会計事務所支援ブログ

税理士がおこなうリモート監査とは?メリットと課題を解説

税理士がおこなうリモート監査とは?メリットと課題を解説

税理士事務所が月次巡回監査をリモート(オンライン)でおこなうことが増えています。
リモート監査(オンライン監査)はコスト削減や生産性向上などのメリットがあるものの、多くの準備が必要などの課題もあります。

本記事では、税理士事務所がおこなうリモート監査のメリット・課題について解説します。

リモート監査とは

リモート監査(オンライン監査)とは、税理士事務所の監査担当者が、顧問先への訪問ではなく、インターネット上で月次巡回監査をおこなうことです。
コロナ禍で顧問先への訪問が難しくなってから、オンラインにより月次巡回監査をおこなう事務所が急増したといわれています。

顧問先へ訪問する月次巡回監査とリモート監査との違いをまとめると次のとおりです。

 訪問する監査リモート監査
証憑紙またはデータデータ
仕訳確認帳簿または会計システム会計システム
面談方法直接オンライン上
面談場所顧問先の事務所などどこでも可能

リモート監査のメリット

リモート監査は監査担当者の移動が不要となるため、交通費などがかかりません。リモート監査は税理士事務所にとってコスト面以外にも次のようなメリットがあります。


(コスト面におけるメリット)

  • 移動時間、交通費、紙代や印刷費用の削減

(顧問先獲得におけるメリット)

  • 顧問先が遠隔地であっても対応可能

(顧客満足度におけるメリット)

  • 監査の頻度を増やすことが容易
  • 証憑確認を事前におこなうことで、ヒアリングや顧問先への提案に集中しやすい

(税理士事務所の人材採用・育成におけるメリット)

  • 新人スタッフ、上司など監査担当者以外の同席が容易
  • 監査状況をモニタリングしやすい
  • リモート勤務のスタッフであっても監査が可能

リモート監査は事務所と顧問先の両方で準備が必要

リモート監査をおこなうためにはデジタル環境の整備が必須です。リモート監査をおこなうために必要となる主な準備は次のとおりです。

リモート会議ツール

オンラインでチャットやWEB会議をおこなうツールが必要です。
チャットツールとしてはChatworkやSlackなど有名です。会議ツールとしてはZoomやGoogle Meet、Microsoft Teamsなどがよく使われています。

証憑のデジタル化ツールとデジタル化する作業

リモート監査は証憑をデジタル化することが前提となります。オンラインでは紙の証憑を現物確認できないためです。
紙の証憑をデータ化するために、スキャナなどのハードウェアと証憑をデジタル化するアプリケーションが必須です。また顧問先あるいは税理士事務所において、紙の領収書やレシートをデジタル化する作業が発生します。

ストレージの確保

データを保管するためのストレージが必要です。近年はインターネット上のサーバーにデータを保管するサービスが利用されています。

情報セキュリティ対策

オンラインで顧問先のデータをやり取りするため、データ流出を防ぐための情報セキュリティ対策が必須です。

リモート監査の課題

リモート監査は移動時間の削減などのメリットがありますが、証憑をデジタル化する作業が必要となるなど、課題もあります。

現地監査や立会が必要となることがある

監査をリモートで完全に代替することは難しいといわれています。原本を確認しなくてはならない資料があるほか、税務調査への立会などがあるためです。

コミュニケーションの難易度があがる

リモート監査は対面による面談よりもコミュニケーションが難しくなります。対面の場合と異なり、相手の表情や声色などを読み取ることが難しいためです。

データの回収方法がバラバラ

事務所がデジタル化する場合、紙証憑の郵送、メール、クラウド会計システム上での共有、会計システム以外のオンラインストレージ上での共有など、証憑を回収する方法が多様化します。

紙証憑を電子データ化する作業が発生する

紙の領収書やレシートをデジタル化する作業が発生します。

電子データの証拠力に議論の余地が生まれる

紙資料のデジタル化はデータ改ざんリスクがあります。デジタル化した証憑について、誰がデータ化したか、どのようにデータを回収したかなど、データの履歴を残す工夫が必要となります。

リモート監査を円滑とする4つのポイント

リモート監査を円滑におこなうための主なポイントとして、以下の4つがあげられます。

事務所スタッフのITリテラシー向上

事務所のスタッフが、ある程度ITツールに慣れておく必要があります。顧問先からの質問に対応できないと、作業が円滑に進まないためです。

顧問先の理解、協力

人手不足やデジタルツールに慣れていないなどの理由で、領収書のデジタル化に消極的な顧問先もいるでしょう。
事前に資料をどこまでデジタル化できるかが、リモート監査の効率に影響するため、顧問先に理解し協力してもらうことが必要となります。

デジタルツールの活用

リモート監査は会議ツールなど、デジタルツールの活用が前提となります。また顧問先にクラウド会計システムを導入してもらう、会計システムを顧問先と事務所で連動させる、などにより、リモート監査前に仕訳を確認できる仕組みを整備しておくことが望ましいです。

証憑のデジタル化にかかる作業負担を軽減するためには、高性能スキャナまたはプリンタの導入、スマホで撮影したデータを自動で仕訳できるAIアプリの導入、などが効果的です。

電子データの取り扱いルールを決める

デジタル化は細かな点においてもルールが求められます。例えば、スタッフごとにファイル名の付けかたがバラバラ、どこにデータが保存されているかわからない、などの状態では効率が落ちてしまいます。
デジタル化するときにあらかじめ決めておくとよいルールとして、次の項目があげられます。

  • ファイルの形式・種類
  • ファイル名の付けかた
  • データを編集するときの履歴の残しかた
  • データの保存場所
  • 事務所内で顧問先情報を管理する体制

リモート監査の活用により生まれた時間で顧問先への提案を拡充

リモート監査を円滑におこなうことで、移動時間を削減する、限られた監査時間のうち確認作業にかかる時間を減らしてヒアリングや税務相談、顧問先への提案に充てることができるなどの効果が期待できます。
また監査時に新人スタッフを同席させて、スキルアップさせるなどの活用法もあります。

証憑や仕訳の確認作業をDX化によって削減し、リモート監査によって移動時間を減らすことで生まれた時間は、顧問先への提案を充実させることに充てることがおすすめです。

顧問先における税理士事務所へのニーズが多様化し、税務会計だけでなく、補助金・助成金の申請支援、資金繰り改善のアドバイスなどの本業支援業務が求められているためです。

協議会が付加価値業務の推進をサポートします

「リモート監査によって生み出された時間で、スタッフの研修を効果的におこないたい」「顧問先への提案ネタを探す時間が足りない」など、事務所経営についてお悩みごとがある事務所様は、経営革新等支援機関推進協議会がサポートします。

経営革新等支援機関推進協議会は、補助金・助成金支援をおこなうスタッフを育成する動画研修の配信、新人スタッフが簡単に財務改善を提案できる財務分析ツールの提供など、豊富なコンテンツを月額30,000円(税別)で利用し放題です。

付加価値業務の拡充による収益化、事務所の業務効率化などのお悩みは、経営革新等支援機関推進協議会へお気軽にご相談ください。

[ad4]

ABOUT US

経営革新等支援機関推進協議会
経営革新等支援機関推進協議会は、株式会社エフアンドエムが運営する会計事務所向けの支援団体です。2014年4月に設立し現在では、全国1700以上の会計事務所が正会員として参画しており、中小企業支援制度についての勉強会・システム提供を通じて全面的にバックアップしている。