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税理士によるコンサルティング業務とは?業務内容や取り組み方法を解説

税理士によるコンサルティング業務とは?業務内容や取り組み方法を解説

コンサルティングに力を入れる税理士事務所が増えているといわれています。従来の税務・会計業務と親和性が高く、付加価値が高いことなどが主な理由です。

本記事では、税理士がおこなう財務コンサルティングの内容、税理士としてコンサル業務に力を入れるために必要なスキルと取り組み方法について解説します。

目次

税理士によるコンサルティングと経営コンサルティングとの違い

税理士によるコンサルティングと経営コンサルタントによるコンサルティングの主な違いは次のとおりです。

経営コンサルタントがおこなう経営コンサルティング

経営コンサルタントが提供する経営コンサルティングは、企業の経営上の課題を把握し、課題を解決するためのアドバイスや解決方法を提供することです。
経営コンサルタントが対応する分野はマーケティング、人事、研究開発、営業、DX、企業全体の戦略など幅広く対応しています。

税理士は財務コンサルティングが取り組みやすい

税理士が取り組むコンサルティングは、お金や税金など財務に関する分野が多い傾向があり、具体的には経営計画の策定、帳票管理、税務申告、節税、資金管理などです。

顧問先の財務諸表をもとに経営分析をおこない、経営上の課題を抽出し、財務を改善させることを目的しとしたコンサルティングのことを財務コンサルティングといい、財務コンサルティングに取り組む税理士事務所が増えています。

税理士が提供する財務コンサルティングの内容

税理士がおこなう財務コンサルティングの主な内容として次の4つがあげられます。

財務改善支援

顧問先の決算や試算表などから経営状態を分析し、発見した経営課題を解決するためにアドバイスをおこないます。

資金調達支援

顧問先における資金繰りの把握や資金需要にあわせた最適な資金調達方法の提案などのことです。金融機関からの融資だけでなく、増資などの資本政策のアドバイス、補助金や助成金の申請支援なども該当します。

金融機関対応における支援

財務改善支援や資金調達支援において必要となる金融機関との対応をサポートすることです。提出する資料作成のサポート、融資申込みや審査時における同席、金融機関との付き合い方に関するアドバイスなどがあります。

資金管理体制構築の支援

顧問先の自計化における支援や資金繰り表の作成方法を指南するなど、顧問先が自ら資金を管理できる体制の構築をサポートします。

コンサル業務ができる税理士に求められる5つのスキル・ノウハウ

税理士がコンサル業務を推進するために必要となる主なスキルやノウハウは次のとおりです。

コミュニケーション・プレゼンテーション

顧問先と円滑にやりとりができるコミュニケーション能力が求められます。
顧問先の経営者や経理担当者へヒアリングをおこないながら業務をすすめる必要があるためです。
また解決方法を的確に顧問先へ伝え、行動を促すプレゼンテーションスキルも求められます。

マネジメント

財務コンサルティングは複数のスタッフや外部の専門家と協働する場合もあるため、全体の動きを調整し、抜け漏れなく円滑に進行をリードするマネジメントスキルが求められます。

事業計画策定ノウハウ

財務コンサルティングでは、事業計画の策定が多くあります。
事業計画を策定するためには、売上見通しや拡販施策の内容、将来の投資計画などを計画へ落とし込み、合理的に数値へ反映させるノウハウが必要です。

事業再生、M&Aなどの専門的なノウハウ

顧問先の経営状態や将来の方針によっては、企業再生、事業承継などを検討する必要があり、これらの分野における専門知識やノウハウが求められます。

税理士がコンサル業務を強化する5つのメリット

税理士がコンサル業務に力を入れる主なメリットとして、次の5つがあげられます。

税理士としての立場・経験を活かせる

税理士は顧問先の経営状態や経営上の数値にアクセスしやすい立場にあり、多くの顧問先の経営を見てきた経験があります。

財務コンサルティングは、税理士が上記の立場と豊富な経験を活用でき、コア業務である顧問業務からの延長線として取り組みやすい業務です。

経営相談からコンサル業務の受注へつなげやすい

顧問先から税務に関する相談だけでなく、今後の経営方針や投資予定などをヒアリングすることで、コンサル業務を受注しやすくなります。
その際に注意が必要なことは、月額顧問料との分別です。月額顧問料の範囲内となる助言か、財務コンサルとして有償で対応するサービスであるかを明確としておきましょう。

顧問先へ提供するサービスの拡充

財務コンサルをおこなうことで顧問先へ提供するサービスを拡充し、顧問先あたりの収入を増やすことができます。

事務所の差別化

財務コンサルティングに力を入れることで、税務面を超えて顧問先の経営全般に関与することとなり、顧問先との長期的な関係を構築できます。
また従来の税務・会計業務のみの事務所ではなく、顧問先の改善と成長をサポートできる事務所として同業事務所との差別化へつながります。

スタッフがやりがいを感じやすい、定着へつながる

財務コンサルティングは事務所スタッフの定着率向上につながります。
スタッフの財務や会計に関する知識を発揮できるとともに、顧問先から直接謝意を伝えられるなど「やりがい」を感じる機会が増えるためです。
自身の業務にやりがいを感じるスタッフは定着しやすく、さらに力を発揮してもらうことができます。

税理士事務所が財務コンサルを強化するための8つのアクション

従来の税務・会計業務に加えて財務コンサルティングを強化するためには、事務所として取り組むべき8つの事項があります。

業務の効率化・標準化をすすめる

既存の業務に加えて財務コンサルをおこなうために、事務所内の業務を効率化・標準化しましょう。主な取り組み例は次のとおりです。

効率化の取り組み例
  • 証憑回収や月次監査のオンライン化
  • 補助金情報などのチラシ、適用可能な支援策をヒアリングするためのシートは外部のサービスで提供された様式を利用
  • 顧問先が適用できる公的支援策の調査は無料診断サービスを活用
  • スタッフの作業状況をタスク管理アプリで共有
標準化の取り組み例
  • 消費税の端数処理方法の統一化
  • 紙証憑への通し番号の付け方をルール化
  • 顧問先が使用する勘定科目の統一
  • 電子ファイル名の設定ルールや保存階層の統一
  • 顧問先からのヒアリング内容の記録するヒアリングシートのフォーマットを統一
  • 新人向け作業マニュアルの整備

動画研修で効率的にスキルアップする

財務コンサルは経営分析や資金調達方法など幅広い知識が必要となるため、繁忙期や隙間時間で学習しやすい動画研修の導入が効果的です。
また座学に加え、経営革新等支援機関推進協議会が提供する『ACADEMY』などのような、実務を想定し、新人を即戦力化するまでがパッケージされた、実務に直結するスキルが身につく研修サービスの導入もおすすめです。

認定経営革新等支援機関として登録しておく

認定経営革新等支援機関とは、国が認定する中小企業支援の専門家のことです。
中小企業庁の調査によると、税理士が認定支援機関となるメリットとして『施策の活用ができる』(44.6%)、『顧客からのイメージ向上』(33.3%)などがあげられています。

認定支援機関として登録している税理士・税理士法人は約26,000件ありますが、認定支援機関としての活動が少ない分野もあります。
認定支援機関がおこなっている業務内容に関する中小企業庁の調査によると、経営力向上計画の策定支援が最も多く(25.2%)、ものづくり補助金の申請支援(6.5%)や事業承継補助金の申請サポート(3.9%)は少ないことが現状です。

自事務所のスタッフや顧問先などに応じて得意な業務を磨き上げることで、認定支援機関の中でも一層の差別化を図ることが可能であるといえます。

【引用】認定経営革新等支援機関に関する任意調査報告書(2023年度)|中小企業庁

サービス内容・料金が明確なメニューを作成する

事前に自事務所のサービスメニューを作成しておき、どのような業務がいくらかかるか、明確化しておきましょう。月額顧問料との混同を避ける、顧問先との料金トラブルを予防するなどが目的です。
コンサルティングメニューをホームページなどで公開している事務所も増えており、主なサービスメニューごとの料金の例は以下のとおりです。

財務コンサルのメニュー財務コンサルの料金例 
財務分析50,000円から
経営計画書策定見積り(100,000円から)
資金繰り表作成40,000円から
資金調達支援借入1回あたり200,000円から

マーケティングに力を入れる

財務コンサルティングを受注するためには、自事務所へ依頼が来る仕組みと事務所のサービス紹介が有効であり、税理士事務所が取り組んでいる主な販促活動は次のとおりです。

  • 事務所通信やサービス紹介などの情報発信
  • 顧問先へのアンケート
  • ホームページやSNSによる宣伝
  • 財務分析報告書のお試し提供

中でも顧問先の決算に対する財務分析の提供は財務コンサルにつながりやすいアクションです。
財務改善提案のコツは、わかりやすい資料と表現、具体的な改善数値を掲げることなどであり、「あといくらの改善が必要か」など、わかりやすい報告書によって経営者の行動をサポートします。

外部との連携・相談で実績件数を積み上げる

財務コンサルの実績をあげるためには、各分野の専門知識を持つ支援機関や金融機関、ほかの士業との連携が大切です。
認定支援機関業務をおこなっている税理士の連携先は、金融機関が32.7%、次いで中小企業診断士が11.3%、同業者である税理士が11.0%となっており、ほかの支援機関との連携により、顧客を紹介してもらう効果も期待できます。

【引用】認定経営革新等支援機関に関する任意調査報告書(2023年度)|中小企業庁

特定の分野や業界に詳しくなる

特定の業種や分野に詳しくなると、顧問先からの口コミが広がり、新たな顧問契約へつながりやすくなります。

顧問先の資金調達計画を把握する

顧問先における資金調達計画を把握することで、補助金・助成金や税制優遇を提案し受注する資金調達支援が可能となります。補助金や税制優遇制度を知らない経営者は顧問税理士へ投資の相談をしないことが多いためです。

顧問先における融資や補助金申請などのイベントと自事務所がおこなうサポートをわかりやすく管理するイベント管理表の整備がおすすめです。補助金申請や投資資金の支払いは期日が決まっていることが多いため、スケジュールを立てることで抜け漏れがない提案と円滑な業務の遂行をおこないましょう。イベント管理表の例は次のとおりです。

税理士事務所の財務コンサルは協議会がトータルでサポート

税理士がおこなう財務コンサルは、主に財務面からのアプローチにより顧問先の改善をサポートする業務です。税理士のコア業務である税務・会計業務と相性が良く、取り組みやすい業務であることに加えて、自事務所の成長と差別化につながるため、財務コンサルティングに積極的に取り組みましょう。

財務コンサルティングの推進におけるお悩みは、約1,700事務所が利用する経営革新等支援機関推進協議会がトータルでサポートします。

「目先の案件がない」「自事務所で対応できるか不安」「提案(営業)が苦手」「顧問先のニーズを把握できていない」などのお悩みは、協議会へお気軽にご相談ください。

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経営革新等支援機関推進協議会
経営革新等支援機関推進協議会は、株式会社エフアンドエムが運営する会計事務所向けの支援団体です。2014年4月に設立し現在では、全国1700以上の会計事務所が正会員として参画しており、中小企業支援制度についての勉強会・システム提供を通じて全面的にバックアップしている。