会計事務所支援ブログ

会計事務所の適切な人件費率は?

会計事務所の適切な人件費率は?

会計事務所の人件費を考えるとき、売上や利益に対して、どのくらいの割合がベストなのでしょうか。

「人件費率(人件費)は低いほどいい」わけではありません。事務所ごとに適切な人件費率を分析することが大切です。

本記事では、人件費率の考え方や、労働分配率や粗利益(売上総利益)による分析について解説します。

会計事務所の人件費率は、規模によって、異なります。

個人事業主として、会計事務所をひとりで運営している場合、人件費を低く抑えることができます。

一方で、規模の大きい会計事務所は、従業員数も多く、それだけ人件費が必要です。

また、会計事務所の従業員は比較的給与水準が高い傾向にあり、大手の会計事務所の場合、通常の税務・会計業務以外の支援業務をおこなっていることも多く、支援業務の内容と事業比率に応じて、人件費を調整しなければなりません。

会計事務所の人件費率は何%が最適か?

まずは、人件費率の考え方について解説します。

人件費の目安に意味はない

一般的に、会計事務所の人件費は「30〜35%が最適」と言われています。

この比率は企業会計の一般論としては、「売上の30〜35%が適切」といわれています。

社会保険料や福利厚生費、人材育成など一連のコストを含めると、妥当な範囲でしょう。

しかし、この比率が絶対的といえるものではありません。会計事務所の実情に応じて、適切な人件費率は異なります。

事務所ごとの最適解を導き出す

いずれにせよ、事務所の実情に応じて適切な人件費は異なるため、事務所ごとに最適解を導き出すことが大切です。

事務所の財務状況をもとにして、人件費率の妥当性について分析してみましょう。

なお、計算方法は特別なものではなく、業界で一般的とされる「労働分配率」や「粗利益(売上総利益)」から考えることが望ましいです。

労働分配率から考える人件費とは

労働分配率から人件費を考えます。

労働分配率とは

労働分配率とは、企業が事業活動で生み出す付加価値に関して、人件費にどのくらい分配したかを示す指標です。

労働分配率の計算方法

労働分配率の計算方法は、以下の通りです。

労働分配率(%) = 人件費 ÷ 付加価値 × 100

付加価値の計算方法は、「控除法」と「加算法」に分かれます。

控除法:付加価値 = 売上高 – 外部購入価額

加算法:付加価値 = 人件費 + 賃貸料 + 税金 + 他人資本利子 + 当期純利益

なお、人件費には以下の項目などが含まれます。

一般的な人件費の例
  • 役員報酬
  • 給与
  • 賞与
  • 雑給
  • 退職給付費用
  • 法定福利費(社会保険料や労働保険料など)
  • 福利厚生費
  • 研修教育費
  • 通勤定期券代

など

安易な人件費削減は従業員のやる気を削ぐ

労働分配率が高いほど、給与や福利厚生に注力することになり、従業員のモチベーションを高められますが、利益を圧迫してしまいます。

一方で労働分配率が低いと、モチベーションを削いで、離職率が高まるかもしれません。

労働分配率は高すぎず、低すぎずのラインを維持することがポイントです。

労働生産性とのバランスも重要

労働生産性とは、労働投入量によってどのくらい付加価値を生み出したかを示す数値です。従業員1人当たりの付加価値を示します。

労働生産性 = 付加価値 ÷ 従業員数

人件費を考えるためには、労働分配率と労働生産性、どちらも考慮することが重要です。

双方が高まると、1人当たりの給与などは上がるため、より優秀な人材を雇用して、生産性を高めることが可能です。

労働分配率 × 労働生産性 ÷ 100 = (人件費 ÷ 付加価値 × 100) × (付加価値 ÷ 従業員数) ÷ 100 = 人件費 ÷ 従業員数 = 1人当たりの人件費

ポイントとして、たとえ1人当たりの人件費が同じ事務所だったとしても、「労働分配率=労働生産性」とは限りません。

双方のバランスが取れず、労働分配率が低いと従業員のモチベーションを下げてしまい、労働生産性が低いと効率悪く業務を進めているとも考えられます。

粗利益(売上総利益)から考える人件費とは

粗利益(売上総利益)から考える人件費とは

今度は、粗利益(売上総利益)から人件費を見ていきます。

粗利益とは

粗利益とは、売上から売上原価を差し引いたものです。ただし、粗利益では人件費や地代家賃など、他の費用を差し引かない、おおまかな利益額といえます。

粗利益 = 売上 – 売上原価

一般的に粗利益が高いほど、経営の安定性も高いと判断できます。

粗利益(売上総利益)人件費率とは

粗利益人件費率とは、粗利益における人件費の割合です。適切な人件費を調べるために役立ちます。

粗利益人件費率 =(人件費率 ÷ 売上総利益)× 100

ただし、数値だけをみて良し悪しを判断するのではなく、事務所の過去の推移を踏まえて評価するなど、一概に判断しないことが大切です。

粗利益人件費率の判断ポイント

人件費率を低くするためには、当然のことながら、人件費を削減することで可能です。

しかし、そもそも事務所の目指したい粗利益や、それを達成するために必要な人件費率がどのくらいかを考えることが重要です。

人件費率を下げるために、人件費率を削れば、労働生産性やサービの品質を下げてしまい、めぐって粗利益自体を下げる恐れもあります。

もし、「事務所で適切な人件費率を下回っている」と判断するなら、人手不足による従業員への業務負担を憂慮し、人材を追加することが大切です。

「適切な人件費率を上回っている」と判断するなら、従業員の生産性が悪いと考えられ、人件費を下げるか、業務効率化を目指すといいでしょう。

サービスの単価を上げる

別のアプローチとして、サービスの単価を上れば、人件費を削減しないまま人件費率を下げることが可能です。粗利益は、売上からコストを差し引いたものです。

顧問先の数が変わらなくとも、単価を上げることができれば、粗利益は高まり、人件費率も下がります。

ただし、「会計業務」など会計事務所でよくあるサービスばかりを提供していては、競合に差をつけて単価を上げられません。

「補助金支援」や「事業継承支援」などの幅広いサービスを提供できると、高付加価値化による単価アップを目指せます。

人件費率を最適化する方法

具体的な対策について解説します。

従業員の育成

「人件費率が高くなり、従業員の生産性が落ちている」という問題が見つかった場合は、従業員の育成を検討してください。

短時間で多くの仕事ができるような仕組みを築く、不足している知識を補う教育カリキュラムを採用することが効果的です。従業員がスキルアップすれば、生産性を高めて、人件費率を最適化できます。

しかし、すでに多忙で従業員の育成に時間を割く余裕がなければ、外部の教育カリキュラムを活用し、「従業員が自ら学べる」環境を築くことが大切です。

経営革新等支援機関推進協議会アカデミー(実務体験型プログラム)」では、補助金・公的制度・金融・財務知識をイチから学べます。

「補助金・公的制度コース」・「金融・財務コース」・「事業承継コース」に分かれ、知識の習得から実務の実践まで、短期間で修了可能です。

新サービスの提供

新サービスを提供することで、付加価値を高めて、単価アップを目指すことも効果的です。会計業務以外の分野で、顧問先に喜ばれるサービスを提供します。

企業ニーズの高い「優遇税制支援」「補助金支援」「財務支援」「事業継承支援」などのサービスを検討してください。

しかし、実務経験がなく展開を躊躇するかもしれません。

経営革新等支援機関推進協議会では、これらのサービスを実務経験ゼロからでも提供できるサポートをしています。各種申請書の書き方を学べ、添削を受けることも可能です。

実務支援による業務効率化

同じく従業員の生産性を高めるために、実務を効率化するアプローチも効果的です。昨今では、ITシステムの導入により簡単に業務を進められるようになっています。

F+prusは、財務診断報告書から事業計画書の策定、決算レポートまで幅広く効率化できる財務支援システムです。

全23種類の会計ソフトに対応し、決算データ・返済データを取り込むだけで、企業ごとの改善事項とコンサルティング内容を自動で抽出できます。

マーケティング施策

売上は顧客数と顧客単価で決まります。

既存顧客に頼らず、新規顧客の開拓も重要です。新サービスの追加で提案の幅を広げるとともに、提案時に役立つ販促ツールを使ってください。

公的制度を案内するパンフレットや、有益な情報を企業向けに配信するメールマガジン・ニュースレターなどを使えば、企業ニーズを喚起できます。

まとめ

会計事務所の適切な人件費率は、ケースバイケースです。

労働分配率や労働生産性、粗利益(売上総利益)などから多角的に分析し、事務所のベストを探ることが重要となります。

人件費を最適化するためには、従業員の育成や新サービスの提供、業務効率化、マーケティング施策などは経営革新等支援機関推進協議会をご活用してください。

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経営革新等支援機関推進協議会
経営革新等支援機関推進協議会は、株式会社エフアンドエムが運営する会計事務所向けの支援団体です。2014年4月に設立し現在では、全国1500以上の会計事務所が正会員として参画しており、中小企業支援制度についての勉強会・システム提供を通じて全面的にバックアップしている。