間もなく事業再構築補助金の第12回公募が開始される時期です。
今回は新たな補助金『省力化投資補助金』(省力化投資補助枠(カタログ型))との関係などで、公募要項が大きく変更される可能性があるといわれています。
本記事では、経営者の関心が強い事業再構築補助金に関する第12回公募の予測と、新たな補助金2つの概要について解説します。
目次
事業再構築補助金第12回公募の予測
事業再構築補助金の第12回公募のスケジュールが間もなく発表される予定です。
第12回公募のスケジュール予測
第12回公募については遅くとも12月初旬までに公募開始されると推測されています。過去のスケジュールは次のとおりです。
公募回 | 公募開始 | 申請開始 | 公募締切 | 採択発表 |
第7回 | 2022年7月1日 | 2022年8月30日 | 2022年10月5日 | 2022年12月15日 |
第8回 | 2022年10月3日 | 2022年12月16日 | 2023年1月13日 | 2023年4月6日 |
第9回 | 2023年1月16日 | 2023年2月15日 | 2023年3月24日 | 2023年6月15日 |
第10回 | 2023年3月30日 | 2023年6月9日 | 2023年6月30日 | 2023年9月22日 |
第11回 | 2023年8月10日 | 2023年9月13日 | 2023年10月6日 | 2024年1月下旬 から 2024年2月上旬 (予定) |
上記から第12回の公募スケジュールは次のとおり予測されています。
- 公募開始 2023年12月中旬
- 公募締切 2024年3月
第12回公募の変更点を予測
第11回までの公募要項の変更内容からの予測として、以下の2つの変更が予測されていました。
- 成長枠:成長枠の対象業種の拡大
- 産業構造転換枠:産業構造転換枠対象リスト、対象地域の拡充
2023年11月に発表された岸田内閣の総合経済対策による新たな『省力化投資補助金』(省力化投資補助枠(カタログ型))との調整により、第12階公募から補助枠などが変更となる可能性があります。
11月12日に中小企業庁が発表した資料によると次のとおりです。
- 『既存枠での支援は、経済構造の転換に挑戦する事業者、コロナ債務を抱える事業者などに支援先を重点化』
上記の省力化支援の新たな措置の開始予定についても未発表ですが、新たな措置を考慮して第12回公募から補助枠の見直しなどがなされる可能性があるといわれています。
ただし、事業再構築補助金は補助上限額2億円、省力化投資補助金の場合の補助上限額は1,500万円、大規模成長投資補助金は投資金額10億円以上が対象で、補助上限額は50億円であり、補助対象についても大きな違いがあります。
顧問先の投資計画にあわせて、どの制度に応募するかの事前検討が必要です。
補助制度 | 主に対象となる事業計画 | 補助上限額 |
省力化投資補助金 | 汎用的な省力化機械の導入による人手不足対策 | 1,500万円 ※1 |
事業再構築補助金 | コロナの影響を受けた中小企業の思い切った事業再構築 | 2億円 ※2 |
大規模成長投資補助金 | 労働生産性の抜本的な向上と事業規模の大型化であって、投資金額10億円以上のもの | 50億円 |
※1 従業員数により異なります。
記載の補助上限額は従業員数21名以上かつ賃上げ条件を充たす場合。
※2 サプライチェーン強靭化枠を除く。補助枠により異なります。
記載の補助上限額はグリーン成長枠(スタンダード)と卒業促進枠を併用した場合。
省力化投資補助金、大規模成長投資補助金については、【引用】2023年度補正予算案の事業概要(PR資料)|経済産業省
事業再構築補助金については、【引用】事業再構築補助金の概要12.0版|中小企業庁
税理士関与案件が急増!第10回採択結果の振り返り
第10回採択結果の概要は以下のとおりです。なお概要については次より引用しています。
【引用】事業再構築補助金第10回公募の結果について|事業再構築補助金事務局
申請件数は増加に転じるも、ピークの半分
第10回公募は申請件数10,821件です。前回(第9回)よりも15.0%増加しました。
申請件数のピークは第1回の22,231件であり、ピーク時のおよそ半分となっています。
採択件数は5,205件(前回比+22%)、採択率48%(前回比+3%ポイント)となりました。(いずれもサプライチェーン強靭化枠、卒業促進枠、大規模賃金引上促進枠は除く)
採択案件は小口化が進む
第10回公募の採択結果をみると、採択金額1,500万円までの案件が61%、1,501万円から3,000万円が26%です。
前回(第9回)採択では1,500万円までの案件は41%、1,500万円超3,000万円までが40%であったことと比べると小口化しています。
円グラフ(左)は第9回公募の採択結果
円グラフ(右)は第10回公募の採択結果
認定支援機関別では税理士が急増
第10回公募への応募においては、税理士などが認定支援機関として関与した応募案件数は2,231件(前回1,990件比+12%)、採択件数920件(前回674件比+36%)へと急増しています。
採択率についても41%(前回34%比+7%ポイント)となりました。
認定支援機関別 | 第9回公募 | 第10回公募 | ||
応募件数 | 構成比 | 応募件数 | 構成比 | |
金融機関 | 3,005件 | 32% | 3,151件 | 29% |
税理士など(注) | 1,990件 | 21% | 2,231件 | 21% |
民間コンサル会社 | 1,836件 | 20% | 2,509件 | 23% |
そのほか | 2,527件 | 27% | 2,921件 | 27% |
合計 | 9,358件 | 100.0% | 10,812件 | 100.0% |
(注)税理士など:税理士、税理士法人、公認会計士の合計
【引用】採択結果|事業再構築補助金事務局より作成
事業再構築補助金の第12回公募の予想と対策
事業再構築補助金第12回公募については、一部について審査が厳しくなる可能性があるといわれています。
審査が厳しくなる?要注意の5つの取り組み
第10回採択結果の公表後、類似の計画が多数採択されていることについて、公式に指摘の声があがっています。特にキーワードとして挙げられている計画が次の5つです。
- フルーツサンド販売店
- 自動販売機、自販、無人販売
- ゴルフ(インドア、シミュレーション)
- エステ
- サウナ
上記の計画を申請予定の顧問先については、本業の強みと申請対象事業の妥当性について、より的確な記載が求められる可能性があります。
【引用】財政制度分科会(2023年10月11日開催)資料|財務省
顧問先の強み弱みを的確に把握することがスタート
顧問先に最も適した投資を検討するためには、顧問先の事業内容、強みと弱みを把握することがスタートです。
顧問先の強み(長所)を伸ばす投資、弱み(短所)を改善するための投資を最優先し、その投資が対象となる補助金や助成金、税制優遇制度を提案しましょう。
顧問先の取り組みに合う公的支援策は、認定経営革新等支援機関推進協議会の『顧問先の公的制度無料診断サービス』などの検索ツールの利用が効率的です。
【参考】会計事務所向け 顧問先の公的制度無料診断サービス|経営革新等支援機関推進協議会
顧問先へ説明すべき、事業再構築補助金に落ちる理由
事業再構築補助金の平均採択率は46%(第1回から第10回の累計での平均)であり、半数の申請が不採択となっています。
事業再構築補助金の審査に落ちる(不採択)理由は大きく次の点であると推測されます。
- 『事業化点』の観点である市場ニーズ、自社の強みやノウハウを踏まえた事業の効果が不明確
- 『再構築点』の観点から、大胆な事業再構築であることの分析、計画の費用対効果などが不足
- 新規性要件の再定義など最新の公募要領に基づいた要件に合っていない
- 申請書類に不備がある
公募要項をよく確認し、補助金制度の趣旨や要件にあわせた申請が必要です。
人手不足の顧問先が使いやすい新補助金『省力化投資補助金』にも注目!
事業再構築補助金の見直し予定の内容として、『中小企業省力化投資補助事業』が発表されています。
- 事業目的
人手不足の中小企業等の省力化投資を支援し、付加価値額や生産性向上、賃上げを図る
- 補助対象(予定)
ロボット等人手不足解消に効果がある汎用製品をカタログに掲載した中から選定
- 補助率
2分の1
- 補助上限額
- 従業員数5名以下は200万円(賃上げ達成時は300万円)
- 従業員数6名以上20名までは500万円(同上750万円)
- 従業員数21名以上は1,000万円(同上1,500万円)
【引用】2023年度補正予算案の事業概要(PR資料)|経済産業省
思い切った投資予定の顧問先へは新補助金『大規模成長投資補助金』を検討!
新設予定の『大規模成長投資補助金』は、人手不足に対応した工場の大幅な自動化や省力化などの大型投資を対象とする補助金です。
- 事業目的
労働生産性の抜本的な向上と事業規模の大型化により、地域別最低賃金の伸び率を超える従業員1名あたり給与支給総額の伸び率を達成する
- 補助対象(予定)
投資額10億円以上の工場などの拠点新設や大規模な設備投資
複数企業合同での投資についても対象に含む
- 補助率
3分の1
- 補助上限額
50億円
【引用】2023年度補正予算案の事業概要(PR資料)|経済産業省
まとめ
事業再構築補助金は経営者の間においても有名な補助金制度です。例年のスケジュールから予測すると、間もなく第12回公募要項の発表時期となります。
今回は新たな補助金制度が講じられることに伴い、補助枠や公募対象が大きく変更となる可能性があり、スケジュール、公募要項ともに注意が必要です。
経営者の関心が強い補助金制度の改正情報を迅速に提供するとともに、顧問先の投資予定や内部課題にあわせた申請のサポートを推進しましょう。
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