事業再構築補助金の第12回公募が始まりました。公募期限は2024年7月26日です。第11回は審査が大幅に厳しくなり、第12回も同様に厳しいと見られているため、申請を検討している顧問先に対しては、顧問税理士からの申請サポートに合わせ、その他の補助金についても提案する好機です。
目次
事業再構築補助金の第11回採択結果は大幅に難化
事業再構築補助金の第11回公募の採択結果が公表されました。第11回は審査が大幅に厳しくなり、採択率は過去最低の約26.5%、採択数も過去最小の2,437件となりました。
【引用】事業再構築補助金 第11回公募の結果について|事業再構築補助金事務局
採択率は過去最低の26.5%・採択数も半減
第11回公募は申請件数9,207件に対して採択件数2,437件、採択率は約26.5%となりました。
第10回と比較すると申請件数はマイナス14.9%となり、採択件数と採択率は半減しました。第9回公募から第11回公募までの件数と採択率は次のとおりです。
公募回 | 第9回 | 第10回 | 第11回 | (前回比) |
申請件数 | 9,369件 | 10,821件 | 9,207件 | -14.9% |
採択件数 | 4,259件 | 5,205件 | 2,437件 | -53.2% |
採択率 | 45.5% | 48.1% | 26.5% | -21.6%ポイント |
製造業の採択率が高い
採択結果を業種別で見ると、採択率が高い業種は製造業のみです。
製造業以外では、情報通信業がやや高く、ほかの業種は総じて低い採択率となっています。
申請件数 | 採択件数 | 採択率 | |
製造業 | 1,814件 | 753件 | 41.5% |
卸・小売業 | 1,482件 | 368件 | 24.8% |
建築業 | 1,243件 | 319件 | 25.7% |
宿泊・飲食業 | 1,059件 | 205件 | 19.4% |
情報通信業 | 497件 | 161件 | 32.4% |
そのほか | 3,112件 | 631件 | 20.3% |
合計 | 9,207件 | 2,437件 | 26.5% |
一部業種は激減・AIは多用途で採択
ゴルフ、フルーツサンド、サウナなどの業種は採択率が大幅に減少しました。採択結果で目立つ計画内容は、AIを活用する事業計画であり、採択例は次のとおりです。
- AI-OCR技術を用いた相続関連書類の文字認識および家系図作成サービス
- 厚生労働省指定ケアプラン連携機能に対応したAI介護業務支援システム
- AIによる建築設計図の自動解析・自動生成
【引用】第11回公募 補助金交付候補者の採択結果 全国統合版|事業再構築補助金事務局
事業再構築補助金の第12回公募は4月23日から7月26日
第12回公募が開始されました。公募期間は2024年4月23日火曜日から7月26日金曜日18時までです。申請を検討している顧問先に対しては早めの準備を提案しましょう。
事務局における申請受付開始日と採択結果公表日は未発表です。
参考となる過去のスケジュールは次のとおりです。
公募回 | 第10回 | 第11回 | 第12回 |
公募開始 | 2023年3月30日 | 2023年8月10日 | 2024年4月23日 |
公募締切 | 2023年6月30日 | 2023年10月6日 | 2023年7月26日 |
採択結果発表 | 2023年9月22日 | 2024年2月13日 | 未発表 |
事業再構築補助金の第12回公募の概要
大きく変わった第12回公募の概要は次のとおりです。
補助枠は6枠を3枠へ集約
第12回から補助枠が「成長分野進出枠」「コロナ回復加速化枠」「サプライチェーン強靱化枠」の3枠へ再編されています。
第11回までの補助枠 | 第12回の補助枠 |
成長枠 | 成長分野進出枠 (通常類型) (GX進出類型) |
グリーン成長枠 | |
産業構造転換枠 | |
物価高騰対策・回復再生応援枠 | コロナ回復加速枠 (通常類型) (最低賃金類型) |
最低賃金枠 | |
サプライチェーン強靭化枠 | サプライチェーン強靭化枠 |
補助枠ごとの補助率、補助上限額
事業再構築補助金の補助額は最大1.5億円(上乗せ措置を含まず)、補助率の上限は4分の3です。
補助枠の類型ごとの補助上限額、補助率は次のとおりです。
補助下限額は、成長分野進出枠とコロナ回復加速化枠では100万円、サプライチェーン強靭化枠では1,000万円となっています。
上乗せ措置
大幅賃上げ特例による補助額の引き上げのほか、下記の上乗せ措置があります。
- 廃業費上乗せ(成長分野進出枠の通常類型)
市場縮小要件を満たす場合、廃業費として2,000万円が上乗せされます。
- 卒業促進上乗せ措置(成長分野進出枠、コロナ回復加速化枠)
補助事業終了後3年から5年で中小企業・特定事業者・中堅企業の規模から卒業する場合、補助上限額が倍となります。 - 中長期大規模賃金引上 促進上乗せ措置(成長分野進出枠、コロナ回復加速化枠)
補助事業終了後3年から5年の間に事業場内最低賃金を年額45年以上引き上げ、かつ、従業員数を年平均成長率1.5%以上増員する場合、最大3,000万円が上乗せされます。
基本要件と事業再構築の再定義
基本要件(必須要件)として、付加価値額の増加や事業再構築の定義への該当が求められます。
事業再構築の定義は新分野進出や業種転換など下記の6類型とされました。
事業再構築補助金の第12回公募における変更点とは
第12回公募は制度面についても次の4点の変更があると予測されています。
- 事前着手制度の廃止
- AIを活用した審査などの導入
- コロナ借換加点と(コロナ回復加速化枠について)補助率の引き上げ
- 口頭審査の導入
事前着手制度の廃止
第12回公募においては事前着手制度が原則として廃止されました。
事前着手が特例として認められる条件は次の3つです。
- 第10回、第11回公募で不採択となった事業者
- コロナ回復加速化枠またはサプライチェーン強靭化枠への申請(成長分野進出枠は事前着手制度が認められません)
- 事前着手が2022年12月2日以降
審査にAIを活用
計画内容や交付の審査、実績の評価などにおいてAIの活用を進めると発表されています。同一内容の類似計画が多数採択されることを防ぐ他、採択後の交付審査や実績審査などにおいても導入されます。
採択審査時におけるAI活用については次のように説明されていますので、一時的な流行に伴う計画や既存の計画書の使い回しについては採択が難しくなります。
『事業計画書の文章および添付画像ファイルの情報解析によって重複率を算出し、それを踏まえて採否判定基準および排除対象範囲を見直す』
【引用】行政改革推進会議(令和6年4月22日)資料5|中小企業庁
ゼロゼロ融資の借り換えで加点と補助率の引き上げ
ゼロゼロ融資(コロナ融資)の借り換え保証制度等を利用して既往の債務を借り換えた場合の加点措置が講じられまました。
またコロナ回復加速化枠の最低賃金類型においては、コロナ融資の借り換えをしている場合は補助率が引き上げされます。
口頭審査の導入
オンラインによる口頭審査が導入されます。1事業者あたり15分とされており、申請者の代表者等のみが対応し、その他の同席者(コンサルタントなど)は認められていません。
事業再構築補助金はいつまで?
事業再構築補助金は追加予算が計上されていないため、第12回公募が最後となる可能性があります。申請を検討している顧問先に対しては十分に事前準備することを伝えておきましょう。
顧問先へ事前説明しておきたい第12回公募の注意点
第12回公募における申請を検討している顧問先に対しては、以下についても説明しておくことがおすすめです。
- ゼロゼロ融資(コロナ融資)の借り換えが有利
ゼロゼロ融資を借り換えしている顧問先については、補助率の引き上げや加点措置があり、採択されるためには有利です。 - これから借り換えする場合は公募期限に注意
ゼロゼロ融資などをこれから借り換えすることで加点措置などを検討している顧問先については申請期限以前に借り換えしておく必要があります。
申請期限までに借り換えが間に合うスケジュールであるか、事前に金融機関と相談しておく必要があります。 - 事業再構築の類型に則した、説得力が求められる
事業再構築の6類型が新たに定義付けられていますので、その類型に合致した事業計画であることが求められます。
また、補助対象外の事業として『他の法人・事業者と同一または類似内容の事業』が明記されました。流行している製品・サービスへ進出する計画の場合は審査が厳しくなると予測されます。
顧問先に応じて、計画の妥当性を論理的に説明する必要が高まっています。
顧問先への提案を検討したい事業再構築補助金以外の補助金3選
事業再構築補助金の第12回公募の審査は第11回と同様に厳しくなるといわれています。このため顧問先に対して、ほかの補助金についてもあわせて提案することが無難です。中小企業におすすめの補助金は次の3つです。
- 中小企業省力化補助金
- ものづくり補助金
- IT導入補助金
中小企業省力化投資補助金
人手不足解消のための汎用的な省力化投資が対象となる新しい補助金です。
補助対象はカタログに登録された製品などで、補助上限額は1,500万円、補助率は2分の1です。
【引用】中小企業省力化投資補助金|中小企業省力化投資補助金事務局
ものづくり補助金
人手不足解消を目的とするデジタル技術を活用した専用設備、革新的な製品の開発のための設備投資などが対象です。
第18次公募における補助上限額は1億円、補助率は2分の1、3分の1、または3分の2のいずれかです。(従業員数などにより異なります)
【引用】ものづくり補助金 第18次公募要領 概要版|ものづくり補助金事務局
IT導入補助金
業務の効率化や生産性向上のためのシステム導入費用、PC購入費などが対象です。
補助上限額は450万円、補助率は2分の1から5分の4です。(複数社連携IT導入枠を除く)
【引用】IT導入補助金2024|IT導入補助金2024事務局
補助金・助成金の改正は顧問先への提案の好機です
事業再構築補助金は、累計申請件数17万件を超える大型補助金であり、関心を持っている顧問先も多いと推測できます。
第12回の公募がまもなく始まると予測されていますが、厳しくなった審査で採択されるためには次の3つがポイントです。
- 迅速な情報収集とスケジュールにあわせた十分な準備
- 顧問先の事業内容や強みに応じた独自性がある内容
- 制度趣旨を踏まえた、見やすく、わかりやすい申請書類の作成
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