令和6年度補正予算が成立し、石破内閣の総合経済対策が動きはじめました。令和6年度補正予算には、経営者に人気の補助金に関する改正情報が多く盛り込まれています。
本記事では、令和6年度補正予算の中から、中小企業の経営者へ税理士から提案を検討したい補助金の改正について解説します。
令和6年度補正予算が成立
2024年12月17日、令和6年度補正予算が成立しました。一般会計での歳出総額は13兆9,433億円、うち中小企業・小規模事業者向けの予算は5,600億円です。
補正予算は補助金・助成金の予算的な裏付けが多く盛り込まれます。
令和6年度補正予算においても、人気補助金である「ものづくり補助金」「IT導入補助金」の改正、新設される「新事業進出補助金」「中小企業成長加速化補助金」など中小企業経営者の関心が高い情報が多く盛り込まれています。
令和6年度補正予算のうち中小企業支援に関する分野の概要は次のとおりです。
中小企業向け支援策の予算規模は5,600億円
中小企業向け補正予算規模は5,600億円です。このほか、既存基金の活用などを含めると総額で1兆円を超える規模となります。
中小企業支援の基本政策は5つ
中小企業向け支援策として次の5つが掲げられています。
- 持続的な賃上げを実現するための生産性向上・省力化・成長投資支援
- 価格転嫁対策の強化
- 資金繰り支援、経営改善・事業再生・再チャレンジ支援
- 中小企業・小規模事業者活性化(相談体制強化など)
- 災害からの復旧・復興
【参考】令和6年度補正予算案 中小企業・小規模事業者等関連ポイント|中小企業庁
令和6年度補正予算からみる令和 7年度補助金の注目点8つ
令和6年度補正予算の中から、中小企業経営者の関心が高い補助金に関する8つの新設・改正情報を紹介します。
【新設】中小企業成長加速化補助金
中小企業成長加速化補助金とは、売上高100億円を目指す中小企業・小規模事業者の設備投資を支援する新設の補助金です。
中小企業成長加速化補助金の補助上限額・補助率などは未公表ですが、補助対象経費として建物費を含むと公表されています。
中小企業成長加速化補助金について発表されている補助制度の要件の概要、補助対象経費は次のとおりです。
【参考】令和6年度補正予算案 中小企業・小規模事業者等関連ポイント|中小企業庁
【新設】新事業進出補助金
新事業進出補助金は、新分野進出かつ新規顧客との取引を支援する新設の補助金です。
新事業進出補助金は補助率が1/2、補助上限額が9,000万円(従業員数により異なる)です。補助対象経費として建物費が含まれます。
2025年4月より公募が開始され、採択件数は約6,000件と予定されています。
- 補助率は1/2
- 補助上限額は2,500万円から9,000万円(大幅賃上げ特例適用時)
- 補助対象経費に建物費を含む
- 事業実施期間は交付決定から14か月間
- 収益納付は廃止
新事業進出補助金の要件として次の5つが明記されています。
- 企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦(事業者にとって新製品(または新サービス)を新規顧客へ提供)
- 事業終了後3年間から5年間で付加価値額(または従業員1名あたり付加価値額)を年平均成長率+4.0%以上増加させる計画
- 事業終了後3年間から5年間、事業所内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上水準
- 事業終了時点までに次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の公表など
- 賃上げ要件(詳細は未定)
【新事業進出補助金の補助上限額・補助率・補助対象経費】
補助上限額 (大幅賃上げ特例適用時※) | 従業員数20名以下:2,500万円(3,000万円) 従業員数21名から50名:4,000万円(5,000万円) 従業員数51名から100名:5,500万円(7,000万円) 従業員数101名以上:7,000万円(9,000万円) |
補助率 | 1/2 |
公募開始予定時期 | 2025年4月以降 |
採択予定件数 | 約6,000件 |
補助対象経費 | 建物費、構築物費、機械装置・システム構築費、 技術導入費、専門家経費、運搬費、 クラウドサービス利用費、外注費、 知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費 |
公募および採択期限 | 2027年3月末 |
事業実施期間 | 交付決定日から14か月以内 (ただし採択発表日から16か月以内) |
収益納付 | なし |
※大幅賃上げ特例 | 事業終了時点で下記の両方を満たす ①事業場内最低賃金を年額50円以上の水準で引き上げ ②給与支給総額を年平均+6%以上増加 |
【引用】事務局公募要領(案)|中小企業基盤整備機構
【拡充】ものづくり補助金19次公募は一部で補助率引き上げ
ものづくり補助金は、革新的な製品・サービスの開発や省力化設備の導入などが対象となる補助金です。補助率は1/2または2/3、補助上限額は4,000万円です。
2025年に開始予定の19次公募から改正される予定です。
令和6年度補正予算による主な改正内容は次のとおりです。
- 基本要件の見直し
- 従業員区分の変更(従業員数51名以上を新設)
- 収益納付はなし
以下のすべての要件を満たす3年から5年の事業計画書の策定および実行
- 付加価値額の年平均成長率が+3.0%以上増加
- 1名あたり給与支給総額の年平均成長率が事業を実施する都道府県の最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上
または給与支給総額の年平均成長率が+2.0%以上増加 - 事業所内最低賃金が事業を実施する都道府県における最低賃金+30円以上の水準
- (従業員21名以上の場合)次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表など
※最低賃金引き上げ特例適用事業者の場合、基本要件は①・②・④のみとする
【ものづくり補助金19次公募の補助上限額・補助率・補助対象経費】(予定)
【拡充】IT導入補助金は補助対象拡大と一部で補助率引き上げ
IT補助金は業務効率化のためのDX投資などが対象となる補助金です。
次回公募における主な改正点は次のとおりです。
- 通常枠に「最低賃金近傍の事業者」(3か月間以上、地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員数が全体の30%以上)を新設
- 通常枠において「最低賃金近傍の事業者」の補助率を2/3へ引き上げ
- 補助対象経費として「導入関連費」(保守サポートやマニュアル作成費用、導入後の活用支援など)を対象化
- セキュリティ対策推進枠の補助上限額を150万円へ引き上げ
- セキュリティ対策推進枠において小規模事業者への補助率を2/3へ引き上げ
【再編】持続化補助金は補助枠を整理
小規模事業者の販路開拓を支援する持続化補助金は、2025年から特別枠を再編し簡素化したうえで継続される予定です。
2025年からの持続化補助金は、補助率は最大3/4、補助上限額は200万円(共同・協業型を除く)の予定です。
【再編】事業承継・M&A補助金は補助枠新設、補助上限額引き上げなど
事業承継・M&A補助金(旧 事業承継・引継ぎ補助金)は、事業承継時に外部専門家へ支払う仲介手数料などが対象となる補助金です。
令和6年度補正予算による主な改正は次のとおりです。
- 制度名を「事業承継・M&A補助金」へ改称
- M&Aによる経営統合の取り組みが対象となる「PMI推進枠」を新設
- 従来の「経営革新枠」を「事業承継促進枠」へ変更
- 補助上限額800万円(旧 経営革新枠)を2,000万円へ引き上げ
【拡充】省力化投資補助金に一般型(オーダーメイド型)を新設
ロボットなど省力化機器の導入が対象である省力化投資補助金は大幅に拡充され、補助上限額が1億円の一般型が新設されます。
省力化投資補助金の主な改正は次のとおりです。
- カスタマイズ機器が対象となる「一般型」の新設
- 一般型はソフトウェアに加えてハードウエアを補助対象化
- 一般型は補助上限額が1億円
【継続】大規模成長投資補助金は継続
補助上限額が最大50億円と高額で注目を集めた大規模成長投資補助金は、2025年度も継続されます。2025年の大規模成長投資補助金は前年と同じく補助率1/3、補助上限額50億円です。
大規模成長投資補助金は採択率14.5%(第2次公募の追加採択を含めた採択倍率6.9倍)となっており、審査が厳しめであるとみられます。大型投資を検討中の顧問先については早めに準備を始めるように説明しておきましょう。
【大規模成長投資補助金(第1次・第2次公募)の採択率】
第1次公募 | 第2次公募 | 第1次・第2次公募合計 | |
申請件数 | 736件 | 605件 | 1,341件 |
採択件数 | 109件 | 85件 | 194件 |
採択倍率 | 6.8倍 | 7.1倍 | 6.9倍 |
採択率 | 14.8% | 14.0% | 14.5% |
【参考】2次公募の追加採択を含めた採択者について|大規模成長投資補助金事務局
より作成
補助金・助成金は事前準備が大切!税理士からの案内は協議会がサポート
令和6年度補正予算が可決され、2025年の新しい補助金が動き出します。
補助金・助成金は経営者からの関心が高い分野でるため、改正情報を中心に積極的に顧問先へ情報発信しましょう。
また補助金申請は公募期間や事業期間に制約があるため、顧問先における申請準備や投資スケジュールを事前に把握しておくことがおすすめです。
「顧問先に適した公的支援策を案内したいが調べる時間がない」
「顧問先への発信情報がマンネリ化している」
「顧問先における投資時期が事務所内で共有されず、属人化してしまっている」
など、会計事務所様の課題・悩み事は経営革新等支援機関推進協議会へご相談ください。
経営革新等支援機関推進協議会は、顧問先への発信情報の提供・顧問先イベントの把握ツール・事務所スタッフが効果的にスキルアップできる動画研修プログラムの提供など、会計事務所様の顧問先支援業務をトータルでサポートしています。
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