経営者の保証が不要となる新しい保証制度『スタートアップ創出促進保証制度』が始まります。
経営者の創業時だけでなく、創業後の経過年数が少ない企業も対象です。
本記事では、スタートアップ創出促進保証制度について解説します。
目次
スタートアップ創出促進保証制度の概要
スタートアップ創出促進保証制度(以下、スタートアップ保証制度)の概要は次のとおりです。
対象 | ・創業予定者 (これから法人を設立し、事業を開始する具体的な計画がある方) ・分社化予定者 (中小企業にあたる会社で事業を継続しつつ、新たに会社を設立する具体的な計画がある方) ・創業後5年未満の法人 ・分社化後5年未満の法人 ・創業後5年未満の法人成り企業 |
保証限度額 | 3,500万円 |
保証期間 | 10年以内 |
据置期間 | 1年以内(一定の条件を満たす場合には3年以内) |
金利 | 金融機関所定の金利となります |
保証料率 | 各信用保証協会所定の創業関連保証の保証料率に 0.2%上乗せした保証料率 ※保証料率は各信用保証協会所定の保証率となります |
担保・保証人 | 不要 |
そのほか | ・創業計画書(スタートアップ創出促進保証制度用)の提出が必要。 ・保証申込受付時点において税務申告1期未終了の創業者にあっては、 創業資金総額の1/10以上の自己資金が必要。 この制度による信用保証付融資を受けた方は、原則として会社を設立して3年目および5年目のタイミングで、中小企業活性化協議会による「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」に基づいた確認および助言を受けることが必要。 |
スタートアップ保証制度の特徴をまとめると次のとおりです。
創業計画書は、創業時に一般的な計画書と類似しています。
A4サイズ3枚程度の計画書で済むため、作成の負担が少なくて済みます。
保証開始後のチェックについてはチェックシートが公開されています。
チェックリストの内容は、適正な確定申告、経営者による業績の把握、そして、経営者個人と会社とのお金の分離です。
スタートアップ保証制度を活用
経営者保証がない資金調達は、多くの経営者が望んでいます。
顧問先や新規営業先への情報提供をおこなう良い機会にもなるため、積極的に活用しましょう。
創業予定の見込み先への提案
創業時の融資においては代表者の保証が不要となる資金調達は難しいといわれます。
新規開業に必要な費用の平均は1,077万円、うち金融機関からの融資額の平均は882万円です。
また、日本政策金融公庫が実施した「2022年新規開業実態調査」で、「新規開業時に最も苦労したこと」で最も多かった回答は「資金調達」です。
新規案件にもつなげやすいため、提案内容としても効果的です。
創業時の金融機関からの借入は、約半数が代表者の連帯保証を求められています。
新規開業予定者への経営者保証がない資金調達の提案は、
- 日本政策金融公庫(国民生活事業)の新創業融資制度(保証人不要、無担保)
- スタートアップ保証を使った民間金融機関からの融資
の組み合わせで考えることができます。
設立後間もない顧問先への提案
スタートアップ保証制度は、設立後5年未満の法人も対象です。
設立後の年数が経つにつれて、民間金融機関から借入する割合が高くなるため、スタートアップ保証制度を利用した保証人不要の融資が提案できます。
そのほかの資金調達をあわせて提案しましょう
スタートアップ保証制度以外にも、保証人不要の資金調達方法があります。
- 日本政策金融公庫(国民生活事業)小規模事業者経営改善資金
- クラウドファンディング
- 補助金、助成金
- 増資
顧問先の投資計画と資金調達力を総合的に判断したうえでの提案が必要です。
新規営業・顧問先への価値提供として活用が可能です
令和5年3月15日から実施される本制度ですが、経営者保証を不要とする創業時の新しい信用保証制度として運用されます。
2023年4月以降、銀行には「経営者保証の説明義務」が課せられます。経営者保証をつける場合は、経営者に説明することが必要になります。
経営者保証を徴求しない融資形態が進んでいる中で、顧問先には最適な資金調達支援を行うことが求められます。
本資料ではスタートアップ創出促進保証制度の制度概要をまとめていますので、ご参考いただければと思います。
創業予定者へのアピールのポイント
創業予定者における融資への支援は、既に事業の実績がある経営者とは異なるポイントがあります。
創業計画書作成への支援
新規開業時の融資は、創業計画書の作成が必須です。
計画書の作成に不慣れな創業予定者が多いため、財務に詳しい会計士や税理士などの専門家からの助言が必要です。
資金調達支援
創業予定者は「金融機関からの融資が初めて」という方も多くいらっしゃいます。
金融機関との交渉の前に、どのような資金調達方法が良いか、会計士や税理士など顧問先に客観的な意見が求められます。
また、創業者を対象とした補助金、助成金制度が多数あるため、あわせて提案すると効果的です。
税務・会計業務の受注
創業計画書の作成などで関係性ができた税理士は、その後の税務・会計業務を受注しやすくなります。
またスタートアップ保証制度においても、個人と法人での経理の分離は必須となり、事後の確認も必要です。
税理士の本業である税務支援にもつなげましょう。
設立後間もない顧問先へのアピールのポイント
設立後5年以内の顧問先に対しては、さまざまな助言や支援が必要です。
事業計画書の作成を支援
スタートアップ保証制度の申込みは、創業計画書(スタートアップ創出促進保証制度用)の提出が必要です。
A4版で3枚程度と枚数が少ない計画書ですが、計画書の作成に不慣れな経営者も多いため、計画書の作成サポート業務をアピールできます。
補助金申請・優遇制度活用への支援につなげる
創業後の事業計画書の作成を通じて、今後の事業の見通しや投資計画を詳細に把握できます。
今後の投資計画を把握できれば、補助金の申請や優遇税制制度の申請などの提案につなげることが可能です。
補助金や助成金は数多くあるため、補助金を検索できるツールを活用し、積極的に顧問先へ提案しましょう。
財務改善への支援に活用
スタートアップ保証制度を利用後に、『ガバナンス体制の整備に関するチェックシート』の提出が必要です。
継続的な申告に加えて、財務体質の改善も求められます。
財務分析ツールを活用して、財務改善の提案をおこなえば、事務所の業務効率化も可能です。
経営者保証解除の相談についても対応しましょう
創業年数が短い企業は、経営者保証付きの融資を受けている事例が多くあります。
経営者保証の解除に向けて、財務改善と経営者保証解除制度の申請を支援できます。
経営者保証の解除は、(早期)経営改善計画策定支援事業の活用がおすすめです。
経営者保証の解除に向けた事業計画の策定費用、伴走支援費用が補助対象に追加されています。
事務所経営は経営革新等支援機関推進協議会がサポートいたします
対象となる創業間もない経営者には、「定期的な情報提供を続ける」と、「財務改善の助言を定期的におこなう」ことで、事務所として価値を提供できます。
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まとめ
スタートアップ創出促進保証制度は、創業者や経営者が希望する代表者保証が不要の保証制度です。
創業予定者だけでなく、既に創業している経営者も対象となるため、積極的に提案できます。
補助金サポートや資金調達支援に力を入れることで、税務・会計業務だけではない事務所としての差別化が可能です。
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は自己資金要件がある