最も効果的に新しい顧問先と出会う「紹介」にどのように力を入れるか、紹介を増やす方法は何か、お悩みの事務所経営者様も多いでしょう。
本記事では、毎月10社以上の紹介案件を獲得し、開業6年で従業員数20名、売上2億円の規模へ成長したアップスマイル税理士法人の取り組みを紹介します。
目次
紹介者や見込み客に「自社を選ぶ基準」を提供する
アップスマイル税理士法人(以下、当事務所といいます)は、紹介者(当事務所では『パートナー』と呼びます)を活用することで、毎月10件以上の見込み先の紹介を受けています。
紹介を増やすためには、紹介者となるパートナーに「自社を選ぶ基準」を理解してもらうことが大切です。
紹介者や顧問先からみると、税務会計分野における専門性の深さや違い、すなわち「選ぶ基準」がわからないことが多いためです。
当事務所では、紹介者に自事務所を紹介してもらうために「顧客・サービスの絞り込み」と「紹介者が、数ある会計事務所の中で、紹介責任を感じても、紹介しようと考える仕組みをつくる」ことを重視した取り組みをおこなっています。
顧客ターゲットとサービスを絞り込む
当事務所では、同業事務所との違いや当事務所がターゲットと考える顧客像を明確化することで、紹介者が当事務所を選ぶ基準がわかりやすくなるように取り組んでいます。
当事務所が顧問先として考える顧客像として次の3つの要素をあげています。
- 事業の継続や成長に対する強いこだわりがある。人を大切にして組織として経営する。
- 事務所が求める支払い能力がある
- リピート性がある(単発ではない)
上記と異なり、当事務所では引き合いを受けない例として次の例をあげています。
- 低価格のみを志向する方
- 当事務所の強みとは異なる方
さらに当事務所ではパートナーが判断しやすくなるように次の2点をまとめた資料をパートナーへ渡しています。
- 「事務所が貢献したい顧客像」(当事務所にフィットする顧客のイメージ)
- 「自社を選ぶ基準」(当事務所と同業事務所との違い)
これにより、紹介するパートナーが「どのような人を紹介すればよいか、紹介するとどのようなサービスを受けることができるか」がわかりやく、紹介しやすくなります。
安心感と期待感を与える仕組みをつくる
当事務所が顧問先を紹介してもらうために意識している点は、パートナーへ「安心感・期待感」を与える「仕組み」づくりです。この仕組みにおいて大切な点として次の5つをあげています。
- 当事務所の強み(同業事務所との違い)をしっかりと伝える
- 何かあった時に当事務所を思い出してもらえる存在となる
- 紹介された見込み先に信頼される、親身に対応する
- 紹介された見込み先の相談に対して技術的に応える
- 紹介したパートナーにとってメリットがある
何かあった際に思い出してもらう
紹介のスタートは、パートナーが税理士事務所を紹介しようと考えるタイミングに自事務所のことを想起してもらうことです。
必要な時に自事務所を思い出してもらうためには継続的なフォローが必要です。当事務所における取り組み内容は次のとおりです。
- メルマガ、ニュースレターの継続的な発信
- 情報発信素材は経営革新等支援機関推進協議会など外部から購入し、より早い情報発信を心掛ける
- 情報発信素材のテーマ名を当事務所の強みに関連する文言に変える
信頼してもらう
パートナーが見込み先を紹介して問題ないか、パートナーは不安に思うこともあるかもしれません。
事務所について信頼を得てもらうため、当事務所では次のような接遇のポイントをマニュアル化し、事務所の品質を維持しています。
- パートナーの話を傾聴する
- パートナーの良いところ、実績を見つけて、褒める
- パートナーの良いところなどを記録し、事務所内で共有する
顧客紹介を生む鍵はパートナーづくり!
パートナーづくりを進めることで紹介件数が増加し、顧問先の獲得につながります。
当事務所は新規顧客開拓の主要ルートとしてパートナーからの紹介に重点を置いており、見込み先紹介のうち77%がパートナーからの紹介です。
パートナーとは?
当事務所が考えるパートナーとは次のとおりです。
- 顧客ターゲットが自事務所と近い
- 価値観が近い
- 自事務所とは異なる強み・サービスがある
- 事務所とパートナーとでお互いの強みを理解している
- 案件化するか不明な状態から相互に相談できる関係である
自事務所の顧客ターゲットと同じ層に強みをもつ先をパートナーとすることで、パートナーがそのクライアントの課題解決のために、当事務所を紹介しやすい仕組みを構築しています。
スタッフがパートナーを開拓する
パートナーとの関係を維持するためには、事務所として組織的に取り組みます。所長や特定のスタッフのみがパートナー開拓や関係深耕をおこなう場合では、工数が不足してしまいます。
当事務所は、スタッフがパートナーと関係を深めるために次の3点に注目し、各スタッフにおいて不足する部分を重点的に指導しています。
① パートナーからの紹介数
② 紹介の成約率
③ 契約金額
営業ができなくても大丈夫!?パートナーを開拓する方法
スタッフが「営業が不得意」「実務で忙しく、営業する時間がない」という事務所は多いでしょう。
当事務所がパートナー開拓を進めることができている理由は、成果の出た実績があるやり方を再現しているからです。
再現性を高めるための当事務所における取り組み例は次のとおりです。
- スタッフに仕事を増やす意義を理解してもらう
- 仕事が増えた結果(評価)をスタッフに認識してもらう
- マニュアル、トークスクリプトを整える
- マニュアルなどで、やり方を明確に指導する
- 勤務時間を増やさずにおこなう方法を考える
上記の中で最も大切な点は、具体的なやり方を指導することです。
このため当事務所においてはスタッフ用の「マニュアル」「トークスクリプト」の2つを整備し、常に改良を重ねることで、「こうしたらできる」とイメージできるレベルとしています。
獲得したパートナーと顧客はサービス設計・拡大で離脱を防ぐ
紹介により獲得した顧問先やパートナーとの関係を維持するためには、解約されないための取り組みが必要です。
当事務所へ紹介が来る理由、つまり前顧問先を解約する理由を調べたところ、主な内容は「コミュニケーション不足」「相談にのらない、対応しない」「顧問先からの期待とのギャップ」などです。
顧問先が求めるニーズを掴み、対応できるためにはスタッフの教育が欠かせません。当事務所における人財育成のポイントは次のとおりです。
- スタッフ任せにしない、組織として育成する
- 事務所が提供するサービスを決める
- サービスを提供するための必要な能力(聞く力、伝える力、コミュニケションなど)を定義付ける
- 事務所として必要とする能力を身に付けるための所内研修を整備する
- スタッフが求められる役割と成果が報われる評価制度とする
組織的な育成の一環として、当事務所では毎日の朝礼における事例の共有、経営革新等支援機関推進協議会が提供する『監査担当者養成プログラム』を社内研修・所外研修に活用しています。
まとめ
顧問先を開拓する有力な手段のひとつが紹介です。運任せの紹介でなく、必要な時に自事務所へ相談が来るルートとなるパートナーを増やし、関係を維持することで紹介を増やすことが可能です。
パートナーづくりのポイントは、事務所の強み(顧客層や同業事務所との違い)を明確に伝える、スタッフを育成するなど、テクニックで再現できる部分があります。
定期的な情報発信素材の提供、監査担当者の効率的な育成など会計事務所経営のお悩み事は、経営革新等支援機関推進協議会がトータルサポートします。まずはお気軽にご相談ください。