」といった数字は、開業税理士全体としては一般的な水準とは言えません。
なお、どのような業務内容や経営形態が高所得につながっているかは、調査の所得分布だけでは判断できません。後述する実務上の一般的な工夫を参考にしてください。
事務所の売上規模から見る独立後の収益
次に、税理士事務所の売上高データから、独立後の収益規模のイメージをつかんでいきます。
税理士事務所の売上高
経済センサス-活動調査は、総務省・経済産業省が事業所・企業の売上高や従業者数を網羅的に調べる公的統計です。令和3年調査によると、税理士事務所の1事業所当たり売上高は約4,926万円、従業者1人当たりの売上高は約936万円でした。
なお、同調査は国税庁法人番号公表サイトの情報を活用して事業所を把握しています。従来の調査よりも幅広く事業所を捉えているため、過去の調査結果と比較する際は注意しましょう。
【出典】 総務省・経済産業省|令和3年経済センサス-活動調査
【参考】 総務省|令和3年経済センサス-活動調査 利用上の注意
従業者規模によって1人当たり売上高は異なる
事務所の従業者規模別に1人当たり売上高を見ると以下のとおりです。
- 1〜4名の事務所では888万円
- 5〜9名の事務所では871万円
- 10〜19名の事務所では1,008万円
- 20〜29名の事務所では957万円
- 50名以上の事務所では1,266万円
従業者規模によって1人当たり売上高は異なります。ただ、規模に比例して一貫して上昇する関係ではありません。差の要因は同統計だけでは判断できません。なお、この売上高は事務所全体の数値であり、税理士個人の所得とは性質が異なる点にも注意が必要です。
独立後に所得を伸ばすための3つのポイント
開業税理士の所得を左右する要因を整理すると、大きく3つのポイントに集約されます。
顧問先を増やす
税理士事務所にとって、顧問先との継続的な顧問契約は代表的な収入源の一つです。開業当初は前職や知人からの紹介に頼るケースが多く見られます。ただ、ホームページやメールマガジンによる情報発信、税理士紹介サービスの活用、SNSでの発信など、複数の集客チャネルを組み合わせる工夫を意識しましょう。
会計事務所として独立を検討する際は、こうした集客チャネルの選び方や優先順位についてもよく検討すべきです。
付加価値の高い業務へシフトする
独立後の所得を伸ばすための方向性として、記帳代行や税務申告といった基本業務に注目しがちです。しかし、これらに加え、資産税対策や事業承継、M&A支援など、専門性の高い業務への展開も意識しましょう。
たとえば、相続や事業承継は顧問先の高齢化に伴って相談ニーズが見込まれる分野です。専門性を打ち出すことで顧問報酬以外の収入源を確保しやすくなるかもしれません。
業務効率化で生産性を高める
クラウド会計ソフトの導入や記帳代行の外注化などによって定型業務を効率化しましょう。そうすることで、税理士本人は付加価値の高い相談業務に時間を割けるようになります。スタッフとの役割分担を明確にし、業務フローを整えましょう。業務の効率化が、少人数の事務所でも所得を伸ばすための土台です。
開業税理士の年収アップを協議会は支援します
経営革新等支援機関推進協議会では、開業税理士が顧問先を増やし、付加価値サービスを提供しやすくなるよう、以下のようなメニューを用意しています。
顧問先への情報提供を自動化
制度改正や補助金情報をまとめた販促チラシ素材、動画・メルマガ・ホームページ用コンテンツを提供しています。これにより、税理士自身が一から情報発信の仕組みを作る手間を省けるでしょう。さらに、顧問先向けに自動で情報を配信する「FASクラブ」を活用すれば、営業活動を仕組み化しながら顧問先との接点を維持できます。
財務分析ツール「F+prus」で付加価値提案
財務分析ツール「F+prus」を使えば、わずか15分程度で顧問先の5カ年の経営診断が可能です。決算書の数値をもとにした分析提案ができれば、付加価値サービスを打ち出せます。
加えて、経営力向上計画の策定サポートや添削サービスも用意しています。なお、補助金・助成金支援については、制度案内、財務分析、事業計画策定など法令上可能な範囲で対応が可能です。申請書類の作成・代理等が他士業の業務に当たる場合は、行政書士や社会保険労務士等と連携することが必要です。

まとめ
税理士が独立した場合の収入は、税理士が属する職業分類の賃金とは調査の性質が異なるため単純に比較はできません。開業税理士の所得は300万円以下の層が最も多い一方、一部には所得1,000万円を超える事務所も存在しています。つまり、事務所によって大きなばらつきがあるのが実態です。所得を伸ばすには、顧問先数を増やす働きかけに加え、専門性の高い業務への展開、そして業務効率化による生産性向上など工夫が必要です。
独立開業に限らず、税理士は顧問先へ正確な情報を伝え、事務所自身の経営力も高めていく必要があります。特に年収や所得の統計データを扱う際は、指標の違いや調査年、資料の利用条件を明確にしましょう。古いデータや利用条件が定まっていない資料の数値を無自覚に引き継がないよう注意することも欠かせません。
情報提供など事務所の差別化を考えているならば、全国約1,700の会計事務所が利用する経営革新等支援機関推進協議会へお気軽にご相談ください。
[ad4]
















