株式会社西田事務所様は、財務分析と独自の分析・計画策定ツールを活用した財務支援を推進している税理士事務所です。
財務支援件数40件以上を実施し、「トップ100事務所」を受賞している西田事務所様の財務支援と差別化戦略について、副所長の西村一成氏から話を伺いました。
目次
株式会社西田事務所はどのような事務所ですか?
株式会社社西田事務所は、山口県周南市に事務所を構える地域密着型の税理士事務所です。
1989年に代表の西田了氏が開業し、現在は取締役2名と正社員15名の合計17名です。
副所長の西村一成氏は国税局を退職後、2022年7月に入社し、事務所の承継をすすめています。
付加価値支援として財務支援に取り組む
当事務所が財務支援に力を入れている理由は、税務業務と親和性が高く、顧問先が目に見える形で付加価値を提供できるためです。
「5FOCUSレポート」をはじめとする経営革新等支援機関推進協議会のツールを活用した分析結果を顧問先へ提供することで他事務所と差別化しています。
きっかけは顧問料の引き上げ
インボイスをきっかけに顧問料の引き上げを検討した会計事務所が多かったものの、実際に顧問料の引き上げができた事務所は約4割にとどまります。
当事務所が財務支援に取り組みはじめたきっかけは、顧問料の引き上げです。
私が入所したときは、他事務所との差別化ができておらず、低水準だった顧問料の引き上げやスタッフへの還元が難しい状況でした。
この状況を変えるため、財務支援の強化に着手しました。「5FOCUSレポート」など財務分析を顧問先へ提供し、顧問先から課題をヒアリングすることで、顧問先との関係を深める方法です。これにより顧問先満足度が向上し、顧問先の納得感が高い顧問料引き上げに成功しました。
財務支援の苦労や工夫はありますか?
財務支援を拡充するうえで直面した課題は、顧問先の貸借対照表に対する理解度の向上です。当事務所における工夫としては「5FOCUSレポート」の活用と事務所オリジナルツールの併用があげられます。
BS(貸借対照表)に対する理解度の向上
顧問先に貸借対照表(BS)を理解してもらうためには、損益計算書(PL)やキャッシュフロー計算書(CF)との連動をわかってもらうことが必要です。
経営革新等支援機関推進協議会の「5FOCUSレポート」を活用するとともに、顧問先がより理解しやすい補完ツールとして事務所オリジナルのツールである『使う決算書®』を活用しています。
5FOCUSレポートを活用
「5FOCUSレポート」は、顧問先の財務状況が一目でわかる財務分析レポートです。
【参考】「5FOCUSレポート」サンプル
当事務所における「5FOCUSレポート」活用テクニックは次のとおりです。
最初に1ページ目の結果や4ページ目の債務償還年数を説明します。顧問先が金融機関からどのように見られているかなど、経営者が普段聞くことが少ない情報を説明することで顧問先が関心をもちやすくなります。


次に5ページ目の手元流動性比率や7ページ目の短期借入カバー率を重点的に説明しています。説明時は、借入金であってもキャッシュを豊富にもつことで資金繰りを安定させることが大切であると伝えています。


顧問先からは「こういった情報は今まで聞いたことがなかった」と感謝の言葉を多くいただいています。
多忙な経営者へすべてを説明することが難しい場合が多いため、「5FOCUSレポート」のコメントを後で読み、理解を深めてもらっています。このコメントは厳選された上質なコメントが多く、渡す側としても高い安心感があります。

顧問先に対しては、最初は借入をしてでも手元の現預金を厚くし、資金繰りに余裕ができからBSを作り込んでランクアップできるよう指導していきたいと考えています。
財務支援のターゲット設定
財務支援をおこなう顧問先は、原則として顧問料が一定以上の水準である顧問先を対象としています。例外として、早急に財務改善が必要な顧問先について個別に対応しています。
利益計画作成ツールはどのようなものですか?
当事務所でオリジナルの利益計画作成ツールを作り、活用しています。顧問先からすると決算書は数字の羅列に見えがちであるためです。
このツールはPLやBSを関係付けて視覚的に見やすくしているなど、次の3つの機能を備えています。
- 制度会計を管理会計へ変換し、経営の役に立てるPL分析が可能
- CFを含めてBSがわかりやすい
- 分析結果をもとにした次期の利益計画の作成が可能
このツールはシンプルな構造とすることで、約10分で作成可能です。顧問先との面談前のわずかな時間であっても効率的に作成できます。
財務支援は追加報酬をいただいていますか?
財務支援に関する報酬は顧問料の範囲内で対応しています。
顧問料の範囲内で支援する理由
財務支援を顧問料の範囲内で対応している理由は2つです。
ひとつは安心感です。財務コンサルティングが不十分な状態であっても“お試し”として提供できます。また顧問先からのフィードバックによってスキルアップにつなげることができます。
もうひとつは、財務支援を実感していただくことで、財務診断料込みのワンランク上の顧問料へシフトしてもらうためです。
副次的なメリットもあります。顧問先にとって悪い結果を報告しながら顧問料をもらう心理的なハードルが下げる、顧問先にとって厳しいことであっても伝えやすいなどです。
現在は私が単独で財務支援をおこなっています。事業継承に伴って顧問先の経営者と私との関係構築を優先しているためです。将来的にはスタッフへ展開する予定です。
新規顧問先獲得の手法を教えてください。
当事務所の新規顧問先獲得は、ホームページ経由が約100%です。
新規顧問先の成約率は約86%
昨年1年間で、新規問い合わせから面談・見積もりへ至った件数は7件、契約となった件数は6件です。
当事務所は、面接・見積もり前の段階で最低料金などを明示しています。条件に合わない可能性が高い打診を選別し、面談や見積もり時間の削減と成約率の向上に努めています。
ホームページの更新方法
集客において重要なホームページの更新は私がおこなっています。更新頻度を高めるため、経営革新等支援機関推進協議会の「NewsLetter」などを活用しています。
ホームページのSEO対策
ホームページで重視している点は、『地域名+税理士』の検索結果が上位3位以内となるよう努めていることです。会計事務所を探す人は上位3位の中から比較検討することが多いためです。
見込み客への訴求ポイント
検索上位3位の中で、さらに差別化するために次の3点をアピールすることで事務所をブランディングしています。
- ホームページの更新頻度が高い
- 商標登録した、オリジナルの決算書分析ツールがある
- 『トップ100事務所受賞』などメディアに取り上げられている
ホームページの更新頻度と情報の鮮度を高めるため、経営革新等支援機関推進協議会が発行している「NewsLetter」「知らないと損するお金や税金ニュース」「経営サポートナビ」などを新着の翌日に事務所のホームページへ掲載しています。
トップ100事務所を活用したブランディング戦略
事務所の差別化戦略として「トップ100事務所」受賞を事務所のホームページへ掲載するとともに、地域メディアへプレスリリースしました。
同賞受賞をリリースした結果、地域日刊紙からの取材や実務家向け専門誌の寄稿など5件の依頼をいただき、大きな反響がありました。特に「山口県唯一の受賞事務所」として事務所のブランディングができたと考えています。
トップ100事務所とは?
トップ100事務所とは、経営革新等支援機関推進協議会に参加している全国1,732事務所(2024年12月31日時点)の中から、各種補助金支援や融資・資金繰り支援、優遇税制支援などで実績を残した事務所を称える賞です。
【参考】会計事務所の中小企業支援実績を表彰「TOP100事務所 2024」発表|PR TIMES
今後の展望を教えてください
長期的な方針として、税務顧問や記帳代行業務は縮小または廃止し、経営コンサルティング業務を増やす予定です。スタッフの労力を減らしつつ付加価値が高い業務へシフトし、スタッフへの還元を増やしていこうと考えています。
AIの台頭により、ある程度の決算が組める時代が間近に迫っており、さらにコンサルへシフトする必要性があると思います。
株式会社西田事務所の事例からの学び
西田事務所様は財務支援を通じて事務所の差別化、顧問料引き上げ、そして新規顧問先獲得に成功しており、参考としたい会計事務所様も多いでしょう。
西田事務所様を成功事例として、経営革新等支援機関推進協議会がおすすめするポイントとして次の3つがあげられます。
事務所の強みを作り他事務所との差別化を図る
事務所の強みを作り、他事務所との差別化を図りましょう。
「5FOCUSレポート」などを活用した財務支援は税務業務と関連させやすく、事務所の強みとして差別化へつなげることが可能です。
財務分析に不慣れなスタッフについては、経営革新等支援機関推進協議会が提供する実務体験型プログラムでスキルアップできます。また財務支援をおこなう際のお悩みごとについては、経営革新等支援機関推進協議会の資金繰り・融資相談窓口がサポートします。
アプローチするターゲットを決める
顧問料や顧問先の格付をもとに財務支援する顧問先を絞り込み、重点的に支援しましょう。
経営革新等支援機関推進協議会では、格付B・C・D1ランクの顧問先へのアプローチから始める方法をおすすめしています。また西田事務所様と同様に、「5FOCUSレポート」の1ページ目と4ページ目を重点的に説明することで、ポイントをおさえた財務支援を効率的におこなうことができます。
毎月ホームページを更新する
事務所のホームページは毎月更新しましょう。ホームページは新規顧問先獲得の強力なツールとなります。
効率的にホームページの魅力を高めるためには、経営革新等支援機関推進協議会が提供する「NewsLetter」などのマーケティングツールを情報発信素材として活用することがおすすめです。高頻度かつタイムリーに更新でき、顧問先が関心をもつテーマによる集客力向上を図ることができます。
会計事務所経営のお悩みごとは、全国1,732事務所が利用する経営革新等支援機関推進協議会がサポートします。まずはお気軽にご相談ください。
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