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ストレスチェック義務化の拡大|税理士が顧問先に伝えるべきポイント

ストレスチェック義務化の拡大|税理士が顧問先に伝えるべきポイント

2025年5月に労働安全衛生法が改正されました。これにより、ストレスチェックの義務対象が50人未満の事業場にも拡大されています。税理士は制度運用そのものではなく、顧問先への情報提供と費用処理の支援が重要です。

なお、ストレスチェックの義務化は2028年5月までの間に政令で確定される見通しです。2026年5月時点ではまだ具体的な施行日は確定していません。

ストレスチェックとは何か

ストレスチェックは、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐための制度です。これまでは50人以上の事業場が義務対象でした。しかし、法改正により50人未満の事業場にも対象が広がっています。

制度の概要

ストレスチェックの正式名称は「心理的な負担の程度を把握するための検査」です。従業員が質問票に回答し、自分のストレス状態を把握する制度です。質問票を用いることで自分を見つめ直しやすくなり、メンタルヘルス不調を未然に防止します。

ただ、ストレスチェックの目的は不調者の発見ではありません。本人の気づきと職場環境の改善です。そのため、結果を人事評価や不利益な取扱いに使わないことを、顧問先にも正しく伝える必要があります。

実施の流れ

ストレスチェックの実施は、大まかに以下の流れで進みます。

  1. 事業者が実施方針を決定し、労働者へ周知する
  2. 「実施者」(医師・保健師など)が質問票を使って検査を実施する
  3. 結果は実施者から直接労働者へ通知される(事業者への通知は本人同意が必要)
  4. 高ストレスと判定された労働者から申し出があれば、医師による面接指導を実施する(義務)
  5. 医師の意見を聴いたうえで、必要に応じて就業上の措置をおこなう
  6. 集団分析・職場環境改善(努力義務)

重要なことは、ストレスチェックには労働者の「受検義務」がない点です。一般健康診断とは異なり、受けるかどうかは労働者本人が決めます。そのため、できるだけ多くの労働者が受検するよう、周知・勧奨する工夫が必要です。

参照:厚生労働省|小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル

法改正で50人未満の事業場にも義務化

今回の改正で特に重要なポイントは、これまで努力義務だった小規模事業場も対象になる点です。中小企業や店舗型ビジネスの顧問先が多い税理士には、早めの情報提供が求められます。

改正の内容と施行時期

2025年5月14日に公布された改正労働安全衛生法により「労働者数50人未満の事業場」も、ストレスチェックの実施義務の対象となることが決まりました。これまでは努力義務であったため、状況は大きく変化しています。

ただ、小規模事業場への配慮から、施行日は「公布日から政令で定める3年以内の日」とされました。そのため、最長で2028年5月までの間に政令で確定される見通しです。2026年5月時点ではまだ具体的な施行日は確定していません。

とはいえ、厚生労働省はすでに「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表しています。ストレスチェックについて広く知ってもらい、早期の準備を促している状況です。

改正の背景

今回の義務化拡大は、規模を問わずすべての職場でメンタルヘルス対策を実効的に進めることが目的です。残念ながら、中小企業ほど産業保健の体制が整っていないケースが多くあります。社会として支援が求められることもあり、法改正によって環境を整えることになりました。

事業場単位で判断する点に注意

ストレスチェックの対象は、原則として会社全体ではなく「事業場」単位です。本社、支店、工場、店舗、営業所など、場所的に独立している拠点ごとに確認しなければなりません。

会社全体では50人を超えていても、拠点単位では50人未満というケースもあります。改正後は小規模拠点も対象になるため、複数拠点を持つ顧問先へは注意喚起が必要です。

税理士の顧問先への影響

50人未満の事業場では、産業医や専任の人事労務担当者がいないケースもあるでしょう。そのため、義務化後に慌てないよう、外部委託先や社労士との連携を早めに検討することが重要です。

小規模事業者も安全衛生管理の準備が必要となる

小規模事業場では、施行に向けて以下の準備や情報の整理が必要です。

  • 実施者の確保
  • 従業員への説明
  • 個人情報の管理
  • 高ストレス者への面接指導体制などを

人数が少ない職場では「誰が高ストレス者か」が推測されやすくなります。顧問先には、検査の実施だけでなく、プライバシー保護と社内周知が重要であることを伝えましょう。

税理士は早めの注意喚起を心がける

ストレスチェックの制度設計は税理士が専門とする業務ではありません。しかし、税理士は顧問先の従業員数、給与計算、人件費、拠点数を把握しています。そのため、対象となりそうな企業を早めに見つけられるでしょう。従業員数が30〜49人程度の企業、複数店舗を持つ企業、採用を強化している企業には、「今後対応が必要になる可能性があります」と伝えるだけで有益です。

ストレスチェック義務化に向けた税理士の役割

ストレスチェック対応では、税理士がすべてを抱え込む必要はありません。税理士は制度概要と費用処理を担い、実施体制の構築は社労士や産業保健の専門家へ連携しましょう。

税理士が担う役割:概要把握と情報提供

税理士が担いやすい役割を挙げると以下のとおりです。

  • 義務化の概要を顧問先に伝える
  • 対応費用を予算化を提言する
  • 発生した費用の会計・税務処理を整理する

特に外部委託費やシステム利用料、医師面接指導料、社労士報酬など、さまざまな支出が発生します。これらについて、「まず社労士へ相談し、費用処理は当事務所で確認します」と案内するとよいでしょう。

社労士・産業保健側が担う領域

顧問先から相談が来たときに案内できるよう、社労士が担う内容を把握しておきましょう。

  • 実施規程・衛生委員会付議資料の作成
  • 実施者・実施事務従事者の選任
  • 外部委託先(EAP機関・健診機関など)の選定・手配
  • 対象者の確認・周知・受検勧奨の設計
  • 高ストレス者への面接指導フローの整備
  • 集団分析結果を活用した職場環境改善の助言

税理士が無理に踏み込むことはおすすめできません。専門家と連携し、顧問先にとって安心感のあるワンストップ支援を心がけましょう。

ストレスチェック費用の勘定科目と税務処理

最も税理士が関与しやすい部分が、ストレスチェック関連費用の処理です。制度対応の費用であっても、支払先や契約内容により勘定科目・消費税・源泉徴収の確認が求められます。

勘定科目の考え方

ストレスチェックの実施費用は、「福利厚生費」として計上することが一般的です。労働安全衛生法はストレスチェックの費用を事業者の全額負担と定めています。従業員への費用転嫁は不可であるため、全従業員を対象とした法定対応として処理します。

費用の種類勘定科目備考
外部委託(EAP・健診機関)への実施費用福利厚生費全従業員対象が条件
医師(産業医)への面接指導報酬福利厚生費または外注費下記で詳述
システム導入費・ライセンス費ソフトウェア(または消耗品費)金額・使用年数による
担当者の研修費研修費・教育訓練費ストレスチェック関連に限定

福利厚生費として損金算入するための要件は次の2点です。

  1. 全従業員を対象としていること

(特定の役員・従業員だけを対象にしている場合は福利厚生費にならない)

  1. 社会通念上相当の金額であること

(過度に高額な場合は給与課税の対象になりうる)

ストレスチェックは全従業員対象かつ法定対応です。通常はこれらの要件を満たすため、全額を損金算入できます。

消費税の取り扱い

外部機関への委託費用は、課税仕入れ(消費税10%課税)として処理します。なお、医師の面接指導は、疾病の治療を目的とした医療の提供には当たりません。そのため面接指導報酬は、原則として消費税の課税対象です。一般的に課税対象となるため、委託契約の内容を確認したうえで処理します。

産業医への報酬:源泉徴収の注意点

社外の医師(産業医)へのストレスチェック面接指導の報酬は、源泉徴収の対象になる場合があります。医師・歯科医師等の専門家報酬は「報酬・料金等」であるからです。源泉徴収の対象となるため、支払い時に源泉税を控除して納付する必要があります。外部委託先が法人の場合は源泉徴収不要ですが、個人医師に直接依頼している場合は注意が必要です。

仕訳の具体例

【外部機関へのストレスチェック委託費用(税込55,000円の場合)】

(借方)福利厚生費  50,000 / (貸方)未払金  55,000

(借方)仮払消費税  5,000

【医師(個人)への面接指導報酬(税込110,000円、源泉10,210円の場合)】

(借方)福利厚生費 100,000 / (貸方)未払金    99,790

(借方)仮払消費税  10,000         預り金(源泉)10,210

税理士が顧問先に伝えるべきポイント

ストレスチェック義務化は、顧問先が十分に認識していない可能性があります。税理士が早めに情報提供することで、法改正対応に強い相談相手としての信頼につながります。

まずは対象事業場の確認を促す

顧問先には、以下のとおり法改正の概要を適切に伝えましょう。

  • 50人未満の事業場にも義務化が広がる
  • 最長で2028年5月までに施行される
  • 対象は法人単位ではなく事業場単位で確認する必要がある

複数店舗・複数拠点を持つ企業では、拠点ごとに対象者数や実施体制を確認してもらう必要があります。給与計算や人員情報を見ながら、早めに候補先を洗い出すと効果的です。

専門外の分野は他者と連携する

税理士が制度設計まで抱えると負担が高まってしまいます。ストレスチェックの実務は、社労士や産業保健の専門家と連携して進めるべきです。税理士は「概要を伝える」「必要な専門家へつなぐ」「発生費用を正しく処理する」という立場であると伝えておきましょう。

まとめ

法改正により、ストレスチェック義務化の拡大が示されました。これまで努力義務だった50人未満の事業場にも、今後は実施義務が及びます。具体的な施行日は未定ですが、公布の日から3年を超えない範囲と定められているため、実質的には2028年5月までです。

税理士が担うべき役割は、ストレスチェック制度を運用することではありません。義務化の概要を顧問先に伝え、必要に応じて社労士や産業保健の専門家へつなぐことです。加えて税務・会計の専門家として、発生する費用の会計・税務処理を正確に支援します。

ストレスチェック対応は、人材定着や職場環境改善にもつながる経営課題です。早い段階で情報提供できれば、顧問先にとって「法改正への対応を一緒に考えてくれる税理士」としての存在感を高められます。情報提供や具体的なサポートの幅を広げたいなら、一度、経営革新等支援機関推進協議会へご相談ください。

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