「顧問先獲得」と「人材採用・教育」が大事であるとわかっているものの「どこからどのように手をつけていいのかわからない」「成果が出ない」と悩んでいる事務所様も多いのではないでしょうか。
京都府にある石黒健太税理士事務所の代表石黒健太氏は、30歳で独立開業し、5年間で年商1億2,000万円を達成しました。
愛媛県に事務所を構えている税理士法人ISJの代表伊東稔人氏は、開業3年間で500件超の顧問先を獲得しています。
このような躍進している事務所は、どのようにして成長を遂げているのでしょうか。
本記事では、2024年に開催した当協議会のフォーラムにおける石黒氏と伊東氏の対談から、「成長する税理士事務所の人材採用と育成」「顧問先を獲得するマーケティング」について紹介します。
目次
ゼロからの挑戦!税理士事務所職員の採用成功の秘訣
石黒氏は開業直後から職員を採用しましたが、その後の事務所の変化に対応できなかった職員がいたといい、また、伊東氏は開業後、「求人方法がわからない」「応募者が来ない」という状況を経験したといいます。
両氏が人材採用のために取り組んだ工夫は次の2つです。
働きやすさの工夫
石黒氏は職員の働きやすさを重視した採用戦略をとりました。
フルフレックスやリモートワークを早くから導入し、「ワーク・ライフ・バランス認証」を取得するなど、働きやすい職場であることが事務所外からでもわかるようにしました。
事務所のビジョンや夢を語る
伊東氏は開業直後から経営ビジョンや夢を語ることにしました。
「こういった事務所にしたい」「こういった人が欲しい」と周囲に話し、関心をもった人に対して、夢を一緒に追いかけようとアピールしました。
採用で税理士事務所を成長させる!人材選びのポイントと仕組み作り
「事務所を成長させる人材」について、両氏はどのような点を重視しているのでしょうか。
両氏はともに、事務所が成長した現在も「優秀な人材であるという理由だけでは採用しない」といいます。優秀な人材を採用したことがあったものの、「ワンマンプレイで事務所に合わない」など、うまくいかなかったことが理由です。
両氏が人材採用において重視している共通ポイントは次の4つです。
- 事務所として求める人物像が明確
- 選考プロセスが整備されている
- 適性検査を採用している
- 採用後の教育制度が整備されている
採用する人物像の明確化
石黒氏、伊東氏ともに、採用時に、理想とする人材の人物像について、重視するポイントを明確としています。
両氏が共通して採用時に求める人材は「成長意欲がある人」「チームプレーができる人』の2つです。
伊東氏は、成長意欲があるかを見極めるために、「過去の失敗経験の有無」と「それを克服するためにとった行動」について聞くこととしています。新しいことに前向きに取り組める人物を採用するためです。
石黒氏も同様に、「成長の伸び代があるか」「コミュニケーション能力があるか」を重視しています。
選考プロセス作り
石黒氏は、採用において「最低ラインとなる基準を設けること」「採用の仕組みを作ること」が大切であると考えています。石黒氏の事務所における選考プロセスには、次の2つのポイントがあります。
- 採用したくない人を公開している
採用前の情報として、「事務所に合わない人物像」を載せています。例えば、「申告書作成業務だけをしたい人」「お客様とのコミュニケーションが苦手な人」などです。 - 客観的なモノサシを利用する
主観による選考基準だけでなく、客観的な判断基準となる適性検査を導入しています。
適性検査については以下に説明します。
適性検査
石黒氏、伊東氏ともに採用時に適性検査を導入しています。
石黒氏は、適性検査を導入することで、「採用選考に客観的な指標ができる」「最低ラインの基準が明確となる」と考えています。
伊東氏は過去、非常に優秀であるものの、適性検査結果が「事務所に合わないかもしれない人」を採用したことがありました。その結果、事務所の方針や、やり方が合わず、トラブルとなった経験があり、「適性検査の結果は明確に出る」と評価しています。
教育の仕組み作り
伊東氏は今年、初めて新卒職員を採用し、その伸び代に感心したといいます。新卒職員が頑張っている姿は、周囲の職員にとっても自発的な意欲を喚起します。
伊東氏の事務所においては、新卒職員を育てるために「風通しのよさが重要である」と考え、次の取り組みをおこなっています。
- 質問は部下の権利であり回答は上司の義務であると教える
- 上司は新卒職員に寄り添うことを常に意識させている
石黒氏は、新卒職員を戦力化する仕組みができていることが、採用がうまくいきやすくなるポイントであると考えています。
人が育つ!税理士事務所の教育方針と実践術
成長している両氏の事務所では、どのような人材教育をおこなっているのでしょうか。
両氏の事務所がおこなっている、未経験者を戦力化する教育体制と実施のコツを紹介します。
OJTとOFF-JTの組み合わせ
伊東氏は新卒職員の育成には、約半年の期間が必要であると考えています。この半年間は成果を求めることよりも、育成することを重視し、事務所内においても徹底させています。
伊東氏の事務所では、新人教育はOJTとOFF-JTが中心です。午前中は通信講座によるOFF-JT、午後はOJTをおこないます。
また「失敗しても怒らず、挑戦したことを褒める」よう事務所内に徹底しています。若い世代の価値観にあわせ、周囲の先輩職員や上司から新卒職員へ寄り添うことが大切であると考えているためです。
価値観教育や経営指針の浸透
石黒氏は読書会や所長との対話会、事務所の経営指針書の読み合わせ会などを定期的に開催しています。同じ理念を共有することを繰り返すことで、事務所内に共通の価値観を浸透させています。石黒氏の事務所が掲げる経営理念は次の内容です。
基本業務の教育は動画学習を活用して工数を削減
両氏とも、エフアンドエムが提供している新卒職員向けの動画研修をフル活用し、教育の効率化とより高い効果が出る工夫をしています。
伊東氏の事務所においては、動画研修を知識のインプットとして利用するとともに、フリータイムの質問時間を意図的に設けています。質問時間を設けることで、新卒職員が伸び伸びと学習し質問できるようになり、上司であるベテラン職員は、部下への教育を通じて仕事の意義を実感してもらいやすくなるといいます。
石黒氏も同じくエフアンドエムなどの動画研修を活用し、未経験者を短期間で戦力化し、経験者に近い水準のサービスを提供できるようになる教育制度を構築しています。
動画研修は、単に教える側の工数を減らすだけではありません。動画研修の内容を踏まえて実際の作業内容を指導することにより、すぐに実務に活かせるよう工夫しています。
少人数でも成果を出す!税理士事務所拡大のマーケティング成功戦略
事務所が成長するためには顧問先をいかに獲得するかが重要です。
石黒氏は、書籍出版などでは顧問契約につながらなかったと振り返ります。
伊東氏の場合、顧問契約を獲得するまでの営業と顧問契約の担当に分ける分業体制とした結果、後任者への引き継ぎが難しくなってしまったといいます。
両氏ともに共通するマーケティングは「WEBマーケティング」です。しかし、SEOなどのWEBマーケティングは効果がありますが、時間がかかることがあります。まずは顧問先からの紹介や事務所通信など、すぐにできる広告宣伝から始めてみましょう。
両氏が実際に成果を出した集客のコツを5つの集客方法別に紹介します。
ブランディング
伊東氏は開業当初、顧問先を紹介してもらうために「自身の特徴をわかりやすいキーワード」で表現しました。紹介される人に対し、説明しやすいことが重要であるためです。
例えば「足が速い」と表現することで、対応の迅速さや若々しさをアピールできます。また自身の知名度を高めるために、地元の有名人と動画を撮影する、女性誌に記事を掲載してもらい顧問先へアピールするなど、さまざまな取り組みをおこなっています。
人脈作り
伊東氏は、税理士会は人脈作りの有効な手段であるといいます。税理士会の委員に就任し、同業先生とのつながりを深めることができたためです。
若手税理士にとって「人脈作り」は、国税OBや地域で有名な税理士とつながりができるよい機会となるとおすすめしています。
SNSの活用
伊東氏はYouTubeやホームページで、さまざまな情報を発信しています。税務会計情報だけでなく、自身の掲載記事などについても積極的に発信しており、話題となることで、顧問先の紹介につながりやすくなります。
メルマガ配信
石黒氏は、事務所通信やメルマガの配信など地道な宣伝活動をおこなうことで、単発ではなく、定期的な接点をもつようにしたといいます。事務所通信やメルマガを継続した結果「1年前のメルマガを見て」と連絡があり、顧問契約につながった実績があるためです。
M&A
伊東氏の事務所が3年間で500件以上の顧問先を掴んだ理由のひとつが、同業事務所のM&Aです。知り合った同業事務所と親交を深めることで、一緒に仕事をおこなうこととなりました。
経営革新等支援機関推進協議会では採用・教育やマーケティングも支援!
石黒氏、伊東氏ともに試行錯誤しながら採用・教育ノウハウとマーケティングを身に付け、事務所を成長させています。
「自事務所はどこから着手すべきか」「所内研修に使える動画プログラムはどのような内容か」などの相談は、経営革新等支援機関推進協議会へお気軽にご相談ください。
経営革新等支援機関推進協議会は、人材採用とスキルアップのサポート、効果的な財務分析ツールの提供など、会計事務所の成長に効果的な豊富なサービスを提供しています。人材採用・育成や、集客に使えるサービスの一部を紹介します。
採用・教育支援
両氏がともに活用している、人材採用・育成に役立つサービス2つを紹介します。
- 『パーソナリティ診断』
石黒氏と伊東氏ともに活用し、高く評価している適性診断サービスです。
応募者の資質を客観的に診断できるため、応募者の見極め、自事務所に合う人物であるかを客観的に把握することに役立ちます。
また在籍している職員の診断結果により、自事務所に向いている人の特徴を把握することもできます。 - 『ACADEMY』などの講座動画
新卒職員向けのマナー講座、最短1か月で監査担当者を育成する研修動画コンテンツ、付加価値業務をイチから学べるプログラムなどが豊富に揃っています。
マーケティング支援
経営革新等支援機関推進協議会は会計事務所のマーケティングツールが充実しています。主なサービスとして次の販促ツールがあります。
- メルマガ素材の毎月提供
- 補助金・助成金情報をお知らせする制度案内チラシ
- 顧問先への補助金などの情報提供をサポートする『FAS CLUB』
会計事務所の人材採用・人材育成・集客は、経営革新等支援機関推進協議会がサポートします。