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源泉所得税の改正ポイント|令和8年度税制改正で給与計算・年末調整はどう変わる?

源泉所得税の改正ポイント|令和8年度税制改正で給与計算・年末調整はどう変わる?

令和8年度税制改正では、源泉所得税に関わる実務変更が複数あります。基礎控除・給与所得控除の引上げ、通勤手当や食事支給の非課税枠拡大、防衛特別所得税の創設などです。これらを踏まえ、顧問先へ早めに共有すべきポイントを整理します。

源泉所得税の改正で何が変わるのか

令和8年度税制改正には、給与計算、年末調整、退職所得の源泉徴収、令和9年以後の源泉徴収事務に関わる改正が含まれています。項目ごとに適用時期が異なるため、税理士は「いつから何が変わるのか」を顧問先へ伝えることが重要です。

令和8年度税制改正の全体像

国税庁の「源泉所得税の改正のあらまし」では、令和8年度税制改正により以下が示されています。

  • 基礎控除の引上げ
  • 給与所得控除の最低保障額の引上げ
  • 扶養親族等の所得要件の改正
  • 通勤手当の非課税限度額の見直し
  • 食事の現物支給に係る非課税限度額の引上げなど

これらは、給与所得者の税額計算や年末調整だけでなく、月次給与の手当処理にも影響する内容です。顧問先の給与担当者に早めに案内しておきましょう。

月次給与・年末調整・令和9年以後で対応時期が分かれる

今回の改正では、すべての変更が同じタイミングで適用されるわけではありません。基礎控除や給与所得控除の引上げは令和8年分の所得税全体に影響するため、改正内容の多くは令和8年12月の「年末調整での最終精算」で一括して反映され、毎月の給与からの源泉徴収(税額表)へ連動するのは令和9年分です。

一方、通勤手当や食事支給の非課税枠拡大は、令和8年4月1日以後の支給分から適用されます。また、防衛特別所得税は令和9年1月1日以後に生ずる所得に対する所得税に影響するものです。

【出典】国税庁|令和8年版 源泉徴収のあらまし

令和8年12月の年末調整で反映する改正

基礎控除や給与所得控除の改正は、令和8年分の年税額計算に影響します。ただ、月々の源泉徴収で対応するわけではありません。原則として、令和8年12月の年末調整で精算する点を顧問先へ伝える必要があります。

基礎控除の引上げ

基礎控除は、所得税計算における基本的な控除です。令和8年度税制改正では、合計所得金額に応じて基礎控除額が見直されます。特に令和8年分・令和9年分は特例的な加算があり、令和10年分以後とは控除額が異なる点に注意が必要です。

合計所得金額改正前令和8年分・令和9年分令和10年分以後
132万円以下95万円104万円99万円
132万円超〜336万円以下88万円104万円62万円
336万円超〜489万円以下68万円104万円62万円
489万円超〜655万円以下63万円67万円62万円
655万円超〜2,350万円以下58万円62万円62万円

合計所得金額2,350万円超の場合の基礎控除額には改正がありません。 

給与所得控除の最低保障額の引上げ

給与所得控除の最低保障額は、本則として65万円から69万円へ引き上げられます。さらに、令和8・9年分については5万円の特例加算が設けられるため、給与収入190万円以下の人の給与所得控除額は74万円です。

扶養親族等の所得要件の緩和

基礎控除と給与所得控除の見直しに伴い、扶養親族等の所得要件も改正されています。扶養親族、同一生計配偶者、ひとり親の生計を一にする子については、所得要件が58万円以下から62万円以下へ引き上げです。給与収入だけの場合は、136万円以下が目安と考えましょう。

また、配偶者特別控除の対象となる配偶者は62万円超133万円以下、勤労学生は89万円以下へ見直されています。年末調整では、従業員が家族の収入見込みを正しく申告できるよう、早めの案内が必要です。

生命保険料控除の特例

年齢23歳未満の扶養親族を有する場合、新生命保険料に係る一般生命保険料控除の控除額について特例が設けられています。年間の新生命保険料が120,000円を超える場合、控除額は一律60,000円です。

また、旧生命保険料とこの特例の対象となる新生命保険料を支払った場合の一般生命保険料控除の適用限度額は6万円とされています。ただし、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の合計適用限度額は、従来どおり12万円です。

令和8年4月から月次給与に影響する改正

基礎控除や給与所得控除は年末調整で反映します。しかし、通勤手当と食事支給の非課税枠は、令和8年4月1日以後の支給分から適用されています。そのため、該当する手当を支給している顧問先では、月次給与計算の課税・非課税設定を早めに確認しなければなりません。

通勤手当の非課税限度額の改正

自動車や自転車などの交通用具を使って通勤する人について改正があります。片道65km以上の区分が細分化され、非課税限度額が引き上げられました。片道95km以上の場合は、月額66,400円まで非課税です。

また、要件を満たす駐車場等を利用している場合、通勤距離に応じた非課税限度額に加算ができます。1か月あたりの駐車場等の料金相当額を上限5,000円まで上乗せできるようになりました。通勤手当の支給ルールを設けている顧問先では、各手当を確認する必要があります。

【出典】国税庁|通勤手当の非課税限度額の改正について

食事支給・深夜勤務の夜食代の非課税枠拡大

使用者からの食事の現物支給については、所得税の非課税限度額が月額3,500円から7,500円へ引き上げられました。また、深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭についても、非課税となる1回当たりの支給額が300円以下から650円以下へ引き上げられています。

これらは令和8年4月1日以後に支給する食事等に適用される制度です。社食補助、食事手当、夜食代を支給している顧問先では、給与計算上の課税区分を見直す必要があります。

【出典】国税庁 | 食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて

退職所得・令和9年以後の源泉徴収に関わる改正

退職所得や令和9年以後の源泉徴収に関する改正は、すべての顧問先に毎月影響するものではありません。しかし、該当時に見落とすと事務ミスにつながるため、税理士側で押さえておきたい内容です。

退職所得課税の見直し

退職所得課税については、以下の条件で退職所得控除額の計算における勤続期間等の重複排除の取り扱いが見直されています。

確定拠出年金の老齢一時金と退職手当等を一定期間内に受け取る場合

また、令和8年1月1日以後に支払うべき退職手当等について、手続きが変化しました。退職手当等の支払者は、支払を受けるすべての居住者に係る退職所得の源泉徴収票を税務署長へ提出する必要があります。退職金の支給予定があるなら、源泉徴収票の提出漏れがないよう事前に案内しましょう。

防衛特別所得税の創設

令和9年1月1日以後に生ずる所得に対する所得税について、防衛特別所得税が創設されます。源泉徴収義務者は、所得税を徴収する際に、以下を併せて徴収・納付しなければなりません。

防衛特別所得税として源泉徴収すべき所得税額の1%相当額

一方、復興特別所得税の税率は2.1%から1.1%へ引き下げられます。防衛特別所得税1%と復興特別所得税1.1%を合わせると2.1%であり、改正前後で源泉徴収税額の計算方法に変更が生じない仕組みです。ただ、制度名や帳票、給与計算ソフトなどの表示は確認しておきましょう。

【出典】国税庁 | 令和8年度税制改正大綱

税理士が顧問先に伝えるべき対応ポイント

今回の改正は「適用時期の違い」で顧問先が混乱しやすい内容です。税理士は、制度の説明と何を確認すべきかの両方を案内しましょう。

適用時期を時系列で整理する

顧問先には、まず適用時期を一覧で伝えましょう。

令和8年4月1日以後は、通勤手当と食事支給の非課税枠が変わっています。令和8年12月の年末調整では、基礎控除、給与所得控除、扶養親族等の所得要件、生命保険料控除の特例を反映しなければなりません。また、令和9年1月1日以後は、防衛特別所得税の創設と復興特別所得税の税率変更が関係します。

給与計算ソフト・手当設定を確認する

給与計算ソフトやクラウドサービスを利用しているなら、改正対応版への更新状況を確認するよう案内しましょう。特に、通勤手当、駐車場代、食事手当、深夜勤務の夜食代などを独自に支給している場合は注意が必要です。手当項目ごとの課税・非課税区分を確認しなければなりません。

また、Excelで給与計算をしている顧問先や、手当の非課税限度額を手入力している顧問先も注意が必要です。設定漏れや古い金額のまま運用するリスクを抱えます。

年末調整書類と扶養情報の確認を早める

令和8年分の年末調整では、基礎控除や給与所得控除の引上げだけでなく、扶養親族等の所得要件の緩和も反映されます。パート・アルバイト収入がある配偶者や家族、勤労学生に該当する子どもがいる従業員からの問い合わせが増えるかもしれません。

効率よく対応するためにも、顧問先へ従業員向けの案内文やチェックリストを早めに提供しましょう。家族の収入見込みを確認するよう周知しておくと、前もって対応しやすくなります。

まとめ

令和8年度税制改正では、源泉所得税に関わる変更が幅広く取り入れられています。基礎控除や給与所得控除の引上げ、扶養親族等の所得要件の緩和、生命保険料控除の特例などです。また、通勤手当や食事支給の非課税枠拡大も含まれ、すでに源泉所得税へ影響しています。

また、令和9年1月1日以後は、防衛特別所得税の創設と復興特別所得税の税率変更が予定されています。源泉徴収税額の計算方法に変更は生じないとされていますが、システムなどに影響がないか確認は必要です。

税理士は、改正内容を単に伝えるだけが仕事ではありません。「月次給与で確認すべき項目」「年末調整で反映すべき項目」「令和9年以後に備える項目」を分けて案内することが重要です。早めの情報提供やサポートで、顧問先の給与計算ミスや年末調整ミスを防ぎましょう。

顧問先の情報提供やサポートに悩み事がある場合は、経営革新等支援機関推進協議会へお気軽にご相談ください。

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